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ゲームセンターの経営者に4130万円の立退料が認められた事案

東京都世田谷区、東急田園都市線の駅から徒歩1~2分の立地にある2階建の商業ビル。その全体を賃借し、1階分部でゲームセンターを経営してきた借主。しかし、建物には倒壊の危険があるとして立退きを求められてしまいます。裁判所が4130万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成25年6月14日)
① 老朽化が激しく、倒壊の危険があった…
本件建物は、47年のビルで、震度5弱の地震により、天井や壁が崩落する危険があり、震度7の地震により全壊する危険がある状態でした。このことから、裁判所は、貸主が積極的に本件建物を利用する必要性があるとはいえないものの、人道的問題から貸主において本件建物を建替えるために借主に立ち退きを求める必要性は高いとの判断をしました。
② 貸主による建替えがされるべきと判断された…
本件建物の老朽化は、補修工事によっても対処可能ではありました。しかし、耐用年数が経過しているだけでなく、本件建物は当初からの欠陥の影響により、経年相応以上に劣化していました。このことから、建替えする必要性が大きいとの判断がされています。また、借主は自身が建替えをすることもできる旨主張しましたが、下記③の事情から、借主が建替える動機は弱いとの判断がされました。
これらのことから、やはり、貸主による建替えの必要性が高いとの判断がされました。
③ 借主の賃借目的は、消極的だった…
借主は、本件建物でゲームセンターを経営していましたが、毎年約2200万円の赤字でした。というのも、借主は、本件建物で競合他社がパチンコ店を経営することを阻止するために本件建物を少し割高な賃料で借り受けていたからでした。このような事情から、裁判所は借主が本件建物を引き続き使用する必要性は低いものと判断しました。
④ とはいえ、長年契約違反はされていなかった!
借主は、多少割高な賃料を10年以上もの間欠かさずに支払い続けてきたほか、一切契約違反をしてきませんでした。このことと、貸主が本件建物を使用する消極的な必要性から、裁判所は、多少の立退料が必要との判断をしています。ただ、借主側の事情は非常に弱いため、立退料は、借家権価格8260万円の半額しか認められませんでした。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、貸主が本件建物を使用する目的が非常に重視されていることです。このことから、借主において、本件建物でなければならない理由をいかに積極的に主張できるか否かが立退料算定のポイントになることが分かります。
また、裁判所の判断のニュアンスからすれば、本件で、借主が契約違反をしていれば立退料が認められなかった可能性があります。
できる限り立退料を高額にするためには、貸主と良好な関係を築いておくことが重要になってくるといえます。