離婚時に子どもがいる場合には、養育費の額を決める必要があります。お子様の将来を支えるための大切なお金ですから慎重に議論を重ねて決めるべきものです。では、養育費は一般的にどのぐらいが相場とされるのでしょうか。この記事では養育費の相場や計算方法、平均的な受給金額について解説します。今から離婚を検討される方はぜひご参考ください。

養育費の金額には法の定めはない

離婚をする際に子どもがいる場合には、親権や養育費について話し合うことになります。たとえ離婚をしたとしても父と母である事実に変わりはなく、親権を失ったとしても子どもの扶養義務は残されます。養育費の支払いに関しても当然の義務です。

一方で、養育費の具体的な金額には法の定めはありません。養育費の金額が強制的に決められているわけではないのです。しかし、養育費の金額にある程度の基準がなければ離婚で言い争う二人の着地点がなかなか見つかりません。

そこで、一般的に養育費の金額については家庭裁判所の「養育費算定表」という養育費の早見表を活用して算出しています。おおよその相場を知るためにも大変便利な表です。

養育費の計算方法

※養育費の計算方法は、一般の方にとっては正直わかりづらい部分があるかと思います。ですので養育費の相場を早く知りたい方は次の項目「養育費の相場は月いくら?」をご覧ください。

養育費は親の「基礎収入」に合わせて算出しています。

基礎収入とは 「総収入」から必要経費(税金や住居・光熱費など)を差し引いた金額
総収入とは 夫婦の収入の合計
給与所得者の総収入:源泉徴収票の金額
事業所得者の総収入:課税される所得金額

つまり、年収の全てに対して養育費が算出されるのではなく、生活に必要な経費は引いた金額が養育費の算定の土台となります。次に、子どもにかかる費用について計算をします。最後に父母の基礎収入を按分することで、養育費を算出します。

養育費の計算式

具体的な養育費の計算式は次のとおりです。この項ではわかりやすくするため、養育費の義務者を「支払う側」、養育費の権利者を「受ける側」と表記しています。

養育費の年額=子どもの生活費×支払う側の基礎収入÷親二人を合算した基礎収入

  • 支払う側の基礎収入=総収入×基礎収入割合
  • 受ける側の基礎収入=総収入×基礎収入割合
  • 子どもの生活費=支払う側の基礎収入×(子の生活費指数の合計÷(支払う側の指数+子の指数合計))

基礎収入割合とは

基礎収入割合とは、総収入から基礎収入を算出する際に使われる数字です。税金や経費をすべて計算をすることは大変な作業なので、一般的な養育費の算定時には基礎収入割合と呼ばれる数字を使用します。

最新の数字は令和元年に更新されており、総収入に合わせてパーセンテージで決められています。給与所得者の場合には54~38%、自営業者の場合には61~48%の範囲です。例として給与所得者で年間の総収入が500万の方なら、42%です。

関連:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所

生活費指数とは

生活費指数とは、生活費の割合を示す数字です。厚生労働省が定めている「生活扶助基準」を基に算出された最低生活費に平均的な教育費を加算することで算出されています。

生活費指数は成人を100とした場合、0歳から14歳までの子が62、15歳から19歳までの子が85です。例えば、10歳の子と15歳の子を連れて離婚をする場合、子どもの生活費は「支払う側の基礎収入×(147÷(147+247))」という式で算出できます。

関連:最低生活費の算出方法|厚生労働省

養育費の相場は月いくら?

養育費の相場は算定表を参考にする

養育費の計算方法について紹介しましたが、複雑な計算だと感じたのではないでしょうか。そこで、冒頭に触れたような「養育費算定表」が活躍しています。この表は裁判所HP上で公開されているので、誰でも気軽に養育費の相場を知ることができます。

関連:養育費算定表 | 裁判所

例として、養育費を支払う側の年収が500万、受けとる側の年収が0円であり、子どもの年齢は3歳とします。この場合に利用する養育費算定表は「(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)(PDF:515KB) 」です。ファイルの年収が交差するところを見ると、このケースの妥当な養育費の相場は6~8万であるとわかります。

養育費の平均受給金額の状況

厚生労働省が実施した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告.pdf」によると、養育費を受け取っている世帯の平均受給金額は「母子世帯では 43,707 円」、「父子世帯では 32,550 円」という数字があります。

平成28年度 養育費の平均受給金額
母子世帯 父子世帯
総平均 43,707円 32,550円
子1人 38,207円 29,375円
子2人 48,090円 32,222円
子3人 57,739円 42,000円

母子世帯と比べて父子世帯の方が平均受給金額が少ないですが、一般的には男性の方が所得が多いケースが多いため、受け取る金額は少ない傾向にあります。また、母子世帯・父子世帯ともに「養育費を受けたことがない」と回答した割合は半数を超えており、離婚時に養育費の取り決めをしていないケースが目立ちます。

相手と関わりたくないという気持ちで養育費の取り決めをするのが億劫になることもあるかと思いますが、そういった時は弁護士に依頼して養育費の取り決めをしっかり行うことをおすすめします。

関連:養育費について|法務省(PDF)

養育費の相場は双方の年収で大きく異なる

養育費の相場は子どもの年齢よりも、双方の年収によって大きく変動します。例えば双方の年収が低く、子どもの年齢も小さい場合には養育費の一般的な相場はとても低く2~4万の範囲に該当することもあります。

一方で養育費を支払う側である義務者の年収が2000万を超えるケースでは、養育費を受ける側の権利者の年収が0円であっても20万以上の養育費が適正な額とされます。このように双方の年収によって養育費算定表が定める養育費の相場は相当の開きがあるのです。

養育費は相場以上に受け取ることはできないの?

養育費は交渉で上乗せもできる

養育費が養育費算定表の定める範囲が妥当な相場とされても、子どもの現在の養育状況によっては交渉で上乗せができる場合もあります。すでに私立学校へ入学して通学している場合は、公立学校の費用を考慮して作られた養育費算定表では明らかに金額が少ない可能性があります。

離婚に伴い子どもの進学や通学に大きな変更が生じることの無いように、この点は双方が十分に交渉を重ねるべきでしょう。また、塾の費用や医療に関する費用なども考慮がなされることがあります。相場通りの金額以外のケースもよくあるので、この点は交渉や調停で決定することが一般的です。

関連:養育費はいつまで請求できる?支払い義務は何歳まで?

個人事業主や会社経営、医師との養育費交渉は難航するケースも

給与所得者ではない個人事業主、会社経営者や医師などの職種の方と養育費を交渉する場合には難航が予測されます。まず個人事業主の場合、養育費の算定は「確定申告で申告した収入」を基に行われています。

しかし、ご自身の収入はとても低く設定しており、実態と額面上の収入が異なっていることも多いでしょう。確定申告上の収入金額では到底納得ができない養育費の額も予測されるので、この場合は養育費の算定・交渉の専門家である弁護士へのご相談がおすすめです。

また、会社経営や医師の方などは高額の収入を得ている場合も多く、算定表には収まらない金額の収入を得ていることもよくあります。加えて、こうした方々は不動産所得や株式所得などでも大きな収入を得ている可能性も大きいのです。

一方で会社経営や医療法人の経営上、あまりに高額な養育費を求められても到底応じられないというケースも想定されます。給与所得者以外の方の養育費の算定は、非常に細かな計算や資料の収集、交渉が必要となるので、弁護士へ早めに相談をしましょう。

まとめ

この記事では養育費の相場や計算方法などを中心に解説しました。子どもの将来のために必要な養育費は、子どもの年齢によっては長期間にわたって支払う・受領することになります。

その場の勢いで決めてしまうのではなく、算定表などを使ってしっかりと協議を重ねて決定しましょう。また、個人事業主や会社経営の方など養育費の算定が難しいケースは早期に弁護士へご依頼されることがおすすめです。調停・審判にも対応できる離婚弁護士におまかせください。