詐欺の加害者・被害者が弁護士に相談する方法や注意点
詐欺事件に関与してしまった場合は、刑事事件の加害者側の対応実績がある弁護士に相談することで、刑事処分の軽減を目指す適切なサポートを受けることができます。
ただし、一口に弁護士といっても、刑事事件の加害者側に特化している弁護士もいれば、詐欺被害の解決に注力している弁護士もいます。
この記事では、詐欺事件で弁護士を探している人に向けて以下の点を解説します。
- 詐欺事件を弁護士に相談する方法
- 詐欺事件で加害者が弁護士に依頼するメリット
- 詐欺事件を弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用
- 詐欺罪に強い弁護士の選び方と相談のポイント
目次
詐欺事件を弁護士に相談する方法
詐欺事件を弁護士に相談する方法は、加害者か被害者かによって異なります。
ここでは、加害者側および被害者側の弁護士に相談する方法や、弁護士が提供できるサポートについて詳しく解説します。
加害者の場合
詐欺事件に関与してしまった加害者側の場合は、刑事事件の対応実績が豊富な弁護士に相談しましょう。
刑事事件に強い弁護士に依頼することで、以下のサポートを受けることができます。
- 被害者に謝罪と示談交渉をしてくれる
- 逮捕や長期の身柄拘束の回避
- 取調べへの的確な助言
- 不起訴獲得により早期釈放や前科の回避
- 執行猶予の獲得 など
刑事事件が得意な弁護士に相談する方法としては、以下の方法が挙げられます。
- インターネットで地域名×刑事事件×弁護士などで検索する
- 刑事事件の弁護士が掲載されているポータルサイトを利用する
当事務所でも詐欺事件の刑事弁護の実績がありますので、お気軽にご相談ください。
被害者の場合
詐欺被害に遭った被害者の場合は、詐欺事件の被害者側の対応実績がある弁護士に相談することをおすすめします。
被害者側の対応に注力している弁護士に依頼することで、以下の対応を行ってもらえます。
- 加害者との交渉による被害金の返還請求
- 裁判での損害賠償請求
- 加害者に対する刑事告訴の手続きの支援
詐欺被害を弁護士に相談するには、以下の方法があります。
- インターネットで地域×詐欺被害×弁護士や、地域×消費者問題×弁護士などで検索する
- 日本弁護士連合会や各地域の法律相談センターに相談する
- 市区町村役場の無料法律相談を利用する
詐欺罪の加害者が弁護士に相談すべきケース
詐欺罪に関与してしまった場合、以下のようなケースでは迷わず弁護士に相談すべきだと言えます。
- 詐欺罪で逮捕・勾留されている
- 警察や検察から呼び出されている
- 被害者から被害金の返還を求められている
詐欺罪で逮捕・勾留されている
詐欺罪で本人が逮捕・勾留(長期間の身柄拘束)をされている場合は、すぐに弁護士に相談すべきです。
弁護士に依頼することで、身柄の早期釈放に向けた対応を進めてもらえます。
逮捕された人は、一度だけ無料で呼べる当番弁護士を利用するか、逮捕から72時間後に選任される国選弁護人を待つことになります。
しかし、家族が状況を把握するのが難しいため、迅速な釈放を目指すなら、家族が弁護士を探して依頼する方が早いです。

警察や検察から呼び出されている
逮捕されていなくても、警察や検察から呼び出されて事情聴取を受けることがあります。
これは被害届が受理され、刑事事件として捜査が進められている可能性があります(いわゆる在宅事件)。
刑事事件では、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕は行われません。
しかし、身柄拘束が行われない在宅事件として捜査が継続し、最終的に検察が裁判で裁くべきだとして起訴(刑事裁判になること)することもあります。
逮捕されない場合、起訴されるまで国選弁護人が選任されないため、早期に弁護士に相談して適切な対策を講じることが重要です。

被害者から被害金の返還を求められている
被害者と面識がある場合、被害金の返還を直接求められるケースがあります。
被害金の返還に応じない場合、被害者が弁護士を通じて民事訴訟を申し立てたり、被害届の提出や刑事告訴により警察の捜査対象となったりするリスクがあります。
このような状況では、弁護士を通じて迅速に示談を行い、刑事事件化を防ぐことが重要です。
詐欺罪の加害者が弁護士に依頼するメリット
詐欺事件の加害者が弁護士に依頼するメリットには以下のようにさまざまなものがあります。
- 被害者に謝罪と示談交渉をしてくれる
- 逮捕・長期勾留が回避できる可能性がある
- 接見禁止の解除を働きかけてくれる
- 早期釈放・不起訴・執行猶予を目指してサポートしてもらえる
- 会社や学校への説明や対応をしてもらえる
ここでは、詐欺罪の加害者が弁護士に依頼するメリットについて解説します。
被害者に謝罪と示談交渉をしてくれる
弁護士に依頼することで被害者に謝罪と示談交渉を行ってもらえます。
示談交渉が成立すれば、被害者の被害が回復し許しを得たと判断されるため、刑事処分が軽くなる可能性が高まります。
特に被害者と加害者が直接示談交渉をすると、適切な示談金がわからずトラブルに発展するなどのリスクがあります。
そのため、示談交渉は弁護士を通じて行う方が安心です。
逮捕・長期勾留が回避できる可能性がある
被害届の提出や刑事告訴をされる前に被害者と示談が成立すれば、逮捕や長期間の勾留を回避できる可能性があります。
すでに被害届が提出されている場合でも、取り下げてもらうよう交渉することも可能です。
逮捕や勾留が行われると、以下のような不利益が生じます。
- 家族の目の前で逮捕される可能性がある
- 長期間の勾留により仕事や学校に通えず、逮捕の事実が周囲に知られるおそれがある
そのため、刑事事件になる前の対応が最善策です。万が一逮捕や勾留が行われても、早期に示談が成立すれば、身柄が釈放される可能性があります。
接見禁止の解除を働きかけてくれる
逮捕後に留置場に勾留された場合、通常は家族や友人、恋人と接見(面会)することが可能です。
しかし、以下の場合には、接見禁止といって弁護士以外の接見を制限されることがあります。
- 組織的詐欺が疑われる場合
- 被疑者(容疑者)が事件を否認している場合
接見禁止は、犯罪関係者と接触して、口裏合わせや証拠隠滅を防ぐために下される処分です。
このような状況では、被疑者が警察の監視下で厳しい取調べを受けるうえ、家族とも会えず、精神的にも過酷な状態に追い込まれてしまいます。
弁護士に依頼することで、接見禁止の一部解除や勾留理由開示請求などの手続きを行い、家族との接見が可能になるよう働きかけてもらえます。
早期釈放・不起訴・執行猶予を目指してサポートしてもらえる
被害者がいる犯罪では、特に示談成立が刑事処分に大きく影響します。
示談が成立し、被害者から許しを得られれば、早期の身柄釈放や不起訴処分の獲得につながる可能性があります。
日本の刑事裁判における有罪率は約99%と非常に高いため、起訴されると前科がつくおそれが大きいです。
そのため、起訴される前に適切なサポートを受けることが重要です。
仮に起訴されて裁判となった場合でも、以下の点を示すことで、執行猶予が得られる可能性があります。
- 示談の成立や被害者の宥恕を得ていること
- 犯罪関与の動機となった問題の解決
- 家族の監督
- 再犯を防止して更生できる環境を示す
会社や学校への説明や対応をしてもらえる
逮捕や勾留されてしまった場合でも、弁護士が会社や学校に事情を説明することが可能です。
弁護士が現在の状況や今後の見通しを説明し、解雇や退学をしないように説得してもらえます。
特に会社の場合、不起訴処分を得ることで解雇を免れるケースもあります。
刑事事件の詐欺罪にかかる弁護士費用
詐欺罪で弁護士に依頼する際に気がかりなのが、弁護士費用です。
ここでは、詐欺罪で依頼できる弁護士の種類や弁護士費用の相場、費用を抑える方法について解説します。
詐欺罪で依頼できる弁護士
刑事事件では、以下の二種類の弁護士に事件を依頼でき、依頼できる弁護士によって費用も異なります。
私選弁護人 | 本人や家族が探して依頼する弁護士のこと |
国選弁護人 | 国が選任してくれる弁護士のこと |
国選弁護人の場合、費用は国が負担してくれます。ただし、利用には資産が50万円以下であることなどの条件があります。
選任されるタイミングは、逮捕から72時間以降で勾留された後、そして弁護士を指名することはできない点に注意が必要です。
一方、私選弁護人の場合、費用は本人や逮捕された人の家族が負担します。
しかし、刑事事件が得意な弁護士を自由に選ぶことができ、逮捕前や逮捕直後など早い段階から依頼可能です。
詐欺罪にかかる弁護士費用の相場
詐欺罪にかかる弁護士費用の相場は以下のとおりです。
法律相談料 | 0~5,000円/30分 | 初回無料で2回目以降は有料であることも多い |
着手金 | 30~50万円 | 着手金は事件を依頼する際に支払う費用 |
報酬金
※不起訴処分の場合 |
30~50万円 | 報酬金は事件終了時に支払う費用 |
接見費用 | 3万円/1回あたり | 被疑者と接見をした際に発生する
示談のために被害者に会った場合や、裁判に参加した場合など、弁護士が事務所以外で仕事をした際に発生する日当も含まれる |
実費 | 交通費や資料の印刷代など |
報酬金は、起訴前であれば不起訴を得た際に発生し、起訴後であれば判決内容により異なります。
勾留阻止や示談成立、保釈請求など個別に報酬金を設定していることが一般的です。
さらに、起訴前の弁護から起訴後の弁護を依頼する際は、別途着手金がかかる場合があります。
弁護士費用は、各法律事務所の料金体系によって大きく異なるため、相談時に内訳や総額を必ず確認しましょう。
詐欺罪の弁護士費用を安くする方法
弁護士費用の負担が難しい場合は、分割払いやクレジット決済に対応するなど、支払い方法が柔軟な弁護士を選ぶのも選択肢の一つです。
どうしても費用が負担できず、親族の協力も得られないような場合は、国選弁護人を選任してもらいましょう。
逮捕された場合は、逮捕から72時間以降の勾留決定後に、国選弁護人を選任してもらえます。
逮捕されずに在宅事件となった場合は、在宅起訴されて裁判の段階から、国選弁護人が選任されます。
詐欺罪に強い弁護士の選び方
実際に弁護士に依頼する際は、詐欺事件に豊富な実績がある弁護士を選ぶことが重要です。以下のポイントを参考にしてください。
詐欺罪の対応実績があるか
刑事事件で弁護士を選ぶ際のポイントは、その事件に対応した実績があるかどうかです。
刑事事件の実績が少ない弁護士でも対応は可能ですが、幅広い事件を扱った経験のある弁護士であれば、事件ごとの傾向も熟知していて安心です。
連絡が取りやすく対応が早いか
刑事事件では、弁護士と連絡を取りやすく、対応が迅速であるかどうかも重要なポイントです。
刑事事件は土日祝日や時間帯に関係なく逮捕される可能性があります。
特に逮捕が行われた場合、13日から23日以内に刑事処分が決定するため、限られた時間で不起訴を目指す必要があります。
家族が逮捕された場合に、すぐに連絡が取れ、反応が早い弁護士であれば、迅速な対応が期待できます。
相談者の希望に応える熱意があるか
刑事事件の弁護士を選ぶ際にもう一つ大切なのは、相談者の希望に真摯に応える熱意があるかどうかです。
中には、相談者の話をろくに聞かず、刑事処分はこのくらいになるから、この主張は無理だと一方的に断定して、相談者の希望に応える熱意がない弁護士もいるといわれます。
相談者の希望をしっかりと受け止め、それを実現するための方策やリスクを丁寧に説明しながら一緒に解決を目指してくれる弁護士を選ぶことが大切です。
詐欺罪で弁護士に相談する際のポイント
もし詐欺事件で弁護士に相談する際は、以下のポイントを押さえておくとスムーズです。
- 詐欺事件について時系列などを整理しておく
- 質問の優先順位をつけておく
- 都合の悪い事実も隠さずに伝える
詐欺事件について時系列などを整理しておく
弁護士に相談する前に、詐欺事件について時系列を整理しておくと、短時間で効率的に状況を伝えることができます。
例えば、以下の内容を整理するとよいでしょう。
- いつ頃詐欺行為をしたのか
- どのような方法で詐欺行為をしたのか
- 被害者は何人なのか
- 被害金額はいくらなのか
- 警察からの連絡の有無 など
質問の優先順位をつけておく
刑事事件では、不安なことがたくさんあるでしょう。
そのため、弁護士に聞きたいことの優先順位を事前に決めておくと、相談時間を有効活用できます。
以下のような質問を考えておくとよいでしょう。
- 今後の見通し(逮捕されるかされないか)
- 事件となった場合、どの程度の罪となるのか
- 逮捕された場合、どのくらいの期間拘束されるのか
- 逮捕された場合、家族や会社への影響はどうなるのか
- 逮捕を回避するためには何をすべきなのか
- どのようなときに依頼するべきなのか など
都合の悪い事実も隠さずに伝える
もっとも重要なのは、自分にとって都合の悪い事実も隠さずに弁護士に伝えることです。
弁護士には守秘義務があるため、相談内容が外部に漏れる心配はありません。
詐欺事件以外に関与した可能性のある犯罪があれば、それが発覚した場合のリスクや罪の重さを考慮したアドバイスを受けられます。
一方で、事実を隠した場合、正確な見通しや適切な助言を得ることが難しくなります。
弁護士に相談する際は、事実を正直に伝え、具体的で有益なアドバイスを得られるようにしましょう。
【被害者側】詐欺被害を弁護士に相談する際の注意点
詐欺被害に遭った場合、詐欺被害者の支援に特化した弁護士に依頼することをおすすめしますが、必ず複数の弁護士に相談してください。
あってはならないことですが、近年は詐欺の被害金を回収すると謳い、着手金を騙し取る業者や弁護士が存在します。
早く被害金を返金してほしいという焦りを利用して、契約を急がせる弁護士もいます。
手間はかかりますが、信頼できる弁護士を選ぶためには、必ず対面で複数の弁護士に相談することが重要です。
さらに、弁護士会や法テラスでも弁護士の紹介を行っているため、信用できる組織から紹介された弁護士に依頼するのもおすすめです。
もし弁護士とのトラブルが発生した場合は、弁護士会の市民窓口への相談や、弁護士会を通じた紛議調停を検討しましょう。
参考:弁護士に着手金払うも対応されず 詐欺の“二次被害”相次ぐ – NHK
まとめ
詐欺事件を弁護士に相談する際、加害者側と被害者側では依頼する弁護士や対応可能な内容が大きく異なります。
詐欺罪の罰則は10年以下の懲役と非常に重い処分が科される可能性があります。
2022年には、詐欺罪で実刑となった割合が約41%でした。初犯でも、被害額が高額、組織的な犯行、余罪が多数ある場合には、実刑となるおそれがあります。
ネクスパート法律事務所では、詐欺事件の加害者側に対応してきた豊富な実績があります。詐欺事件に関与してしまった方は、お気軽にご相談ください。