「夫がお金の管理をしていて自由に使えるお金がない」「生活費をもらえずに生活苦になっている」など金銭的な自由を配偶者によって奪われていませんか?こうした行為は「経済的DV」に該当する可能性があります。
経済的DVは、DV(ドメスティックバイオレンス)の一種です。経済的DVの被害に遭っている場合、離婚や慰謝料請求を行うこともできます。ここでは、経済的DVとはどのような行為で、どう対処すべきかなのかを解説していきます。
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目次
経済的DVとは
経済的DVとは、金銭の自由を奪って経済的に相手を追い詰める行為です。DVというと殴る・蹴るなど身体的にダメージを与える行為をイメージしますが、経済的・精神的にダメージを与えることもDVに該当します。
経済的に追い詰めることで加害者は相手を支配しようとし、被害者は経済面に加えて精神的なダメージを受けます。こうした行為が「経済的DV」として認識されるようになったのは比較的近年になります。そのため、ご自身が経済的DVの被害者であることに気付いていないという方も多いでしょう。
内閣府男女共同参画局の調査によると、約4人に1人(26.2%)はDV被害を受けた経験があり、約15人に1人(6.8%)が経済的DVを受けた経験があることが分かっています。経済的DVは被害の自覚がないことも多いため、実際の被害者はさらに多いことが予想されます。
項目 | 被害経験の割合 |
---|---|
DVの被害経験 | 26.2% |
身体的暴行 | 17.4% |
心理的攻撃 | 13.7% |
経済的圧迫 | 6.8% |
性的強要 | 6.0% |
専業主婦は経済的DVを受けやすい
経済的DVの被害を受けやすいのは「専業主婦」と言われています。男性の中には「働いてお金を稼いでいる方が偉い」という考えを持っている方もおり、専業主婦を見下すような態度や行動を取る方も珍しくはありません。
近年では、共働きの家庭も増え、育児や家事もお互いが協力してやるという夫婦が多くなってきた印象がありますが、まだまだそういった男性はいるでしょう。
そういう考えを持っている男性は、妻に生活費を渡さなかったり、お金の使い方を極端に制限したりすることがあります。しかし、夫婦には「お互いが協力し、同レベルの生活ができるようにする義務」があります。
(同居、協力及び扶助の義務)第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。引用元:民法 | e-Gov法令検索
夫が経済的に協力しないことは、夫婦に課せられた義務に違反することになり、悪意の遺棄として夫に離婚や慰謝料を請求できる可能性があります。
経済的DVに該当する行為
経済的DVは被害者だけではなく、加害者自身も気付いていないことがあります。節約や倹約の範囲と区別がつきにくいこともあり、経済的DVの被害を受けているのか分からないという方も多いのではないでしょうか。経済的DVに該当する具体的な行為は次の通りです。
生活費を渡さない
妻が専業主婦や夫よりも明らかに収入が少ないにも関わらず、家庭を維持するための生活費を渡さない行為は経済的DVになる可能性があります。また、生活費を渡していたとしても、明らかに生活維持には少ない生活費しか渡していない場合も同様です。ただし、生活に支障が出ていない場合は、経済的DVだと判断されることが難しくなります。
「夫が生活費を渡さない」という問題に悩んでいる女性は多く、実際に離婚理由として「性格の不一致」の次に多い理由となっています。
浪費や借金をする
配偶者の勝手な理由で浪費や借金を繰り返すことは、経済的DVに該当する可能性があります。生活費を渡さなかったり、相手に節約を強いたりしているにも関わらず、自分は自由に浪費や借金をしている状況は経済的DVだと判断される可能性が高いです。
仕事することを認めない
妻が外で働きたいと考えているにも関わらず、仕事することを認めないことは経済的DVに該当する可能性があります。
専業主婦であることを強要したり、仕事を辞めさせたりして、妻に収入が得られないような状況を作りだすことは、金銭面で相手を支配したい行為だと考えられます。
お金の使い方を極端に制限される
配偶者がお金を管理していて、お金の使い方を極端に制限されることは経済的DVだと言えます。婚姻期間中に築いた財産は夫婦共有のものであり、本来は夫婦でお金の使い方を話し合って決めるべきです。
しかし、理由もなくお金の使い道を逐一確認されたり、お小遣いをもらえなかったりする行為は経済的DVに該当する可能性があります。
経済的DVをする夫の特徴チェックリスト
経済的DVをする夫の特徴は共通する部分も多いです。経済的DVを受けているのではないかと思われる方は、次の「経済的DVをする夫の特徴チェックリスト」を確認してみてください。
- 生活費を渡そうとしない / 全くくれない
- 妻のお金の使い道を厳しく管理しようとする
- 過度の節約を強要する
- 妻が働くことを嫌がる
- 感情の起伏が激しい
- 収入を隠そうとする
- 自分が稼いだお金は自由に使えることが当たり前だと考えている
- お金に関する暴言を吐く
経済的DVで離婚・別居する場合の対処
経済的DVが原因で離婚や別居を考える方もいるでしょう。経済的DVだけに限らず、DVは我慢していても改善されることは少なく、さらに悪化していく恐れもあります。経済的DVで離婚や別居をする場合の対処についてご紹介します。
経済的DVを理由に離婚できる?
夫婦の話し合いによって双方が離婚に合意をすれば、離婚理由は関係なく離婚を成立させることができます。このことを「協議離婚」と呼びます(参考:協議離婚とは)。
しかし、協議で夫が離婚を認めない場合や、離婚条件で話し合いが進まない場合には、家庭裁判所に「調停離婚」を申し込むことになります。調停離婚は、調停委員会が介入して双方の意見を調整し、話し合いによる離婚を目指すものです。
そして、調停でも離婚の合意が得られない場合には「訴訟」によって離婚を争うことになります。裁判で離婚をするには、法律で決められた離婚理由である「法定離婚事由(民法第770条)」が必要です。
経済的DVは「悪意の遺棄」もしくは「婚姻を継続し難い重大な事由」という法定離婚事由に該当する可能性が高いため、経済的DVを理由に離婚はできると考えられます。
別居するなら婚姻費用を請求する
離婚ではなく、まずは別居するという場合には「婚姻費用」を請求することができます。婚姻費用とは、婚姻生活を維持するために必要な費用のことを言い、いわゆる生活費です。
婚姻費用は夫婦で分担するものだと考えられているため、別の家で生活していたとしても、生活費は夫婦で負担するという考え方になります。そのため、妻が専業主婦の場合や夫より収入が少ない場合、夫は婚姻費用を支払う義務があります。
・婚姻費用とは|別居中の生活費を分担する義務や養育費との違い
経済的DVで慰謝料を請求するには
経済的DVが原因で離婚する場合、慰謝料を請求することができます。なぜならば、経済的DVは法律に定められた夫婦の扶養義務(民法第752条)に違反する行為になるからです。
ただし、経済的DVを理由に慰謝料を請求するには、経済的DVを受けたという証拠が必要になります。経済的DVを証明するための証拠には、次のようなものが挙げられます。
- 少ない生活費の中でやりくりしていることが分かる家計簿
- 生活費の振り込みが無くなったことの分かる預金通帳
- 生活費の支払いを拒否している発言の録音、メール内容
- 配偶者の浪費が分かるクレジットカード明細
- 配偶者の借金内容の分かる借用書など
- 経済的DVの被害内容や日々の生活のやりくりについて記載された日記
経済的DVで離婚するなら弁護士に相談する
経済的DVが理由で離婚を検討している場合には、弁護士に相談することをおすすめします。なぜならば、経済的DVをする夫との話し合いは非常に難しいことが予想されるからです。
離婚や別居に同意するとは考えにくく、話し合いをしようとすれば怒鳴るなどしてまともな話し合いができない可能性があります。また、夫に委縮して離婚や別居の話を言い出せないケースもあるでしょう。弁護士が介入すれば、弁護士が代理人として話をしてくれるので夫と顔を合わせる必要はありません。
また、経済的DVをする夫に婚姻費用や慰謝料、離婚の財産分与を請求をして支払ってもらうことも簡単ではありません。弁護士に相談すれば法律に沿った権利を主張し、夫が支払うように交渉や法的手段で解決を目指すことができます。
・離婚問題を電話・メールで弁護士に無料相談
・DV夫が離婚してくれない!安全に離婚するための対処法
まとめ
経済的DVは配偶者から経済的に圧迫されることで、精神的にも追い込まれてしまうようになります。離婚や別居をしたいと考えても、相手に支配されているためなかなか言い出すことができなかったり、話せたとしても相手が逆上してまともに話し合いできないことが予想されます。
一人で経済的DVについて悩まずに、まずは専門家である弁護士に相談してみてください。弁護士はあなたの心強い味方になり、今後の対応についてアドバイスやサポートをしてくれます。