離婚の原因は夫婦によって千差万別ですが、代表的な原因の1つに「DV」 が挙げられます。DVとはドメスティック・バイオレンスの略語で、身体的な暴力や性的な暴力などが挙げられます。

では、DVに悩み離婚をする場合には、慰謝料はどのぐらい請求することができるでしょうか。今回はDVをテーマに慰謝料の相場や請求方法を解説します。是非悩んでいる方はご一読ください。

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DVに該当する行為とは

DVは家庭内暴力を意味する用語です。殴る、蹴る、物に当たることや暴言を吐くことなどがDVの一般的なイメージですが、必ずしも直接的な暴力・暴言だけがDVに該当するわけではありません。

例えば生活に必要なお金をもらえないような経済的DV、日常的に嫌味を繰り返すモラルハラスメント、拒んでいるにも関わらず無理やり性交渉を繰り返されるなどもDVに該当します。

夫婦間におけるDVの場合、1度や2度ではなく何度も繰り返されることで疲弊してしまい、離婚に踏み込めないまま精神的に追い詰められてしまう人が男女ともに少なくありません。閉鎖された人間関係のため相談もできず、追い詰められてから法律相談に来られる方も少なくないのです。

女性から男性へのDVも意外と多い

特にDVは男性から女性へのイメージが強いですが、モラハラのようなパターンの場合には女性から男性へのケースも多くなっています。DVは男女の性差に関係なく発生しているため、男性であっても離婚理由にDVを上げるケースは決して少なくないのです。例として、令和元年度の司法統計19を見てみると、男性が挙げる離婚理由の第3位には「精神的に虐待する」が挙げられています。

参考URL:令和元年度 司法統計19 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所PDF

DVで離婚する場合、慰謝料は請求できる?

DVは離婚理由になるため、DVを行った相手方へ慰謝料の請求を行うことができます。DVは民法709条の不法行為に該当するからです。DVは心身ともに傷つけられる行為ですから、当然のこととして慰謝料を求めることができます。では、DVにおける慰謝料の相場はどのぐらいでしょうか。

DVの慰謝料相場

DVの慰謝料の相場は、一般的に50万~300万程度です。被害者側からすると少額に感じる相場ですが、ケガなどの内容によってはこの範囲以外の請求が認められることもあります。例として大阪高等裁判所平成12年3月8日の判決を引用します。

夫の暴力により妻が右鎖骨骨折,腰椎椎間板ヘルニアの傷害を負い運動障害の後遺症が残存したケース。慰謝料350万円に加えて入通院慰謝料,後遺障害慰謝料,逸失利益として合計1,714万円の支払が命じられています。

このようにケガや入院期間があり、後遺症が残るケースでは入通院費や逸失利益に関しても認められるため、相場通りの請求しかできないわけではありません。過去の判例なども踏まえて調停や訴訟では慰謝料が決定されています。

DVの慰謝料請求に必要な証拠

受けてきたDVに関してきちんと慰謝料を請求し、受領を目指すためには証拠が必要です。特に協議離婚ではなく、調停や訴訟に発展するケースでは、第三者である調停員や裁判官が見てわかるような証拠を提出する必要があるのです。では、証拠とはどのようなものでしょうか。

身体的DVの場合

身体への暴行を受けている場合には、病院の診断書やケガの部位の写真、暴行中の音声や公的機関への相談の記録などが証拠になります。しかし、暴行の途中で証拠作りにまで気を配ることは大変難しい状態なので、激しいDVが起きた時は迷わず警察や公的機関への通報を行ってください。

身を守ることが最優先です。ケガをされた場合には医師に診断書の作成やカルテ上に記録を残してもらうためにも受けた行為や経緯を話しておくことも重要です。度重なる暴行が続いている場合には保護命令※の申立を行うためにも記録を何かしらの形で残していくことが大切です。

※保護命令は最後に解説します

精神的DVの場合

いわゆるモラハラである精神的DVの場合には身体的DVよりも記録を残すことが難しいため、まずは日常的に苦痛を感じていることをメモや日記などに書き出してみましょう。日付、言われた内容などを蓄積していくことで証拠になります。

また、音声も手段の1つです。じわじわと精神的苦痛が増えていくことがモラハラの特徴です。もしも心身のバランスに影響し、うつ病などを発症した場合には身体的DVと同様に診断書の作成を依頼しましょう。

経済的DVの場合

生活に必要なお金をもらえない、ということも離婚理由の1つです。こうした経済的DVの場合には支出と収入の状況が分かるような家計簿が役立ちます。

また、生活費がもらえず親族から援助を受けている場合にはその証拠、借金をしている場合には使用用途などを記録していくことが大切です。

性的DVの場合

性的DVは記録を残すことに躊躇する人もおられます。しかし避妊を拒否する、望まぬ妊娠を強制されるなどは性的DVに該当します。

行為を断ることが怖く産婦人科でピルを処方されている方は領収書、性的暴行を受け怪我をされた場合には診断書をもらうようにしましょう。また、できれば受けたことの記録を日時や出来事が分かる形で残すと証拠になります。公的機関への相談も1つの方法です。

DVで慰謝料を請求する方法

証拠をある程度準備でき、離婚に踏み切る場合には慰謝料の請求に向けて具体的な段階に入ります。一般的に離婚は協議離婚と言い、離婚の同意や慰謝料の額について話し合いから入ることが多いですが、DVが背景にある場合には直接の話し合いは更なるトラブルを誘引する可能性があります。

特に恒常的に暴力行為に及んでいる配偶者と面し、交渉をすることは避けましょう。まずは離婚やDVに精通している弁護士に相談をし、水面下で準備を進めることをおすすめします。

弁護士に相談をすると証拠作成を行った後、然るべきタイミングで離婚調停へ持ち込むことができます。弁護士が事件を受任すると、依頼者の窓口となって交渉をしてくれるため、日頃から受けていたストレスや暴力から解放されるでしょう。

【関連】離婚調停の弁護士費用の相場と依頼するメリット

離婚する際には保護命令も視野に入れて準備を進める

モラハラなどのDVは男女ともに受けている傾向がある一方で、女性が受ける配偶者からのDVは身体的暴力が多くなっています。先に紹介した令和元年度の司法統計を見ると、女性側における申立ての動機の第4位は、暴力を受けたことを理由に挙げているのです。

性差を利用した悪質な行為ですが、恒常的に暴力が続いていると恐怖心から逃げられなくなってしまう女性は決して少なくないのです。そこで「保護命令」も視野に入れて離婚準備を進めることがおすすめです。

保護命令とは、被害者側が裁判所に対して保護命令を申立することで、同居の解消や接近禁止などを裁判所から相手方へ命令することを言います。

配偶者暴力相談支援センターの職員や警察職員に対して相談をしておくと保護命令はよりスムーズに行われます。身を守るためにもこうした制度の活用も検討してみてください。

【参考URL】
保護命令とは|内閣府男女共同参画局
配偶者暴力相談支援センター | 内閣府男女共同参画局

まとめ

夫婦間で起きるDVは親密な関係であるが故にどこからがDVなのかわからなくなり、慣れてしまうことにより周囲から孤立を深めることも少なくありません。少しでも苦痛を感じた段階で、まずは気楽な相談相手を見つけるつもりで弁護士に法律相談を開始してください。

離婚問題やDVに精通した弁護士と話すことで、解決の糸口が見つかります。慰謝料のきちんと請求し、新しい人生を踏み出すためにもまずはお気軽にご相談ください。