任意整理しなければよかったと後悔する理由やその後の生活への影響
任意整理とは、借金の利息をカットしたり、返済期間を見直したりすることで、債務者の負担を減らす手続きです。
自己破産とは違い、ご自身の財産を手放さなくてよい点がメリットに挙げられます。利息もカットできるため、最終的な返済額も確実に減らすことが可能です。
任意整理は、債務者にとって良い点ばかりに感じられますが、中には任意整理をしなければよかったと後悔するケースもあります。
この記事では、任意整理で後悔するケースやその後の生活への影響について解説します。
目次
「任意整理しなければよかった」と後悔するケース
任意整理をしなければよかったと後悔する代表的なケースは次のとおりです。
- 借金の返済額があまり変わらなかった
- 減る利息よりも弁護士費用の方が高かった
- 訴訟を起こされて裁判になった
- 一部の業者しか任意整理に応じてくれなかった
借金の返済額があまり変わらなかった
任意整理をしても借金の返済額があまり変わらないことがあります。任意整理でカットされるのは、基本的に利息のみです。借金の元本が減るわけではありません。
過払い金がある場合は、元本も減る可能性があります。しかし、過払い金は2010年以前のグレーゾーン金利の借金が対象になるため、ここ数年で借入をした方に過払い金は原則発生していません。
任意整理では利息部分がカットされ、最終的な返済総額は減ります。しかし、月々の返済額は変わらないケースもあります。
むしろ、任意整理後の返済期間によっては、月々の返済額が増えてしまう可能性もあります。例をご紹介します。
任意整理前 | 任意整理後 | |
借入額 | 200万円 | 200万円 |
金利 | 15% | – |
返済期間 | 60ヵ月 | 36ヵ月 |
毎月の返済額 | 47,579円 | 55,555円 |
返済総額 | 2,854,770円 | 2,000,000円 |
上記の例では、任意整理で利息がカットされたことで、最終的な返済総額は大きく減りました。しかし、月々の返済額は増えています。
任意整理後の返済期間は、債権者との交渉次第です。月々の負担を減らすために、返済期間を長くしたいと考えても、債権者が認めてくれるとは限りません。
減る利息よりも弁護士費用の方が高かった
借金額や返済期間によっては、カットされる利息よりも弁護士費用の方が高くなる可能性があります。任意整理を弁護士に依頼すると、1社あたり3〜7万円程度の費用が掛かります。これ以上に利息が減らないと、弁護士費用の方が高くなってしまいます。
例えば、金利15%で30万円の借金を毎月1万円返済した場合、最終的な返済総額は約38万円です。カットできる利息は約8万円で、任意整理は1社あたり3万円〜7万円程度かかるので、ほとんど減額効果は見込めません。
まずは、ご自身の借入額と返済期間を整理し、最終的にどの程度の利息が発生するかを確認してみましょう。
訴訟を起こされて裁判になった
任意整理中に債権者から裁判を起こされるケースがあります。通常、任意整理を弁護士に依頼すると、債権者に受任通知が送付されます。受任通知が送付されると、債権者は直接取り立てを行うことができなくなります。
しかし、裁判を起こすことは禁止されていません。債権者が裁判で勝訴すると、財産の差し押さえが可能となり、強制的に借金を回収することができます。
裁判を起こされる代表的なケースとしては、任意整理の手続きが長引いてしまった場合です。任意整理の手続きが長引いてしまう理由は、依頼者が弁護士費用を払わなかったり、弁護士が業務を放置したり、などが考えられます。
仮に裁判を起こされてしまっても、任意整理はできます。しかし、条件が厳しくなってしまう可能性があります。スムーズな手続きをするためにも、任意整理の実績があり、弁護士費用を払うのが難しければ分割払いができる法律事務所を選ぶとよいでしょう。
一部の業者しか任意整理に応じてくれなかった
複数から借入がある場合、すべての業者が任意整理に応じてくれるとは限りません。一部の業者しか任意整理できない場合、その分カットできる利息も少なくなります。
しかし、保証人に迷惑が掛かる、住宅ローンに影響が出るなどの理由から、一部の業者のみ任意整理を望む方もいます。複数から借入がある場合には、すべての債務を弁護士に伝え、ご自身や周りへの影響を考えながら任意整理する業者を選んでもよいでしょう。
任意整理してもブラックにならない?
ブラックリストには登録される
任意整理をすると、いわゆるブラックリスト状態となり、信用情報機関に事故情報が登録されます。ブラックリストに載ると、クレジットカードが新しく作れなかったり、ローンや分割払いの審査が通らなくなったりします。
また、日常的に使用しているクレジットカード会社の借金を任意整理すると、任意整理をした時点で使えなくなる可能性もあります。
任意整理する際には、デメリットも理解したうえで判断しましょう。任意整理のデメリットについては、任意整理のデメリットとよくある誤解の記事もご覧ください。
ブラックリストに登録される期間
ブラックリストに登録される期間は、任意整理から借金完済後5年程度です。任意整理を行い、仮に3年かけて借金を完済した場合は、合計で8年間程度ブラックリストに登録されることになります。
その間は、クレジットカードの新規作成やローン契約などはできない可能性が高いです。ブラックリストに登録されるのは、任意整理に限らず、自己破産や個人再生などの手続きでも同様です。
ブラックにならないケース
任意整理でブラックリストに載ることは、基本的に避けられません。しかし、過払い金があった場合には、ブラックリストに載らない可能性もあります。
過払い金とは、簡単に言うと払いすぎた利息のことです。払いすぎた利息は、過払い金請求をすることで、返還してもらうことができます。
過払い金と相殺して借金が完済になれば、ブラックリストには登録されません。2010年以前から借入をしていた場合には、過払い金が発生している可能性があります。
任意整理したらその後の生活への影響は?
家族や会社への影響は原則ない
任意整理をしても、基本的に家族や会社に影響を及ぼすことはありません。中には、家族にばれないように任意整理を行う方もいます。会社にも基本的に知られることはありません。
しかし、家族が保証人になっている場合、その方に請求が来る可能性はあります。また、任意整理に関する書類が自宅に届くこともあるので、依頼する弁護士にも事情を説明した方がよいでしょう。
持ち家があり、住宅ローンが残っている場合は、その借入先を任意整理の対象にしなければ影響は出ません。車のローンも同様です。ご自身の生活への影響を考え、弁護士と相談しながら任意整理をする業者を選択しましょう。
任意整理後も返済は続く
任意整理は、基本的に利息をカットする債務整理の方法ですので、借金の元本が減るわけではありません。任意整理後も元本の返済は続いていきます。
そのため、任意整理後もしっかりと返済をしていけるかどうか考える必要があります。返済が難しければ、自己破産や個人再生など任意整理以外の手続きも検討した方がよいでしょう。
クレジットカードが使えなくなる
現在利用しているカード会社の借金を任意整理する場合、強制解約となりクレジットカードが使えなくなる可能性があります。また、新しいクレジットカードも作れなくなる可能性が高いです。
普段、クレジットカードで支払いをしている方であれば、カードが使えなくなることで不便に感じてしまうこともあるでしょう。
しかし、現在は○○ペイのようなスマホ決済が広く普及しています。それらのアプリは、ATMや銀行口座からチャージして使用することが可能です。任意整理をしても、すべてのキャッシュレス決済が使えなくなるわけではありません。
家や車のローンが通らない
任意整理をしてブラックリストに登録されると、原則、住宅ローンや車のローンが通らなくなります。そのため、住宅や車の購入を考えている方は、注意が必要です。特に仕事で車を使用している方は、任意整理をすることで仕事にも影響が出てしまう恐れがあります。
車であれば現金一括で購入できることもあるかもしれませんが、住宅となるとそうはいきません。夢だったマイホームを諦めざるを得ない状況になってしまう可能性もあります。
ご家庭の状況も考慮したうえで、任意整理するかどうか判断しましょう。
携帯の分割払いができない
最新機種のスマートフォンは、高ければ10万円程度することもあります。一括払いだと難しいので、分割払いで購入した経験がある方も多いでしょう。
ブラックリストの状態になると、その分割払いでの購入が基本的にはできません。欲しい機種が高額だった場合には、一括で支払う必要があります。
高額な機種が買えなかったとしても、日々の生活に大きな影響が出る訳ではありませんが、こういったデメリットもあります。
任意整理をしない方がいい人とは
借金が少額
借金が数万円や10万円など少額の場合、任意整理による減額効果はあまり期待できません。
仮に、金利18%で20万円を借入し、毎月6千円を返済していた場合、最終的な返済総額は約28万円です。任意整理は1社あたり3〜7万円程度掛かるため、弁護士費用を差し引けば、ほとんど減額効果はありません。
そのため、借金が少額な場合は、任意整理をする必要性は低いと言えます。ただし、一括返済を求められているケースでは、任意整理をすることで分割払いにできるというメリットもあります。
借金の金利が低い
任意整理では、借金の元本は減らず、利息部分がカットされるだけに留まります。そのため、金利が低い場合は、その分カットできる利息も少ない、ということです。
金利が低い借金として代表的なのは、住宅ローンです。しかし、返済期間によっては、金利が低くても利息が大きくなることはあるため、まずは最終的に支払う利息をご自身で計算してみましょう。
利息が減っても返済ができない
任意整理をしても返済が難しいという場合は、別の債務整理の方法を検討した方がよいでしょう。別の方法としては、自己破産や個人再生などが考えられます。
任意整理後に返済を滞納した場合、基本的には残っている借金の一括返済を求められます。一括返済が難しければ、任意整理後に自己破産や個人再生に移行することも可能です。
このように、そもそも返済できる見込みがなければ、任意整理ではなく、最初から自己破産や個人再生を検討すべきと言えます。
ブラックリストの影響が大きい
ブラックリストに登録されることで、今後のライフプランや仕事に大きな影響が出る方もいます。例えば、近いうちに住宅の購入を考えている方、借入ができないと事業に影響が出る個人事業主の方、などが挙げられます。
こういった方は慎重に検討する必要があります。懸念点がある場合は、弁護士に事情を説明し、専門家の意見をもらいながら判断した方がよいでしょう。
任意整理に関するよくある質問
任意整理したら人生終わり?
「任意整理をしたら人生終わり」と耳にすることもありますが、決してそうではありません。任意整理は、借金を現実的に返せるようにする手続きですので、ご自身の生活を立て直すきっかけにもなります。
任意整理はやばい?
任意整理をしても、その後の生活に大きな影響は基本的にありません。任意整理は、利息がカットできるメリットがある一方、ブラックリストに載るというようなデメリットがあります。メリットデメリットを理解したうえで、任意整理するかどうか判断しましょう。
任意整理に応じない業者一覧は?
任意整理に応じてくれない業者は多く、一覧にするのは難しいです。しかし、誰もが知っている大手の銀行や消費者金融・カード会社は、任意整理に応じることがほとんどです。中小企業が運営している、いわゆる「街金」からの借り入れは、任意整理できない可能性が高まります。
まとめ
任意整理はメリットもある一方、デメリットも少なからずあります。それを理解したうえで、任意整理をしないという選択をする方もいるでしょう。
「任意整理をしなければよかった。」と後悔しないように、まずはご自身の状況を整理し、判断が難しければ弁護士に意見を求めるのもひとつの手です。
ネクスパート法律事務所では、債務整理のご相談を無料で受け付けておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。