任意整理で人生終わりは誤解!手続きの内容やデメリットを正しく理解
任意整理は、債務整理手続きのひとつで、債権者と交渉することで借金を減額できます。
手続き費用も比較的安く、短期間で借金を減額できるのが特徴で、少なくとも年間100万件以上は利用されているといわれています。
そんな任意整理ですが、大きなデメリットもなく借金が減額できるため、「何か裏があるのではないか」「任意整理をしたら人生は終わりなのではないか」などと心配する人がいます。
そんな人のために、この記事では、任意整理の仕組みやよくある誤解、メリットデメリットなど、任意整理の基礎知識から、多くの人が心配するポイントを中心に解説します。
目次
任意整理で人生終わりは誤解!よくある勘違い
「任意整理をしたら人生は終わりだ」と誤解している人が多い印象を受けます。
それは、任意整理について勘違いをしている部分があるからですので、まずは、任意整理に関するよくある勘違いを紹介します。
よくある勘違い | 実際には? |
官報に載る | 任意整理で官報に載ることはない |
戸籍やパスポートに情報が載る | 戸籍やパスポートに任意整理を記入する欄はない |
選挙権がなくなる | 選挙権がなくなることはない |
持ち家や自動車を没収される | 住宅ローンや自動車ローンを任意整理しなければ没収されない |
仕事を解雇される | 任意整理を理由に従業員を解雇することは基本的に不可能 |
保険を解約しなければならない | 解約する必要はない |
家族に悪影響がある | 家族に直接的な影響はない |
家族・友人・勤務先にバレる | バレないように手続きをすることが可能 |
将来年金が受給できなくなる | 年金と任意整理に直接の関係はない |
任意整理は、他の債務整理と比べても、特にデメリットや将来への悪影響が少ない手続きです。
任意整理とは?内容を正しく理解しよう
任意整理に関するよくある誤解を紹介したところで、改めて、任意整理はどんな手続きなのか、正しく理解しましょう。
債権者と直接借金減額の交渉をする手続き
任意整理は、裁判所を通さず、債務者(借主)と債権者(貸主)が直接借金減額の交渉を行う債務整理手続きです。もっと簡単にいうと、お金を借りた側が、借金減額や、返済ペースの調整についてお願いをするイメージです。
当事者同士の話し合いなので、これといった法律もありません。両者が合意できれば、借金を減額することができます。
裁判所を通さないため、手続きがシンプルで、費用が安く、短期間で済ませられるのが特徴です。
多くのケースでは借金の利息がカットされる
任意整理をすると、多くのケースでは、借金の利息がカットされ、元金のみを返済していくことになります。
取引期間が短かったり、返済実績が乏しかったりすると、利息を若干残した状態で和解することもあります。
貸金業者は、貸したお金(元金)に加えて、利息を上乗せして返済してもらうことで利益を作ります。ですので、「最低でも元金さえ回収できればひとまずは問題ない」と考えます。
ですので、これといった決まりや法律はないですが、利息をカットするのが一般的です。
借金の元金のみを3~5年かけて分割払いする
利息がカットされた借金は、3~5年かけて分割払いしていくのが一般的です。
取引期間が長かったり、借入額が大きかったりする場合には、7年などさらに長期間での分割払いが認められることもあります。
分割払いの期間については、交渉する貸金業者によって、条件が異なります。
一部の借金のみ減額することもできる
借入が複数ある場合、任意整理はその中から自分が手続きしたい業者だけを選ぶことができます。
借入の状況によっては、任意整理したくない、しない方がいい業者もあります。以下に例を挙げます。
- 借金額が少ない:任意整理の効果が薄いためしないほうがいい
- 借金の利率が低い:任意整理の効果が薄いためしないほうがいい
- 自動車ローン返済中:任意整理すると自動車が引き上げられるためしたくない
- 借金に保証人がついている:任意整理すると保証人に迷惑がかかるためしたくない
こういった業者を外して、自分が任意整理したい業者だけを選んで手続きできるのも特徴のひとつです。
任意整理で得られる5つのメリット
次に、任意整理をすることで自分の生活がどのように変化するのかイメージできるよう「任意整理で得られる5つのメリット」について紹介します。
借金返済の負担が軽くなる
任意整理をすることで、月々の返済額を減らすことができるため、収支や生活に余裕ができます。
分割払いの期間も決まっているため、時間が経つほどに確実に完済に向かっていき、精神的な余裕も出てきます。
任意整理をすれば、する前と比べて確実に生活が楽になるでしょう。
借金の取り立ての苦しみから解放される
任意整理前に借金を滞納していた人は、その取り立ての電話やハガキなどに苦しめられていたのではないでしょうか。
滞納する期間が長くなればなるほど、取り立ては厳しくなっていき、最終的には、法的措置を取る旨を通知されることもあります。
任意整理を弁護士に依頼して、弁護士から貸金業者に対して通知が届いた時点で、貸金業者は、債務者に対して取り立ての連絡をすることができなくなります(貸金業法)。
取り立ての連絡がこないことによって、精神的ストレスやプレッシャーから解放されるのはいうまでもありません。
家や車を手放さずに借金減額できる
序盤でも説明した通り、任意整理は、手続きをする業者としない業者を自分で決めることができます。
裁判所を通じて行うその他の債務整理手続きは、すべての借金が対象となるため、例えば自動車ローンも減額の対象となってしまいます。
自動車ローンを完済できなければ、自動車は引き上げられてしまいますが、任意整理の場合、自動車ローンを手続きに入れないという選択肢を取ることができます。
つまり、任意整理は、家や車などの重要な財産を残したまま、借金減額が可能なのです。
家族や会社に知られずに借金減額できる
任意整理は、裁判所を介さない私的な手続きです。債権者との交渉も弁護士が代理してくれます。やりとりに必要な書類等は弁護士事務所に届くため、自宅に届くことはありません。
他の債務整理手続きだと、家族に債務整理することを隠し通すのが難しい場面があります。例えば、世帯としての収入を調べるために、生計をともにする家族の収入に関する書類を提出しなければならない、などです。
任意整理では、家族に債務整理したことを知られるおそれのある借金に関しては、手続きの対象から外すことができます。
借金を負った理由について後ろめたい事情などがあり、誰にも知られずに借金減額したい場合には、任意整理がおすすめです。
保証人に迷惑をかけずに借金減額できる
任意整理は、借金の保証人に迷惑をかけずに借金減額ができます。保証人がついている借金を返済できなかった場合、債務者本人に代わって保証人が返済することになります。
それは、返済できなかった場合でも、任意整理する場合でも同じです。
保証人がついている借金だけを残して、他の借金を任意整理することで、借金を減額しながらも、保証人には迷惑をかけないようにすることが可能です。
任意整理した方がいい人の特徴
任意整理のメリットを踏まえて、任意整理した方がいい人の特徴を紹介します。
すでに滞納気味の人
すでに借金が返済できないときがあり、やりくりに悩んだり、取り立てに苦しんだりしている人は、任意整理を検討した方がいいでしょう。
借金の滞納は、期間が長くなると、遅延損害金が膨らむだけでなく、最終的に裁判などの法的措置を取られてしまいます。
どちらにせよ返済ができないのであれば、早い段階で任意整理してしまったほうが、被害を抑えることができていいでしょう。
利息で借金が全然減らない人
借金の利息が多く、返済をしても一向に元金が減らない人は、任意整理を検討してもいいでしょう。
元金が減らないのは、毎月の支払額が少なすぎるからですが、その状況を抜け出すのは簡単ではありません。
例えば、リボ払い頼りの、完済が一向に見えない生活をしている人などは、このまま返済を続けても、無駄に利息を支払い続けるだけになるので、任意整理をして問題解決してしまうのがおすすめです。
借金を返すための借金をしている人
自分のお金で借金が返済できず、借金返済のために別のところから借入をしている人は、早めに任意整理をした方がいいでしょう。
複数から借入があり、返済が滞っている人や、借金返済のための借金をしている人のことを多重債務者と呼びます。
多重債務状態になると、自力で解決するのが難しいうえに、借金がどんどん膨らんでいきます。ダメージが少ないうちに、任意整理してしまうのがおすすめです。
任意整理後のデメリット・その後の生活は?
任意整理をした後に後悔することのないよう、任意整理後のデメリットについて紹介します。
手続き後も借金が残る
任意整理は、借金を減額する手続きですので、手続き後も借金が残ります。
それを数年かけて返済しなければなりませんので、その間、安定した収入を得ながら、返済を続けなければなりません。
途中で返済ができなくなってしまった場合、債権者から一括での返済を求められる可能性があります。
減額効果はそこまで大きくない
裁判所を介して行う、個人再生や自己破産などの手続きと比べると、任意整理は借金の減額効果が控えめです。
よって、借金が高額な人には向いていません。借金を多少減額できれば、自力での返済が可能な人に向いている手続きです。
ブラックリストに登録される
任意整理をすると、ブラックリストに登録されます。ブラックリストに登録されている状態とは、個人信用情報機関に、金融事故の記録が残っている状態を指します。
例えば、新たな借入をする際や、クレジットカードを作成するとき、貸金業者は、個人信用情報にある、申込者の信用情報をチェックします。
そこで、任意整理(金融事故)をしたことが発覚してしまうと、審査を通過するのが困難になります。
金融事故の記録が消えるまでの数年間、新たに借入をしたり、クレカを作成するのは難しいでしょう。
クレジットカードが解約になる
任意整理をすると、クレジットカードが解約になります。リボ払いが返済できず、任意整理をした場合などは、そのカードが即時強制解約となります。
任意整理をしなかったカードは、即時解約とはならない可能性がありますが、更新のタイミングなどで、任意整理をしたことがカード会社に知られてしまい、やがて解約となる可能性が高いです。
どちらにせよ、任意整理をするならば、その後はクレジットカードを使わない生活を覚悟した方がいいでしょう。
ローン返済中の品物を引き上げられる可能性
ローンを任意整理すると、購入した物を引き上げられてしまう可能性があります。住宅ローンや自動車ローンは特に注意しましょう。
住宅ローンの場合、返済が滞ると、抵当権により、ローン会社が購入した不動産を売却してしまう可能性があります。
自動車ローンの場合、完済するまでは、所有権はローン会社のままになっている可能性があります(所有権留保)。
低額なローンであればそこまで心配はいりませんが、家や車を失いたくない場合には、それ以外の借金をすべて任意整理して、住宅ローンや自動車ローンの返済を継続した方がいいでしょう。
誰かの借金の保証人になれなくなる
先ほど、任意整理をするとブラックリストに登録される、と説明しましたが、自分が借入できなくなるだけでなく、誰かの借金の保証人にもなれなくなります。
例えば、息子の奨学金の保証人になることができないなどが問題になる可能性もあるので、今後予定がある人は慎重に検討しましょう、
ブラックリストの登録が消えるのには、5年程度はかかります。
任意整理のよくある質問
最後に、任意整理に関するよくある質問を紹介します。
自動車ローンは残して今まで通り返済を続けられる?
任意整理の場合、手続きの対象とする業者を自分で選ぶことができます。
自動車ローンを任意整理すると、車を引き上げられてしまいます。
そうならないよう自動車ローンだけは任意整理の対象にせず、他の借入を任意整理するなどの手段を取ります。
任意整理をすると保証人はどうなる?
任意整理をすると、保証人がついている借入については、保証人が返済を引き継ぐ形になります。
厳密にいうと、保証人に全額返済してもらうことになるため、任意整理はできない、ということになります。
任意整理をするにしても、しないにしても、返済が続けられなくなってしまうと、保証人には迷惑がかかってしまいます。
保証人に迷惑をかけたくないのであれば、該当する借金は任意整理せず、他の借金だけを任意整理しましょう。
任意整理後、クレカ払いをしていたものはどうなる?
任意整理をすると、クレジットカードが解約になる可能性が高いです。
今までクレジットカードで支払いしていたものに関しては、別の方法を取る必要があるでしょう。
例えば、該当する業者と話し合って銀行振り込みに変えてもらう、クレジットカードの代わりにデビットカードで支払いを行うなどが考えられます。
任意整理をした後も賃貸で部屋を借りられる?
任意整理をした後でも賃貸物件を借りることは可能です。ただし、家賃保証会社が信販系の場合、入居審査に落ちてしまう可能性があります。
信販系とは、簡単にいえば、クレジットカード会社系の保証会社、と考えてもらって構いません。
カード会社ですので、入居審査時に、申込者の信用情報をチェックすることができます。そこで、ブラックリストに登録されていることが発覚すると、審査に落ちてしまう可能性があります。
対処法としては、保証会社が必要ない物件を探したり、保証会社が信販系でない物件を探したりなどが考えられます。
個人再生をしたら人生終わり?
個人再生をしたら人生終わり、なんてことはありません。個人再生は、5,000万円までの借金を5~10分の1まで減額することができます。
債務整理は、借金が返せなくなった人に社会的ペナルティを与えるための手続きではありません。借金で生活が困難になってしまった人の生活を再建するためにある手続きです。
借金が返せなかったことによって、該当する業者とは今後取引が出来なくなるなどの可能性はありますが、人生が終わりになることはないので安心してください。
まとめ 借金に悩んだら弁護士に相談しよう
任意整理は、債務整理手続きのひとつで、債権者と直接、借金の減額交渉を行います。
多くのケースでは、借金の利息がカットされ、元金のみを3~5年かけて返済していくことになります。
任意整理後は、ブラックリストに登録されるため、数年間借り入れができなくなったり、クレジットカードが解約になったりなどのデメリットがありますが、やがてそれも解消されます。
他にも、「戸籍やパスポートに任意整理の記録が残るのでは?」や「将来、年金が受給できなくなるのではないか?」などと様々な心配をする人がいますが、誤解であることが多いです。
任意整理は、お金を借りた側と貸した側とで行われる借金の相談ですので、人生が変わるほどの悪影響があったり、人生が終わりになったりすることはありません。
借金が返済できずにいることの方が悪影響が多いので、心配事も含めて、一度弁護士に相談してみましょう。あなたの状況に合わせて、ベストなアドバイスをくれます。
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