任意整理のメリット・デメリット|一括返済・繰上げ返済の可否も解説
任意整理は、債権者との交渉により、返済方法を変更してもらう手続きです。
個人再生や自己破産に比べて手続きが柔軟ですが、デメリットもあります。
この記事では、次のとおり任意整理のメリット・デメリットを解説します。
- 任意整理のメリット・デメリット
- 任意整理後の一括返済・繰り上げ返済は可能?
- 一括返済・繰上げ返済のデメリット
任意整理後の一括返済についても解説しています。
任意整理を検討中の方だけでなく、任意整理後の一括返済・繰上げ返済を検討中の方も、是非ご参考になさってください。
目次
任意整理のメリット・デメリット
ここでは、任意整理のメリット・デメリットを紹介します。
任意整理の5つのメリット
任意整理の主なメリットは以下のとおりです。
- 交渉先を自由に選べる
- 将来利息・遅延損害金をカットできる
- 返済期間の延長により毎月の返済額を減らせる
- 財産を残せる
- 督促が止まる
ひとつずつ説明します。
交渉先を自由に選べる
任意整理は、交渉の相手方を自由に選べます。次のようなケースでも、借金を任意整理の対象から外すことで、人間関係のトラブルを回避できます。
- 保証人に迷惑をかけたくない
- 家族・友人からの借金は返済を続けたい
将来利息・遅延損害金をカットできる
任意整理では、基本的に和解日以降に発生する利息をカットできます。利率にもよりますが、これらをカットするだけでも返済総額が減少します。
返済期間の延長により毎月の返済額を減らせる
任意整理の標準的な返済期間は3~5年です。長期分割により毎月の返済額が減らせ、負担が軽減します。
財産を残せる
任意整理は、財産を手放さずに借金問題を解決できます。
住宅ローンや車両ローンの返済を約定通りに続け、他の借金を任意整理すれば、マイホームや車を手放す必要はありません。
督促が止まる
任意整理を弁護士に依頼すると、受任通知の送付により債権者からの督促が止まります。返済も一旦停止させるため、金銭的・精神的に余裕が持てるでしょう。
任意整理の4つのデメリット
任意整理の主なデメリットは以下のとおりです。
- 交渉が決裂することもある
- 原則として元本は減額できない
- 5年間はクレジットカード・ローン契約ができない
- 交渉先はもう利用できない
ひとつずつ説明します。
交渉が決裂することもある
任意整理は、当事者間の交渉による手続きで、法的な強制力はありません。債権者の合意が得られない場合は、交渉が決裂することもあります。
原則として元本は減額できない
任意整理は、原則として借金の元本をカットできません。借入元本が大きく完済の見込みがないケースでは、任意整理以外の解決方法を検討すべきでしょう。
5年間はクレジットカード・ローン契約ができない
任整整理すると、概ね5年間ブラックリストに載ります。その間は、クレジットカード・ローン契約ができません。
交渉先はもう利用できない
任意整理の交渉をした債権者は、ブラックリスト削除後も利用できない可能性があります。金融機関では、独自のデータベースに事故情報を保存しているからです(これを社内ブラックといいます)。社内ブラックになると、完済後何年経過しても審査に通らない可能性があります。
任意整理後の一括返済・繰り上げ返済は可能?
任意整理後は、交渉で合意した金額を月々返済します。まとまったお金ができれば、一括返済・繰り上げ返済もできます。
ここでは、一括返済と繰上げ返済の違いを説明します。
一括返済とは
一括返済とは、借入残高を1回で全て支払うことです。
繰り上げ返済とは
繰り上げ返済とは、毎月の返済に一定金額を上乗せして返済することです。
任意整理後の一括返済・繰り上げ返済のメリット・デメリット
ここでは、任意整理後の一括返済・繰り上げ返済のメリット・デメリットを紹介します。
一括返済・繰上げ返済のメリット
一括返済・繰上げ返済のメリットは次のとおりです。
- 借金を減額してもらえる可能性がある
- 事故情報の抹消が早まる
- 返済のストレスから解放される
ひとつずつ説明します。
借金を減額してもらえる可能性がある
一括返済前の債権者との交渉次第では、借金を減額してもらえる可能性があります。
債権者が早期に再権を回収できることをメリットと捉えて交渉に応じてくれれば、元本の一部が減額されることがあります。
ただし、任意整理ではすでに利息をカットしてもらっているので、全てのケースで減額に応じてもらえるとは限りません。
事故情報の抹消が早まる
一括返済・繰上げ返済すると、本来の期日より早く完済日を迎えられます。
任意整理すると、信用情報機関の事故情報が5年間残ります。債権者によっては、任意整理後の返済期間も金融事故として扱い、毎月事故情報を登録することがあります。この場合、完済から5年が経過するまで事故情報が抹消されません。
一括返済・繰上げ返済により、返済日が早まれば、分割返済した場合よりも事故情報の抹消が早くなる可能性があります。
返済のストレスから解放される
一括返済・繰上げ返済により完済すれば、返済のストレスから解放されます。借金のない生活は精神面のみならず人間関係や健康面にも良い影響を与えるでしょう。
一括返済・繰上げ返済のデメリット
一括返済・繰上げ返済のデメリットは次のとおりです。
- 生活に支障をきたす可能性がある
- 自己破産・個人再生への切り替えが難しくなる
- 期限の利益を失う
ひとつずつ説明します。
生活に支障をきたす可能性がある
一括返済には、まとまったお金が必要です。全て返済に回してしまうと、急な出費に対応できなくなります。
事故や病気で収入が途絶えると、再び借入に頼らざるを得なくなる可能性もあります。一括返済する場合は、万一に備えて一定のお金を残しておきましょう。
自己破産・個人再生への切り替えが難しくなる
一括返済・繰上げ返済後、状況が一変して自己破産・個人再生を検討せざるを得ないことがあります。そのようなケースでは、一括返済・繰上げ返済がその後の手続きで問題になることがあります。
一括返済・繰上げ返済時の資力や、債務総額によっては、次のようなリスクが生じます。
- 自己破産で免責を得られない
- 個人再生の弁済額が高額になる
特定の債権者に優先的に返済すると、偏波弁済とみなされるからです。
期限の利益を失う
一括返済すると期限の利益を失います。一括返済後、生活状況の変化等で資金繰りに困っても、一括返済を取り消すことはできません。一度返済すれば、やっぱり任意整理の合意内容に基づく分割返済に戻したいと思っても戻せません。
まとめ
任意整理のメリット・デメリットを解説しました。
他の債務整理に比べてデメリットは少ないですが、任意整理は全ての人に有効であるとは限りません。任意整理が自分に合った手続きか分からないときは、弁護士に相談しましょう。
任意整理後の一括返済・繰り上げ返済も、メリット・デメリットを踏まえて十分な検討が必要です。