借金一本化のメリット・デメリットや審査に通らない原因を解説!
複数社から借入れがあると、返済日や返済額が各社によって異なるため、返済の管理に煩わしさを感じる方もいらっしゃるでしょう。
順調に返済ができるうちは気にならなくても、お金が続かなくなると精神的に追い詰められる方も少なくありません。
一部の金融機関では、複数社からの借金を一本化するおまとめローンが提供されています。借金を一本化すると返済の管理が容易になったり、月々の返済額を抑えられたりする利点もありますが、更なる借金を重ねて事態が悪化するおそれもあります。
この記事では、借金の一本化のメリット・デメリットや債務整理との違いについて解説します。
目次
借金一本化とは
ここでは、借金一本化の概要を解説します。
複数社からの借金を一本にまとめること
借金一本化とは、金融機関が提供するおまとめローン等を利用して、複数社からの借金を一社にまとめることです。
例えば、A社・B社・C社からの借入残高が合計200万円である場合に、D社から200万円を借入れて、A社・B社・C社の借金を完済します。これにより、複数あった借金がD社への借金一本にまとめられるため、D社のみに返済します。
借り換えとの違い
借金の借り換えは、借金一本化と同じ意味合いで用いられることもありますが、厳密には若干異なります。
借り換えとは、1つのローンをより金利が低いローンに借り換えることです。
借金の一本化は借入先が変わりますが、借り換えは別会社だけでなく同一会社でより条件の良いローンに切り替えることも含まれます。
借金一本化してもブラックリストに載らない?
ここでは、借金を一本化するとブラックリストに載るかどうかを解説します。
借金一本化そのものではブラックリストに載らない
借金を一本化しても、そのこと自体で信用情報機関に事故情報は登録されません。
借金一本化の前後に滞納があるとブラックリストに載る
借金を一本化する前に、複数社からの借入れの一つだけでも滞納があると、信用情報機関に事故情報(延滞情報)が登録されます。
借金を一本化した後も、返済が滞ると信用情報機関に事故情報(延滞情報)が登録されます。
いずれの場合も、事故情報(延滞情報)が登録される期間は下表のとおりです。
信用情報機関 | 登録期間 |
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | 【契約日2019/9/30以前】
契約継続中および完済日から5年を超えない期間(ただし、延滞情報は延滞継続中、延滞解消の事実に係る情報は当該事実の発生日から1年を超えない期間) 【契約日2019/10/1以降】 契約継続中および契約終了後5年以内 |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 契約期間中および契約終了日(完済していない場合は完済日)から5年を超えない期間 |
借金一本化のメリット
ここでは、借金一本化のメリットを解説します。
返済管理が容易になる
複数社から借入れがあると、返済日や返済額が各社によって異なるため、返済の管理が煩雑になります。
借金を一本化すれば、返済日が毎月1回になるため返済の管理に煩わされません。借入残高や完済までの年数も容易に把握できるので、返済計画を立てやすくなります。
月々の返済を抑えられる可能性がある
おまとめローンの返済期間は最長10年程度に設定されているのが一般的です。
一般のローンより返済期間が長いため、一本化で借入額が高額となっても月々の負担を抑えられる可能性があります。
返済総額を減らせる可能性がある
現状の借金より低金利のローンで一本化できれば、返済総額を減らせる可能性があります。
利息制限法では、借入額に応じて以下のとおり上限利率が定められています。
- 10万円未満:年20%
- 10万円以上100万円未満:年18%
- 100万円以上:年15%
借金額が低いほど利息が高くなるため、小口の借金を一本にまとめることで適用される利率を低くできることがあります。返済期間の長さにもよりますが、利息負担が軽くなることで返済総額を減らせる可能性があります。
総量規制の対象にならない
2010年6月の貸金業法の改正により、貸金業者は債務者の年収の3分の1を超える貸付けができなくなりました。これが総量規制です。総量規制は、過剰貸付けを防ぎお金を借りる人を保護する制度です。
おまとめローンは、以下の条件を満たせば顧客に一方的有利となる借り換えとして総量規制の例外貸付けに該当する可能性があります。
- 借り換えの対象となる債務が貸金業者からの借入債務であること
- 借り換え後の金利が借り換え前の金利を上回らないこと
- 返済方法が約定に基づいて段階的に残高を減らすものであること
- 借り換え後の月々の返済額が借り換え前の返済額を上回らないこと
- 借り換え後の担保・保証にかかる条件が借り換え前の条件より厳しくならないこと
例外貸付けに該当すれば総量規制の対象にはならないので、貸金業者から年収の3分の1を超えた貸付けを受けられます。
借金一本化のデメリット
ここでは、借金一本化のデメリットを解説します。
返済期間が長期化するおそれがある
おまとめローンの契約時には、利用者の収入をもとに無理のない返済期間を決定します。
ただし、月々の返済額を抑え過ぎると返済期間が長期化し、その分支払う利息も増えます。
月々の返済負担だけを重視すると、借金を一本化する前よりも返済総額が増えるおそれがあります。
金利が下がるとは限らない
銀行や消費者金融各社が様々なおまとめローンを提供していますが、金利もそれぞれ異なります。
もともと契約していたローンの金利よりおまとめローンの金利が高いこともあります。
金利や返済期間を考慮せずむやみに借金を一本化すると、返済総額が増えるおそれがあります。
全ての借金を一本化できないこともある
おまとめローンを申込んでも、必ず希望額が借りられるわけではありません。
希望額よりも低い金額で審査に通った場合は、全ての借金を一本化できない可能性があります。
借入可能額に応じて定められた金利によっては、結果的に借金が膨らむこともあります。
審査が厳しい・審査に時間がかかる
おまとめローンは借入希望額が高額になるため、通常のローンよりも審査が厳しくなります。
おまとめローンの審査は、最短即日と表記されている商品もありますが、実際には3営業日以上の時間がかかることも珍しくありません。
審査に通過しても、融資を受けられるまでには更に1週間程度の時間がかかることもあります。
追加融資は受けられない
おまとめローンは一般のカードローンとは異なり、原則として追加融資を受けられません。
カードローンは返済中でも、限度額の範囲内で繰り返し借入れができますが、おまとめローンは借金一本化のために借入れをする商品なので、その他の用途に使えません。
おまとめ後に再び多重債務に陥る可能性がある
借金の一本化に成功すると、従前利用していた借入先に完済した実績が残るので、追加融資や借入枠増額の案内を受けることがあります。
おまとめローンでは追加融資を受けられないことから、他社のカードローンやクレジットカードの利用枠が残っていると、ついついお金を借りてしまうこともあります。
その結果、一本化前よりも借金が増え、再び多重債務に陥るおそれがあります。
借金一本化ができないかも|おまとめローンの審査に通らない原因
借金を一本化したくても、おまとめローンの審査に通るか不安な方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、おまとめローンの審査に通らない原因となり得る事情を紹介します。
過去に借金を滞納した・債務整理をした
以下のいずれかに該当する場合は、信用情報機関に事故情報が登録されているため、おまとめローンの審査に落ちる可能性があります。
- おまとめローンの申込前約5年間に借金を滞納したことがある
- おまとめローンの申込前約5~10年間に債務整理をした
収入が不安定
以下のような理由で収入が不安定な方は、継続的な返済をできる見込みがないと判断されて審査に落ちる可能性があります。
- 定職に就いていない
- 転職したばかり
- シフトによって毎月の収入が変わる
一定の収入を得ていても勤続年数が短い場合には、審査に通らないこともあります。
借入件数・借入総額が多い
おまとめローンの申込時には、他社借入件数や他社借入額を申告する必要があります。
複数社の借金を一つにまとめる目的のローンとはいえ、他社借入件数や他社借入額が多すぎると返済能力がないと判断され、審査に落ちることもあります。
申込時に虚偽申告をした
おまとめローンの申込時に以下の情報を偽って申告すると審査を通過できません。
- 氏名・住所・生年月日・連絡先
- 勤務先
- 年収
- 他社借入件数
- 他社借入額
- 借入の目的(使途)
おまとめローンの審査では、以下の方法で申込書に記載された情報を確認します。
- 本人確認書類のチェック
- 信用情報機関への個人信用情報の照会
- 勤務先への在籍確認
単なる記載ミスであれば正しい情報をもとに審査を継続してもらえる可能性もありますが、わざと嘘の情報を申告したと判断されれば即時審査落ちとなります。
一度に複数のおまとめローンを申込んだ
おまとめローンに限らず借入れの申込時には、申込みを受け付けた金融機関や消費者金融等が信用情報機関に登録された個人信用情報を照会します。
申込内容に関する情報は照会日から6か月間登録されるため、一度に複数のおまとめローンを申込むと収入面などの審査要素に不安材料があるのではないかと警戒されるおそれがあります。
借金一本化の審査に通るコツ|借金をまとめたい人がすべきこと
ここでは、おまとめローンの審査に通りやすくするためのコツを紹介します。
返済期限を守る
信用情報機関には、過去の返済実績や現在の借入状況が登録されています。これらの情報は、おまとめローンの審査で重要な判断要素となります。
過去の延滞事実は審査落ちの原因となります。遅滞なく返済していても、常に限度額いっぱいまで借りている状況だと返済能力がないと判断され、審査が通らないこともあります。
おまとめローンの審査に通りやすくするためには、以下の点に留意しましょう。
- 現在の借入先への返済期日を守る
- 借り過ぎに注意する
- 借入れと返済を繰り返えさない
1年以上の勤続年数を確保する
ローンの審査では、勤続年数が長ければ長いほど有利に働くと考えられています。
おまとめローンの申込時には、少なくとも1年以上の勤続年数を確保するとよいでしょう。
現在の勤務先での勤続年数が半年にも満たない場合は、それが原因となり審査に落ちる可能性もあります。
借入件数・借入額を減らす
審査に通りやすくなる借入件数・借入額に具体的な基準はありませんが、一般に4社以上から借入れがある場合は、返済能力に疑問を持たれる可能性があります。
審査落ちのリスクを減らしたいのであれば、小口の借金を完済してから申込むなど、できる限り借入件数や借入額を減らしてからおまとめローンを申込むことをおすすめします。
申込書類に他社借入件数等を正直に記入する
おまとめローンの申込書に虚偽の事実を記載すると一発で審査に落ちます。
他社借入件数や他社借入金額を偽っても、信用情報機関への照会ですぐにバレます。申込書には嘘を書かず、正直に全ての情報を記載しましょう。
一度に複数のおまとめローンに申込まない
複数の申込履歴があるからといって、それが必ずマイナス要素になるわけではありません。しかし、短期間に複数の申込みをすると「よほどお金に困っているのか」と疑われる可能性があります。
審査に不利に働かないように申込みは1社に絞り、審査に落ちたら最低6か月の期間を空けて次の申込みを行うことをおすすめします。
借金一本化後の注意点
ここでは、借金を一本化した後の注意点を解説します。
新たな借入れをしない
おまとめローンで返済した従前の借入先から再び借金をすると、一本化前よりも借金が増え、再び多重債務に陥るおそれがあります。
おまとめローンを提供している金融機関の中には、完済した他社との契約の解約を義務付けたり、返済中の新たな借入れを禁止したりしていることもあります。場合によっては契約違反となり、おまとめローン残高を一括請求されることもあるので注意しましょう。
返済期間をなるべく短くする
現状の借金より低金利のおまとめローンを利用しても、月々の返済額を抑えすぎると返済期間が長期化します。
返済期間が長ければ長いほど利息が膨らむため、一本化する前より返済総額が増えるおそれもあります。
月々の返済額や返済期間は、無理のない範囲でなるべく高く・短く設定するように心がけましょう。
支出を減らす
おまとめローンは原則として追加融資が受けられないため、急にお金が必要になったときに備えられるよう家計を安定させなければなりません。
借金の一本化を機に、支出を見直して家計の余力を高められるよう心がけましょう。
借金一本化に失敗する前に債務整理も検討・弁護士に相談しよう!
ここでは、借金一本化に失敗するケースや借金一本化と債務整理の違いについて解説します。
借金一本化に失敗するのはどんなとき?
おまとめローンの審査に落ちた
おまとめローンを申込んでも審査に通るとは限りません。審査に落ちた場合は、従前どおり複数社への返済を継続しなければなりません。
全ての借金を一本化できなかった
おまとめローンの審査に通っても希望額が借りられなければ、借金を一本化できない可能性があります。
希望金額に届かなかった場合は、以下の優先順位で効率的に返済するなどの工夫が必要です。
- 金利の高い借入先への返済
- 完済間近な少額の借金を返済
一本化しても返済総額が変わらない
おまとめローンを利用しても以下の理由により返済総額が変わらないこともあります。
- 金利がさほど下がらなかった
- 月々の返済額を減らした分、返済期間が長くなり利息が膨らんだ
この場合は、返済管理が容易になること以外に借金を一本化するメリットを得られません。
債務整理とは
借金一本化に成功したとしても借金そのものがなくなるわけではないため、根本的な解決にならないことも多いです。
債務整理をすれば、借金問題を根本的に解決できる可能性があります。借金一本化を検討する前に、弁護士に相談して債務整理を検討しましょう。
債務整理とは、債権者との交渉や裁判所の手続きによって借金返済の負担を減免してもらう手続きです。
債務整理には、主に次の3つの手続きがあります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれの手続きの特徴は、以下のとおりです。
手続きの種類 | 特徴 |
任意整理 | 債権者の個別の合意を得て借金の返済方法を変更し、概ね3~5年で借金を返済する手続き。
合意日以降に発生する利息や遅延損害金の免除や返済期限の延長により返済総額・毎月の負担軽減を図る。 |
個人再生 | 法律で定められた基準以上の額を3年(最長5年)で支払う再生計画案を作成し、裁判所に認可してもらうことによって残りの債務を免除される手続き。
元本のカットが法律上認められているので、多額の財産を所有していなければ、借金を概ね5分の1に減額できる。 |
自己破産 | 債務者が持っている財産を裁判所が強制的にお金に換えて債権者に公平に分配して清算する手続き。
免責が許可されれば、全ての借金の返済義務がなくなる(非免責債権を除く)。 |
任意整理のメリット・デメリット
任意整理のメリット・デメリットは下表のとおりです。
メリット | デメリット |
①必要な書類が自己破産・個人再生に比べて少ない
②裁判所に行く必要がない ③官報に掲載されないので周囲の人に知られる可能性が少ない ④交渉する債権者を自由に選べる |
①借金の元本は減額できない(利息制限法の上限金利を超える取引があった場合を除く)
②生活保護受給者は利用できない ③信用情報機関に事故情報が登録される |
個人再生のメリット・デメリット
個人再生のメリット・デメリットは下表のとおりです。
メリット | デメリット |
①元本を含めた借金の総額を大幅に減額できる
②自己破産のように財産を強制的に処分されない ③住宅ローンの特則を利用すれば住宅ローンを支払いながら自宅に住み続けられる ④借金の理由を問われない ⑤職業や資格の制限を受けない |
①財産が多いと弁済額が増額することがある
②再生手続き中に官報に3回掲載される ③保証人に迷惑をかける ④信用情報機関に事故情報が登録される |
自己破産のメリット・デメリット
自己破産のメリット・デメリットは下表のとおりです。
メリット | デメリット |
①非免責債権を除く全ての借金の返済義務が免除される
②給与の差し押さえなど強制執行が中止・禁止・失効する(執行裁判所への連絡要) |
①一定の価値のある財産を処分しなければならない
②破産手続き中に官報に2回掲載される ③管財事件になると破産手続き中は住居を自由に変えられなくなる ④破産手続き中は一定の資格を使った仕事ができなくなる ⑤管財事件になると郵送物が管財人に転送される ⑥携帯やスマホの通信契約を解約される場合がある ⑦保証人に迷惑をかける ⑧信用情報機関に事故情報が登録される |
まとめ
借金を一本化すれば月々の負担を軽減できますが、返済期間が延びることで返済総額が増える可能性もあります。返済期間が長引けば長引くほど、返済計画が途中で破綻する可能性も高まります。
返済が苦しくなった借金をおまとめローンで解決しようとするときには、借入状況や収入の見通しを分析して慎重に検討することが大切です。
借金を一本化しても返済が難しい場合は、なるべく早く弁護士への相談をおすすめします。債務整理をすればおまとめローンを利用するよりも完済までの道のりが短くなることもあります。
借金一本化をご検討中の方は、おまとめローンの申込前に、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。ご自身に適した解決方法を借金問題に強い弁護士と共に検討しましょう。