あなたは今、不倫相手の配偶者から突然慰謝料を請求されて、困惑していることとお察しします。
たとえ既婚者と恋愛関係にあったのが事実であっても、どうにかして慰謝料の支払いを拒否したいと考えていませんか?
この記事では、不倫慰謝料の支払いを拒否できるケースや支払いを拒否する場合の注意点などを紹介します。
不倫慰謝料を請求されたら、たとえ支払い義務が発生しないケースであっても、請求を無視してはいけません。まずは落ち着いてこの記事を読んでいただき、どのように対応するか検討していただければ幸いです。
目次
不倫慰謝料の支払いを拒否できる7つのケース
不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されても、必ずしも支払う必要があるとは限りません。
支払いを拒否できるケースもあるため、支払う必要がある慰謝料かどうか見極める必要があります。
不倫慰謝料の支払いを拒否できる主なケースとして、以下の7つが挙げられます。
以下で、詳しく紹介します。
不倫相手と性的関係を持っていない
不倫相手と性的関係を持っていない場合は、不倫慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
不倫(不貞行為)とは、既婚者が配偶者以外の人と自由意思に基づいて性的関係を持つことをいいます。性的関係を持っていない場合は不貞行為に該当しないため、原則として慰謝料の支払い義務は発生しません。
ただし、一般常識的にみて既婚者としての交際の範囲を逸脱していると判断される場合には、性的関係を持っていなくても慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。
性的関係を持っていなくても慰謝料請求の対象となるかどうかについては、「不貞行為なしで慰謝料請求された!あなたの危険度チェックと8つの裁判例」をご参照ください。
不倫相手に性的関係を強要された
不倫相手に性的関係を強要された場合は、不倫慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
不倫相手による暴行や脅迫により強制的に性的関係を持たされた場合は、自由意思に基づいて性的関係を持ったとはいえないため、原則として慰謝料の支払い義務は発生しません。
ただし、あなたの意思で断れる状況だった場合には、慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。
不倫相手が既婚者だと過失なく知らなかった
不倫相手が既婚者だと過失なく知らなかった場合は、不倫慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
慰謝料の請求原因となる不法行為が成立するためには、故意または過失が必要です。不倫相手が既婚者だと知らなかったことに落ち度がない場合は、故意・過失がないため、原則として慰謝料の支払い義務は発生しません。
ただし、相手が既婚者だと知らなかったと言えば、故意・過失がなかったと当然に認められるわけではありません。あなたが注意すれば既婚者だと気づけたと判断された場合には、過失があったとして慰謝料の支払い義務が発生する可能性があります。
不倫が始まる前から相手夫婦の婚姻関係が破綻していた
不倫が始まる前から相手夫婦の婚姻関係が破綻していた場合は、不倫慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
不倫が始まる前から相手夫婦の婚姻関係が破綻していたのであれば、不倫によって平穏な夫婦生活を送る権利や利益を侵害したとはいえません。他人の権利や利益を侵害していないのであれば不法行為には該当しないため、原則として慰謝料の支払い義務は発生しません。
ただし、相手夫婦の婚姻関係が破綻していたかどうかは、さまざまな事情が考慮されるため、その判断は簡単ではありません。専門的な知識が必要になるケースも多いため、ご自身で判断できない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
時効が成立している
時効が成立している場合は、不倫慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
不法行為に基づく慰謝料請求権は、損害及び加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年のいずれか早い時点を経過すると慰謝料請求権そのものが消滅します。
時効期間を経過している場合はそもそも慰謝料を請求する権利がないため、慰謝料の支払い義務は発生しません。時効が成立していることを理由に慰謝料の支払いを拒否する場合は、相手方に「時効が完成している」と主張する必要があります。
不倫の慰謝料請求の時効については、「不貞行為の慰謝料請求はいつまで?起算点や時効が近い時の対処法」をご参照ください。
相手配偶者が不倫の証拠を持っていない
相手配偶者が不倫の証拠を持っていない場合は、不倫慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
不倫の証拠がなくても慰謝料請求はできますが、証拠がなければ不貞行為を立証できません。あなたが支払いを拒否すれば、相手が追及することは難しいでしょう。
相手配偶者から慰謝料を請求されたら、不倫の証拠の提示を求めることをお勧めします。
もっとも、交渉段階では証拠の提示は必須ではありません。そのため、相手が証拠を掴んでいないと見込んでいても、決定的な証拠を切り札として残している可能性も否定できません。
不倫相手が配偶者に対し既に十分な慰謝料を支払っている
不倫相手が配偶者に対し既に十分な慰謝料を支払っている場合は、不倫慰謝料の支払いを拒否できる可能性があります。
不倫慰謝料は連帯債務であるため、当事者2人が連帯して慰謝料を支払う義務を負います。当事者の一方が十分な金額の慰謝料を支払っている場合には慰謝料請求権は消滅するため、慰謝料の支払い義務は発生しません。
ただし、相手配偶者から「夫(または妻)から慰謝料は支払ってもらったけど、それは慰謝料の一部に過ぎない」などと主張されたり、不倫相手に求償権を行使されたりする可能性があります。
不倫相手に求償権を行使された場合の行動については、「不倫慰謝料を不倫相手に求償されたらすべき行動と確認」をご参照ください。
不倫慰謝料の支払いを拒否する理由にはならない3つの言い訳
不倫慰謝料の支払いを拒否する理由にはならない主な言い訳として、以下の3つを紹介します。
お金がない
お金がないことは、不倫慰謝料の支払いを拒否する理由にはなりません。
不倫をしたのであれば、お金がなくて支払いが困難でも責任を取る必要があります。
支払い義務がある慰謝料を請求されたが支払うお金がない場合、以下のような対応を検討する必要があります。
- 支払える金額までの減額を求めて交渉する
- 分割払いを提案する
- 親族に立て替えてもらう
不倫慰謝料を払えない場合の対処法については、「不倫慰謝料の請求をされた!払えない場合はどうすればいいの?」をご参照ください。
不倫相手が積極的に誘ってきた
不倫相手が積極的に誘ってきたことは、不倫慰謝料の支払いを拒否する理由にはなりません。
不倫相手に積極的に誘われたという事情は、慰謝料額の算定の際に考慮される可能性はあります。しかし、積極的に誘われたとしても断ることもできたといえるため、原則として慰謝料の支払い義務は発生します。
不倫相手が積極的に誘ってきたことを言い訳に、慰謝料の支払いは拒否できません。
不倫相手から夫婦関係が上手くいっていないと聞いていた
不倫相手から夫婦関係が上手くいっていないと聞いていたことは、不倫慰謝料の支払いを拒否する理由にはなりません。
不倫相手から夫婦関係が上手くいっていないと聞いていただけ、聞いたことをそのまま鵜呑みにしていただけでは、あなたに落ち度(過失)があったと認められるケースが多いためです。
「妻(または夫)とは仮面夫婦だから離婚するつもりだ」「妻(または夫)よりも大切だ」などと口では言っていても、実際のところ夫婦関係は悪くないというケースは多いです。不倫相手から夫婦関係が上手くいっていないと聞いていたと主張しても、夫婦関係が破綻していたと認められるケースは少ないでしょう。
夫婦関係が破綻していたことを理由に支払いを拒否する場合は、不倫を始める前から夫婦関係が破綻していたことを証明する必要があります。
不倫慰謝料の支払いを拒否する場合の注意点
不倫慰謝料の支払いを拒否する場合の主な注意点として、以下の2つが挙げられます。
以下で、詳しく紹介します。
請求を無視するだけでは支払いを拒否できない
支払いを拒否できる7つのケースに当てはまる場合でも、請求を無視するだけでは不倫慰謝料の支払いを拒否できません。
請求を無視したり、「払わない」と意思表示をしたりするだけでは請求は止まらないケースが多いため、あなたの状況に応じた対応をする必要があります。
例えば、時効の成立を理由に支払いを拒否するなら、時効の援用を主張しなければ時効は完成しません。不倫相手に性的関係を強要されたことを理由に支払いを拒否するなら、その証拠を示さなければ、相手を説得することは難しいでしょう。
不倫慰謝料の支払いを拒否する理由があるなら、その根拠を示して丁寧に説明し、相手に納得してもらう必要があります。
最終的に裁判にもつれ込む可能性がある
不倫慰謝料の支払いを拒否する場合、最終的に裁判にもつれ込む可能性があります。
支払いを拒否する場合、正しい法的知識や相手を納得させられるだけの交渉スキルが必要です。それらを備えて支払い拒否の交渉をしたとしても、相手が感情的になっていると、あなたの言い分が全く聞き入れられなかったり、逆上させたりするかもしれません。交渉が暗礁に乗り上げると、話し合いでは解決できないと判断されて、相手が訴訟を提起する可能性があります。
ただし、支払いを完全に拒否することは難しい場合でも、減額に応じてもらえるケースもあります。
相手の主張に応じるべきか、それとも裁判に駒を進めて解決を図るべきか、しっかり考えながら対応することがとても重要です。
不倫慰謝料の支払いを拒否する場合は、弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。
不倫慰謝料の支払いを拒否したい場合に弁護士に頼るべき4つの理由
不倫慰謝料の支払いを拒否したい場合に弁護士に頼るべき主な理由として、以下の4つが挙げられます。
以下で、詳しく紹介します。
慰謝料の支払いを拒否できるケースかどうか判断してもらえる
弁護士に相談すれば、慰謝料の支払いを拒否できるかどうか判断してもらえます。
慰謝料の支払いを拒否できるかどうかの判断は簡単ではありません。法的知識が必要になることも少なくないため、ご自身で判断するのは難しいといえます。
弁護士に依頼すれば慰謝料の支払いを拒否できるケースかどうか適切に判断してもらえるため、どのように対応すべきか判断しやすくなります。
支払いを拒否できない場合も減額できるかどうか判断してもらえる
弁護士に相談すれば、支払いを拒否できない場合でも、減額の余地があるかどうか判断してもらえます。
支払いを拒否するのが難しい場合でも、以下のような事情があれば、慰謝料を減額できる可能性があります。
- 相手夫婦の婚姻期間が短い
- 不倫の期間が短い・不貞回数が少ない
- 社会的制裁を受けている
- ダブル不倫である
- 求償権を放棄する
上記に該当しない場合でも、請求金額が以下の金額を大幅に超える場合には、減額を求める余地があると言えるでしょう。
- 相手夫婦が離婚しない場合:150万円以上
- 相手夫婦が離婚する場合:200万円以上
弁護士に依頼すれば、あなたの状況では慰謝料額はいくらぐらいが妥当なのか、減額事由があるかどうか等、適切に判断してもらえます。
慰謝料の減額を狙えるケースについては、「不倫慰謝料の減額を狙えるケースと狙えないケース」をご参照ください。
交渉力に長けているため交渉をスムーズに進められる
弁護士に依頼すれば、交渉をスムーズに進められます。
弁護士は豊富な法的知識に加え、交渉力に長けています。相手の感情を逆撫でしないよう配慮しながら、相手の主張に対して的確に反論できるため、支払い拒否や減額の交渉をスムーズに進められるでしょう。
交渉のプロである弁護士に依頼すれば、スムーズな交渉が期待できるため、早期解決も期待できます。
交渉から裁判まですべての手続きを任せられる
弁護士に依頼すれば、交渉から裁判まで全ての手続きを任せられます。
弁護士は、交渉から裁判までのすべての段階で代理人として行動できるため、弁護士に依頼すれば解決までのすべての交渉や手続きを一任できます。
あなたの負担が最小限で済むため、毎日の生活リズムを崩すことなく解決を図れるでしょう。
まとめ
不倫相手の配偶者から慰謝料請求されたら困惑するのも無理もありませんが、冷静に対応することがとても大切です。
拒否できる慰謝料を支払ってしまう、相場からかけ離れた高額な慰謝料の支払いを認めてしまうなど、後悔することになりかねません。慰謝料請求されたら、まずは落ち着いて請求内容を確認しましょう。
慰謝料請求にご自身で対応するのに不安があるなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。当事務所は、不倫問題に関する累計10,000件を超えるご相談をいただいているため、豊富な経験と解決ノウハウを有しております。
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