連帯保証人は支払いを拒否できる?家族への影響や払えない場合の対処法
自分が誰かの借金の連帯保証人になっている状態で、借りた本人が返済を続けられなくなったとします。その場合、連帯保証人が責任を取ることになり、借主本人に代わって返済をすることになります。
連帯保証人としてサインをすることは、実質、借金を負うことと同じであり、責任重大です。安易に連帯保証人になってしまった場合、支払いを拒否したくても出来ない可能性が高いので注意しましょう。
ここでは、連帯保証人が支払いを拒否できるのか、支払いを拒否できるケースや、対処法などを紹介します。
目次
連帯保証人に来た請求の支払いは拒否できる?
まず、今回の重要部分である、連帯保証人は支払いを拒否できるか?について説明します。
連帯保証人は支払いを拒否できない
結論、連帯保証人は借金の支払いを拒否することができません。例え、主債務者(借主)が返済できる状況であってもです。
通常は、主債務者が返済しない、もしくはできないのを確認してから連帯保証人に請求を行います。主債務者が返済期日を守っているのであれば、わざわざ連帯保証人に請求をする必要はないからです。
しかし、主債務者の返済が遅れがちであったり、「すぐにでも返済を求めたい」というようなケースでは、返済期日を過ぎてすぐに、主債務者より先に連帯保証人に返済を求めることもありえます。
このように、連帯保証人の責任は非常に重いのです。
連帯保証人は債務者と同じ立場にある
連帯保証人の立場は、債務者本人と同じにあります。つまり、実質、自分でお金を借りたのと変わらない状況だといえるでしょう。
ですので、借主本人が支払えなくなれば、連帯保証人に請求が行きます。
これにより、多額な借金を背負う可能性もありますので、連帯保証人になる場合は、「最悪、借金を肩代わりすることになっても構わない」という覚悟を持ってから契約する必要があります。
連帯保証人と保証人の違い
連帯保証人と保証人の違いを表にまとめます。
連帯保証人 | 保証人 | |
催告の抗弁権 | × | 〇 |
検索の抗弁権 | × | 〇 |
分別の利益 | × | 〇 |
保証人に認められた上記3つの権利について説明します。
- 催告の抗弁権:自分(保証人)に請求する前に、まずは債務者本人へ請求をさせる権利
- 検索の抗弁件:債務者本人に借金を返済できる資力がある場合に、保証人としての返済を拒否できる権利
- 分別の利益:保証人が複数人いる場合、借金総額のうち、保証人の人数分で割った金額だけの責任を持てばよい権利
上記3つは、保証人には認められた権利ですが、連帯保証人には認められていません。
分別の利益の具体例は、債務者本人が100万円を借りている状態で、保証人が2人いたとします。通常の保証人であれば、50万円ずつを2人で保証すればよいですが、連帯保証人の場合、どちらも100万円の保証をしなければなりません。
これは、連帯保証人2人で、計200万円を返済しなければいけない、という意味ではありません。2人いる連帯保証人のうちの片方だけに100万円の請求が来たとしても、それを拒否できない、という意味です。
連帯保証人が支払いを拒否できるケース
上記で、連帯保証人の責任は非常に重く、債権者から支払いを求められたら、基本的に拒否することができない、とお伝えしました。
ですが、どんなケースでも必ず支払いをしなければいけないわけではありません。例外として、連帯保証人が支払いをしなくてもいいケースがありますので、それを紹介します。
知らないうちに連帯保証人になっていた
自分の知らないところで勝手に連帯保証人にされていたケースです。
連帯保証人は、契約書にサインし、印鑑を押すだけで簡単に成立してしまいます。ですので、主債務者が連帯保証人の部分を勝手に記入するなどして、気づかないうちに連帯保証人にされてしまうこともありえます。
例えば、夫の借金に関しては、妻が勝手に連帯保証人にされていたり、親の借金に関して、子が勝手に連帯保証人にされるケースなどはよくあります。
こういったケースでは、連帯保証人になっていたとしても、返済をする必要がありません。
とはいえ、「私は勝手に連帯保証人にされた、この契約は無効だ」と債権者に主張しても聞き入れてもらえず、法的措置を取られてしまう可能性もあります。
その場合、こちらも根拠を交えて反論し、連帯保証人になる意思がなかったことを証明しなければいけません。実際に裁判になった場合、100%勝訴する保証もありませんので、自分が連帯保証人にされているとわかった時点で、早めに弁護士に相談した方がいいでしょう。
時効が成立している
借金の返済期日を超えてから5年を経過すると、時効を迎えます。
そして、時効を迎えたことを債権者に主張することで、正式に時効が成立し、借金の返済を免除されることがあります(時効の援用)。
時効が成立した際に、返済をしなくてよくなるのは、債務者本人だけではありません。連帯保証人も同様です。
時効が成立するには、債権者側は返済を求めず、債務者側が返済を求めずの状態で5年以上継続する必要があります。
その間に、少しでも借金を返済してしまったり、返済の意思を見せてしまうと、時効のカウントがリセット(時効の更新)され、また1日目から数えなおすことになるため注意しましょう。
また、自分では時効を迎えたつもりでも、実際には時効を迎えていないこともあるので、時効の援用を検討している人は弁護士に相談しましょう。
時効について詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
詐欺や脅迫で連帯保証人になった
騙されたり、脅されたりして連帯保証人にさせられた場合、それは無効になります。
例えば、騙されたり脅されたりして連帯保証人になってしまうケースには、以下のようなものがあります。
- 借金の連帯保証人であることを隠して、別の契約を装ってサインをさせられる
- 契約の内容や重要事項を隠したうえでサインをさせられる
- サインをしないと家族に危害を加える、などと脅されてサインをしてしまう など
こういった、詐欺や脅迫によってされたサインはあとから取り消すことができます。
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
【引用:民法96条 – e-gov】
ただし、心理的には騙された気分でも、自分の意思で連帯保証人になった場合には取り消すことはできません。
例えば「絶対に自分で返済するから、絶対に迷惑をかけないから連帯保証人になって欲しい」などとお願いされたパターンです。
連帯保証人に来た請求が払えない場合はどうなる?
連帯保証人は、主債務者が払えなかった借金を肩代わりしなければなりません。しかし、連帯保証人も支払いができなかったとき、一体どうなるのでしょうか。
財産を差し押さえられる
債権者は、主債務者に支払い能力がなければ、当然、連帯保証人に対して請求を行います。
連帯保証人も支払いができないままになってしまうと、債権者は、法的措置を取ってくる可能性があるでしょう。
具体的には支払督促といわれる手続きや、通常の裁判などです。法的措置を取られた後も支払いができなければ、最終的には差押えを受けることになります。
具体的には、連帯保証人が所有する財産を差押えて換金したり、給料を差押えるなどして、債権者への返済に充てます。
自己破産も視野に入る
連帯保証人も返済が出来ない場合、ただ債権者からの連絡を無視したりするのはおすすめしません。
債権者から「返済する気がない」と判断されると、取り立ての連絡が激しくなったり、法的措置を取られたりして、こちらも無駄な手間や弁護士費用などを捻出しなければならない可能性が出てくるからです。
どう頑張っても返済ができないようであれば、自己破産の手続きを検討しましょう。自己破産は、破産法にのっとって行う手続きで、裁判所が認めれば借金の返済が免除されます。
返済しなければならない金額が多すぎたり、自身の収入が少なかったりすると、結果として、自己破産の選択肢がない可能性もあります。
連帯保証人の方が確認すべきこと
連帯保証人としての支払いが避けられそうにない場合、以下の内容を確認し、自分にできることがないか考えましょう。
- 求償権の行使:自分が連帯保証人として肩代わりした分を、他の連帯保証人や主債務者に請求すること
- 分割での返済:債権者と交渉し、分割での返済を認めてもらうこと
- 担保の売却:連帯保証人が所有する財産(担保)を売却することで、支払いの負担を軽減する
- 債務整理をする:債権者と交渉したり、法律を力を使ったりして、借金問題を解決すること
それぞれについて、詳しく説明します。
求償権の行使
連帯保証人には求償権があります。求償権とは、連帯保証人として支払った分のお金を、他の連帯保証人や、主債務者に請求できる権利のことです。
主債務者に対する請求
主債務者が借金を返済できなくなった場合、それは連帯保証人が返済しなければなりません。しかし、連帯保証人が返済(肩代わり)した分に関しては、あとから主債務者に請求をすることができます。
例えば、主債務者が抱えている借金100万円を連帯保証人が支払った場合、連帯保証人は、主債務者に対して、その100万円の返済を求めることができるのです。
ただし、主債務者は借金の返済ができるほどの資力がない状態ですので、速やかに肩代わり分を支払ってくれるとは考えにくいでしょう。
どうしても支払って欲しい場合には、主債務者と交渉したり、場合によっては法的措置を取ることも考えられます。
また、主債務者が自己破産した場合、連帯保証人は求償権を行使することができませんので注意しましょう。
他の連帯保証人に対する請求
連帯保証人が複数人いる場合、他の連帯保証人に対して、肩代わり分の請求を求めることができます。これを分担求償権といいます。
例えば、主債務者の借金が300万円、連帯保証人が3人(A,B,C)いたとします。
Aが1人で300万円を債権者に返済した場合、AはBとCに対して100万円ずつ請求することができます。これで連帯保証人1人当たりの負担が100万円ずつとなり、Aの負担が減ります。
債権者がA,B,Cに対して最初から100万円ずつ請求してきたのであれば問題はありませんが、実際には、まず最も資力のある1人に全額の請求を迫ってくる可能性があります。これに関して、連帯保証人は支払いを拒否することができません。
債権者に対しての返済を済ませたあと、他の連帯保証人に対して、借金を頭数で割った金額を請求する権利があります。
主債務者に対して求償権を行使するケースと同じく、支払いを拒否されてしまった場合には、当事者同士て交渉・話し合いをしたり、最終手段として法的措置を取ることも考えられます。
分割での返済
債務者本人は分割払いでの契約を結んでいたとしても、保証人および連帯保証人は分割払いの契約になっていないことがあります。
例えば、契約者本人が借金をしばらく滞納したりしたときに、連帯保証人が一括での返済を求められる可能性があるのです。
連帯保証人に、一括払いできるほどの資力があるのであれば話は別ですが、そうでない場合は、債権者と分割払いの交渉をしましょう。
債権者としても、無理に一括払いの返済を迫ったことで、連帯保証人に逃げられてしまったりするよりは、分割払いで返済してもらった方が安全です。
分割払いの交渉は自分でもできますが、自信がなかったり、うまくいかなかったりした場合には、弁護士に相談しましょう。
担保の売却
連帯保証人としての支払いに困ったとき、連帯保証人が所有する不動産屋車両などの担保を売却することで、債務の一部、または全額を返済することが可能です。
重要なことなので、担保の売却は慎重に検討する必要がありますが、債権者との交渉を通じて合意を得ることができれば、返済の負担を減らすことができるでしょう。
債務整理
連帯保証人としての返済がどうしても困難な場合には、債務整理を行って借金を減額・もしくは返済免除しましょう。債務整理とは、弁護士に依頼に依頼するのが一般的です。
主に、以下の3種類の手続きがあります。
- 任意整理:裁判所を通さず、債権者と交渉し、借金を減額する手続き
- 個人再生:裁判所を通じて、借金を5~10分の1まで減額する手続き
- 自己破産:裁判所を通じて、借金をゼロにする手続き
それぞれ、手続きが認められる条件や、弁護士・裁判所に支払う費用、メリットデメリットなどが違います。
返済しなければいけない金額などによっても、自分がどの手続きを行うべきかは変わってくるので、まずは弁護士に相談をしましょう。
債務整理について詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
連帯保証人の支払いでよくある質問
最後に、連帯保証人の支払いでよくある質問を紹介します。
家賃滞納の支払いを連帯保証人は拒否できる?
連帯保証人は、家賃滞納の支払いを拒否することができません。連帯保証人は、主債務者(借主)と同じ責任を負っているため、本人が家賃を払えなくなったら、当然、連帯保証人が支払うことになります。
ただし、自分が連帯保証人であることを知らなかったなどのケースでは、例外として、支払いを拒否できる可能性もあります。
連帯保証人は解除できる?かかる費用は?
連帯保証人の契約を解除するのは基本的には難しいでしょう。債権者が認めてくれるのであれば話は別ですが、その確率は低いといえます。
解除はできませんが、代わりに連帯保証人になってくれる人と交代することは可能です。代わりに連帯保証人になってくれる人物を見つけ、債権者と交渉し、同意を得られれば、連帯保証人の立場から抜け出すことが可能です。
費用に関しては特にかかりませんが、弁護士に相談する場合などは、相談料などがかかる可能性があります。
連帯保証人が差し押さえられたら家族への影響は?
連帯保証人が差押えられたら、連帯保証人の家族にも影響が及ぶ可能性があります。
例えば、連帯保証人名義の財産(家や車)などの財産が差押えられたら、引っ越しをしなければならなくなったり、家族の移動手段が変わってしまったりする可能性があります。
差押えを避けるためには、債権者が法的措置を取る前に、交渉などをする必要があるでしょう。
まとめ
連帯保証人は、お金を借りた本人と同じ責任を持ちます。借りた本人が返済できなくなってしまったら、連帯保証人が返済をすることになります。
知らないうちに連帯保証人にされていた、などのケースでなければ、連帯保証人としての支払いを拒否する方法はありません。
連帯保証人にできることは、以下の4つです。
- 求償権を行使して、主債務者や他の連帯保証人に肩代わり分を請求する
- 債権者に対して分割払いの交渉をする
- 担保(自身の財産)を売却して返済の負担を軽くする
- 債務整理をして借金問題を解決する
4つの中でも、債務整理は特に有効で、借金を直接的に減らしたり、返済を免除することができます。返済が困難であれば、債務整理を検討しましょう。
連帯保証人としての借金についてお悩みがある場合、弁護士に相談するのがおすすめです。相談者の状況に合わせてベストなアドバイスをくれます。
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