図でわかる!不貞慰謝料の求償権とは?知っておくべきポイントを解説

  • 最終更新日: 2024.10.23

ネット上で不貞慰謝料について調べていると、度々求償権という言葉が登場してくるかと思います。

不貞慰謝料の求償権は、慰謝料を請求した側・慰謝料を請求された側どちらにも影響を与える権利です。しかし、求償権の説明は少し法律的な側面が強いですから、全部を理解するのはなかなか難しいでしょう。

この記事では、求償権について知っておいてほしい基本的な事項について、簡単な図を交えながら解説しています。
ぜひ参考にしてください。

目次

不貞慰謝料の求償権とは?

不貞慰謝料の場面で出てくる求償権とは、どんな権利なのでしょうか?
求償権の定義や求償権に関する基本的な事項について、順を追って説明していきます。

不貞慰謝料の求償権と負担割合

不貞をした既婚者と不倫相手は、不貞によって共同して被害者を傷つけたことになります。

このことを、法律用語では共同不法行為といい、不貞をした既婚者とその不倫相手を共同不法行為者といいます。つまり、二人は共同で不貞慰謝料の支払い義務を負っています
共同でした不法行為に対しては、共同で責任を負わなければならないということです。
そのため、不貞をされた側が慰謝料請求をする場合に、自分の配偶者に慰謝料を請求するのか、配偶者の不倫相手に慰謝料を請求するのか、もしくはその両者に慰謝料を請求するのかを自由に選択できます。

ここで、夫に不貞をされた妻が、夫の不倫相手である女性に対して慰謝料請求をした場合を考えてみましょう。

不倫相手からしたら、自分だけ慰謝料を支払わなければいけないことに納得がいかないでしょう。もちろん、不貞をしてしまった以上、慰謝料を支払う必要がありますが、同じく不貞をした夫は、慰謝料を支払うことなく、離婚もしないで平穏に暮らしいるのは不公平に感じることでしょう。

この不公平を解消するために、求償権が存在します。
不倫相手は、奥さんに慰謝料を支払った後で、共同で責任を負っている不貞をした夫に対して、責任割合に応じた額の支払いを請求できます。この権利を、求償権といいます。

ここで責任割合という言葉が初めて出てきました。
責任割合とは、不貞関係にあった二人のどちらにどれくらいの責任があるかを示すものです。
責任割合は必ず5:5になるとは限りません。例えば、初めに誘ったのは不貞をした夫であり、その後も夫が積極的に関係を迫っていたといった事情があり、夫が主導していたようなケースでは、夫の責任割合が大きくなります。

このように、責任割合は、交際開始の経緯や交際時の対応、当事者の年齢等を考慮して決められます。
なお、話し合いによる場合には、当事者の合意があれば自由に責任割合を決められます。

以上のことから、具体的な事例を考えてみましょう。

不倫相手は、奥さんに対して、慰謝料200万円全額を支払いました。
不貞をした夫は何らの金銭負担をしていません。不貞をした二人の責任割合は5:5であったとします。

この場合、不倫相手は、不貞をした夫に対して責任割合に応じた額(責任割合が5:5の場合は)である100万円を請求できます。

ここまでの説明で求償権と責任割合について少しだけお分かりいただけましたでしょうか?

次は、求償権行使の要件について見ていきましょう。

求償権行使の要件

求償権はいつ・どんなときにも使える権利ではありません。求償権の行使には、一定の要件が必要です。

求償権の行使が認められる要件は、次の4つです。

  • 慰謝料請求された
  • 自分の不倫相手は慰謝料請求されていない
  • 請求された慰謝料を既に支払った
  • 求償権放棄の合意をしていない

求償権は、慰謝料を支払った後でしか行使できません。

慰謝料の話し合いの際に、求償権放棄の合意をしている場合には、原則求償権は行使できません。

求償権の時効

求償権にも時効があります。

慰謝料を支払った日から5年が経過すると、時効が完成し、原則として求償権は行使できなくなります。

求償権を行使する側は、時効が完成する前に行使するようにしましょう。逆に、求償権を行使された側は、時効が完成していないかの確認をしましょう。

時効が成立しているかの判断には、専門的な知識が必要になります。求償権の時効について判断が難しい場合には、弁護士に相談するのがよいでしょう。

求償権は事前に放棄できる

求償権は事前に放棄が可能です。

求償権を事前に放棄した場合には、原則として、その後に求償権を行使できなくなります。

不貞慰謝料の交渉の場では、求償権の放棄について話し合われるケースが多くあります。
なぜなら、求償権の放棄には慰謝料請求する側・される側双方に次のようなメリットがあるからです。

  • 【慰謝料請求する側】今後求償権を行使される心配がなくなる
  • 【慰謝料請求される側】求償権放棄を前提とした慰謝料の減額が望める

もちろんメリットだけではありませんから、求償権の放棄については、しっかりと話し合うことが大切です。

次章で、求償権の放棄がもたらす影響について詳しく解説しています。

【不貞された側】不倫慰謝料の求償権の行使・放棄がもたらす影響

不貞慰謝料の求償権の行使・放棄がもたらす影響について、不貞された側の視点で見ていきましょう。

求償権が行使された場合には家計から不倫相手に対して一定額を支払う必要がある

求償権が行使された場合には、家計から不倫相手に対して一定額を支払う必要があります。

配偶者と離婚しないことを前提に考えてみましょう。
あなたが、配偶者の不倫相手に慰謝料請求をし、200万円の慰謝料獲得に成功したとします。
しばらく経ってから、不倫相手からあなたの配偶者に対して、求償権が行使されました。

この場合には、あなたの配偶者は、不倫相手に(責任割合が5:5の場合には)100万円を支払わなければなりません。つまり、離婚をしない場合には、家計に200万円が入り、その後100万円が出ていくことになります。

手続きを2度行わなければならず、時間と手間がかかるというデメリットも挙げられます。

離婚をする場合には、元配偶者に請求が行くだけで、既に家計も別になっているでしょうから、あなたが何らかの影響を受けることはないでしょう。

求償権を放棄してもらった場合には今後求償権を行使されることがなくなる

求償権を放棄してもらった場合には、今後求償権を行使されることがなくなります。

忘れたころに、急に配偶者に対して請求がくることを回避できます。

あなたとしては、配偶者の不倫相手と極力接触したくないでしょうから、求償権の放棄と慰謝料の合意ができれば、今後配偶者の不倫相手と会わなければならないということはほとんどなくなるでしょう。

【不貞した側・独身者】不倫慰謝料の求償権の行使・放棄がもたらす影響

不貞慰謝料の求償権の行使・放棄がもたらす影響について、不貞した側・独身者の視点で見ていきましょう。

求償権を行使した場合は支払った慰謝料から一定額戻ってくる

求償権を行使した場合は、支払った慰謝料のうち一定額が戻ってきます。

例えば、あなたが既に慰謝料として100万円を支払った場合、求償権行使により戻ってくる額は、次の表のとおりです。

あなたが既に慰謝料を支払った場合で、かつ求償権放棄の合意をしていない場合には、不倫相手に対して、求償権が行使できます。

求償権を行使することで、責任割合に応じた金額を支払ってもらえます。

求償権を放棄した場合は原則その後に求償権の行使ができなくなる

求償権を放棄した場合は、原則その後に求償権の行使ができなくなります。

求償権について理解しないまま放棄をしてしまうと、たとえ自分の責任分を超えた慰謝料を支払い、不倫相手は何らの負担もしていない場合であっても、求償権の行使はできなくなります。

したがって、求償権を放棄する場合には、合意した慰謝料額があなたの責任よりも大きい金額になっていないかよく考えましょう。

求償権を放棄した場合は慰謝料を減額してもらえる可能性が高くなる

求償権を放棄した場合は、慰謝料を減額してもらえる可能性が高くなります。

実務では、求償権の放棄を条件に、慰謝料の減額交渉をすることが多いです。

夫婦が離婚しない場合、不貞をした配偶者には慰謝料を請求せず、不倫相手にのみ慰謝料請求するといったケースが多いです。この場合には、慰謝料を請求している側にも、今後求償権を行使される不安を除去できるメリットがあります。

したがって、求償権を放棄する場合には、このことを交渉材料に、慰謝料の減額を交渉していくことになります。

求償権に関するトラブルを防止するための3つのポイント

求償権に関するトラブルを防止するためのポイントは、次の3つです。

 

慰謝料請求した側・不貞をした既婚者・慰謝料請求された側の3者で話し合う

慰謝料請求した側・不貞をした既婚者・慰謝料請求された側の3者で話し合いましょう。

話し合いの場では、慰謝料請求権と求償権の2つが中心となります。
慰謝料請求権は、慰謝料を請求した側・慰謝料を請求された側に関わる権利です。
求償権は、慰謝料請求された側・不貞をした既婚者に関わる権利です。

慰謝料請求と求償権で、主体となる当事者が異なります。

したがって、今後のトラブルを回避するためにも3者で話し合うことが大切です。

離婚しない場合は求償権放棄を前提として慰謝料額を検討する

離婚しない場合は、求償権放棄を前提として慰謝料額を検討しましょう。

2章で解説したとおり、慰謝料を受け取った後で、求償権が行使された場合には、不貞をした既婚者は、不倫相手に対して、責任割合に応じた額を支払う義務があります。

夫婦が離婚しない場合には、慰謝料獲得によって家計にお金が入り、求償権行使により家計からお金が出ていくという構図になります。それにより、手続きも2回かかってしまいます。
そのため、夫婦が離婚しない場合には、求償権放棄を前提に話し合いを進めていくことが多いでしょう。

求償権を放棄してもらうことで、慰謝料を請求される側には、今後求償権行使される可能性をなくせる・手続きが1回で済むというメリットもあります。
これらのメリットを享受するかわりに、慰謝料の金額を下げることを考えましょう。

求償権に関する合意内容を示談書にきちんと記載する

求償権に関する合意内容を示談書にきちんと記載しましょう。

求償権は、慰謝料を請求した側・慰謝料を請求された側だけでなく、不貞をした既婚者にも影響を与えます。
後で、言った・言ってないとトラブルが起きやすいのも特徴です。

後にトラブルを起こさないために、求償権の関する合意内容は示談書にきちんと記載しましょう。

既に不倫慰謝料を支払った!求償権を行使するにはどうすればよい?

「既に慰謝料を支払ったので、不倫相手に一部を負担してほしい!」
既に慰謝料の支払いが済んでいる場合には、求償権の行使が可能です。
以下、求償権を行使する場合の流れについて解説しています。

不倫相手に対して求償権を行使する旨を伝える

不倫相手に対して求償権を行使する旨を伝えましょう。

連絡手段に決まりはありませんから電話やLINEで伝えるのもひとつの方法です。
相手が無視をする可能性がある場合には、内容証明郵便を送るのがおすすめです。内容証明郵便には、いつ・誰に対して・どのような内容の書面を送ったかを日本郵便株式会社が証明してくれるという特徴があります。

そのため、相手に本気度が伝わりやすく、何らかのリアクションを返してくれる可能性が高くなります。

話し合いをする

相手が請求に応じた場合には、話し合いをしましょう。

基本的には、不倫相手と直接会って話すことになるでしょう。
慰謝料請求の示談の際に、不倫相手との接触を禁止する旨の合意をした場合には、この条項に抵触するのではないかと不安に思う方もいるでしょう。

求償権の行使をする目的で、不倫相手と接触することは、合理的な理由に該当しますから、条項に抵触することはありません。
しかし、不倫相手の配偶者に反感を買われる可能性はあるでしょう。あなた一人で話し合いをする場合には、慎重に行動しましょう。

再びトラブルが生じる可能性を少しでもなくしたい場合には、弁護士への依頼を検討しましょう。

話し合いがまとまらない場合には訴訟提起する

話し合いがまとまらない場合には訴訟提起しましょう。

話し合いがまとまらない場合には、訴訟での解決を目指すことになります。

不倫慰謝料の求償権を行使された!まずあなたが取るべき3つのこと

不倫慰謝料の求償権を行使された場合に、まずあなたが取るべき行動は、次の3つです。

  • 求償権を放棄していないか確認する
  • 時効が成立していないか確認する
  • 連絡には無視せずきちんと応じる

以下、詳しく見ていきましょう

求償権を放棄していないか確認する

求償権を放棄していないか確認しましょう。

既に求償権を放棄する合意がなされている場合には、原則求償権を行使できません。

したがって、まずは求償権の放棄の有無を確認しましょう。

時効が成立していないか確認する

時効が成立していないか確認しましょう。

1章で解説したとおり、求償権には時効があります。時効が成立している場合には、原則求償権を行使できません。

したがって、時効の成立の有無を確認しましょう。

連絡には無視せずきちんと応じる

連絡には無視せずきちんと応じましょう。

突然、求償権が行使されたなんてケースも多々あります。既に不倫相手とも関係を解消している人がほとんどでしょうから、「今更請求されても…。」と思う人もいるでしょう。
ですが、連絡をそのまま無視することはやめましょう。無視を続けると、最悪の場合、訴訟に発展してしまうおそれもあります。

連絡にはきちんと対応し、その後は早めに弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

不貞慰謝料の求償権について解説してきましたが、お分かりいただけたでしょうか。

不倫慰謝料の求償権について理解をしておかないと、慰謝料請求が解決した後に、さらなるトラブルを引き起こすことにもなりかねません。慰謝料請求の話し合いに臨む前に、求償権についてしっかりと理解しておきましょう。

慰謝料請求で不安な点がある・求償権を放棄してよいのか迷っている場合には、一度弁護士に相談することをおすすめします。弁護士があなたに不利にならない解決を提案してくれるでしょう。

ネクスパート法律事務所では、不貞問題に強い弁護士が在籍しています。
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