固定資産税の滞納による差し押さえのリスク|払わないとどうなる?
土地や建物などの不動産を所有している人が支払う義務があるのが固定資産税です。
資産の内容によっては税額が高額になることもあり、負担が大きくなるケースもあります。
支払いを滞納すると延滞金が発生したり、最悪の場合は財産を差し押さえられたりすることもあるため早めの対処が必要です。
ここでは、固定資産税の基礎知識や滞納によるリスク、対処法などをわかりやすく解説します。
目次
固定資産税とは
固定資産税を正しく理解できていないことが、やがて滞納につながります。
まずは、固定資産税の概要を正しく知りましょう。
土地や建物に対して課す地方税
固定資産税とは、土地や建物などの不動産を持っている人にかかる、身近な地方税のひとつです。
家や土地を購入したあと、毎年かかってくる税金なので、持ち家のある人にはなじみのある税金といえるでしょう。
所有しているだけで課税されるため、使っていなくても、手放さない限りは支払い義務が続きます。
具体的には、以下のような資産が課税対象になります。
- 自宅や別荘などの建物
- 駐車場や空き地などの土地
- 事業で使う機械や設備(償却資産) など
不動産を持っていれば誰でも関係する税金なので、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
毎年1月1日に課税額が決定
固定資産税の課税対象や金額は、その年の1月1日時点で固定資産を所有している人に対して決まります。
この日を「賦課期日」と呼びます。市区町村はその時点の所有者に対し、評価額をもとに税額を算出します。
仮に1月2日以降に売却しても、その年の納税義務は前所有者に残るため、注意してください。
年4回に分けて支払うのが基本
固定資産税の納付は、通常年4回に分けた分納が基本です。
納期限は自治体によって異なりますが、概ね5月・7月・12月・翌年2月といったスケジュールで設定されます。一括払いも可能ですが、資金負担を分散させたい場合は分納の方が現実的です。
納期限を過ぎると延滞金が発生するので、注意しましょう。
任意の方法で払い込みを行う
固定資産税は、自治体が発行する納付書を使って、いくつかの方法で支払うことができます。自分に合った支払い方法を選ぶことで、うっかり滞納を防ぐことにもつながります。
主な納付方法は以下のとおりです。
- 金融機関の窓口で納付(銀行・信用金庫など)
- コンビニエンスストアでの納付
- 郵便局での納付
- 口座振替(自動引き落とし)
- クレジットカードによるオンライン納付
- スマホ決済アプリ(PayPay、LINE Payなど)※自治体による
自治体によって対応している方法が異なるため、納付書や自治体の公式サイトで確認しておくと安心です。
固定資産税を払わないとどうなる?
税金の滞納を甘くみてはいけません。ここでは、固定資産税を払わないとどうなるかを説明します。
延滞金が発生する
納期限を過ぎても固定資産税を支払わないと、自動的に延滞金が加算されます。
延滞金の利率は年14.6%(滞納1ヶ月以内なら7.3%)と、一般的な借入よりも高く、支払いが長引けば長引くほど負担が膨らみます。
たとえば10万円を1年間滞納すると、1万4,600円もの延滞金が発生する計算です。少額でも放置せず、早めの対応が重要です。
督促状が届く
納付期限を過ぎて一定期間が経過すると、自治体から督促状が送られてきます。
この段階でも支払えば差し押さえを避けることは可能ですが、督促を無視し続けると、次の段階である差し押さえに進む可能性があります。
書類には納付期限が記載されているため、届いたら内容を確認し、速やかに対応しましょう。
財産が差し押さえられる
固定資産税は税金であるため、民間の借金とは扱いが異なります。
具体的には、裁判などの法的手続きを経ることなく、自治体が直接財産を差し押さえることができます。
対象となるのは、預金口座・給与・不動産・車両などさまざまです。
差し押さえの実施日は原則として事前に通知されないため、突然口座が凍結されたり、資産を回収されたりするおそれがあります。
一度差し押さえられた財産を取り戻すのは難しいため、早めに対応するようにしましょう。
固定資産税の滞納から差し押さえまでの期間と流れ
次に固定資産税を滞納し始めてから差し押さえられるまでの流れや期間を紹介します。
差し押さえまでの期間は早ければ1ヶ月
税金の滞納は、借金と違って裁判などの手続を経ずに差し押さえが可能です。
督促状を無視し続けると、早ければ1ヶ月ほどで差し押さえに至るケースもあります。
期間はケースバイケースで、資産や収入状況によって対応が異なります。
高額資産を持つ人や収入がある人ほど、早期に強制執行される傾向があるため注意しましょう。
3ヶ月以上滞納することで発生するリスク
3ヶ月以上の滞納を放置すると、事態はより深刻になります。以下、具体例です。
- 不動産に差し押さえ登記がつくと、売却や担保設定ができなくなる
- 次の納付時期が重なり、負担が倍増する
- 不動産の処分や相続時に支障をきたす可能性がある
特に不動産を処分したい場合は、大きな障害となるため注意してください。
差押え登記(※)がついてしまうと、所有権の移転ができず、買主がローンを組めなくなるなどの理由で、売却や担保設定が事実上できなくなるためです。
不動産を手放して税金を払おうとしても、その手段さえ閉ざされる可能性があります。
※差押え登記とは…未払いの税金があることを理由に、勝手に売ったり担保に使ったりなどできなくする法的措置のこと
滞納から差し押さえまでの流れ
固定資産税の滞納から差し押さえまでの一般的な流れは、以下のとおりです。
- ①納付期限を過ぎる
- ②督促状が送付される(期限後20日以内)
- ③催告書や電話などによる連絡
- ④財産調査(預金・不動産・給与など)
- ⑤差し押さえの執行(予告なしに実施)
少しでも滞納がある場合は、早めに相談・分納手続きをすることで、差し押さえを回避できる可能性があります。
まずは役所の税務課に相談をしましょう。
固定資産税の滞納の時効はいつ?
時効とは、ある行為や権利に関して一定期間が経過することで、法律上の権利や義務が消滅する制度です。
簡単にいうと、税金を払わず、請求せずの状態のまま一定期間が経過すると、支払い義務が消滅します(消滅時効といいます)。
借金と同じように税金にも時効があります。ここでは、固定資産税の時効について説明します。
滞納から5年後
固定資産税の徴収には、法律上5年の時効があります。
これは、納付期限から5年間、自治体が何のアクションも取らなかった場合に、支払い義務が消滅する可能性があるという制度です。
税金は民間の借金とは異なり、時効の成立に援用(申し出)は必要なく、一定の条件を満たせば自動的に効力を失います。
実際に時効が成立することは少ない
実際には、固定資産税の時効が成立するケースは極めてまれです。
なぜなら、役所が行う徴収行為によって、時効は簡単に中断または更新されてしまうからです。
たとえば、以下のような行為があると、時効はその時点で一旦止まり、再び最初からカウントされます。
- 督促状や催告書が届いた
- 納税者に電話や訪問で支払いを促した
- 預金や不動産などの財産調査が行われた
- 納税者が一部でも支払った、または支払うと申し出た
このように、自治体が何かしらのアクションを起こした時点で、5年という期間はリセットされます。
時効に頼って放置し続けても、かえって延滞金や差し押さえのリスクが高まるだけです。
固定資産税の滞納に関する相談先は?
固定資産税の滞納で困ったときの相談先を、目的や用途ごとに説明します。
役所の税務課
最初に相談すべきなのが、納付先である市区町村の税務課です。
現在の滞納状況や延滞金の発生状況、差し押さえの有無などを確認できます。
経済的に一括納付が難しい場合は、分割払いや納付猶予の相談ができるのも大きなポイントです。
対応は柔軟とは限りませんが、こちらから事情を説明すれば、ある程度配慮されることもあります。
役所の福祉窓口
経済的に著しく困窮している場合には、税務課ではなく福祉担当窓口(生活福祉課など)への相談も有効です。
生活保護の対象となる可能性があるほか、一時的な資金援助や就労支援、支払い困難者への対応制度について案内してもらえることがあります。
生活そのものが立ち行かない状況であれば、税金よりもまずこちらが優先です。
弁護士
固定資産税以外にも借金がある、多重債務になっている、相続など複雑な法的問題が絡んでいる場合は、弁護士に相談しましょう。
特に、借金が多いことで税金の支払いができなくなっている場合、債務整理によって借金問題を解決できる可能性があります。
借金問題を解決したあとは、税金の支払いに集中することができます。
税理士
納税義務の有無や課税内容に疑問がある場合は、税務のプロである税理士が頼りになります。
たとえば、土地の評価が不当に高い、不動産の使い方が変わっているのに反映されていないなど、税額そのものに異議がある場合に、その妥当性を確認してくれます。
必要に応じて審査請求や不服申立てのアドバイスも受けられます。
固定資産税を滞納したまま死亡したときの扱い
固定資産税を滞納したまま所有者が亡くなった場合、相続人が固定資産税を支払うことになる可能性もあるので、注意しましょう。
未納の固定資産税も相続財産の一部と見なされる
被相続人(亡くなった人)に未納の固定資産税がある場合、その税金も相続財産の一部として取り扱われます。
つまり、土地や家などの資産とあわせて、未納の税金の支払い義務も相続人に引き継がれる可能性があるということです。
気づかずに相続すると、後から督促状が届くこともあります。
相続人が選べる相続方法は3種類
被相続人の財産には、プラスの財産だけでなく、未納の固定資産税などマイナスの財産も含まれます。
相続人は、次の3つの方法から相続の仕方を選ぶことができます。
- 単純承認:すべての財産と負債を引き継ぐ
- 限定承認:プラスの範囲で負債を返済する
- 相続放棄:すべての財産と負債の相続を放棄する
固定資産税の支払いを防ぐために相続放棄をする場合、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に手続きをしなければならないため、注意しましょう。
被相続人の死亡時に相続人がすべきこと
相続人はまず、役所の税務課に問い合わせて、被相続人が固定資産税以外の税を滞納していないか確認しましょう。
その後は、借金や未払い金(例えば損害賠償金)などがないか確認しましょう。
被相続人の債権(支払わなければならないもの)を完璧に調べる方法はありませんが、以下の方法である程度調べることができます。
【信用情報機関に問い合わせをする】
借金に関する個人情報を記録している、信用情報機関に問い合わせをすることで、被相続人が借金を残していないか調べることができます。信用情報機関には、CIC、JICC、KSKの3種類がありますので、それぞれ問い合わせを行いましょう。
【通帳や郵便物の確認】
銀行の入出金の記録をみれば、どの金融機関とやり取りがあったか、ローンの返済があったかなどが分かります。郵送されてくる請求書、明細書、督促状なども手がかりになります。
財産より借金が多い場合は、相続放棄などの判断が必要になることもあるため、早めに専門家に相談しましょう。
固定資産税の滞納に関するよくある質問
固定資産税を滞納したら会社に連絡される?
固定資産税を滞納しただけで会社に連絡されることはありません。ただし、給与を差し押さえる場合には勤務先に通知が行くため、結果的に知られる可能性はあります。
固定資産税の差し押さえは解除できる?
滞納分を全額支払うか、役所と分納などの和解に至れば差し押さえが解除されることがあります。
固定資産税は無視してもいい?
無視し続けると延滞金の増加や差し押さえに発展するため、絶対に放置すべきではありません。
支払いが困難な場合は早めに役所へ相談しましょう。
まとめ
固定資産税を滞納すると、延滞金の発生や財産の差し押さえといった重大なリスクが発生します。
滞納してしまった場合は、早めに税務課へ連絡し、分割納付などの相談を行うことが大切です。
経済的に厳しい場合は、福祉窓口や弁護士・税理士といった専門家に相談しましょう。
とくに、他の借金の返済に追われて固定資産税が払えない場合は、債務整理をして借金問題を優先的に解決することも検討すべきです。