養育費の未払いは多くの方が悩まれている問題です。相手が養育費の支払いを怠った場合、そのうち支払うだろうと放置せず、なるべく早めに対処をすることが大切です。連絡しても相手が応じないときは、調停や強制執行などを用いて養育費の支払いを求める方法があります。今回の記事では、養育費を支払わない相手へ請求・差し押さえをする方法について解説します。

未払い養育費の請求方法

相手が養育費を支払ってくれない場合、どうすれば良いのでしょうか。まずは、相手が養育費の支払いを怠った場合に有効な請求方法について解説します。

相手に直接連絡して請求する

養育費の未払いがあった場合、まずは相手に催促の連絡をとってみましょう。連絡の方法は、電話でもメールでも何でもかまいません。相手が連絡を返さず無視をする場合は「内容証明郵便」を送り催促する方法もあります。

内容証明郵便は、どのような効力を持ちますか?
内容証明郵便には、送付された文書の内容、差出人及び受取人、差し出した日の日付が郵便局(日本郵便株式会社)により証明されるという効力があります。

文書の内容が証明されますので、後日、訴訟等において、意思表示の日付や内容等を立証するための立証方法として用いられます。

引用元:法テラス

内容証明郵便を利用して催促をすることで、相手に心理的なプレッシャーを与えることができます。

養育費請求調停

養育費の支払いについて公的文書を作成しておらず、相手と連絡や折り合いがつかないような場合は、家庭裁判所に支払い請求の調停を申し立てるという方法があります。

養育費調停は、家庭裁判所の調停委員を仲介役として、養育費の金額や支払い方法などについて話し合う手続きです。当事者双方が合意すれば、調停が成立し、内容は調停調書に残されます。一方で、調停で解決できない場合には、裁判官が審判で妥当な養育費について判断します。

養育費請求調停 | 裁判所

履行勧告・履行命令

家庭裁判所の調停や審判、判決などによる取り決めがあるにもかかわらず、相手が養育費を支払わない場合、履行勧告・履行命令制度を利用できます。

履行勧告とは、相手の未払い状況などを調べ、家庭裁判所から相手に支払いの勧告をしてもらう制度です。基本的には支払いを促す制度であるため、強い法的強制力はありません。しかし、裁判所からの連絡が心理的プレッシャーとなり、一定の効果が期待できるでしょう。

一方で履行命令とは、一定期間内に支払うよう裁判所から命じてもらうことを言います。履行命令に応じない場合は10万以下の過料に処せられる可能性がありますが、履行命令も支払いを強制させることはできないという点に注意しましょう。

履行勧告手続等 | 裁判所

強制執行

裁判所や公証役場を通して養育費の取り決めをしている場合、強制執行を申し立てるという方法もあります。強制執行は裁判所を通じて相手の財産を差し押さえ、強制的に支払いを確保するのです。対象となる財産は、主に現金や預貯金、不動産や生命保険、給料などの債権です。なお、給料を一度差し押さえれば、相手が会社を辞めない限り、今後の養育費全てについて差し押えの効力が続きます。

養育費の強制執行とは|デメリットとお金がとれない場合の対処法
未払い養育費で相手の給料を差し押さえするには

未払い養育費を強制執行で差し押さえする方法

ここからは、養育費を強制執行で回収する方法について解説します。

強制執行で財産を差し押さえできる条件

裁判所で強制執行の手続きを進めるためには、以下の条件をクリアしている必要があります。

  • 債務名義がある
  • 相手の現住所を把握している
  • 相手の財産を把握している

債務名義とは請求権の範囲や債権者・債務者を示したもので、強制執行の手続きをする際に必要となる文書を指します。具体的には、以下の書類が債務名義となります。

  • 強制執行認諾文言付き「公正証書」
  • 調停離婚で作成される「調停調書」
  • 離婚審判で作成される「審判書」
  • 裁判時で作成される「和解調書」や「判決正本」

そもそも財産を差し押さえるためには、養育費の支払い義務者の現住所と財産を把握しておかないことには差し押さえられません。そのため、差し押さえるだけの財産があるかどうか、相手の財産情報を把握しておく必要もあります。

強制執行の申立て方法

それでは、実際の強制執行の申し立て方法・流れについて解説します。例として、給料の差押えを前提とした強制執行のケースをみていきましょう。

  1. 申立てに必要な書類を取得する
  2. 裁判所で手続きをする
  3. 裁判所が差押命令を相手と第三債務者に送達する
  4. 相手の勤務先と差し押さえの方針を話し合う
  5. 回収できたら裁判所に届け出を提出する

申し立てる裁判所は、基本的には相手方の住所地にある地方裁判所になります。強制執行の審査が完了すると、裁判所から支払義務者である相手と第三債務者(相手の勤務先)に差押命令が送達されます。その後、申立人に裁判所から送達証明書が届きます。

差押命令が送達されて1週間が経過すれば取立てを実行できるため、差し押さえ先となる銀行や勤務先などと差し押さえの方針を決めましょう。未払い分の養育費を回収できたら、裁判所に取立届を提出して完了です。

未払い養育費を強制執行で差し押さえできないケース

先述した通り、未払い養育費について差し押さえるためには条件があります。特に以下のケースでは、強制執行で差し押さえできないため注意しましょう。

債務名義がない

債務名義がない段階では、差し押さえできません。債務名義とは、先述した通り請求権の存在などを示した文書で「強制執行しても良いですよ」という許可証のようなものです。

そのため、離婚時の取り決め内容を単なる合意書にまとめていた場合、合意書は「債務名義」には該当しないため、強制執行が認められません。もちろん、合意書を作成せず、口約束のみの場合も同様です。協議離婚の際には、将来的なトラブルを想定して、公正証書を用意しておくことをおすすめします。

相手の現住所がわからない

相手の現住所がわからない場合も、差し押さえできません。差し押さえ時に提出する書類に、相手の住所が記載できなければ、書類不備とみなされてしまうからです。

2020年の民法改正に伴って、未払い養育費の回収率は上がったといわれていますが、相手の住所に関しては改正後も自分で調べるのが実情です。相手の住所を調べる方法は、戸籍の附票や探偵・弁護士への依頼などが挙げられます。

逃げ得は許さない 養育費未払いに刑事罰|Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

相手に支払い能力がない

相手に養育費の支払い能力がない場合も、差し押さえできない可能性が高いでしょう。極端な話、仮に裁判所から支払い命令が出た場合でも、差し押さえる財産が何もなければ強制執行の効果を得られません。

なお、相手があまりにも養育費の支払いに応じない場合、事情によっては相手の両親に子どもの扶養料を請求できることがあります。

未払い養育費の請求に関してよくある質問

最後に、未払い養育費の請求でよくある質問について紹介します。

未払い養育費の請求に時効はある?

未払い養育費の請求の時効期間は、取り決めの有無によって異なります。離婚協議書や公正証書の場合は5年、判決・調停・審判など裁判所の手続きによって決定された場合は10年で時効を迎えます。

一方、取り決めのない場合はそもそも時効自体が存在しません。したがって、子どもが成人するまでの間であればいつでも請求が可能です。しかし、過去分の養育費を請求することは難しく、一般的には請求した時点からしか養育費を受け取れないことが多いため注意しましょう。

養育費はいつまで請求できる?支払い義務は何歳まで?

養育費が不払いの時は国が立て替えてくれる?

今のところ、国が不払いの養育費を立て替えてくれる制度はありません。一方、いくつかの地方自治体では、不払いの養育費についての立て替え制度が実施されています。

たとえば、兵庫県明石市では平成30年から「養育費立替パイロット事業」と称して、未払いの養育費を保証会社が立て替え、相手に請求するという取り組みを始めました。また、滋賀県湖南市や大阪府大阪市、東京都港区などでも公正証書作成費用の補助や保証会社を利用した養育費の受け取り支援などのサービスを展開しています。

未払い養育費の請求を弁護士に依頼したら費用はいくら?

離婚時に公正証書で取り決めしたにもかかわらず、相手が養育費の支払いを怠った場合、回収にかかる弁護士平均費用の相場は以下の通りです。

養育費請求の弁護士費用相場
法律相談料 5,000円〜10,000円(1時間)
着手金 5〜20万円
成功報酬 実際に回収した養育費の10〜20%

公正証書や調停調書、審判書や判決書のいずれかを作成した場合、強制執行の手続きが可能です。相手との交渉がいらないため、5〜20万円程度が着手金の相場とされています。

一方、取り決めを文書にまとめていない場合は相手と交渉や調停、審判などをまずは行わなければなりません。こうした場合、一般的に10〜40万円ほどの着手金がかかると思っておいた方が良いでしょう。ただし、上記の費用はあくまで目安です。必ずしも相場内の費用が請求されるとは限らないため、詳細な金額については直接弁護士事務所に確認してみましょう。

まとめ

今回は養育費の未払いに対する請求方法について解説しました。本来養育費は、子どもが受け取るべき権利として発生するものです。支払い義務のある側が支払いを怠った場合には、子どものために泣き寝入りせず、しっかりと催促して相手から回収しましょう。相手がきちんと養育費を支払ってくれるか不安という方は、法律のエキスパートである弁護士に相談することをおすすめします。