青少年保護育成条例とは?条例違反で逮捕される行為を解説
青少年保護育成条例(せいしょうねんほごいくせいじょうれい)は、青少年との淫行や自画撮り要求行為など、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為を禁止しています。この条例に違反すると逮捕され、処罰される可能性もあります。
本コラムでは、以下の点を解説します。
- 青少年保護育成条例が禁止している行為
- 青少年保護育成条例の違反行為が発覚するきっかけ
- 青少年保護育成条例違反で逮捕された場合の対応
目次
青少年保護育成条例とは
青少年保護育成条例は、青少年の福祉を阻害するおそれのある行為を防止し、青少年の健全な育成を図ることを目的に、各都道府県が制定しています。
正式名称は自治体によって異なる場合があり、青少年とは18歳未満の者を指します。
主な禁止行為
青少年保護育成条例が禁止している行為としては、主に以下のものがあります。
青少年の深夜外出
青少年保護育成条例は、青少年の深夜外出を制限しています。東京都の場合、正当な理由なく深夜(午後11時から翌午前4時まで)に16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、またはとどめた者は、30万円以下の罰金に処すると定めています。
淫行・みだらな性交
青少年保護育成条例は、青少年との淫行・みだらな性交を禁止しています。
淫行・みだらな性交の解釈については、昭和60年10月に最高裁判所が出した判決の中で確認できます。それによると、淫行の解釈は以下の通りです。
- 青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し、または困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為
- 青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交または性交類似行為
判例が、淫行を広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではないと指摘しているように、青少年との性交すべてが違反行為というわけではありません。判例は、婚約中の青少年またはこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等は、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いとも指摘しています。
ただし、青少年と真摯な交際関係にあっても、青少年の親が警察に通報した場合などは、処罰される可能性があります。
東京都の青少年保護育成条例は、淫行の法定刑を2年以下の懲役または100万円以下の罰金と定めています。
青少年への勧誘行為
青少年保護育成条例は、ファッションヘルスなどで客に接する業務に従事するよう青少年を勧誘すること、またホストクラブなどの客となるよう勧誘することを禁止しています。
警告に従わずこれらの行為を行った場合、30万円以下の罰金が科されます。
自画撮り要求行為
青少年保護育成条例は、青少年に児童ポルノの提供を求める行為を禁止しています。
東京都青少年健全育成条例は、青少年に拒まれたにもかかわらず、児童ポルノの提供を行うよう求めてはならないと定めています。
また、対償を供与し、もしくは供与の約束をして、児童ポルノの提供を求めることも同様に禁止されています。
これらの行為を行った場合の法定刑は、30万円以下の罰金です。
青少年保護育成条例違反で逮捕される可能性
どのようなことがきっかけで、青少年保護育成条例違反で逮捕されるのでしょうか。
違反行為が発覚するパターン
以下のことがきっかけとなり、青少年保護育成条例違反で逮捕されることが多いです。
青少年本人が通報
青少年本人が警察に通報するケースです。
例えば、青少年と性的関係を持ち、相手が同意したから大丈夫だと思っていても、青少年が自ら警察に通報した場合、逮捕されるおそれがあります。
青少年の親が通報
青少年保護育成条例違反で逮捕されるきっかけとして多いのが、青少年の親による通報です。
親が青少年の子どものスマートフォンを見て、いかがわしいやりとりやわいせつ画像を発見し、警察に通報するケースなどがあります。
補導・職務質問
補導や職務質問から逮捕につながるケースもあります。
警察は繁華街など非行が行われやすい場所で、飲酒・喫煙など不良行為をしている青少年らに対して、街頭補導を行っています。
また、警察は異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、何らかの罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由がある場合、職務質問できます。深夜に青少年と出歩いていると、職務質問される可能性があります。
こうした補導や職務質問から、青少年保護育成条例に違反する行為が発覚するケースもあります。
サイバー・パトロール
警察はインターネット上で、ウェブサイトや電子掲示板を閲覧し、違法情報や有害情報がないか把握するサイバー・パトロールを実施しています。
電子掲示板などで児童ポルノの提供を呼びかけていると、サイバー・パトロールに見つかる可能性があります。
青少年保護育成条例違反で科される刑罰
青少年保護育成条例違反で科される刑罰については、初犯か再犯かで異なります。
初犯の場合
青少年保護育成条例違反の初犯であれば、罰金刑のみで済むケースが多いです。科される刑が罰金刑のみであれば、略式手続きがとられる可能性が高いです。
略式手続きとは、事件を簡易裁判所で処理する手続きで、正式裁判より迅速に結論が出ます。簡易裁判所が扱えるのは、100万円以下の罰金または科料に相当する事件に限られており、略式手続きがとられれば、懲役刑が科されることはありません。ただし、原則として罰金刑は言い渡されます。
再犯の場合
青少年保護育成条例違反の再犯となると、起訴され正式裁判になるおそれがあります。
同条例の中でも、淫行に対しては法定刑に懲役刑が含まれており、再犯の場合は起訴される可能性があります。
青少年保護育成条例違反で逮捕された場合の対応
青少年保護育成条例違反で逮捕された場合は、すぐに弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。
弁護士に刑事弁護を依頼
刑事弁護を依頼された弁護士は、活動を通じて以下のことを目指します。
早期釈放
1つ目は早期釈放です。
早期釈放を実現するためには、逮捕後に勾留されないことが重要です。勾留は逮捕後の被疑者の身柄拘束を継続する刑事手続きで、勾留が認められると、身柄拘束は原則10日間、最長で20日間続きます。
勾留は検察官が裁判官に請求し、裁判官がその必要性を認めて初めて成立します。弁護士は、検察官に勾留請求しないよう働きかけたり、裁判官に勾留を却下するよう求めたりします。

不起訴の獲得
弁護士は不起訴の獲得も目指します。
検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするか判断する際、被害者の処罰感情を考慮します。被害者が加害者に強い処罰感情を抱いていると検察官は起訴に傾きやすく、処罰感情が和らいでいると判断できれば不起訴にしやすいです。
示談交渉
弁護士は被疑者に代わり、被害者と示談交渉します。
青少年保護育成条例違反の示談であれば、交渉する相手は青少年の親であるケースが多いです。
示談が成立し、被害者が加害者の処罰を求めていないとわかれば、不起訴の可能性は上がります。
まとめ
青少年保護育成条例は青少年との淫行などを禁止しており、違反すれば逮捕される可能性があります。
青少年保護育成条例違反で逮捕され、早期釈放や不起訴の獲得を実現するには、弁護士による刑事弁護が不可欠です。
弁護士のサポートが必要な方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。