夫からの暴言や態度で精神的につらい思いをしている妻は少なくありません。結婚前は優しかったのに、結婚後は人が変わったように妻に暴言を吐き、人格を否定する「モラルハラスメント」は自覚がない人が多く、夫婦関係の修復が難しいのが現実です。

そんなモラハラ夫から「離婚したい」と申し出られた時、妻はどう対処すればいいのでしょうか。離婚に応じるのか、それとも別居して距離を置いた方がいいのかすぐには決断できないかもしれません。ここでは、モラハラ夫から離婚したいと言われたときに、妻がとるべき対処法についてご紹介します。

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モラハラ夫から離婚したいと言われたら

モラハラ夫から突然離婚を切り出されたとき、妻ができることは「離婚に応じる」か「離婚を拒否する」のどちらかです。離婚する場合としない場合の両方で妻がとるべき行動をご紹介します。

離婚する場合

普段からモラハラを受けていて離婚を考えていた方は、この機会に離婚に応じるとともに慰謝料を請求すると良いでしょう。しかし、慰謝料を請求するには、モラハラの証拠を確保しなければなりません。証拠になりうるものとして

  • モラハラ発言を録音した音声
  • モラハラ発言しているところを録画した動画
  • モラハラ発言LINEやメール
  • 夫のモラハラ発言を書いたメモや日記
  • 夫のモラハラにより精神疾患を患った場合は診断書

などがあります。

モラハラで慰謝料を請求する場合、妻がどれだけ精神的苦痛を受けたのかがわかるものが必要です。ただし、モラハラ夫との離婚はそう簡単ではありません。夫が自ら「離婚したい」と申し出たにもかかわらず、妻が離婚に応じるとそれを拒むことが往々にしてあるためです。詳しくは後述します。

モラハラ夫と離婚するまでの流れや離婚後の末路

離婚したくない場合

モラハラを繰り返すような夫でも、金銭面での不安などにより、すぐに離婚を決断できない方もいるでしょう。モラハラという離婚原因をつくった側である夫は「有責配偶者」です。(関連:有責配偶者とは

原則として有責配偶者からの離婚はできないため、妻は夫からの離婚に応じる必要はなく、拒否してもいいのです。ただし、妻は夫のモラハラから自分の心を守るためにも夫と距離を置くことが大切です。

同居がつらい場合は別居も検討すると良いでしょう。いきなり離婚するのではなく、別居して物理的な距離を置いたうえで離婚について考えてみるのも一つの手です。

モラハラ夫が離婚を切り出す理由

ではモラハラを繰り返す夫は、本気で離婚したいと考えているのでしょうか。モラハラ夫が離婚を切り出す理由を考察してみましょう。

妻を困らせたい

モラハラ夫が離婚を切り出す理由の多くがこれにあたります。つまり、離婚を切り出されて慌てふためき離婚を思いとどまるように懇願するする妻の顔が見たいのであり、モラハラ夫の言う「離婚したい」はたいていの場合、本心ではありません。

そのため、ここで離婚に応じたときに夫は「そんなの冗談だよ」と翻意することがあります。自分の虚栄心を満たす居心地のいい世界から妻を突き放すことは、夫にとって考えられません。本気で離婚を考えているのではなく、単純に妻を困らせたくて離婚を切り出している可能性があります。

モラハラ夫の特徴と共通点チェックリスト

ほかに好きな人ができた

妻への愛情がなくなったことに似ていますが、ほかに好きな人や不倫相手ができた場合、妻に対する愛情や関心がなくなったことで冷たい言葉をかけてくることがあります。妻に対して後ろめたい気持ちを抱えるようになり、離婚して身軽になりたいために妻に離婚を切り出すのです。

この場合、モラハラ夫はすでに特定の不倫相手がいる可能性も視野に入れるべきです。普段の様子から浮気を疑うような怪しい行動がなかったとしても、女の影をチェックすることをおすすめします。

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モラハラ夫と離婚して後悔するケースとは

あの手この手を使って妻を困らせ、自分の支配下に置こうとするのがモラハラ夫の特徴です。そんな夫でも離婚していいのだろうかと悩む女性のためにモラハラ夫と離婚して後悔するケースをご紹介します。なぜ自分が離婚にためらっているのか、参考にしてみてください。

夫への愛情が残っている

たいていの夫婦は出会って結婚し幸せな家庭を築く未来を思い描いているものです。しかし、夫のモラハラは結婚してから本性を現します。妻としてはモラハラが始まる前の優しかった夫を知っているからこそ、まだ愛情が残っていて離婚できないのかもしれません。

残念ながら、結婚して夫は変わってしまったこと、以前のような優しい夫ではなく、優しくない夫に変わってしまったという事実を受け入れるしかありません。

子どもへの影響

モラハラ夫でも子どもたちにとっては血のつながったたった一人の父親であり、母親としては「子どもたちには父親が必要」と考えて離婚をためらうこともあります。父親が不在になるだけでなく、転居・転校が必要になったことで子どもたちの精神面での不安を抱えるのではないかと心配するかもしれません。

しかし、モラハラを続ける父親を見ながら育つ子どもはどのように成長していくでしょうか。自分自身に夫のモラハラ発言が飛び火し、母親同様につらい思いをするか、もしくは子ども自身がモラハラ傾向のある大人になる可能性もあります。

離婚後の経済面への影響

経済的な事情も離婚をためらう理由の一つです。モラハラ夫の場合、妻に対して専業主婦でいることを希望することがあります。経済的に夫に依存しているために「誰のお金で生活できると思っているんだ」などの言葉で、自分の優位性を誇示しようとします。

子どもが小さいためにフルタイムでの仕事に出られず、自分一人で家計を支えていけるのか不安な方も多いかもしれません。このような経済面での影響を心配している場合、離婚せず別居してみてはいかがでしょうか。別居すれば夫に対して婚姻費用を請求できます。また、別居している間に仕事を探して新たな生活の基盤をつくるのも良いでしょう。

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モラハラ夫に請求できる慰謝料の相場

モラハラ夫に対して慰謝料請求する場合、相場は50~300万円程度です。さまざまな事情を考慮した上で慰謝料の金額が決まります。なお、慰謝料の金額を決める要素は次の通りです。

  • 婚姻期間
  • 夫の収入
  • モラハラの期間、程度
  • 妻が受けた精神的苦痛の度合い

モラハラはDVのような目に見える傷跡がないために、精神的苦痛の度合いを説明するのは難しいのが現実です。そこで、夫がどのようなモラハラを受けたのかがわかるような客観的な証拠が重要になります。

モラハラで離婚する場合の慰謝料相場と該当する行為

まとめ

モラハラ夫から離婚を切り出されても、すぐに決断をするのは難しいかもしれません。しかし、自分の人生を取り戻すためモラハラ夫とは距離を置き、今後自分がどうしたいのかを考えてみてはいかがでしょうか。

モラハラ夫と離婚は、多くのケースで難航します。自らのモラハラを正当化したり、「妻にも悪いところがある」など責任転嫁したりして、まともな話し合いができないのです。そこで夫のモラハラで離婚を検討している方、あるいは離婚しようか迷っている方は当事務所の弁護士にぜひご相談ください。