FXによる借金で自己破産できるケース・自己破産できないケース
FX取引で借金をすると、自己破産できないのでしょうか?
FX取引のための借金は、免責不許可事由に該当し、原則自己破産できません。しかし、自己破産できる場合もあります。
この記事では、以下の点を解説します。
- FXによる借金も自己破産できる?
- FXによる借金で自己破産できない場合
- 自己破産を申し立てたらFXはできなくなる?
- FXによる自己破産の注意点
FXによる借金で自己破産を検討している方は、ぜひ参考になさってください。

借金の原因がFXの場合に自己破産するときは、裁量免責が得られるよう申し立てをしましょう。FXによる借金を破産したい方は一度ご相談ください。
FXによる借金も自己破産できる?
FX取引が原因の借金は自己破産できるのでしょうか。
ここでは、次の点を解説します。
- FXによる借金は原則自己破産できない
- FXによる借金が自己破産できない理由
- FXによる借金も自己破産できる場合がある
詳しく見ていきましょう。
FXによる借金は原則自己破産できない
FXや株取引による借金は、免責不許可事由に該当するので原則自己破産できません。
免責不許可事由とは
免責不許可事由に該当する行為がある場合、自己破産をしても借金の返済義務を免除してもらえません。
破産法では、次の免責不許可事由を定めています(252条第1項)。
- 1号:破産財団の隠匿・不利益処分・破産財団の減少行為
- 2号:不利益な条件での債務負担・不利益な条件での処分
- 3号:偏波弁済・非本旨弁済
- 4号:浪費・賭博その他射幸行為による債務負担
- 5号:破産申立前1年以内の詐術による借入
- 6号:事業や財産に関する帳簿等の隠滅・偽造
- 7号:虚偽の債権者名簿の提出
- 8号:裁判所の調査に対する説明の拒否又は虚偽の説明
- 9号:破産管財人等の職務への不正な妨害
- 10号:7年以内の免責・給与所得者等再生による再生計画の認可
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
[省略]
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
引用元:破産法252条第1項4号
FX取引は、性質上その他射幸行為に含まれると考えられています。射幸行為とは、賭博(とばく)やギャンブル性の高い行為を言います。FX取引は市場の価格変動を予測して売買する行為ですが、価格変動を予測することは困難である点で、ギャンブル性が高いと判断されます。
FXによる借金も自己破産できる場合がある
FXによる借金が破産原因となった場合、原則自己破産できません。しかし、裁判所の裁量により免責されるケースがあります。
裁量免責とは
免責不許可事由がある場合、裁判所は免責不許可を決定できます。しかし、それでは債務者が経済的更生を図る機会を失います。そこで、破産法252条第2項は、裁判所の裁量によって免責を許可する裁量免責を認めています。
裁量免責が認められる要件として、実務で重視される事情は主に次のとおりです。
- 不許可事由に該当する場合でもその事実が軽微である場合
- 債権者への配慮や返済への努力が見られる場合
- 借金ができた経緯に同情する余地がある場合
- 財産を維持(保全・保持)する努力が見られる場合
- 破産管財人の業務に協力的な場合
- 借金の原因を認識して反省・対策ができている場合
- その他免責の必要性が認められる場合
FXによる借金は同時廃止?管財?
破産の主たる原因がFXによる借金である場合は、管財事件として取り扱われます。
自己破産には、同時廃止事件と管財事件の2つがあります。
同時廃止事件となるのは、次の要件をいずれも満たす場合に限られます。
- 財産を処分しても破産手続きに必要な費用を払えない場合
- 免責不許可事由に該当しないことが明らかな場合
同時廃止事件の要件を満たさない次の場合は破産管財事件として取り扱われます。
- 財産を処分することで破産手続きに必要な書類を払える場合
- 免責不許可事由に該当することが明らかな場合
- 免責不許可事由に該当するかどうか調査が必要な場合
ただし、FX取引の動機や収益の使途によっては、同時廃止に持ち込める可能性もあります。個別の事情については弁護士に相談すると良いでしょう。
同時廃止事件と管財事件の詳細は、以下の記事でご確認ください。
FXによる借金で自己破産できない場合
ここでは、FXによる借金で自己破産できない(裁量免責が認められない)ケースを解説します。
自己破産手続中にFXをした場合
自己破産手続中にFXをすると、免責を受けられない可能性が高まります。
自己破産手続中に、借金の原因となったFX取引をすると、反省の色がないと判断されます。破産管財人に嘘をついてFX取引を継続した場合も、その行為自体が免責不許可事由となります。
過去の自己破産もFXが理由だった場合
過去にも自己破産をしており、破産原因が同一理由の場合、免責が認められにくくなります。「同じ失敗を繰り返している」「反省していない」と判断されるからです。
FX以外にも免責不許可事由がある場合
免責不許可事由に該当する事実が悪質である場合や、免責不許可事由が複数ある場合、裁量免責される可能性は低くなります。
FXによる自己破産の申立人が、多数該当する傾向がある免責不許可事由は次のとおりです。
- 偏波弁済(3号事由):特定の債権者(例:家族や友人)に返済すること
- 財産隠し(6号事由):財産を他人名義に変更する・高額のタンス貯金をする行為
7年以内に自己破産をして免責許可を受けている場合
FXの借金によるケースに限らず、過去7年以内に自己破産による免責や給与所得者等再生による再生計画の認可を受けている場合、自己破産できないと考えてよいでしょう。
自己破産を申し立てたらFXはできなくなる?
自己破産申立後や、手続終了後はFXができなくなるのでしょうか。
ここでは、自己破産申立後のFXについて解説します。
自己破産手続中のFX取引は厳禁!
自己破産手続中のFX取引はやめましょう。裁判所や破産管財人に反省していないと判断され、免責されない可能性が高まります。申立代理人に辞任されることもあります。
自己破産したらFX口座は解約しなければならない?
自己破産するとFX取引のために開設した口座はどうなるでしょうか。
裁判所の取り扱い
自己破産申立の際、過去2年分の預貯金口座の通帳又は取引明細を裁判所に提出します。FXの取引に利用している証券口座の取引明細も同様です。破産管財人がFX取引の内容を調査した結果、FX口座に残高がある場合は処分の対象となります。その場合、破産管財人においてFX口座を解約するケースもあります。
証券会社の取り扱い
自己破産申立そのものを理由に証券会社が口座を強制解約することはないでしょう。
ただし、証券会社によっては、長期間取引がない場合や短期間での集中取引による約款違反が認められる場合、口座が凍結・解約されるケースもあります。
自己破産したらFX口座を開設できない?
FX口座の開設の審査にブラックリストは影響しない
証券会社やFX業者は、一般的にFXの審査ではブラックリスト(信用情報機関の登録)をチェックしません。FXの審査では、口座開設申込時の申告内容(年収、金融資産の額、勤務先)をもとに判断します。このためブラックリストに載ることを理由に口座開設を断れることはないでしょう。ただし、他の理由で口座を開設できない可能性はあります。
自己破産手続中は口座開設も厳禁!
自己破産手続中は、FX取引のために口座を開設することもやめましょう。
取引の再開と同様に、反省していないと判断されます。また、破産管財人に口座を開設したことを隠していると、それ自体が免責不許可事由に該当することもあります。
FX口座の解約をおすすめする理由
自己破産手続中はFX取引の再開、口座の新規開設を控える必要があります。自己破産は、借金返済の免除よって破産者の経済的更生を図り、安定した生活を取り戻すための手続きです。同じことを繰り返さないよう、自己破産を機に、口座解約をおすすめします。
FXによる自己破産の注意点
ここでは、FXによる自己破産の注意点を説明します。
FXの取引履歴は申立前2年分が必要
自己破産手続きでは、申立前2年分の取引履歴を提出します。申立前に取引履歴を取り寄せておくと手続きがスムーズです。
解約済みの口座も履歴の開示が必要
取引履歴の提出義務は、解約済みの口座にも及びます。一般に、解約口座についても直近過去10年分の取引履歴は保存されています。申立前2年間に解約した口座がある場合は、取引履歴を取り寄せましょう。
裁量免責の反省文を書く場合がある
裁量免責の可否を判断する際、裁判所から反省文の提出を求められることがあります。裁判官は、申立人が真に反省しているかを重視します。反省文の提出が求められた場合は、自分の気持ちと正直に向き合い、自分の言葉で反省文を書くことを心がけましょう。
FXによる借金の自己破産は弁護士に相談を
FXによる自己破産は、裁量免責が認められる要件をよく理解して申し立てる必要があります。弁護士に自己破産を依頼すれば、免責不許可事由に該当する場合も、裁量免責が認められるようサポートを受けられます。
まとめ
FXが原因で借金を抱えた場合も、自己破産により免責を受けられるケースがあります。「FXで損失が出て借金を繰り返してしまった」「追証(証拠金の追加)のために莫大な借金を抱えてしまった」方は、なるべく早めに弁護士に相談することをおすすめします。