子どもいる夫婦が離婚する際、養育費の取り決めは避けて通れません。養育費は子どもの生活を守るためのもので、親は支払い義務があります。それでも養育費の金額で折り合いがつかず、離婚の話が進まないといった事態になりかねません。
そのようなときに「養育費調停」を申し立てて養育費を取り決める方法があります。ここでは養育費調停の概要と種類、調停の申し立てから終了するまでの流れについて詳しくご紹介します。
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目次
養育費調停とは
養育費調停とは、夫婦間で養育費を決められないときに家庭裁判所で調停委員が立ち会いのもと養育費について話し合い、夫婦間で合意を目指すものです。調停委員は夫婦双方から事情を聴き、提出された資料を参考にしながら公平な解決策を提案します。養育費調停で話し合う内容はおおむね下記の通りです。
- そもそも養育費を支払うか、支払わないか
- 支払う場合、いくら支払うか
- いつまで支払うか(子どもが〇歳まで、など)
- どのような方法で支払うか(一括、分割など)
夫婦間での話し合いの場合、「いくら支払うか」は決まっても「いつまで」「どのような方法で」といった具体的なところまでは話し合いができておらず、離婚後にトラブルになることがあります。
また、養育費の金額を決める際は「養育費算定表」を参考にすることが多いですが、折り合いがつかず養育費が決まらないというケースも珍しくありません。養育費調停なら夫婦間で納得のいく解決方法ができる上、こうしたトラブルを未然に防げるといったメリットもあります。
養育費調停の種類
養育費調停は、離婚するときの養育費について取り決めるとき以外にも離婚後に調停が行われることがあります。子どもが成長するまでの期間、経済事情の変化に伴い、養育費の増額または減額の必要性が出てきたときにも養育費調停が行われます。
養育費請求調停
養育費請求調停とは、離婚後に養育費の請求を相手に求める調停です。離婚時に養育費の取り決めをしていなかった、取り決めをしていても養育費が支払われない、というようなケースで申立てをします。
・養育費請求調停 | 裁判所
・養育費の未払い分を請求する方法と差し押さえできる条件
養育費増額調停
養育費増額請求調停は、離婚時に取り決めた養育費を何らかの事情によって増額してほしいときに申し立てます。養育費の増額が認められる理由としては下記のような項目があります
- 子どもが大学に進学した
- 子どもの病気、事故により高額な治療費が必要
- 受け取る側の収入が減った
- 支払う親の収入が増えた
- 物価の上昇
ただ、養育費を離婚時に一括で支払いを受けた場合、養育費増額請求は認められないことが多いのが現実です。
養育費減額調停
養育費減額請求調停は、支払う側が何らかの事情によって養育費を支払うことが困難となり、養育費の減額を求める調停です。増額請求調停と同様に、調停の前に夫婦間で話し合って合意できれば調停をしなくても構いません。夫婦間で合意できなかった場合に養育費減額請求調停を申し立てます。養育費の減額が認められる具体例は下記の通りです。
- 失業した
- 収入が減った
- 支払う側が再婚した
- 受け取る側が再婚した
- 受け取る側の収入が増えた
なお、親権者が再婚しても、養育費を支払う親の養育費の義務がなくなるわけではないので、養育費を継続して受け取ることはできます。ただ、再婚相手と連れ子が養子縁組をした場合、減額請求が認められる可能性があります。
・養育費は再婚したら貰えない?相手が再婚した場合や減額になるケース
養育費調停の流れ
養育費調停の申し立てから解決までの流れをご紹介します。
家庭裁判所に申し立てをする
まず、必要書類を用意して相手の住所地を管轄する家庭裁判所か夫婦間で話し合って決めた家庭裁判所に申し立てを行います。次に紹介する必要書類を添付し、持参若しくは郵送します。
- 申立書とそのコピー各1通ずつ
- 子どもの戸籍謄本(全部事項証明書)
- 申立人の収入に関する資料(給与明細、源泉徴収票、確定申告書など収入がわかるもの)
- その他、申し立てに必要な書類(子どもの進学先の学費が掲載されている書類など)
申立書は裁判所のホームページからダウンロードできます。また、申立書は元配偶者にも郵送されるためコピーも必要になります。
調停期日の調整、呼び出し状の送付
申立書をもとに家庭裁判所が調停期日を調整し、双方に調停期日呼出状を送付します。申し立てから呼出状が届くまで約2週間、調停開始まで1か月ほどの期間を要します。
・離婚調停の呼び出し状が届いた!調停を申し立てられた側の対処法
調停の開催
呼出状に書かれた期日に家庭裁判所に出向きます。第1回目調停では裁判官1人と調停委員2人が双方の意見を聞きます。1回で合意すれば終了となりますが、合意できなければ1か月に1回程度のペースで第2回、第3回と調停が開催されます。
調停の終了
話し合いによって合意できた場合、調停調書が作成して調停終了となります。
調停で解決しない場合は裁判官が審判で判断
話し合って合意に達しなければ調停不成立として終了し、審判に移行します。審判では裁判官が調停で話し合った内容を考慮した上で養育費の金額を決定します。
養育費調停でよく聞かれること
ここでは養育費調停でよく聞かれる質問をまとめました。調停委員から聞かれた質問に的確に答えるために、あらかじめ答えを準備しておきましょう。
希望する養育費の金額やその根拠
希望する養育費を提示し、なぜそれだけの金額が必要なのか、どのような項目に対して支出するのかといった合理的な説明が求められます。離婚前と同程度の生活をするために必要な費用を計算して質問されたときに提示できるようにしましょう。
現在の収入状況
現在の収入がわかる給与明細や源泉徴収票などを用意します。現在の収入だけで養育費をまかなうことが難しいとわかる書類が必要です。
現在の生活状況
現在の生活状況と希望する養育費の金額が見合うかどうかが判断されます。例えば、子どもが塾に通っていて、いずれは私立校への進学を目指しているといったケースでは、養育費算定表の金額よりもさらに高額な養育費が必要になる可能性もあるでしょう。
そうした生活の状況を確認することで希望する養育費の合理性の有無を確認されます。このようなケースでは塾代がわかる書類や、希望する進学先の学費が書かれた書類を用意しておくと良いでしょう。
まとめ
養育費調停についてご紹介しました。夫婦で離婚に合意していても、養育費で折り合いがつかなかった場合は養育費調停を申し立てて解決を図ります。養育費について話し合う調停ですが、基本的には離婚調停と流れは変わりません。
ただ、こうした一連の手続きをすべて一人で行うのは限界があります。また、希望する養育費を確実に受け取れる保障にありません。納得のいく金額で養育費を受け取りたい方は、離婚問題に詳しい弁護士に相談しながら調停をすることをおすすめします。