自己破産による個人事業主・自営業者への影響とは? - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

自己破産による個人事業主・自営業者への影響とは?

個人事業の経営がうまくいかず、取引先への支払いや借金の返済ができなくなると、個人事業主の生活そのものも困窮するおそれがあります。

そのような場合、自己破産をして借金を整理し再スタートを切る選択も考えらえるでしょう。

自己破産を検討している個人事業主の方の中には、事業の継続を希望する方もいらっしゃいます。自己破産が事業にどのように影響するのかが決断のポイントにもなるでしょう。

この記事では、以下の点を解説します。

  • 個人事業主・自営業者の自己破産
  • 個人事業主が自己破産すると店舗・売掛金・従業員はどうなる?
  • 自己破産後の個人事業継続の可否

自己破産を検討しておられる個人事業主・フリーランスの方は是非ご参考になさってください。

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個人事業主・自営業者の自己破産

個人事業主・自営業者の自己破産について、ここでは次の2つを解説します。

  • 個人事業主の自己破産でも同時廃止になる?
  • 自己破産における個人事業主と非事業者との違い

個人事業主の自己破産でも同時廃止になる?

自己破産には管財事件と同時廃止事件があります。個人事業主の破産はどちらの手続きになるでしょうか。

個人事業主の破産は原則管財事件になる

個人事業者の場合、管財事件として取り扱われるのが原則です。個人事業主は、一般に事業用の財産や権利を有しているため、破産管財人による詳細な調査が必要だからです。

弁護士が代理人に就いている場合は、少額管財として取り扱われるのが一般的です。

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個人事業主の破産で例外的に同時廃止になるケース

以下に該当するケースでは、同時廃止になる場合があります。

  • 取引先が1社だけの場合
  • 在庫や事業用資産がほとんどない場合

ひとつずつ説明します。

取引先が1社だけの場合

自営型テレワーカーのように、事業の形態が1社のみとの取引で雇用される場合と大差がない場合は、同時廃止になる可能性があります。

在庫や事業用資産がほとんどない場合

一人親方のように、店舗を持たず事業用資産もほとんどない場合は、同時廃止になる可能性があります。

上記に該当するケースでも、同時廃止の要件を満たさなければ管財事件になる可能性があります。

自己破産における個人事業主と非事業者との違い

個人事業主と非事業者の違いには、主に次の2点が挙げられます。

  • 提出を求められる書類が増える場合がある
  • 未払給与が非免責債権として残る

提出を求められる書類が増える場合がある

個人事業主は、非事業者の必要書類に加えて、事業に関する書類を提出しなければなりません。個人事業主と非事業者の提出書類の違いを、自己破産の標準的な提出書類で見てみましょう。

  個人事業主 非事業者(給与所得者・無職)
共通 ①預金通帳、取引明細

②保険証券、解約返戻金証明書

③自動車検査証(車検証)、自動車保険の保険証券

④不動産の権利証、登記事項証明書、固定資産税評価証明書

⑤賃貸借契約書、火災保険証券

⑥有価証券

⑦住民票

⑧家計収支票

※①~⑥は該当する財産を所有している場合

非共通 ⑧確定申告書

⑨事務所・倉庫・工場等の賃貸借契約書、火災保険証券

⑩従業員の給与明細、賃金台帳、従業員名簿、退職金規程

⑪現金、預金出納帳、手形・小切手帳

⑫売掛台帳、請求書控、納品書

⑬受取手形・小切手

⑭リース契約書

※⑨~⑭は該当するものがある場合

⑧給与明細書、源泉徴収票又は所得証明書

※必要書類は、事案により追加で提出が必要な場合もあります。

未払給与が非免責債権として残る

自己破産では免責されない債権(非免責債権)があります。非免責債権の具体例は次のとおりです。

  • 税金
  • 国民年金保険料、国民健康保険料
  • 婚姻費用・養育費など
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 罰金
  • 従業員の給与

個人事業主の場合、従業員の給与は免責されません。従業員や未払給与の扱いは、後述します。

個人事業主が自己破産すると店舗・売掛金・従業員はどうなる?

個人事業主が自己破産すると店舗・売掛金・従業員はどうなるのでしょうか。ここでは、個人事業主の自己破産による事業への影響を説明します。

店舗の賃貸借契約は解約される可能性が高い

自己破産すると、店舗の賃貸借契約は解約される可能性が高いです。

所有している場合も、差押禁止財産や自由財産を除き、一定額以上(概ね20万円以上)の価値のある財産は、換価処分の対象となります。自宅兼事務所(店舗)の場合も、原則として換価処分の対象となります。

リース物件の返却と公共料金の解約が必要

リース物件の返却

リース物件が残っている場合は、返却が必要です。自己破産申立後、破産管財人に引き継いで物件を返却するのが適切です。ただし、リース債権者から早急に返還を求められた場合は、申立前の段階で返却することもあります。

公共料金の解約

事務所または店舗の明け渡しに伴い、賃貸物件で使用していた公共料金を解除します。次に例を挙げる契約がある場合は、解約手続きが必要です。

  • 電気
  • ガス
  • 水道
  • 固定電話
  • インターネット

破産手続開始決定後の契約に基づき発生した売掛金は処分の対象外

売掛金は、その請求権が発生した時点が破産手続開始決定前か後かで取り扱いが異なります。

以下画像の回収時期(A)、(B)、(C)を参照しながら説明します。

(A)開始決定前に回収済みの売掛金は処分の対象外です。ただし、預金や現金として残っている場合は財産として評価されます。

(B)開始決定時点で売掛金請求権が発生しているが回収未了の場合、当該売掛金請求権は処分の対象です。

(C)開始決定後の契約に基づき生じた売掛金請求権は、処分の対象外です。回収した売掛金は、個人事業主が自由に使えます。

つまり、売掛金債権の発生と売掛金の回収が開始決定をまたぐ場合は、処分の対象となります。

従業員の給与の扱い

従業員の未払給与や退職金は以下のように扱われます。

  • 開始決定前3か月間の給与は財団債権となる
  • それ以外の給与は優先的破産債権となる

財団債権とは、破産手続外で破産者の財産(破産財団)から随時弁済される債権です。つまり、開始決定前3か月間の給与は破産手続外で随時弁済されます。それ以外の部分についても、破産手続で優先的に弁済されます(優先的破産債権)。

いずれも他の債権より優先的に支払われる取り扱いですが、実際には未払給与を満額支払えるケースはほとんどありません。破産財団が少ない場合、従業員の未払給与を全額支払えない場合もあります。

未払賃金の立替払制度

破産者の従業員の未払給与を確保するための制度として、独立行政法人労働者健康福祉機構の未払賃金の立替払制度があります。個人事業主及び従業員が以下要件に該当する場合、この制度を利用できます。

個人事業主の要件は次のとおりです。

  • 労災保険適用事業であって、かつ、1年以上当該事業を継続したこと
  • 法律上の倒産または事実上の倒産をしたこと

労働者側の要件は次のとおりです。

  • 破産手続開始等の申立て6か月前の日から申立ての日を挟んで2年間の間に当該会社を退職したこと
  • 破産手続開始の決定等の日の翌日から2年以内に立替払請求があること

従業員にも生活がありますので、給与が支払えそうにない場合は、未払賃金立替制度の告知をおすすめします。従業員の反発を避けられ、個人事業主の方が「従業員に迷惑をかけて申し訳ない」と感じる心理的な負担も軽減できるでしょう。

自己破産後の個人事業継続の可否

個人事業主が自己破産すると、その後、事業は続けられるでしょうか。ここでは、自己破産後の個人事業継続の可否について解説します。

個人事業主の自己破産後は事業の継続が困難

自己破産前の事業を継続するのは困難です。

破産後に個人事業・自営業を継続できない理由

自己破産後は、個人の財産・の事業用資産(自由財産を除く)が原則処分されるので、事業を継続できるケースは少ないでしょう。

自己破産では、原則として、自由財産以外の財産は処分しなければなりません。

自由財産は次の5つです。

  • 99万円以下の現金
  • 差押禁止財産
  • 新得財産(破産手続開始後に取得した財産)
  • 破産財団から放棄された財産
  • 自由財産拡張された財産

個人事業者の場合は、個人の財産以外にも事業用の資産・財産も自由財産に該当しない限り処分されます。

事業用の資産・財産の代表的な例は以下のとおりです。

  • 車・バイク
  • 所有不動産(営業所・店舗・倉庫・工場)
  • 賃借物件の保証金・敷金
  • 機械・設備
  • 什器・備品・工具
  • パソコン
  • 商品在庫
  • 売掛金・貸付金
  • 有価証券・出資金

事業そのものに換価価値がある場合は、破産管財人が当該事業を譲渡(換価)することもあります。この場合、事業継続は不可能となります。

破産後も個人事業・自営業を継続するためには?

自己破産後の事業継続には以下の点もポイントとなります。

売上げの確保

自己破産により事業用資産や売掛金債権も処分されると、売上を確保できない限り事業を継続できません。継続を希望する事業が以下のとおり身体ひとつでできる仕事の形態の場合は、売上を確保することで事業を継続できる可能性は比較的高くなるでしょう。

  • 自宅でできる(又は出張型)
  • 従業員を雇用していない
  • 仕入れが不要

新たな融資なしに事業を継続できる体制を

自己破産すると、5〜10年は新たな借金やクレジットカードの発行が困難です。信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリストに載る)ためです。

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このため、融資に頼らず手元資金で事業を継続できる体制を整える必要があります。国や自治体による補助金の活用を検討するのも有益です。

既存の個人事業を廃業し、新たに個人事業主として開業する場合、所定の要件を満たせば、以下の制度を利用できる場合があります。

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)|日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)

自由財産の拡張

事業用財産や売掛金は、原則として、自由財産拡張申立ての対象になりません。しかし、個人事業主の生活が困窮するなどの特段の事情がある場合は、例外的に拡張の対象になることがあります。

自由財産の拡張の申立ては開始決定後1~2ヶ月以内にしなければなりません。事業用資産や売掛金が生活や仕事に不可欠である場合は、なるべく早めに申立代理人・破産管財人に相談しましょう。破産管財人は裁判所の判断によって、拡張を希望する財産が認められない場合もあります。

個人再生も検討する

個人再生は、裁判所の認可を受けて借金を概ね5分の1に減額し、その金額を3年間(最長5年間)で分割返済する手続きです。減額後の借金を返済できる見込みがあれば、個人再生により借金を返済しながら事業を継続できる可能性もあります。

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まとめ

個人事業主で借金の問題を抱えている方の中には、事業を継続したいと考えている方も多いでしょう。自己破産後も事業を継続するのは基本的に難しくなりますが、任意整理や個人再生を利用することによって、借金を整理しながら事業を継続できる場合もあります。

個人事業主・フリーランスの方で自己破産を検討している方は、弁護士に相談することをおすすめします。自己破産を選択した場合でも、事業を継続できるかについて適切なアドバイスを受けられます。

当事務所は、債務整理のご相談は無料で受け付けております。お気軽にご相談ください。

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