総量規制とは?仕組みや法律・対象となる借入などを紹介
生活費が足りないなどの理由で、消費者金融などからの借入を増やしていくと、一定のところで借入ができなくなることがあります。
これは、借入業者のキャッシング枠が一杯になっている可能性もありますが、総量規制が関係している場合もあります。
総量規制は、年収の3分の1以上は貸し付けてはいけないという法律です。お金を貸し過ぎることを禁じることで、債務者の生活を守ることを目的としています。
ここでは、総量規制の概要や目的、対象となる借入、総量規制で借入ができないときの対処法などを解説します。
目次
総量規制とは?
まずは総量規制がどんなものなのか理解しましょう。
年収の3分の1以上は貸し付けない法律
総量規制とは、貸金業者から借りられる金額に上限を付ける法律です。その内容はシンプルで、貸金業者は顧客に対して、本人の年収の3分の1以上貸し付けてはならない、というものです。
年収600万円の人なら200万円、年収300万円の人なら100万円以上借りられないのが総量規制です。
総量規制の目的
総量規制の目的は、まとめると以下になります。
- 貸金業者が過剰な貸付をすることを防ぐ
- 消費者が過剰な借入で破綻することを防ぐ
- 多重債務者を減らし、消費者を保護する
- 健全な金融市場の維持 など
総量規制の効果は大きく、施行直後の2007年から毎年自己破産者が減っていき、5年後の2012年には、約半分近くまで減少しました(約15万件から7万件まで減少)。
総量規制の対象・対象外となるもの
総量規制は貸金業法によって定められているため、貸金業者以外からの借入は、総量規制の対象となりません。
総量規制の対象 | 総量規制の対象外 |
・消費者金融 ・信販会社 ・クレカのリボ払い ・クレカ会社のカードローン ・クレカ会社のキャッシング |
・銀行 ・信用金庫 ・信用組合 ・労働金庫 ・クレカのショッピング |
銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫などは、貸金業者ではないため、総量規制の対象とはなりません。
クレジットカードのショッピングは、割賦販売法が適用されるため、総量規制の対象外です。後払いをするため、ローンに似ていますが、厳密には借金はないのです。
総量規制に関する注意点
総量規制に関して誤解しやすいポイントや、注意しなければならないポイントについて紹介します。
複数借入がある場合、合計額で審査される
用途によってクレジットカードを複数枚使い分けたり、複数社から借り入れたりしている人も多いですが、総量規制がかかるのは、借入の合計額に対してです。
例えば、年収300万円の人の場合、総量規制により100万円が借入の上限額です。
これは、どの業者からも100万円ずつ借り入れられるわけではなく、すべての業者を合わせて100万円になります。
各業者は、自社から借りている金額しか把握できないわけではなく、他者から借りている金額も、個人信用情報機関を通じて把握することができます。
年収の3分の1以下しか借りられないことがある
総量規制は、貸金業者が、消費者に対して年収の3分の1以上貸し付けないことを定めた法律です。
見方を変えると、「年収の3分の1までなら借りられるのでは?」と考えられるかもしれませんが、実際にはそこまで借りられない可能性もあります。
実際の返済能力や実績、審査の結果などに応じて、年収の3分の1を下回る可能性があることを覚えておきましょう。
個人間融資や怪しい業者などは利用しないこと
総量規制で、正規の貸金業者から借入ができなくなったからといって、怪しい業者からお金を借りないようにしましょう。
違法な業者からお金を借りると、法律の上限を超えた利息を取られるなど、トラブルに巻き込まれるリスクがあります。
借金を減らすことも難しくなるので、注意しましょう。
総量規制で借入ができないときの対処法
総量規制で借入ができない時の対処法を紹介します。
返済して借入枠に余裕を作る
シンプルに、返済を優先することで、借入枠に余裕を持たせます。
総量規制の上限に達している状況では、他の消費者金融やカード会社に申し込みをしても、審査を通過できない可能性が高いです。よって、新たに借入をするより、現在あるカードの借入枠の中でやりくり出来るようにすることをおすすめします。
すでに複数社から借入がある人は、金利の高い業者から優先的に返済したり、おまとめローンを使って一社にまとめ、さらに金利を下げるなどの方法を取ることも可能です。
目的別ローンを検討する
総量規制に達していても、目的別ローンであれば利用できる可能性があります。目的別ローンとは、住宅ローンや自動車ローン、医療ローンなど、特定の目的のために行う借入です。
目的別ローンは除外貸付といい、総量規制の対象外ですので、年収の3分の1を超えても借り入れられる可能性があります。
覚えておきたいのは、目的別ローンでも審査落ちする可能性はあることと、自分の返済能力を超えた借入をしないようにしなければならない点です。
債務整理を検討する
すでに総量規制に引っかかっている状態で、さらに借入を増やそうとするのは危険です。返済ができなくなり、生活が破綻する可能性が高いからです。借入をしたい理由が、生活費が足りないから、などの理由だとなおさらです。
借金問題を根本的に解決する方法として、債務整理があります。債務整理とは、債権者との直接交渉や、裁判所を通して手続きによって、借金を減額する手続きです。
主に以下の3つの方法がありますので、表をご覧ください。
手続きの名前 | 特徴 |
任意整理 | ・裁判所を介さずに債権者と直接借金減額の交渉をする手続き ・借金の利息や遅延損害金をカットし、残りを分割払いする ・裁判所を介さないため、比較的スピーディで費用が安い |
個人再生 | ・裁判所を介して借金を大幅に減額する手続き ・5,000万円までの借金を5~10分の1まで減額する ・減額された借金は3~5年で分割払いする |
自己破産 | ・裁判所を介して、借金の返済を免除する手続き ・手続きが認められると、借金がゼロになる ・家や車など、自分名義の財産を差し押さえられる可能性が高い |
それぞれ、借金の減額量や、利用できる条件、メリットデメリットなどが異なってきます。自分にあったものを選ぶには、弁護士と相談する必要があるでしょう。
債務整理についてさらに知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
総量規制に関するよくある質問
最後に、総量規制に関するよくある質問を紹介します。
除外貸付・例外貸付とは?
除外貸付とは、総量規制の趣旨に合わない、以下のような貸付をいいます。
- 不動産ローン
- マイカーローン
- 高額医療費支払いのための貸付 など
こういった貸付は、利用者が日常的に行う借入とは違い、高額で返済が長期に渡ります。金利も一般的なローンと比べ低く設定されており、生活が破綻する可能性が低いため、総量規制の対象外となっています。
例外貸付とは、利用者に不利益を与えない貸付のことをいいます。
- 個人事業主に対する貸付
- 利用者が一方的に有利になる借換え
- 緊急の医療費の貸し付け
- 災害時の緊急の貸し付け など
支払い能力に問題がなかったり、緊急性が高いと判断される状況では、例外として、総量規制を超えた貸付が可能になります。
クレジットカードは総量規制の対象?
クレジットカードの場合、ショッピング利用は総量規制の対象とはなりません。後払いではあるものの、適用される法律が割賦販売法であり、厳密には借入には当たらないからです。
一方、リボ払いを利用した場合は、借入となるため、総量規制の対象になります。リボ払いは借入ですので、残高に応じて利息がかかります。
まとめ
総量規制とは、貸金業者が、消費者に対し、年収の3分の1以上の金額を貸し付けないようにする法律です。
総量規制は、消費者がお金を借りすぎて破綻することを防いだり、健全な金融市場を維持したりすることを目的としています。
総量規制の対象となるのは、貸金業法で定められた貸金業者からの貸付です。消費者金融、信販会社、クレカのリボ払いなどは対象となりますが、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫などからの貸し付けは対象外です。
総量規制に達してしまった場合、新たな借り入れはせず、すでに利用している業者の返済をすることをおすすめします。場合によっては年収の3分1以上のお金を借り入れることも可能ですが、収支のバランスを崩し、生活が破綻する可能性が高くなります。
借金についてお悩みがある人や、借入が総量規制に達して困っている人は、弁護士に相談しましょう。ネクスパート法律事務所では、初回30分の無料相談を受け付けています。お気軽にご利用ください。