任意整理の減額例|減額される仕組みと金額をご紹介

任意整理とは、債権者と債務者による話し合いで解決する債務整理の方法です。
自己破産や個人再生とは異なり、手続きの対象にする債権者を自分で選べます。
そのため、次のような事情がある場合には任意整理が有効です。
- 保証人がついている借金があるが保証人に請求されたら困る
- 車のローンがあるが車を没収されたくない
では、任意整理をすると、借金はどのくらい減額できるのでしょうか?
この記事では、次の点を解説します。
- 任意整理の減額例
- 任意整理で借金が減額される4つの仕組み
- 任意整理で減額になる対象
任意整理を検討している方は、ぜひ参考になさってください。



現在 | 任意整理後 | ||
---|---|---|---|
返済期間 | 年か月 | 3年0か月 | 5年0か月 |
返済回数 | 回 | 36回 | 60回 |
毎月の返済額 | 円 | 円 | 円 |
返済総額 | 円 | 円 |
※発生済みの経過利息・遅延損害金等は計算結果に含まれていません。より正確な結果を知りたい場合は、電話または相談フォームからご相談をご予約下さい。
※シミュレーション結果に関するお問い合わせにはご対応致しかねます。
※個人再生のシミュレーションはできません。
※住宅ローンや奨学金など、低金利・長期返済の借り入れ分についてはこの限りではありません。
※所得税・住民税等の公租公課、健康保険料、年金等は債務整理の対象にすることができません。
目次
任意整理の減額例
任意整理は、利息や遅延損害金をカットすることで減額を図ります。
ここでは、任意整理の減額例を解説します。
次の具体例で考えてみましょう。
- 借金残高:300万円
- 返済期間:5年
借金は、完済するまで利息がつきます。利息制限法で定められた金利15%で計算すると、返済額は以下のとおりです。
- 毎月の返済額:約7万円
- 5年間の利息:約125万円
- 返済総額:約425万円
任意整理をするとどうでしょうか。
通常、和解成立日からの利息をカットできます。300万円を5年間で返済すると、返済額は以下のとおりです。
- 毎月の返済額:5万円
- 5年間の利息:0円
- 返済総額:300万円
任意整理をしなければ支払わなければならなかった将来にかかる利息125万円をカットできます。
利息制限法とは
ここで、利息制限法についてご説明します。
利息制限法とは、金銭の貸し借りにかかる利息の上限を定めた法律です。利息の上限は、以下のとおりです。
貸付金額 | 利息 | 遅延損害金 |
①元本が10万円未満 | 年20% | 年29.2% |
②元本が10万円以上100万円未満 | 年18% | 年26.28% |
③元本が100万円以上 | 年15% | 年21.9% |
任意整理をした場合の借金減額シミュレーション
では、借金の額に応じて、任意整理した場合に、どの程度減額できるかをシミュレーションしてみましょう。以下、元利均等返済でシミュレーションします。
返済期間が1年の場合
【減額前】
借金の額 | 利率 | 1年 | ||
返済月額 | 返済総額 | 利息の総額 | ||
10万円 | 年18% | ¥9,167 | ¥110,011 | ¥10,011 |
50万円 | 年18% | ¥45,839 | ¥550,074 | ¥55,074 |
100万円 | 年15% | ¥90,258 | ¥1,083,094 | ¥83,094 |
300万円 | 年15% | ¥270,774 | ¥3,249,294 | ¥249,294 |
500万円 | 年15% | ¥451,291 | ¥5,415,495 | ¥415,495 |
【減額後】
借金の額 | 1年 | カットされた将来利息の額 | ||
返済月額 | 返済総額 | 利息の総額 | ||
10万円 | ¥8,333 | ¥100,000 | ¥0 | ¥10,011 |
50万円 | ¥41,667 | ¥500,000 | ¥0 | ¥55,074 |
100万円 | ¥83,333 | ¥1,000,000 | ¥0 | ¥83,094 |
300万円 | ¥250,000 | ¥3,000,000 | ¥0 | ¥249,294 |
500万円 | ¥416,667 | ¥5,000,000 | ¥0 | ¥415,495 |
返済期間が3年の場合
【減額前】
借金の額 | 利率 | 3年 | ||
返済月額 | 返済総額 | 利息の総額 | ||
10万円 | 年18% | ¥3,605 | ¥130,130 | ¥30,130 |
50万円 | 年18% | ¥18,076 | ¥650,721 | ¥150,721 |
100万円 | 年15% | ¥34,665 | ¥1,247,934 | ¥247,934 |
300万円 | 年15% | ¥103,995 | ¥3,743,842 | ¥743,842 |
500万円 | 年15% | ¥173,326 | ¥6,239,744 | ¥1,239,744 |
【減額後】
借金の額 | 3年 | カットされた将来利息の額 | ||
返済月額 | 返済総額 | 利息の総額 | ||
10万円 | ¥2,778 | ¥100,000 | ¥0 | ¥30,130 |
50万円 | ¥13,889 | ¥500,000 | ¥0 | ¥150,721 |
100万円 | ¥27,778 | ¥1,000,000 | ¥0 | ¥247,934 |
300万円 | ¥83,333 | ¥3,000,000 | ¥0 | ¥743,842 |
500万円 | ¥138,889 | ¥5,000,000 | ¥0 | ¥1,239,744 |
返済期間が5年の場合
【減額前】
借金の額 | 利率 | 5年 | ||
返済月額 | 返済総額 | 利息の総額 | ||
10万円 | 年18% | ¥2,539 | ¥152,326 | ¥52,326 |
50万円 | 年18% | ¥12,696 | ¥761,781 | ¥261,781 |
100万円 | 年15% | ¥23,789 | ¥1,427,378 | ¥427,378 |
300万円 | 年15% | ¥71,369 | ¥4,282,167 | ¥1,282,167 |
500万円 | 年15% | ¥118,949 | ¥7,136,958 | ¥2,136,958 |
【減額後】
借金の額 | 5年 | カットされた将来利息の額 | ||
返済月額 | 返済総額 | 利息の総額 | ||
10万円 | ¥1,667 | ¥100,000 | ¥0 | ¥52,326 |
50万円 | ¥8,333 | ¥500,000 | ¥0 | ¥261,781 |
100万円 | ¥16,667 | ¥1,000,000 | ¥0 | ¥427,378 |
300万円 | ¥50,000 | ¥3,000,000 | ¥0 | ¥1,282,167 |
500万円 | ¥83,333 | ¥5,000,000 | ¥0 | ¥2,136,958 |
※本シミュレーションにより試算される返済額等はあくまでも目安です。
返済期間が長ければ長いほど、利息が増えます。
5年返済にすると、利息は借金の額の半分近い金額に膨らみます。
このように、任意整理では、将来(和解日以降)に発生する利息をカットして、返済総額を減縮するメリットがあります。
任意整理で借金が減額される4つの仕組み
ここでは、任意整理で借金が減額される4つの仕組みを解説します。
- 経過利息の免除
- 法律の上限を超えた利息分の減額
- 遅延損害金の免除
- 将来利息・将来手数料の免除
ひとつずつ見ていきましょう。
①経過利息の免除
経過利息を免除してもらうことで、借金を減額できます。
経過利息とは
経過利息とは、任意整理を開始してから債権者との和解日までに発生する利息のことです。
実際には、最後に返済した日の翌日から利息が発生します。
弁護士が交渉を行う場合には、原則、利息制限法で計算し直した借金の元本をベースに返済案を提示し、この経過利息を免除してもらうよう交渉します。
経過利息はすべて免除される?
経過利息がすべて免除されるかどうかは、債権者によって異なります。過払金返還請求の影響を受け金融業者の経営状況が低迷したこともあり、経過利息はカットしない貸金業者も増えています。
②法律の上限を超えた利息分の減額
法律の上限を超えた利息を支払っていた場合、減額できることがあります。
利息制限法による引き直し計算
利息制限法の上限利率を超えた利息は、本来支払う必要がありません。このため、払いすぎた利息を取り戻せます。任意整理では、利息制限法を超える取引があれば同法の適正利率で引き直し計算を行い、払い過ぎている利息を元金に充当して借金を減らせます。
利息制限法の上限利率は年15~20%です。
しかし、過去には利息制限法の上限利率を超える、いわゆるグレーゾーン金利の取引が存在しました。これには別の法律(旧貸金業法)が関わっています。貸金業者が利息制限法を超えた利率を設定しても、旧貸金業法の上限利率(29.2%)を超えなければ刑事罰の対象とならなかったため、グレーゾーン金利で取引されていたのです。
なお、2010年6月に貸金業法が改正され利息が統一され、現在は利息制限法の上限利率を超える取引はありません。2010年6月以後の取引については、引き直し計算によって減額できるケースは少ないでしょう。
過払金が発生した場合は
引き直し計算の結果過払いがあったときは、交渉または訴訟により過払金返還請求を行います。
③遅延損害金の免除
遅延損害金を免除してもらうことで、借金を減額できます。
遅延損害金とは
遅延損害金とは、借金を滞納した場合にかかる損害賠償金の一つです。定められた期日に返済ができなかった場合、その翌日から遅延損害金が発生します。完済するまで支払えなかった元本に対して上限利率年20%の金額が上乗せされます。
弁護士が任意整理を受任した場合は、この遅延損害金の免除も債権者と交渉します。
遅延損害金はすべて免除される?
任意整理をされる方の中には、長期間にわたって滞納している方もいらっしゃいます。滞納が長引くほど遅延損害金は膨らむので、弁護士に任意整理を依頼した時点までの遅延損害金は免除しないという債権者もいます。
免除に応じるかは債権者によりますので、滞納がある場合は早めに弁護士に相談しましょう。
④将来利息・将来手数料の免除
将来利息・将来手数料を免除してもらうことで借金を減額できます。
将来利息とは
将来利息は、任意整理の和解日以降に生じる利息のことです。
将来手数料とは
将来手数料とは、任意整理の和解日以降に生じる金利手数料(クレジットカードの手数料等)のことです。
将来利息・将来手数料はすべて免除される?
任意整理は債権者との合意によるため強制力はありませんが、特段の事情がない限り将来利息・将来手数料は免除されるのが一般的です。
元本は原則カットされない!
任意整理では、上記4つの仕組みによって減額されますが元本を減額するのは難しいと考えてください。ただし、以下のような場合には元本からの減額交渉を行うケースもあります。
- 一部の債権者に過払いが生じ、回収した過払で他社の借金を一括返済できる場合
- 家族や親族等の経済的援助があり、一括での返済が可能な場合
こんな場合も任意整理できる?減額の対象となる?
借金以外も任意整理できるのでしょうか。ここでは、よくお問い合わせのある代表的なケースを例に減額の対象となるかを説明します。
携帯電話料金やスマホ機種代金は任意整理できる?
携帯電話の料金を滞納して利用を停止されたり、スマートフォンの機種代の割賦代金の残額を一括請求されたりするケースもあります。携帯電話料金・スマホの機種代金は任意整理できるのでしょうか。
携帯料金や機種代金も任意整理の対象となる
携帯料金や機種代金も任意整理の対象となります。
将来利息が免除される
この場合も携帯電話会社との交渉によりますが、借金と同様に将来利息は免除されるでしょう。
携帯料金や機種代金を任意整理する場合の注意点
携帯料金や機種代金を任意整理する場合、以下の点に注意しましょう。
長期分割払いには応じてもらえない
一般の任意整理では、3~5年の長期分割が可能ですが、携帯料金や機種代金の分割は、原則1年程度、長くても2年以内の分割になるでしょう。
使用中の携帯電話が使えなくなる
任意整理の対象とした携帯電話は、強制解約され使えなくなります。携帯電話を使うには新たに他の携帯電話会社との契約が必要になるでしょう。
機種代金を分割払いにできない
携帯電話料金・スマホ機種代金を任意整理した場合もブラックリストに載り(信用情報機関に事故情報が登録され)ます。新たに他社で契約する際に機種代金を分割払いにできないケースがあります。一括払いであれば契約できるでしょう。
奨学金は任意整理できる?
奨学金は任意整理の対象となるのでしょうか。
奨学金の利息は低金利
奨学金は利息が低い(利息制限法の上限より大幅に利率が低い)ため、任意整理による借金減額のメリットがほとんどありません。保証人がいる場合は保証人に迷惑をかけてしまうリスクの方が大きいでしょう。
任意整理以外の解決方法
独立行政法人日本学生支援機構の奨学金には、返済が厳しいときに利用できる制度があります。これらの制度の利用を検討されると良いでしょう。
- 返還期限猶予:返還を待ってもらう制度
- 減額返還:月々の返済額を少なくする制度
- 返還免除制度:精神若しくは身体の障害等で返済ができなくなった場合の免除制度
詳細はこちらでご確認ください。
家賃の滞納分は任意整理できる?
家賃を滞納した場合はどうしょうか。
家賃の滞納分も任意整理の対象
家賃滞納分も任意整理を行うこと自体は可能です。ただし、後述するリスクも生じます。
家賃の滞納分を任意整理する場合のリスク
家賃を滞納すると、最終的に強制退去と明渡しが求められるケースがあります(家主や管理会社によって異なります)。一般的な流れは次のとおりです。
- 1ヵ月滞納で直接の催促
- 2カ月滞納で保証人への連絡
- 3カ月滞納で退去・明渡しを請求
家賃を滞納した場合、家主から裁判・支払督促、差し押さえをされることもあります。
保証人にも迷惑がかかるので、家賃を任意整理する場合は十分な検討が必要です。
まとめ
任意整理では、過去に利息制限法の上限金利を超える利率での取引がある場合を除いて、原則元本を減額できません。
とはいえ、将来の利息や遅延損害金をカットすることで借金の額によっては大きな減額が期待できます。
利息がなければ何とか返済できそうな場合は任意整理で解決できるかもしれません。
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