ギャンブルによる借金も自己破産で免除される?手続上の注意点も解説
ご相談様の中には、「ギャンブルをしたことがあるから、自分は自己破産できないのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。
ギャンブルをしたことがあっても、収入の範囲内で楽しむ程度であれば、裁判所に咎められることはありません。自己破産で問題となるのは、ギャンブルで多額の借金を抱えたケースや財産のほとんどをギャンブルにつぎ込んだようなケースです。
ただし、ギャンブルが原因の借金も、裁判官の判断により、借金の免除が認められる可能性があります。
この記事では、自己破産とギャンブルの関係について、次のとおり解説します。
- ギャンブルによる借金も自己破産で免責される?
- ギャンブルを隠しても自己破産でばれる?
- ギャンブルが原因の場合は自己破産で同時廃止にならない?
- 裁量免責を認めてもらうためにすべきこと・注意点
- ギャンブルが原因で自己破産した場合の反省文の例文・サンプル
- ギャンブルが原因で自己破産による免責が認められなかった場合の対処法
ギャンブルで多額の借金を抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ギャンブルによる借金も自己破産で免責される?
ここでは、ギャンブルが原因の借金が自己破産で免責されるかどうかを解説します。
借金の原因がギャンブルの場合は免責されない可能性がある
ギャンブルによって多額の借金を抱えたり、ギャンブルに全財産を投げ売ったりした場合は、自己破産で借金の免除(免責)が認められない可能性があります。
破産法が規定する免責を認めない一定の事由(免責不許可事由)のひとつに、浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したことがあるからです。これにギャンブルが含まれます。
免責不許可事由に該当するのは、あくまでもギャンブルに給料や財産のほとんどを使い込んだり、ギャンブルのために多額の借金を抱えたりした場合です。小遣いの範囲内でギャンブルを楽しむ程度であれば、この免責不許可事由には該当しません。
裁判所の裁量により免責を受けられることもある
免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量により免責が許可される可能性があります。
免責が認められなければ、自己破産の目的である経済的更生を図ることが困難となります。そのため、破産法は免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所が裁量によって免責を許可できる裁量免責を認めています。
借金の原因がギャンブルや浪費の場合でも、裁量免責が認められるケースは少なくありません。
日本弁護士連合会が2017年に調査した1,238人のデータによると、ギャンブルが原因で自己破産した人は61人、2017年に免責不許可になった人は0.57%です。
ギャンブルが原因で自己破産した方の多くが裁量免責を認められています。
ギャンブルを隠しても自己破産でばれる?
免責が許可されないリスクを回避するためにギャンブルをしたことを隠しても、自己破産の手続きにおいて必ずバレます。
ここでは、ギャンブルを隠しても自己破産でバレる理由について解説します。
通帳や家計収支表からばれる
自己破産では、過去2年分の通帳のコピーや家計収支表を提出するため、それらの資料からギャンブルをしていたことがバレます。
例えば、口座振替サービスを利用して競馬をしていれば、通帳に購入履歴や当選金の入金履歴が残ります。通帳の履歴にギャンブルを疑わせる支出や家計収支表に不自然な点があれば、必ず指摘を受けます。
ギャンブル以外に支出したように見せかけても、他の資料と照らし合わせて整合性がなければ、厳しく追及されるでしょう。
ギャンブル専用口座の存在を隠しても、破産管財人は、債務者宛ての郵便物をチェックしたり金融機関に照会したりできるので、隠し通せません。
借金の取引履歴からばれる
自己破産の依頼を受けた弁護士は、各債権者に対して取引履歴の開示を求めます。この履歴を見れば、いつ、いくら借りたのかを確認できます。
頻繁に借り入れをしている場合は、ギャンブルや浪費の存在を疑われます。生活費に使ったと嘘をついても、収支状況や家族構成を鑑みて常識の範囲を超える支出があれば、必ず指摘され説明を求められます。
裁判所や破産管財人へ嘘をつくことも、免責不許可事由に該当します。免責不許可事由に複数該当すると、免責が認められなくなる可能性が更に高まります。
借金の原因がギャンブルでも、それを隠さず正直に打ち明けることが大切です。
ギャンブルが原因の場合は自己破産で同時廃止にならない?
自己破産には、次の2つの手続きがあります。
- 同時廃止事件
- 管財事件
ギャンブルが原因で自己破産した場合は、どちらの手続きで進められるのでしょうか。
ここでは、ギャンブル等の免責不許可事由がある場合の取り扱いについて解説します。
免責不許可事由がある場合は原則として管財事件となる
破産手続きを開始する際、免責不許可事由に該当することが明らかであれば、管財事件となります。
裁量免責を受けるためには、破産管財人による免責不許可事由の内容を調査、生活状況について指導監督等が必要だからです。
裁量免責を認めてもらうためにすべきこと・注意点
裁量免責を認めるかどうかの判断にあたり、裁判所は次のような点を重視します。
- 免責不許可事由の性質や程度
- 破産手続きへの協力姿勢
- 破産者の反省の度合いと今後の決意の内容
- 生活再建策の具体的実現性
ここでは、裁量免責を認めてもらうために、最低限心がけたい4つのポイントを紹介します。
- 自己破産を決意した時点から一切ギャンブルをやめる
- 管財人の業務に協力する
- 反省文を書いて二度とギャンブルしない決意を示す
- 家計収支を見直し経済的再生に向けた努力や意欲を示す
ひとつずつ説明します。
自己破産を決意した時点から一切ギャンブルをやめる
借金問題を根本的に解決するためには、借金の原因を絶つことが大切です。自己破産してもギャンブルが辞められなければ、人生の再スタートは切れません。
自己破産を決意したら、その時点から一切ギャンブルをやめましょう。自己破産申立後もギャンブルをしていると、反省の色や更生の見込みがないと判断され、裁量免責を得られない可能性があります。
管財人の業務に協力する
破産管財人が選任されたら、破産管財人の業務に積極的かつ誠実に協力しましょう。
破産管財人は、裁判所が裁量免責を認めるかどうかの判断に際し、意見を述べる重要な役割を担っているからです。破産管財人が、破産者の事情や態度を調査し、免責を認めるのが相当と判断すれば、その旨を裁判所に報告してくれます。
破産管財人の業務に非協力的であったり、妨害したりすると、そのことが原因で免責不許可となる可能性があります。
反省文を書いて二度とギャンブルしない決意を示す
破産管財人は、生活態度や反省状況を確認するために、反省文の提出を求めることがあります。
反省文は、これまでの過ちを認め、債権者への謝罪や二度と同じことを繰り返さない決意を表明するための資料です。
反省文に嘘の内容を書いたり、曖昧な説明をしたりすると、反省の色が見られないと判断され免責が不許可となる可能性があるため、弁護士と相談して真剣に取り組みましょう。
家計収支を見直し経済的再生に向けた努力や意欲を示す
破産管財人は、以下の点を確認するために、家計収支表の提出を求めることがあります。
- 借金の原因となったギャンブルをやめているか
- 経済的更生に向けた努力や意欲を持っているか
借金の原因を認識して、過去の過ちを繰り返さないために生活態度や家計収支を改善していることを、客観的に示しましょう。
ギャンブルが原因で自己破産した場合の反省文の例文・サンプル
ここでは、反省文の書き方や例文を紹介します。
反省文の書き方
弁護士に依頼している場合も、反省文は自分で作成する必要があります。
反省文には決まった書式はありませんので、不安な方は弁護士に内容をチェックしてもらうと良いでしょう。
反省文は、反省の気持ちを表すため手書きで作成します。短文は避け、原稿用紙2枚程度のボリュームで作成しましょう。
以下の点を意識して過去の過ちを振り返り、自分の言葉で反省の気持ちや今後の生活への熱意を書くことが大切です。
- 初めて借金したときの事情
- 多額の借金を抱えたときの自分の行動や気持ち
- 借金を返済できなくなったことで債権者にどのような影響があったか
- 自己破産に至ったことについてどのように反省しているか
- 免責が認められたら今後どのように生活していくか
- 同じ過ちを繰り返さないためにどのような心構えを持っているか
例文やサンプルの丸写しはNG
反省文では、ここまで反省しているなら裁量免責を認めても良いと思ってもらえることが大切です。
どんなに立派な文章でも、丸写しや借りてきたような言葉では説得力がありません。
例文やテンプレートはあくまでも参考に留め、自分の気持ちを文章にしましょう。
反省文の一例
ギャンブルが原因で財産の大半を失い、借金を抱えたケースの反省文の一例を紹介します。
私は大学を卒業後、〇〇年に就職し〇〇の仕事を始めました。
入社当初は、勤務先の経営状況も順調でしたが、〇〇年頃から経営が悪化し、給料もボーナスも上がらなくなりました。家に帰っても妻や子供に合わせる顔がなく、ストレスが溜まる日々を過ごしていました。 そんなとき、友人に誘われて初めて競馬をしたところ、大儲けしました。 それから競馬にはまり、仕事や日常生活にストレスを感じると逃げるように競馬場に通うようになりました。競馬をしていると、嫌なことを忘れられました。 当初は、小遣いの範囲内で競馬をしていましたが、積み重なった負けを取り戻さなければならないと思うようになり、競馬場の近くの消費者金融でお金を借りてはつぎ込むことを繰り返しました。 当初は借金を順調に返済できていましたが、〇〇年頃から、返済のために新たな借金を繰り返すようになりました。 ついに、借りられる上限を超えてしまい、返済も苦しくなり競馬にあてるお金もなくなってしまいました。 今となっては、この時点で競馬をやめていればと強く反省していますが、私は自分の過ちに気づかず、夫婦で協力して貯めたマイホーム資金に手をつけました。競馬で大儲けすれば、今までの積り積もった負けを取り戻せて借金を返せると思い込んでいたからです。 しかし、現実はそんなに甘くありませんでした。貯金も底をつき、借金の返済ができなくなり消費者金融から毎日のように督促の電話が入るようになりました。 妻にも借金やマイホーム資金を使い果たしたことがバレてしまいました。当然、妻は激怒しましたが、その後、色々調べてくれて弁護士の先生のところに夫婦で相談に行きました。 先生は自己破産で解決できる可能性があるが、ギャンブルが原因なので免責が難しくなることを説明してくださいました。また、自己破産と並行してギャンブル依存症の治療も視野に入れた方が良いとアドバイスしてくださいました。 現在は、ギャンブルとは一切縁を切り、自分の行動や考え方の傾向を変えるために、ギャンブル依存症治療のカウンセリングを受けています。 カウンセリングにより、ギャンブルで生じた損を借りたお金で取り戻そうという甘い考えそのものが間違っていた気づくことができました。 今後は、生活を立て直してニ度とギャンブルや借金に手を出さないように日々努力をしたいと思います。 最後になりましたが、債権者の皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまったことを心からお詫び申し上げます。 誠に身勝手なお願いですが、今回だけは債権者の皆様にご容赦いただき、免責をお許しいただきたく伏してお願い申し上げます。 |
ギャンブルが原因で自己破産による免責が認められなかった場合の対処法
ここでは、ギャンブルが原因で裁量免責が認められなかった場合の対処法を解説します。
即時抗告を申立てる
免責が許可されなかった場合、破産者は即時抗告による異議申立てが可能です。
即時抗告は、免責不許可の通知を受けたときから1週間以内に、自己破産を申立てた地方裁判所を管轄する高等裁判所に対して申立てます。
抗告審で破産者の主張が認められれば、免責不許可決定が覆る可能性があります。
他の債務整理を検討する
即時抗告で免責許可決定が覆らなければ、他の債務整理を検討します。
個人再生
個人再生は、借金を概ね5分の1に減額し、3年~5年で分割返済する裁判手続きです。自己破産と違って借金の理由は問われませんので、ギャンブルが原因の借金がある場合も、条件を満たせば利用できます。
任意整理
任意整理は、債権者との交渉により返済方法を変更する手続きであり、借金の理由を問われません。債権者の合意さえ得られれば、ギャンブルが原因の借金も手続きの対象となります。
ギャンブル依存症の場合は自己破産と同時に治療をおすすめします
ここでは、ギャンブル依存症の治療や治療を受けた場合の自己破産手続きでの留意点を解説します。
ギャンブル依存症とは
ギャンブル依存症とは、自分の意思だけではギャンブルをやめられない状態になっていることです。依存症患者は、脳の前頭葉の活動に問題が生じていることを示す研究結果もあるため、病気の一つとして捉えましょう。
ギャンブル依存症を克服するためには、自己破産の手続きと並行して専門医のカウンセリングや治療を受けることをおすすめします。
治療を受けた場合は破産管財人に治療費の領収書や診断書を提出
ギャンブル依存症の治療やカウンセリングを受けた場合は、治療費等の領収書や診断書を破産管財人に提出しましょう。
過去の過ちを反省し、経済的更生を図るための努力をしていることを示す資料として有益です。
まとめ
ギャンブルが原因の借金がある場合、免責不許可事由に該当する可能性があります。ただし、免責不許可事由がある場合でも、裁量免責が認められることがあります。
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