債権者とは?差押え・破産・相続との関係や権利をわかりやすく解説 | 債務整理の相談は弁護士法人ネクスパート法律事務所

債権者とは?差押え・破産・相続との関係や権利をわかりやすく解説

債権者とは、貸したお金を返してもらう権利を持つ人や会社のことです。

債権者の立場や権利を正しく理解しておかないと、対応を誤ってトラブルが拡大するおそれもあります。

この記事では、債権者に関する以下の点をわかりやすく解説します。

  • 債権者の基本的な意味と法律上の扱い
  • 差押えや強制執行、破産との関係
  • 相続や法人・株主とのつながり

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債権者とは?

債権者とは、民法第399条で、特定の権利(債権)を持つ人を債権者とし、その相手方は債務者と呼ばれています。

以下では、債権者の基本的な意味や、混同しやすい債務者との違い、個人・法人を問わず債権者となりうる立場について解説していきます。

債権者と債務者の違い

債権者と債務者は、法律上の契約関係において相対する立場にあります。

簡単にいえば、債権者は請求する側、債務者は支払う側です。

たとえば、AさんがBさんにお金を貸した場合は以下のような関係性です。

  • Aさん=返してもらう権利=債権を持つ債権者
  • Bさん=返済する義務=債務を負う債務者

債権・債務の対象は金銭に限らず、物品の引渡しや一定のサービスの提供なども含まれます。

企業間の取引や賃貸借契約、雇用契約など、私たちの生活のさまざまな場面でこの関係が成立しています。

どんな人が債権者になる?

債権者は、お金や物を貸したり、契約に基づいて支払いを受ける権利を持っている人であれば、誰でも債権者になります。

たとえば、以下のようなケースが該当します。

  • 友人にお金を貸した人(個人間の貸し借り)
  • 賃貸契約で家賃を請求する大家
  • 会社の取引先に代金を請求する事業者
  • クレジットカードの利用代金を請求するカード会社
  • 銀行などの金融機関(ローンや融資の返済を請求)

このように、個人でも法人でも支払いを求める立場になれば債権者となります。

債権は契約によって成立するため、正式な契約書がなくても、口頭での約束や行動によって成立するケースもあります。

個人・法人に共通する債権者の立場

債権者は、個人・法人を問わず、契約や法律にもとづいて立場が決まっており、支払いの請求や法的措置をとる根拠にもなります。

以下のような場面では、契約に基づいて債権を行使しているという点で共通しています。

  • 企業が取引先に対して、納品済みの商品代金を請求する
  • 銀行が顧客に対して、住宅ローンや事業融資の返済を求める
  • サブスクリプションサービス提供者が、毎月の利用料を請求する
  • リース会社が、契約に基づき機器の使用料を徴収する
  • 弁護士や士業が、業務報酬として依頼者に費用の支払いを請求する

以下の表では、個人と法人における債権者としての立場の違いと共通点を整理しています。

項目 個人の債権者 法人の債権者
主な債権発生場面 お金の貸し借り、立替、家賃請求など 売掛金、融資、リース料、業務報酬など
債権の根拠 口頭契約・書面契約・慣習 商取引契約・業務委託契約・融資契約など
債権回収手段 請求書送付、内容証明、訴訟など 督促状、弁護士介入、訴訟・差押えなど
共通点 契約・法律に基づく「支払い請求権」を持つ。債務不履行時には法的手段が可能。
違い 金額が少額なケースが多い 金額や影響が大きく、専門家対応が必要になることも多い

このように、誰が債権者であっても履行を求める正当な権利=債権を持つ構造は共通しているといえます。

債権者の定義や法的な位置づけについては、次の項目で詳しく解説します。

民法での債権者の扱い(条文)

法律上、債権者という立場は民法に明確に位置づけられています。ここでは、債権の意味や成立根拠、債務不履行への対応など、債権者に関係する基本的な条文を紹介します。

民法第399条:債権の定義
(債権の意義)
債権は、特定人に対して一定の行為を請求することを内容とする権利である。

この条文は、債権者が債務者に対して、お金を払ってほしい・物を返してほしいなど、何らかの行為を請求できる立場にあることを示しています。誰かに何かをしてもらう権利が債権であり、その請求を行うのが債権者です。

民法第521条:契約に基づく債権の成立
(契約の成立)
契約は、当事者の意思表示の合致によって成立する。

債権の多くは、契約に基づいて発生します。民法第521条では、当事者同士が合意すれば契約は成立すると定められており、この契約によって、債権者が権利を得ることになります。契約は書面だけでなく、口頭やメール、LINEでのやりとりなどでも成立する可能性があります。

民法第415条:債務不履行と損害賠償
(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求することができる。債権者が権利を持っていても、債務者が支払いや履行に応じない場合もあります。そうしたときには、債務不履行として損害賠償を請求することができるのがこの条文の趣旨です。訴訟や差押えなどの強制的手段に進む際の根拠にもなります。

民法の条文では債権とは何か、どうやって成立するのか、履行されないときどうするのかが明確に規定されており、債権者の立場は法律上もしっかりと保護されています。

債権者の権利と制限

債権者は、契約や法律にもとづいて、債務者に対して支払いを求める権利を持っています。

以下では、債権者が持つ具体的な権利や法的手段、その行使にあたっての制限や注意点について詳しく解説します。

支払いを請求する権利

債権者は、契約や法律にもとづいて、債務者に対してお金の支払いや物の返還などを請求することができます。

支払いを求める権利は、民法で認められた正当な権利であり、債務者が応じない場合でも、法的な手段を使って請求することが可能です。

たとえば、以下のようなケースでは、債権者が支払いを請求する場面が想定されます。

  • 期日を過ぎても返済されない貸金の返還を求める
  • 家賃が数ヶ月分滞納され、大家が未払い分の請求に踏み切る
  • 商品を納品したのに、取引先が代金を支払わず連絡も取れない
  • 業務を完了したにもかかわらず、発注元から報酬が支払われない
  • クレジットカードの利用者が、引き落とし日に残高不足で支払えない

債権者は支払ってほしいという意思を明確に伝え、適切な手段で請求を行うことができます。

請求は段階的に行われることが多く、話し合いや通知から始め、応じない場合に法的手続きに進むのが一般的です。

ただし、正当な請求権があるとはいえ、強引な取り立ては法律で禁止されています。

加えて、債権には消滅時効がある点にも注意が必要です。

一定の期間が経過すると、法的に請求できなくなることがあります。主な時効期間は以下のとおりです。

債権の種類 時効期間
一般的な民事債権(個人間の貸し借りなど) 10年(※2020年の改正民法適用後)
商取引による債権(企業間の取引など) 5年

債権者は支払いを請求するという強い権利を持っていますが、その行使には法的なルールとマナーが求められます。

相手が任意に支払わない場合でも、無理に迫るのではなく、冷静に法的手続きを検討することが重要です。

担保と強制執行の違い

債権者が債務者からの支払いを確実に受け取るためには、担保があるかどうかが大きなポイントになります。

担保とは、債務者が約束を守らなかったときに、債権者が優先的に財産から弁済を受けられるように設定される権利のことです。

担保の有無によって、債権回収の手段やスムーズさには大きな違いがあります。

担保がある場合、債権者は担保権を行使することで、比較的スムーズに債権を回収することができます。よく使われる担保の例には、以下のようなものがあります。

  • 不動産を担保にした住宅ローン(抵当権)
  • 車両を担保にした自動車ローン(譲渡担保)
  • 保証人を立てた契約(人的担保)

このような場合、債務者が支払わなかったとしても、債権者は担保を元に弁済を受けることができます。抵当権付きの不動産であれば、債権者は裁判所の手続を通じて競売を行い、そこから代金を回収することが可能です。

一方で、契約に担保が設定されていない場合には、債権者は強制執行によって債権を回収する必要があります。この場合、債務者に対して訴訟や支払督促を行い、確定判決などの債務名義を取得したうえで、差押えなどの手続きに進むことになります。

さらに、差押えの対象となる財産は債権者が自力で調査する必要があり、財産の有無や所在がわからない場合には、回収が困難になることもあります。

つまり、担保がある場合と比べて、手間も時間も大きくかかるのが実情です。

比較項目 担保がある場合 担保がない場合(強制執行)
回収までのスピード 比較的早い(担保権をすぐ行使できる) 裁判→確定判決→申立てと段階を踏む必要がある
必要な手続き 担保権の実行(任意売却・競売など) 訴訟または支払督促+強制執行手続き
相手の財産の特定 担保で明確に把握できている 財産調査が必要(見つからない場合も)
リスク 回収見込みが高い 回収できないおそれもある

差押えの流れと条件

差押えとは、債務者が支払いに応じない場合に、債権者が裁判所を通じて債務者の財産を強制的に回収する手続きです。差押えは債権回収の中でも最終手段であるため、以下のような段階を踏む必要があります。

  1. 請求・督促
    債務者に対して、支払いを求める通知や督促を行う(例:請求書、内容証明郵便など)
  2. 裁判所での手続き(支払督促または訴訟)
    債務者が支払いに応じない場合は、裁判所に申し立てを行い、債務名義(確定判決や支払督促)を取得
  3. 強制執行の申立て(差押え)
    債務名義が確定した後、裁判所に強制執行を申し立て、差押えの手続きに入る

差押えの対象となる財産は、以下のようなものがあります。

  • 給与や預貯金
  • 不動産
  • 動産(車・貴金属・在庫など)
  • 売掛金や貸付金などの債権

ただし、以下のような財産は、差押え禁止財産として法律で保護されています。

  • 最低限の生活費に必要な給与の一部
  • 公的年金や生活保護費
  • 差押えが社会的に不当とされる財産(仏具・学用品など)

債務者の財産状況によっては回収できないこともあるため、事前の調査や弁護士への相談が重要です。

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会社・法人・株主も債権者になりうる?

債権者と聞くと、個人が誰かにお金を貸す場面を想像しがちですが、会社や法人、そして一部の株主も債権者になることがあります。

以下では、企業・法人・株主などが債権者になる代表的なパターンや、注意点について解説します。

企業や法人が債権者になる例

企業や法人も、契約に基づいて支払いを受ける立場になれば、個人と同様に債権者となります。

実際には、法人が債権者になる場面はビジネスのあらゆる場面に存在しており、以下のようなケースが代表的です。

  • 取引先に商品やサービスを提供し、代金を請求する
  • 賃貸借契約に基づき、オフィスや店舗の賃料を請求する
  • 金融機関が企業や個人に対して融資を行い、返済を請求する
  • リース・サブスクリプション契約に基づく料金の請求
  • 業務委託契約に基づく請負報酬やコンサル費用の請求

これらのように、法人はさまざまな契約関係の中で債権を持つ立場となることがあり、その回収が企業経営に直結する重要な問題となることも少なくありません。

株主や債券保有者は債権者なのか?

株主と債権者(社債権者)は、企業に対する立場が大きく異なります。

株主も会社に資金を提供する立場ではありますが、法律上は出資者であり、債権者ではありません

つまり、株主は会社に対してお金を返してほしいと請求する権利を持たず、業績に応じた配当を受け取るだけの立場にとどまります。

一方、社債を保有する投資家は債権者として、満期時に元本の返済を受けられるほか、定期的な利息の支払いを受ける権利があります。

会社が破綻した場合も、株主より優先して弁済を受ける立場になります。

以下に、両者の違いをまとめます。

項目 株主 社債権者
会社に対する立場 出資者 債権者
元本の返済請求 不可 可(満期時)
配当・利息 業績により配当(任意) 定期的に利息を受け取る
破綻時の弁済順位 最下位 株主よりも優先される

このように、株主と債権者では会社に対する法的な立場が大きく異なります。

出資しただけでは債権者にはならず、債権者としての権利を持つには、社債など明確な契約にもとづく関係が必要です。

法人や金融機関も債権者になる理由

法人や金融機関は、日常的に商品やサービスを提供したり、金銭を貸し付けたりすることによって、自然と債権者となる立場にあります

とくに企業や銀行のような法人は、取引や融資を通じて債権を持つことが業務の一部になっているといっても過言ではありません。

たとえば以下のような理由から、法人・金融機関は債権者となることが多くあります。

  • 継続的な取引が多いため、売掛金などの債権が発生しやすい
    → 法人間取引では、商品やサービスを先に提供し、後から代金を回収する商慣習が一般的です。
  • 金融機関は貸付けによって利益を得ている
    → 銀行や信用金庫などは、融資やローン契約によって債権者となり、返済と利息の回収が主な収益源です。
  • 債権を保全・回収するための体制が整っている
    → 社内に法務部門や顧問弁護士がいるケースも多く、法的手段に進みやすい体制が整っています。
  • 与信管理(信用調査)を前提にビジネスが成り立っている
    → 債務不履行を防ぐために、取引開始時に相手の信用力を評価・記録する体制を持っています。

企業がリース契約やサブスクリプションビジネスを展開している場合、毎月の使用料やサービス料金を請求する立場として、継続的な債権を持ち続けることにもなります。

債権者と破産・自己破産の関係

債務者が借金や支払い義務を果たせない状態に陥ったとき、最終的な手段として破産手続きがとられることがあります。

破産者の自己破産が認められた場合でも、債権者によっては今後も請求が可能なケースもあるため、正しい理解が必要です。

以下では、破産・自己破産において債権者がどのように関わるのか、主な流れや注意点について解説します。

債権者集会って何?

債権者集会とは、破産手続きの中で開催される公式な会合で、債務者(破産者)の財産状況や手続きの進行について、債権者に対して説明が行われる場です。

破産手続きが開始されると、裁判所は破産管財人を選任し、財産の調査・管理・換価(売却)などを進めます。

その過程で、債権者がどれだけ債権を持っているか(=債権の届出)を確認し、今後の配当や対応方針を決める場として、債権者集会が開かれます。

債権者集会には、債権者本人または代理人(弁護士など)が出席することができ、特に異議や要望がある場合はこの場で発言することも可能です。

個人の自己破産では、破産財団に回収可能な財産がない同時廃止事件として処理されるケースも多く、その場合は債権者集会自体が開かれないこともあります。

非免責債権とは?

自己破産をしても、すべての借金が免除されるわけではありません。

破産手続においても、免責されない借金=非免責債権(ひめんせきさいけん)というものがあり、これに該当する債権については、破産後も返済義務が残ります。

非免責債権は、民事訴訟法第253条に規定されており、主なものは以下のとおりです。

種類 具体例
故意・重過失による損害賠償債務 暴行や交通事故などで生じた損害への賠償金
悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償 詐欺や横領、名誉毀損など
養育費・婚姻費用などの扶養義務に基づく債務 元配偶者・子どもへの養育費や生活費
罰金・過料・課徴金 刑事罰の一部として科される罰金や、公的制裁金など
労働者の賃金や退職金等 未払い給与・退職金・労災補償などの請求権

このように、社会的に重大な責任や保護すべき相手との関係に基づく債務は、破産しても逃れられない仕組みになっています。

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破産しても払わなきゃいけないケース

自己破産をすれば、基本的に借金の返済義務は免除されます。しかし前述の非免責債権に該当する場合、破産後も支払い義務が残るケースがあります。

以下は、破産しても払わなければならない代表的なケースです。

ケース 説明
養育費や婚姻費用などの扶養義務 子どもや元配偶者への養育費・生活費は、破産しても免除されません。判決や公正証書がある場合は、強制執行の対象にもなります。
故意・重過失による損害賠償 暴力・飲酒運転による事故・名誉毀損など、意図的に他人に損害を与えた場合の賠償責任は免責されません。
詐欺や背信行為による借金 虚偽の内容で借金をした、返すつもりが最初からなかった、などの悪質な行為に基づく債務は、免責の対象外です。
税金・罰金・過料などの公的債務 所得税・住民税・健康保険料、交通違反の罰金など、公的な支払義務も破産しても免除されません。

非免責債権に該当するかどうかは、裁判所や債権者側が主張し、認定されることで確定します。

そのため、債務者自身が申告しなくても、債権者がこれは非免責だと主張すれば、免除されない可能性があるという点に注意が必要です。

自己破産後に債権者が取れる行動

債務者が自己破産し、免責が確定すると、基本的には債務の返済義務はなくなります。

そのため、債権者も原則として取り立てや請求行為を継続することはできません。

以下のような行為は、貸金業法や破産法、場合によっては個人情報保護法などに抵触するおそれがあります。

  • 電話や手紙などでの繰り返しの請求
  • 職場や家族への連絡
  • 債務者に対する威圧的な取り立て
  • 免責確定前後における不適切な接触

免責が確定した後は、債権の法的効力が失われるため、請求行為そのものが違法となるケースもあるので注意が必要です。

ただし、以下のような対応は破産後でも例外的に認められる場合があります。

行動の種類 内容
非免責債権に基づく請求 養育費や損害賠償などの「非免責債権」は、免責確定後も請求が可能です。
債権調査の申立て 債権の内容に不服がある場合、裁判所に異議を申し立てることができます。
財産隠しへの指摘 財産を隠して免責を得ようとした場合、債権者は証拠を提出して免責不許可を求めることができます。
任意の支払いの受領 債務者が自発的に支払った場合、受け取ることは可能です。
新たな契約に基づく請求 旧債務とは別に、新たに契約を結び直した場合は、今後分の請求が可能です。

免責を受けたからといって、すべてがリセットされるわけではありません。

債権者側も正当な手段で対応することができるため、債務者にとっては誠実な申告と適切な対応が重要になります。

債権者と相続の関係

相続が発生すると、被相続人(亡くなった方)が生前に持っていた債務も相続の対象となるため、債権者との関係が発生することになります。

以下では、相続人が債権者から請求されたときの対応や相続放棄、遺産分割と債権について解説します。

相続人が債権者から請求されたら?

被相続人に借金などの債務があった場合、相続人は原則としてその債務も相続することになります。

ただし、相続したからといって、無制限に借金を引き受けなければならないわけではありません。

相続人には、法律上以下の3つの選択肢が与えられています。

選択肢 内容 注意点
単純承認 財産も借金もすべて引き継ぐ 手続き不要だが、債務も全額負担
限定承認 プラスの財産の範囲内で借金を返す 家庭裁判所に申述が必要(相続人全員で行う)
相続放棄 最初から相続人でなかったことになる 借金も引き継がないが、他の財産も相続できない

債権者から請求を受けたときは、自分がどの立場なのか(相続するか放棄するか)を早めに判断することが大切です。

相続放棄をする場合は、相続開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所で手続きする必要があります。

期限を過ぎてしまうと、自動的に単純承認したと見なされ、債務の返済義務を負う可能性があるため注意しましょう。

相続放棄と債権者の扱い

相続放棄をすると、相続人は最初から相続人ではなかったことになります。

この法的な効果により、債権者からの請求に対しても、支払う義務は一切生じません。

ただし、相続放棄をしたからといって、債務が消えるわけではありません

次順位の相続人が存在する場合、債権者はその人に請求することになります。

  • 長男が相続放棄をした場合 → 次に相続権のある次男や親(第二順位)へ請求が移る
  • 配偶者・子・親が全員放棄した場合 → 兄弟姉妹(第三順位)へ請求される可能性あり

債権者は、相続放棄の有無や他の相続人の状況を把握するため、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書の提出を求めることもあります。

確実に手続きを済ませ、証明書類を残しておくことが重要です。

債権者が被相続人だったとき

亡くなった人(被相続人)が債権者だった場合、その債権は相続財産として相続人に引き継がれます

被相続人が持っていた誰かに対する請求権は、遺産の一部として扱われるのです。

このように、金銭債権だけでなく、賃料やリース料なども継承される権利として相続対象になります。

ただし、以下のような点には注意が必要です。

注意点 内容
債権の内容 契約書や記録があいまいだと、相手方が支払いを拒む可能性あり
消滅時効 債権には時効があるため、放置していると請求できなくなる場合がある
相続人が複数いる場合 遺産分割協議で誰がその債権を引き継ぐかを明確にしておく必要がある

債権を相続する際は、早めに法的な整理や請求準備を進めることが重要です。

遺産分割と請求の順番

被相続人に対して債権を持つ第三者がいる場合、相続財産から支払いを受けるためには遺産分割よりも先に請求することが重要です。

請求と遺産分割の基本的な順序は以下のとおりです。

  1. 被相続人の死亡により相続開始
  2. 債権者が相続人に対して請求(支払い督促・裁判なども含む)
  3. 相続人が債務の内容を確認し、必要に応じて相続放棄や限定承認を検討
  4. 債務の清算後、残った財産について相続人で遺産分割協議

債権者からの請求は、相続人の判断や手続きにも大きく影響します。

通常、債務は法定相続分に応じて分割責任となりますが、遺産分割協議で特定の相続人が全額負担するなどと合意されるケースもあります。

加えて、以下のような点に注意が必要です。

  • 相続放棄された場合、その相続人には請求できない
  • 相続人全員が放棄した場合、次順位の相続人へ請求が及ぶ可能性がある
  • 遺産分割が終わる前に請求を進めることで、債権者側も優先的な回収が可能になる

債権者にとっても、遺産分割の動きを見極めながら、適切なタイミングで請求を行うことが大切です。

まとめ

債権者とは、契約や法律に基づいて支払いを受ける権利を持つ人や法人を指します。

個人間の貸し借りから企業取引、相続や破産まで、さまざまな場面で登場します。

ただし、債権の行使には法律に則った対応が求められ、強引な取立てや時効切れの請求はトラブルの原因にもなります。

相手の破産や相続によって回収の可否や手続きが変わるため、不安なときは、早めに弁護士に相談することで、正当な権利を守りながら適切な解決を目指せます。

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