借金や税金の滞納による差し押さえ|解除方法や解除されるケースを紹介
差し押さえは、税金や借金の未払いが続くと行われる強制執行手続きです。具体的には預金や給与、不動産などの財産が取り立てられます。
このような状況に陥ると、生活に大きな影響を及ぼし、不安を感じる方も多いでしょう。
特に「差し押さえ後に財産は戻るのか」「解除の方法はあるのか」といった疑問を抱く人が多いです。
ここでは、差し押さえの基本的な仕組みや流れ、解除される条件や具体的な対応策について詳しく解説します。
差し押さえとは
まず、差し押さえが具体的にどんなものなのか解説します。
債権を強制的に回収する手続き
差し押さえとは、債権者が未払いの債権を回収するために、法律に基づいて債務者の財産を一時的に拘束する手続きです。
これは、税金や借金などの支払い義務を果たさない場合に、債務者が財産を隠したり使ったりできないようにする目的で行われます。
差し押さえは、行政機関や裁判所の指示によって行われるため、正当な理由なしに回避することはできません。
差し押さえた財産は、競売にかけたりして換金した後、税金に充てられたり、債権者に支払われたりします。
差し押さえたものがお金だった場合は、換金などの作業は行われません。
差し押さえの対象となる財産
差し押さえの対象は、現金や預金、不動産、車両、給与、売掛金など、多岐にわたります。
お金、もしくは売却すればまとまった財産になるものが、差し押さえの対象になると考えましょう。特に給与や預金は差し押さえの対象となりやすい財産です。
ただし、すべての財産が差し押さえの対象となるわけではありません。例えば、生活に必要な最低限の財産や法律で差押禁止とされている一部の財産は対象外です。
これには、生活費の確保が困難になる場合を防ぐための配慮が含まれています。
差し押さえの流れ
借金や税金を滞納してから差し押さえが行われるまでの流れを簡単に説明します。
- 督促状の送付: 債権者または税務署から支払いを促す書類が届く
- 催告書の送付: 支払い期限が過ぎても未払いの場合、再度の通知が送られる
- 差し押さえ予告通知: 差し押さえが行われる前に、最終的な警告が届く
- 差し押さえの実施: 財産や口座が実際に差し押さえられ、使用や引き出しが制限される
- 差し押さえた財産の換金: 差し押さえられた物や口座の中身が売却または現金化される
- 滞納税金や債務への充当: 換金された金額が債務に充てられる
このように差し押さえは、債務者にとって大きな負担となりますが、債権者にとっては正当な回収手段です。差し押さえを防ぐためには、早期対応が何よりも重要です。
差し押さえが解除されるケース
差し押さえは、債務者の財産を一時的に拘束する強制執行の一種ですが、特定の条件を満たせば解除される場合があります。
解除されるケースは、法律に基づいた手続きや、債権者と債務者間の交渉によるものなどさまざまです。
以下に、差し押さえが解除される主なケースを説明します。
差し押さえ過ぎた場合
差し押さえは、滞納している金額に見合う範囲で行われるべきですが、過剰な差し押さえが行われることもあります。
この場合、債務者が差し押さえ過剰の事実を証明できれば、その超過分について差し押さえが解除される可能性があります。
たとえば、100万円の滞納税金に対して500万円の財産が差し押さえられた場合、差額の400万円分が解除される可能性があります。
換金の前に支払いがあった場合
差し押さえ後に、債務者が滞納分を一括で支払った場合、換金手続きが中止されることがあります。
この場合、差し押さえられた財産は原則として債務者に戻されます。ただし、全額を支払わない限り、解除される可能性は低いため、迅速な対応が重要です。
差し押さえ財産に金銭的価値がなくなった場合
差し押さえた後に、当該財産の金銭的価値がなくなることがあります。極端な例ですが、差し押さえていた不動産が火事で燃えてしまったケースなどです。
売却しても滞納分を補填できないと判断された場合、差し押さえは解除されるかもしれません。
しかし、差し押さえが解除されても、また別の財産が差し押さえられる可能性があることは覚えておかなければなりません。
競売で売れなかった場合
差し押さえ財産が公売にかけられることがありますが、落札者が現れず売却が成立しないケースもあります。
このような場合、その財産の差し押さえは解除されることがあります。
ただし、別の財産が差し押さえられる可能性があるため、根本的な解決にはならない場合もあります。
差し押さえを受けた場合の解除方法
差し押さえを受けると、財産が拘束され、生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
しかし、適切な対応を行えば差し押さえを解除できる場合があります。以下に、差し押さえを解除する主な方法を解説します。
債務を全額返済する
もっとも確実な差し押さえ解除方法は、滞納している債務を全額返済することです。
差し押さえは債務者に返済を促すための強制措置であり、滞納金が支払われれば目的を達成したとみなされ、財産の拘束が解除されます。
延滞税や手数料も含めて全額を納めることが必要であるため、支払い額を事前に確認しましょう。
自己破産や個人再生を申し立てる
債務を返済できない場合、自己破産や個人再生を活用する方法があります。
自己破産を申し立てると、一定の財産は差し押さえられますが、残りの債務が免除される可能性があります。
また、個人再生を利用すれば、裁判所の認可を得た返済計画に基づいて、滞納額を減額して分割払いを行うことができます。
自己破産や個人再生の手続きについて知りたい人は下記の記事をご覧ください。
不服申し立て制度を活用する
差し押さえの内容に不服がある場合、審査請求や行政訴訟を通じて差し押さえを解除できる場合があります。
たとえば、差し押さえ金額が不当である、手続きに瑕疵があるといった場合には、不服を申し立てることで差し押さえを取り消せる可能性があります。
不服申し立てには期限があるため、通知を受けたら早急に対応することが重要です。
差押禁止債権の範囲の変更を申し立てる
差し押さえられた財産が、生活に不可欠なものや法律で差し押さえが禁止されているものである場合、差押禁止債権の範囲を変更する申し立てを行うことができます。
たとえば、給与の一部や最低限の生活に必要な財産は差し押さえの対象外とされています。
裁判所に申し立てを行い、これらの財産を解除してもらうことが可能です。
債権者と解除の交渉をする
債権者に直接交渉し、差し押さえの解除を依頼することも一つの方法です。
たとえば、一部の金額を返済したり、分割払いを提案したりすることで、債権者が差し押さえを解除してくれる場合があります。
特に、交渉が可能な個人や中小企業の債権者の場合、柔軟な対応が期待できることがあります。
ただし、交渉が成立するかどうかは債権者の意向次第であるため、過度な期待は禁物です。
差し押さえに関して知っておきたいこと
差し押さえは、債務を支払わない場合に財産が強制的に処分される手続きです。
事態が進む前に適切な対応を取ることで、生活や経済的なダメージを最小限に抑えることができます。
ここでは、差し押さえに関して知っておくべきポイントを解説します。
差し押さえられる前に対処することが大切
差し押さえは、突然実行されるわけではありません。通常は滞納の通知、督促状、催告書、差し押さえ予告通知などが順を追って送付されます。
差し押さえられる前の方が対処は簡単ですので、問題を放置しないようにしましょう。差し押さえられる前であれば、分割払いや、返済猶予の申請などもしやすいです。
また、差し押さえ後に債権者にお金が渡ってしまった場合、後から取り返すのはほぼ不可能です。
差し押さえられたら1週間以内に対処すること
差し押さえの解除は、差し押さえにあってから1週間以内に手続きをすることが大切です。
例えば差し押さえられた給料は、引き落としと同時に債権者に渡るわけではありません。
差し押さえ禁止財産が含まれていないかのチェックのため、1週間ほどが銀行が預かっている状態になります。
この1週間の間に差し押さえ解除の手続きができれば、債権者の手に渡るのを阻止できるかもしれません。
もちろん、差し押さえの解除には相応の理由が求められることも覚えておきましょう。
差し押さえ解除に関するよくある質問
市民税滞納による差し押さえを解除する方法は?
市民税の滞納が原因で差し押さえを受けた場合、基本的には未納分を全額支払うことで解除されます。
ただし、一括での支払いが難しい場合、分割払いの交渉を行うことも可能です。
まずは税務署や自治体の窓口に相談し、支払い計画を立てることで解除が検討されることがあります。
給与口座の差し押さえはいつ解除される?
給与口座が差し押さえられた場合、差し押さえられた金額が債務に充当された時点で解除されるのが一般的です。
しかし、必要最低限の生活費が確保されるよう、差押禁止債権の範囲が考慮される場合もあります。
解除までの流れや具体的な時期については、債権者や管轄機関に問い合わせることが大切です。
まとめ
差し押さえは、債務の履行を強制するために財産を自分に処分、売却できなくする手続きですが、適切に対処すれば解除できる場合があります。
市民税滞納による差し押さえは、滞納税額を支払うか分割払いの交渉で解除可能です。給与口座が差し押さえられた場合、差し押さえた金額が完済に充てられると解除されます。
個人再生や自己破産などの債務整理手続きでも差し押さえを解除できる可能性があるので、悩んだらまずは弁護士に相談しましょう。
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