接見禁止とは?意味・解除方法・差し入れについてわかりやすく解説
接見とは、刑事手続きによって身柄を拘束されている被疑者や被告人と、家族などが収容施設で面会することです。この記事では面会を禁止する処分である接見禁止について、接見禁止になる理由や解除方法等について解説します。
接見禁止とは
逮捕後の勾留期間中に接見禁止がついている場合には、弁護人以外は、例え家族でも会うことができなくなるという制度です。接見禁止とはどのようなものか、解説します。
接見禁止の条文
接見禁止は、刑事訴訟法第81条に規定されています。
第八十一条 裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
第三十九条 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。(抜粋)
接見禁止は基本的に検察官が請求しますが、裁判所が職権で接見禁止決定することもあります。
接見禁止とは何か?
逮捕後、勾留決定前までは、事件について取り調べがあり、通常は家族であろうと会わせてもらえません。
通例は、勾留に切り替わると接見が認められるようになり、家族や友人が会えるようになります。勾留に切り替わったにも関わらず会うことを禁ずる処分が接見禁止です。
接見禁止される理由
接見禁止になる理由は、刑事訴訟法に逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときと記載されています。
そもそも勾留は、逃亡または罪証隠滅を防止するためのものです。勾留しているだけでは逃亡や罪証隠滅のおそれが消えない場合に初めて接見禁止処分がつけられます。
共犯事件や、組織的な犯罪が疑われるような事件の場合に、接見禁止処分がなされることが多々あります。
接見禁止の期間はいつまで?
勾留も接見禁止も、検察官が裁判官に対して請求します。従って、検察官が勾留請求をすると同時に接見禁止請求をすることが多いです。
一旦接見禁止処分がつくと、いつまでという期間制限はありません。逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれが無くなったときまでになります。接見禁止処分が解除される時期(終期)は、事件ごとに異なります。
例えば起訴されたとき、第一回公判期日後、証人尋問後、等が終期として考えられます。場合によっては起訴前に解除されることもありますが、共犯者の捜査が終了するまで解除されないケースもあり、共犯者が多数いる場合には、数か月経っても解除されない可能性もあります。
接見禁止|3つの段階にわけて解説
刑事事件手続きの流れには、大きく分けて次の3つの段階があります。
- 逮捕後捜査機関が取り調べをする逮捕段階
- 検察官が勾留請求をした後の勾留段階
- 検察官の起訴後、判決言渡しまでの公判段階
この3つの段階に分けて接見禁止について解説します。
逮捕段階の接見禁止
逮捕されると、警察官の取り調べがあります。48時間以内に釈放するか、検察官に送致します。検察官に送致された場合には、送致後24時間以内に、釈放するか、勾留請求するか決めます。
弁護士以外接見できない
逮捕直後から勾留決定するまでの間の取り調べ段階は、捜査機関が犯罪にかかわる証拠を集めたり、供述調書を作成したりする重要な期間です。
この逮捕段階の72時間は通常、家族でも接見できません。逮捕段階で接見できるのは、弁護士に限られます。被疑者あるいは家族等から依頼を受けた弁護士であれば、いつでも、何回でも自由に接見できます。
弁護士に依頼すれば伝言可能
家族や友人、上司等は接見できませんが、依頼を受けた弁護士に伝言を頼めます。
被疑者から家族等に伝言、あるいは家族等から被疑者に伝言のどちらもできます。しかし被疑者と家族等の間で証拠を隠滅するための伝言を事前に決めておくケースがあり、罪証隠滅に弁護士が知らずに加担することが絶対に無いとは言い切れません。そのため、内容を全て伝言するわけではありません。
勾留段階の接見禁止
検察官が勾留請求した時に、裁判官は勾留する必要があると判断した場合には勾留決定をします。
原則として家族・恋人等は接見可能
裁判所が勾留請求を認めるのは、被疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがあると判断したときです。勾留により被疑者の逃亡や罪証隠滅を防止できたと判断されるため、勾留決定後から起訴までの間は、家族・恋人等は原則として接見可能です。
家族や恋人などが接見する場合には、例えば1日1回、1回約15分だけ、会える人数は1回3人まで等の回数や時間、人数等の制限があります。
共犯者がいる場合
勾留段階になっても共犯者がいる場合等では、例えば口裏合わせにより罪証隠滅のおそれがあるとして、裁判所によって接見禁止処分が付けられることがあります。接見禁止がつくと、逮捕後の取り調べ段階同様、弁護人以外の人とは接見できません。
接見禁止には手紙のやりとりや物品の差し入れも含まれています。接見禁止中は、手紙のやりとりなど、外部との連絡ができません。
起訴後の接見禁止
接見禁止処分は起訴までとされることが多いですが、共犯者の取り調べが続いているなどの場合、罪証隠滅のおそれが消えないとして、起訴後も接見禁止がつくケースもあります。
起訴後も接見禁止が続く場合には、初公判までが接見禁止期間となることが多いですが、事案あるいは共犯者の取り調べ状況等によっては半年以上続くこともあります。
接見禁止を解除する方法
勾留後も接見禁止が付いていると、長期間家族とも連絡を取れない状態が続きます。そこで1日も早く接見禁止を解除するために、なんらかの方法を取る必要があります。
【前提】弁護士への依頼が必須
接見禁止を解くためには、弁護士への依頼が必須です。接見禁止は検察官が請求し、裁判官が認めた場合につけられます。
裁判官が認めた接見禁止処分に対して、個人で抗議して処分を解除してもらうことは困難です。弁護士が行う接見禁止処分への対抗措置を解説します。
準抗告・抗告
裁判官がした接見禁止処分について不服がある場合、その決定に対して異議を申し立てることを準抗告といいます。準抗告は、決定をだした裁判官が所属する裁判所に申立てます。
準抗告が認められたら、接見禁止処分が取り消され、被疑者や被告人は家族等と面会できます。
なお、第1回公判期日後の被告人勾留段階の接見禁止は裁判所が職権で行うため、裁判所の判断に対する異議申立てをします。裁判所の決定に対して異議を申し立てることを抗告と呼びます。
第四百二十九条 裁判官が次に掲げる裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消し又は変更を請求することができる。
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判 (抜粋)
第四百十九条 抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。
解除申立・一部解除申立
準抗告あるいは抗告の申立てと同時に、接見禁止処分の解除の申立てあるいは一部解除の申立ても進めます。こちらは刑事訴訟法に記載されていません。いわば、裁判所にお願いをする方法です。
すべての方との接見禁止の解除が認められないとしても、例えば家族だけ解除を認めてもらうために一部解除の申立てをすると、認めてもらえる可能性が高くなります。
勾留理由開示請求
接見禁止そのものを解除する制度とは異なりますが、勾留理由開示請求する方法もあります。本来は勾留理由に納得がいかない被疑者や被告人、弁護士らが、裁判官に対して、勾留した理由を開示するよう求める手続きです。
理由開示の手続きは公開の法廷で行われるため、家族が傍聴席からではありますが、被疑者・被告人の姿を確認できます。
言葉を交わしたりはできませんが、一目だけでも様子を見たい家族のためには意味のある手続きです。
勾留理由開示請求は、配偶者や親、兄弟なども可能で、請求者は裁判官に対して意見を述べられます。例えば配偶者が、「私は夫を信じています」と述べることにより、被疑者の支えにもなります。
接見禁止中の差し入れについて
接見禁止は、面会だけを禁止するものではなく、手紙のやり取りも禁止されます。接見や書類(書き込みの無い市販の書籍、雑誌、新聞を除く。)その他の物(糧食、現金、着替え類、寝具及び線面具等の日用品を除く。)を授受することがいずれも禁止されます。
差し入れ可能なもの
差し入れ可能なものは、各留置施設によって異なるため、事前に電話で確認することをおすすめします。
以下のものは差し入れ可能な場合が多いです。
- 拘置所内で必要な買い物ができる程度の現金
- 衣類
- メガネ
- 未使用のノート など
衣類は細かく条件が決められているので(紐付きの衣服のように自殺に繋がりそうなものは差し入れられない等)、事前に確認しても、実際に見て許可が下りないこともあります。
差し入れ不可能な物
差し入れ不可能な物は主に以下のとおりです。
- 逃亡や証拠隠滅に繋がりそうな物(手紙や写真)
- 嗜好品(ゲーム・たばこ など)
- 自殺に繋がりそうな物(紐付きの衣服やタオル など)
- 中身の確認が困難な物 など
シャンプー・リンス・歯磨き粉なども差し入れできませんが、これらは留置所内で購入できます。
差し入れで喜ばれるもの
留置所では基本、お金を使わずに生活できますが、お金があれば特別食を頼めます。3万円を超える多額の現金を差し入れはトラブル防止のため認められませんが、自由に使える現金を差し入れると喜ばれます。また、取り調べの時間以外はやることがないため、本の差し入れも喜ばれます。
差し入れ方法
どのような差し入れ方法があるか解説します。
直接持って行く
留置施設に事前に電話して、直接持って行きます。身分証明書や印鑑等を持参する必要があるため、何が必要か確認してから行きましょう。
郵送する
遠方の場合には、直接持って行くことは困難です。その場合には郵送での差し入れも可能です。郵送で差し入れする場合には、事前に差し入れ可能かどうか、細かく確認することをおすすめします。確認して郵送しても、差し入れ不可とされることもあります。
なお、直接持って行くときも、郵送の場合も、留置所が1日に受けとる荷物の数量が決まっているところもあり、そのまま戻ってきてしまうこともあります。
弁護士に依頼する
一番確実な方法は弁護士に依頼することです。弁護士であれば、時間や回数に制限なく、いつでも接見可能です。
接見禁止の場合には手紙の差し入れるはできませんが、弁護士に依頼すると、手紙を読み上げてくれたり、本人が読めるようにアクリル板越しに見せてくれたりします。
接見禁止中に刑事弁護を弁護士に依頼するメリット
接見禁止中に刑事弁護を弁護士に依頼するメリットをお伝えします。
接見禁止中でも弁護士は接見できる・差し入れしてもらえる
接見禁止中は、家族でも被疑者と接見できません。依頼を受けた弁護士であれば、時間・回数に制限なく接見可能です。接見中の警察官の立ち合いもありません。
被疑者は逮捕されると外部と一切連絡が取れなくなります。学校や会社に連絡できません。自分が置かれた状況、今後の刑事手続きの流れなど、よくわからないまま取り調べを受けます。
依頼された弁護士が接見に行き、取り調べへの対応、今後の流れの説明、学校や会社の様子などを伝えることで、不安が軽減されます。接見のときにご家族からの差し入れも渡せます。
接見禁止を解除する活動をしてもらえる
検察官は勾留請求と同時に接見禁止の申立てをしています。接見禁止処分について不服がある場合には、準抗告や抗告ができますが、この申立手続きは一般の方がやることは困難です。
弁護士は裁判所に対して、接見禁止決定に対する準抗告や抗告を申立てます。準抗告や抗告が認められない可能性もあるため、申立てと同時に、接見禁止の一部取消しの申立てもします。少なくとも家族だけでも接見できるように、裁判所に配慮を求めます。
まとめ
勾留決定と同時に接見禁止が付いてしまうと、逮捕されてから長期間、家族に会えなくなります。起訴後に接見禁止が解除されることもありますが、共犯者がいる場合では、共犯者の取り調べが終わるまで解除されないこともあります。
家族にも会えず、外部との接触が全くないままだと、家族がどのような状況に置かれているかわからず、不安がつのります。家族も被疑者の様子が全くわからず、学校や会社へどのように伝えればよいか判断に困ります。
弁護士であれば接見できるので、被疑者に対しては取り調べに対する適切なアドバイスをし、家族からの差し入れも渡せます。家族には被疑者の様子を伝えるなどします。接見禁止に対する不服申立ても行います。
逮捕されてしまったら、早急に弁護士に依頼することをお勧めします。