盗撮で不起訴になる確率は?示談しないとどうなる?不起訴を得る方法
盗撮をした場合、どのくらいの確率で不起訴になるのでしょうか。
2022年の盗撮の検挙件数は約5,700件となり、過去最多を更新しました。今やスマホなどで気軽に撮影でき、誰にでも簡単に盗撮できるようになりました。
2023年には撮影罪が施行され、迷惑防止条例違反よりも重い罰則が定められました。盗撮には大きなリスクがあります。
初犯だと不起訴になるという情報もありますが事実なのでしょうか。この記事では、盗撮の不起訴について下記の点を解説します。
- 盗撮で不起訴になる確率
- 盗撮で不起訴を獲得するためにすべきこと
- 盗撮の不起訴処分でよくある質問
目次
盗撮事件で不起訴処分になる確率は?
盗撮事件で不起訴処分になる確率は2024年7月現在公開されていません。
なお、法務省によると、2022年に道交法以外の特別法で起訴された割合は45.8%でした。つまり54.2%は不起訴になっています。
特別法というのは、殺人罪などが定められている刑法以外の法律です。例えば、軽犯罪法や覚せい剤取締法などが挙げられます。
上記の起訴率は特別法犯全体の数字となるため、盗撮の不起訴率ではありませんが、参考にしてみてください。
なお、起訴された事案の中には、被害者と示談ができずに起訴されてしまったようなケースも含まれます。
弁護士のサポートを受けることで、不起訴になる確率は高まるでしょう。
盗撮事件の起訴・不起訴の種類
盗撮で罪に問われた場合、起訴や不起訴といった処分が下されます。
ここでは、起訴や不起訴の種類について解説します。
不起訴
不起訴とは、警察や検察が捜査した結果、さまざまな理由で刑事裁判などにせず、事件を終了させることを言います。
不起訴となれば、逮捕の前歴は残りますが、前科がつくことはありません。また、身柄も釈放してもらえます。
不起訴処分には、加害者が心神喪失であるケースや、時効が完成していたケース、被疑者が死亡したケースなど以外にいくつか種類があります。
- 起訴猶予
- 嫌疑不十分
- 嫌疑なし
これらの不起訴処分となるケースについては後述します。
起訴
起訴とは、検察が事件を刑事裁判にかけて処分を決定するよう裁判所に訴えることです。
起訴された場合は、公開の裁判で審理して処分が決定します。公開の裁判を求めることを公判請求と言います。
盗撮の場合は、下記のようなケースだと刑事裁判で裁かれる可能性があります。
- 被疑者が盗撮を否認している
- 盗撮を認めているが、前科がある
- 被害者が18歳未満で児童ポルノにも該当する
- 盗撮のデータを販売していた
ほかにも、教師や医師、警察官など立場を利用した盗撮も、悪質だとして公判請求される可能性があるでしょう。
なお、逮捕などの身柄拘束を受けていなくても、起訴されるケースがあります。身柄拘束を受けずに行われる起訴を在宅起訴と言います。
略式起訴
略式起訴とは、被疑者の同意のもと、簡易的な書面のみの審理で罰金刑に処される手続きです。
略式起訴となるのは、下記のケースです。
- 簡易裁判所の管轄に属する事件であること
- 100万円以下の罰金または科料(1000円以上1万円未満の罰金)が科される事件であること
- 被疑者が同意していること
簡易裁判所の管轄に属する事件とは、罰金や拘留(1日以上30日未満の拘束)、科料にあたる罪などが該当します。
また、簡易裁判所では3年を超える懲役を科すことはできないため、言い渡される刑罰が、3年を超えると予想される場合は、略式起訴となりません。
盗撮の場合は、盗撮自体を認めていれば、略式起訴による罰金刑となるケースが多いです。
略式起訴となった場合、早期に身柄拘束から釈放されるメリットがある一方で、前科がつくことになります。
盗撮事件で不起訴処分になるケース
盗撮事件で不起訴処分となるケースには下記のような種類があります。
- 起訴猶予
- 嫌疑不十分
- 嫌疑なし
なお、法務省によると2022年に不起訴となった人の理由別の割合は下記のとおりでした。
ここでは、盗撮事件で不起訴処分となるケースについて解説します。
起訴猶予
起訴猶予とは、罪を犯した十分な証拠がそろっており、起訴することができるものの、検察の判断で起訴を猶予することです。
例えば、被害者と示談が成立している、本人が反省しているような場合は、検察の判断で不起訴になります。
盗撮で不起訴となるケースのほとんどがこの起訴猶予によるものです。2022年に不起訴となった件のうち、69.2%が起訴猶予でした。
嫌疑不十分
嫌疑不十分とは、被疑者が罪を犯した証拠が不十分で、検察が起訴を断念して不起訴にすることです。
例えば、盗撮のデータは残っているものの、撮影場所や撮影日時が特定できない場合、犯罪の立証が難しくなります。
裁判をしても有罪とはならないため、検察も起訴をしないで事件を終了とします。2022年に不起訴となったうちの21.8%が嫌疑不十分でした(嫌疑なし含む)。
嫌疑なし
嫌疑なしとは、捜査の末に被疑者が罪を犯していないと明らかな場合のことです。
例えば、被疑者にアリバイがあったなどで、嫌疑なしと判断されるケースが考えられます。当然罪を問うことはできないため、不起訴となります。
盗撮初犯だと必ず不起訴になる?
盗撮の初犯の場合、罰金刑となるか、執行猶予がつくと考えられますが、初犯だとしても必ず不起訴になるとは断限らず、起訴される可能性もあります。
盗撮事件では、犯行の内容や被害の程度、被害者の処罰感情、被告人の反省の有無、そして常習性などが考慮されます。
これまで罪を犯したことのない警察官であっても、立場を利用して盗撮を行った事案で、起訴されたり、有罪判決が下されたりしています。不起訴になるとは断言できません。
盗撮の再犯で逮捕されたらどうなる?
盗撮は、ストレス発散などのために繰り返し行うケースや、たまたま警察に知られずに、長期間にわたり盗撮を継続しているケースもあり、常習性の高い犯罪です。
盗撮の再犯で逮捕された場合、どういった処分になるのでしょうか?
起訴される可能性は高まる
例えば盗撮の前科があったり、多数の盗撮データを所持していたりした場合、再犯の可能性や常習性が疑われ、起訴される可能性は高まります。
常習性については、犯罪の内容、動機、そして前科前歴などの事情を考慮して裁判で判断が下されます。
これまで習慣的に盗撮を行っており、今回の犯行がたまたま特定に至った場合は、常習性が高いと判断されます。
なお、多数の盗撮データを所持していても、その余罪すべてが罪に問われるとは限りません。
撮影場所や撮影日時の特定ができない場合、犯罪の立証ができないからです。
ただし、常習性が高いと判断され、処分に影響することはあります。
刑が重くなる可能性がある
常習性が疑われるような場合は、言い渡される処分も重くなる可能性があります。
また、被害者が複数おり、それぞれ別の事件として扱われた場合は、併合罪として処理され、言い渡される刑罰の上限が1.5倍になる可能性もあります。
(有期の懲役及び禁錮の加重)
第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
引用:刑法第47条|e-Gov
例えば、被害者Aさんに対する盗撮と、被害者Bさんに対する盗撮で、裁判が行われた場合、撮影罪の法定刑の上限を1.5倍として、その範囲で処分が言い渡される可能性があります。
盗撮事件で不起訴を獲得するためにすべきこと
盗撮事件を起こしてしまった場合、不起訴を獲得するためにはどうしたらいいのでしょうか。
ここで、不起訴を獲得するためにすべきことを解説します。
弁護士に相談する
もし盗撮で逮捕されたり、警察から事情を聞かれたりしている場合は、弁護士に相談してください。
逮捕されてしまった場合は、そのまま10~20日間勾留される可能性が高く、勤務先などに知られるリスクがあります。
また、逮捕されなくても、起訴されるケースがあります。略式起訴の場合は、通常よりも事件が早く処理されますが、前科がつくことになります。
何より、逮捕されるのではないか、起訴されて裁判になったり、前科がついたりするのではないかと不安を抱え続けるのは精神的にも苦しいでしょう。
不安であれば、まずは専門家である弁護士に相談してください。
被害者と示談する
被害者が特定できている盗撮の場合は、不起訴を得るうえで、被害者との示談が有効です。
被害者との示談が成立すれば、被害者の精神的苦痛に対して賠償を行った、両者で和解したと判断され、不起訴処分となる確率が高まります。
盗撮の示談金の相場は10~50万円程度といわれていますが、個別の交渉の内容によっても異なります。
被害者との示談は、被害者の連絡先がわからない、もしくは交渉に応じてもらえないなど、加害者が行うのは困難です。
弁護士を経由して、謝罪を申し入れましょう。

贖罪寄付をする
もし被害者が特定できない場合、あるいは、示談に応じてもらえない場合は、贖罪寄付をする方法もあります。
贖罪寄付とは、反省の気持ちを形にするために、弁護士会や慈善団体に寄付をすることです。弁護士会に寄付をした場合は、犯罪被害者の支援などに使われます。
実際に贖罪寄付をしたことで、不起訴になる可能性があります。
他にも、盗撮がやめられない場合は、専門のクリニックで依存症の治療や、ストレス管理の指導を受けるなども考えられるでしょう。
盗撮の不起訴処分でよくある質問
ここでは、盗撮の不起訴処分でよくある質問を解説します。
盗撮の被害者と示談しない場合はどうなる?
盗撮の被害者が特定できているのにも関わらず、示談しない場合は、起訴される可能性があります。
一方で、被害者と示談を成立させることで、不起訴処分となる確率は高まるでしょう。
もし被害者が示談に応じない、もしくは、被害者を特定できないような場合は、前述したように、贖罪寄付をする方法があります。
また、示談金の支払いが難しい場合は、分割払いなどを交渉することも考えられるため、不安な人は弁護士に相談をして、サポートを受けるようにしましょう。
盗撮で自首すると不起訴になる?
盗撮をしてしまった場合に自首をすると、不起訴になる可能性があります。
自己の犯罪事実を申告することで下記のようなメリットがあります。
- 逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断され逮捕されずに済む
- 家族や勤務先に逮捕の事実を知られるリスクがなくなる
- 逮捕されないことで実名報道のリスクが減る
- 仮に起訴されても罪が減軽される
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
引用:刑法第42条|e-Gov
なお、自首とは犯罪が発覚していない段階で、自分から犯罪の事実を申告することを指します。
盗撮の余罪多数だと不起訴は難しい?
盗撮の余罪が多数ある場合、それぞれの罪について立証できるのであれば、起訴される可能性があります。
盗撮の余罪は立証が難しく、立件されるケースは少ないですが、余罪があることで、捜査の対象となった盗撮行為の処分に影響が及ぶことはあります。
そのため、被害者と示談をするなど真摯に反省をすることが、不起訴を得るうえで大切です。
まとめ
カメラが発達した昨今、盗撮は誰にでも簡単に行うことができます。
ほんの出来心で盗撮をすれば、大きなリスクを負うだけでなく、常に逮捕や刑罰などの不安に苛まれることになるでしょう。
中には、ストレス発散や盗撮のスリルから、自分でやめることができなくなっている人もいるかもしれません。
盗撮がやめられない場合は、専門のクリニックで依存症の治療を行ったり、ストレス管理の方法を学んだりすることも検討しましょう。
盗撮で警察から連絡が来ている人や、今後が不安な人は、一人で抱えず、まずは弁護士に相談してください。