モラハラとは、威圧的な言動や無視を繰り返す行為などで精神的に相手を追いつめるような暴力行為のことです。モラル・ハラスメントの略語であり、身体への暴力行為を指すDVとは別の行為として広く認知されるようになりました。

DVの場合には、打撲や骨折など身体へのダメージが明らかなケースも多く、医師作成の診断書の取得や周囲の証言などで離婚への道筋が探りやすいものです。しかし、モラハラは長年連れ添い世間から見るとおしどり夫婦と呼ばれるような二人の間でも起きていることがあります。

では、モラハラ行為を繰り返す夫と離婚をする場合には、どんな証拠を用意すべきでしょうか。この記事では証拠の準備方法やモラハラ夫の末路にスポットを当てていきます。

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モラハラを理由に夫と離婚できる?

離婚の原因には色んな背景が考えられますが、モラハラを夫から受けている場合には離婚はできるのでしょうか。結論から言うと「可能」です。

しかし、モラハラはDVよりも立証が難しく、少しずつでもモラハラと感じる行動に関して証拠を集めていく必要があります。モラハラ行為をするような夫は、以下のような特徴があり周囲に立証を求めることが難しいケースがあるのです。

家庭の外では社会的地位もあり、人当たりも良い

モラハラ行為を行う夫は、家庭の外では社会的な地位もあり人当たりも良い人物として評価されていることがあります。いわゆる「外面が良い」タイプの人が多いのです。

そのため配偶者である妻以外は夫のモラハラ行為を受けておらず、離婚への証拠を集める際に周囲に立証を求めにくいという側面があります。

被害者として振る舞う

暴言や嫉妬などのモラハラ行為を行う夫は、自身が加害者側ではなく被害者意識があるケースがあります。嫉妬をさせる妻が悪い、言うことを聞かずに怒らせる妻が悪い、など自身の非は認めようとしないのです。むしろ、自身の行為を積極的に正当化するために被害者であることをアピールするケースもあります。

モラハラをする夫は自身を被害者だと思っていたり、世間体が優れていたりすることがあり、なかなか思うように証拠を残せない場合はあります。特に被害者意識が強い場合には協議離婚のような話し合いのテーブルでは交渉が決裂する可能性があります。

モラハラ夫と離婚する際の慰謝料相場

モラハラは身体的な暴力はないものの、長年じわじわと精神面を追いつめられることで大きなストレスを抱える可能性があります。しかし、モラハラは心への暴力行為であり、ストレスが大きい場合には離婚を検討してみましょう。

では、もしもモラハラ夫と離婚をする場合にはどのぐらいの慰謝料が請求できるでしょうか。モラハラによる離婚時の慰謝料の相場は、実は結構な開きがあります。相場は50万から300万程度とされていますが、内容によってはこの相場以下の場合もあれば、大幅に超える慰謝料額が認められる事案もあります。

慰謝料の獲得例をご紹介すると、長年妻の浮気を疑って執拗に詮索を続けていた場合の離婚では200万円の慰謝料が認められた判例があります。高額の慰謝料請求を目指す場合も、モラハラ行為の証拠をしっかりと積み重ねていく必要があります。

モラハラで離婚する場合の慰謝料相場と該当する行為

モラハラ夫と離婚するまでの流れ

では、実際にモラハラ夫との離婚に向けて具体的に活動を開始する場合にはどのような流れを想定すれば良いのでしょうか。ここからは離婚への流れを具体的に解説します。

モラハラの証拠を用意する

離婚の2文字が脳裏をよぎったら、まずはモラハラの行為を証拠として残していく必要があります。離婚には協議離婚や調停離婚などの方法がありますが、どの段階であってもモラハラの証拠は必要です。

では、モラハラの証拠は具体的にどのように残すと良いでしょうか。モラハラは既出のとおり、身体へのDVとは異なり診断書やケガの写真などを残すわけではありません。そこで、下記のような方法が考えられます。

1. 音声の録音

モラハラの特徴の1つには、暴言や嫌味があります。こうした会話の録音は証拠として使用できます。ボイスレコーダーが無い場合には、スマホの録音機能でも可能です。

2. モラハラの記録を日記にする

モラハラは非常に巧妙に行われることがあります。ふとした時に嫌味を言われたり、不貞行為を執拗に疑って鞄や財布を詮索されたりと色んなパターンがあります。こうした行為は咄嗟に録音に残すことが難しいので、日記などに記録していくことがおすすめです。

3. 相談機関への相談記録

モラハラが執拗に続いている場合には、離婚に関するご相談を行っている人もおられます。公的機関への相談や、心療内科への相談などを行っている場合にはこうした相談記録も証拠となります。特にモラハラによって心療内科に通っている場合には診断書の取得が可能な場合があります。

このようにモラハラについては色んな方法で証拠を残すことが可能です。証拠の残し方に不安がある場合や、証拠を残そうとしたことが発覚し夫婦関係がより悪化したりなどお悩みが多い場合などは早めに弁護士へ相談されることがおすすめです。

DVで離婚する場合の慰謝料相場や必要な証拠

モラハラ夫への離婚の切り出し方

では、モラハラ夫に対して離婚を切り出す場合にはどうするべきでしょうか。モラハラ行為に既に何年も悩んでいた方は、夫に対して恐怖心を抱いており、離婚を切り出すことに不安を感じるかもしれません。そこで、離婚を切り出す方法には以下の2つが考えられます。

1. 弁護士に相談を開始する

離婚を考え始めた段階で、まずは弁護士に相談をすることがおすすめです。弁護士はモラハラに関する証拠集めの方法や、別居のタイミングなどに適切なアドバイスを行うことができます。

特に財産がある場合には財産分与を行うための準備も必要であり、弁護士のアドバイスの下で資産に関する証拠も作成することが望ましいでしょう。

お子様がおられる場合には、モラハラ夫と親権を巡って対立する可能性もあります。離婚にともなうさまざまな準備を進めていくためにも離婚問題に強い弁護士へ相談しましょう。

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2. 別居を開始する

出来れば色んな準備を弁護士の下で行った上で別居をすることが望ましいですが、モラハラがつらく精神的にもご負担が多い場合には別居へ踏み切ることも1つの方法でしょう。

別居をするとモラハラ夫の支配下から逃れることができ、ご自身らしさを取り戻すきっかけになります。別居に踏み切る前にモラハラ夫側へ露見してしまうとトラブルになる可能性があるので、慎重に進めましょう。

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離婚の条件を決める

具体的に離婚へと進んでいくためには、離婚の条件を決める必要があります。まずは協議からスタートし、条件をすり合わせていくことが望ましいですが、モラハラ夫の場合は協議離婚が難航するケースもあります。

この場合、速やかに弁護士に相談の上離婚調停の申立てに移行をすることがおすすめです。離婚調停は争う内容にもよりますが、早ければ数ヵ月で調停は終了します。協議が難航している場合には離婚をスムーズに進行させるためにも調停を検討しましょう。

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モラハラ夫が離婚してくれない理由

モラハラ夫は妻に対していやがらせ、いじめのような行為を続けているにも関わらず、離婚を切り出すと激しく抵抗することがあります。ではなぜ、夫は離婚を拒否するのでしょうか。

自分に離婚の原因があると思っていない

モラハラ夫は先にも少し触れましたが、自身のことを被害者だと認識している場合があります。つまり、離婚の原因が自分にあるとは思っていないのです。そのため、離婚を切り出すと激しく激怒する可能性があります。

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プライドが高いため妻の意見を認めない

モラハラ夫はプライドが高いため、離婚を切り出そうにも妻の意見を認めないことがあります。離婚の条件にも同意せず、自身の性格を改善しようともしません。己の非を認めるようなことはしないのです。

世間体を気にしている

モラハラ夫は世間体の良さが定評であることが多く、離婚によって自身のイメージが崩れることを極端に嫌います。そのため離婚には断じて応じない、という姿勢を見せるのです。

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モラハラ夫の離婚後の末路や注意点

では、モラハラ夫と無事に離婚が出来たなら、夫側はどんな末路を迎えることになるでしょうか。最後に末路や注意点に関して解説します。

情緒不安定になる

世間体を奪われ、自己否定されたと感じるモラハラ夫は情緒不安定になりがちです。ストーカー行為に発展するケースもあるので、離婚後にもモラハラ夫には注意をする必要があります。

妻や子どもにしつこく連絡する

モラハラ夫は離婚後にも異常な執着を見せることがあります。しつこく連絡を繰り返し、復縁を迫るような行為も見せるので注意が必要です。

特に養育費や面会交流の問題で定期的に交流が続く場合には、再び家庭の長に納まろうと執念深く絡んでくる場合があります。あまりにしつこい場合は離婚時に相談をした弁護士や、警察へ相談するようにしましょう。

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まとめ

今回はモラハラ夫との離婚に関していろんな角度から解説を行いました。現在モラハラ夫の支配に苦しんでいる方は、この記事をきっかけに離婚に関して前向きに考えてみてはいかがでしょうか。不安や離婚のご準備に関しては、弁護士に相談をしてみましょう。