期限の利益喪失通知とは|届いたらやってはいけないことと対処法
住宅ローンやカードローンなどの支払いを長く滞納すると、債権者から期限の利益喪失通知が送られてくることがあります。
期限の利益喪失通知が届いたら、この通知が何を意味するのか分からず、不安を覚えることでしょう。
この記事では、期限の利益喪失通知とは何か詳しく解説します。
期限の利益喪失通知が届いたらやってはいけないことや対処法も紹介しますので、今後の対応の参考にしてください。
目次
期限の利益喪失とは?
期限の利益喪失とは、一定の事由が発生したときに、期限の利益を失うことです。
期限の利益とは、契約で定められた期限まで借金を返済しなくていいという利益です。
例えば、住宅ローンやカードローンなどの契約では、「令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで毎月末日限り、〇万円ずつ支払う」といった形で分割返済が定められることが一般的です。
この場合、債務者(お金を借りた人)は、すぐに全額を返さなくても、約束した期日ごとに分割して支払えばよいという期限の利益を持っています。
期限の利益喪失とは、一定の事由が発生したときに、上記のような期限の利益を失うことです。金銭消費貸借契約では、債務者が分割金の支払いを怠り、その遅滞額が一定の回数分に達した場合に、期限の利益を失うという条項を設けられることが多くあります。
例えば、「債務者が、第〇項の分割金の支払いを2回分以上怠ったときは、当然に期限の利益を失い、残額を即時に支払う」という約定の場合、期限の利益を喪失すると、借金の残額を一括で返済しなければなりません。
どのような場合に期限の利益を喪失する?
期限の利益は、法律や契約書に定められた事由が発生した場合に喪失します。
債務者が期限の利益を喪失する事由について、民法第137条は以下のとおり定められています。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
- 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
もっとも、これらの事由が適用される段階では、すでに債務者の信用状態は著しく悪化しているため、債権回収は困難なケースが多いです。そのため、実務では、債務者の信用状態が悪化した段階で債権者が債権回収に着手できるよう、金銭消費貸借契約書などの契約書に期限の利益喪失条項を設け、より幅広い事由を定めていることが一般的です。
具体的に、契約上の喪失事由として、以下のようなことが挙げられます。
- 毎月の返済日までに支払いができなかったとき
- 任意整理や個人再生などの債務整理をしたとき
- 差押さえや仮差押さえされたとき
- 債務者が死亡したとき
- 契約時の申告の虚偽が発覚したとき
- 債務者の住所が不明になったとき
- 債務者が暴力団などの反社会的勢力と判明したとき
- 手形の不渡りを出したとき
- その他信用状態が著しく悪化したとき
期限の利益を喪失するとどうなる?
期限の利益を喪失すると、債務者は分割払いの利益を失うため、残りの借金を一括で返済するよう求められます。
期限の利益喪失通知が届くのはすでに月々の分割払いが数カ月間滞っているときですから、一括での支払いは困難でしょう。
しかし、期限の利益喪失通知は、債権者がこれ以上債務者の返済を待てないと判断した最終的な意思表示であるケースが多いため、一括返済に応じられない場合は法的措置へと移行する可能性が高いです。
例えば、住宅ローンの場合は、保証会社による代位弁済が行われ、その後、自宅が競売にかけられる可能性が高いです。カードローンなどの場合は、裁判を起こされ、最終的には強制執行により給与や預貯金、自動車などの財産が差し押さえられる可能性があります。
期限の利益喪失通知が届いた場合にやってはいけないこと
期限の利益喪失通知が届いたら、放置してはいけません。
期限の利益喪失通知を放置すると、法的措置へと移行する可能性が高いです。最終的に給与や預金、不動産などの財産が差し押さえられるおそれがあります。
特に、住宅ローンの場合は自宅を担保にしているケースが多いため、期限の利益喪失通知を放置すると競売により自宅が売却される可能性が高くなります。
競売とは、入札形式で住宅を売却する方法です。落札されると強制的に引越しを余儀なくされます。競売により自宅を売却しても、売却金がローンの残額よりも低い場合、残った借金は引き続き一括返済を求められます。
期限の利益喪失通知が届いた場合、放置しても事態は悪化するだけです。
取り返しのつかないことになる前に、弁護士に相談の上、今後の対応を検討しましょう。
期限の利益喪失通知が届いた場合の対処法
期限の利益喪失通知が届いた場合の主な対処法として、以下の3つが挙げられます。
- 期限の利益喪失通知に記載された金額を一括で支払う
- 債権者と直接交渉して返済の猶予を求める
- 債務整理を検討する
以下で、詳しく解説します。
期限の利益喪失通知に記載された金額を一括で支払う
期限の利益喪失通知に記載された金額を、通知に記載された期日までに一括で支払うのが最も迅速かつ根本的な解決策です。
以下のような場合は、一括返済を検討しても良いでしょう。
- 返済に充てられる資金が手元にある
- 親族や知人からお金を借りられる
債権者と直接交渉して返済の猶予を求める
債権者と直接交渉して返済の猶予を求めることも方法の一つです。
通知に記載された期日までに一括で支払うのは難しいものの、具体的に「◯月◯日までに◯万円を払います」などと伝えられる状況であれば、返済時期の猶予や返済条件の変更を交渉できるかもしれません。
もっとも、交渉に応じてもらえた場合でも、遅延損害金を求められるなど、返済条件は悪くなる可能性があります。
なお、債権者との直接交渉や一部弁済は債務の承認とみなされるため、時効期間がリセットされるおそれもあります。過去の借金で時効の援用を検討している場合は、債権者に連絡する前に弁護士に相談することをお勧めします。
債務整理を検討する
返済が難しい場合は、債務整理を検討することをお勧めします。
債務整理とは、法律に基づいて借金の負担を軽減したり免除したりする手続きの総称です。
債務整理には、以下の4種類の方法があります。
| 手続きの種類 | 特徴 |
|---|---|
| 任意整理 | 任意整理とは、利息のカットや返済期間の延長等について債権者と直接交渉し、今後の返済方法を決める手続きです。 利息をカットしてもらえれば、支払い総額の大幅な減額が見込めます。 |
| 特定調停 | 特定調停とは、借金の返済が困難な債務者の経済的再生を図るための調停手続きです。裁判所の指定する調停委員のもとで債権者と債務者が話し合い、借金の減額や分割払いについて合意できた内容が調停調書に記載されます。 |
| 個人再生 | 個人再生とは、借金の返済が困難な状況であることを裁判所に認めてもらい、減額された借金を原則3年間で分割して返済する手続きです。裁判所が認めた再生計画どおりに返済すれば、残りの借金の支払いは免除されます(養育費・税金等の債務は除く)。 |
| 自己破産 | 自己破産とは、借金の返済ができない場合に、裁判所に申し立てをして、借金の支払義務を免除(免責)してもらう手続きです。 裁判所が免責を許可すれば、借金の支払いが免除されます(養育費・税金等の債務は除く)。 |
どの方法で債務整理をすべきかは、借金の総額や返済に充てられる金額など、置かれている状況により異なります。
ご自身の状況に応じて適切な手続きを選択することが大切ですので、債務整理をするなら弁護士のサポートを受けることをお勧めします。
期限の利益喪失通知が届いたら弁護士への相談を勧める理由
期限の利益喪失通知が届いたら、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
弁護士への相談・依頼を勧める主な理由は、以下の2つです。
- 督促・取り立てが止まる
- あなたの状況に応じた最善の解決策をアドバイスしてもらえる
以下で、詳しく紹介します。
督促・取り立てが止まる
督促・取り立てが止まります。
弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に対して受任通知を送付します。この通知が債権者に届いた時点で、多くの場合、債権者からの督促や取り立て行為はストップします。
精神的な苦痛から解放されるため、冷静に今後の解決策を検討する時間と心の余裕が生まれるでしょう。
あなたの状況に応じた最善の解決策をアドバイスしてもらえる
あなたの状況に応じた最善の解決策をアドバイスしてもらえます。
弁護士に依頼すれば、借金総額や収入、資産状況などを総合的に考慮し、どのように解決すべきか最善の方法を提案してもらえます。
最適な方法を選択できるため、安心して解決を図れるでしょう。
まとめ
期限の利益を喪失すると、住宅ローンやカードローンなど分割返済している借金を一括で返済しなければなりません。
期限の利益喪失通知に記載された期日までに支払いができない場合、最終的に自宅や財産を差し押さえられるおそれがあります。
借金の一括返済が難しい場合は、できるだけ早い段階で弁護士へ相談し、解決方法についてアドバイスを得ることをお勧めします。
借金問題の解決を弁護士に依頼したいとお考えなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
初回相談は30分無料です。手遅れになる前に、解決への第一歩を踏み出してください。



