更新日:2026年9月11日 (金)
公開日:2022年1月5日 (水)
詐欺罪の構成要件とは?成立条件や類似の罪・逮捕後の流れを解説
サマリー
自身や身近な人が詐欺の疑いをかけられた際、どのような行為が法律上の詐欺罪に該当するのか、逮捕後にどのような手続きが進むのか不安を抱く方もいるのではないでしょうか。
詐欺罪は複数の構成要件が厳格に定められており、類似の犯罪との区別や故意の有無などが問題となります。
また、統計的にも勾留や起訴の割合が高い傾向にあります。この記事では、詐欺罪の成立要件や類似する罪、逮捕後の刑事手続きの流れや弁護士への相談について解説します。
詐欺罪とは?法律上の定義と典型例

刑法第246条に規定されている詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする行為を処罰する犯罪です。
条文は第1項と第2項に分かれており、だまし取る対象によって区別されています。
1項詐欺(財物詐欺)と2項詐欺(利益詐欺)の違い
刑法第246条第1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」と定めています。
これは一般的に「1項詐欺」や「財物詐欺」と呼ばれ、現金やキャッシュカード、貴金属などの有体物をだまし取る行為が対象です。
同条第2項では、「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする」と規定されています。
これは「2項詐欺」や「利益詐欺」と呼ばれ、物理的な物ではなく、債務の免除やサービスの提供といった無形の財産的利益をだまし取る行為が該当します。
詐欺罪に該当する主な具体例
日常や社会生活の中で発生する詐欺行為にはさまざまな形態があります。1項詐欺および2項詐欺に該当する代表的な事例は以下のとおりです。
- 特殊詐欺:電話等で親族や公的機関の職員などを装い、被害者を誤信させて現金やキャッシュカードをだまし取る行為
- 結婚詐欺:結婚する意思がないにもかかわらず婚姻をほのめかし、親の借金返済などの名目で金銭をだまし取る行為
- 投資詐欺:実態のない架空の投資話や虚偽の運用実績を信じ込ませ、出資金名目で金銭をだまし取る行為
- 無銭飲食・無賃乗車:最初から代金を支払う意思がないのに注文して飲食サービスを受けたり、運賃を支払わずに交通機関を利用して支払いを免れたりする行為(2項詐欺)
詐欺罪の法定刑と公訴時効
詐欺罪の法定刑は、1項詐欺・2項詐欺のいずれであっても「10年以下の懲役」と規定されており、罰金刑は定められていません。
詐欺罪には罰金刑の規定がなく、起訴されて有罪判決を受ける場合は懲役刑が科されることになります。
また、詐欺罪の公訴時効は「7年」です。公訴時効とは、犯罪行為が終了した時から一定期間が経過した場合に、検察官による起訴(公訴の提起)ができなくなる制度を指します。
| 区分 | 規定内容・法定刑 | 公訴時効 |
|---|---|---|
| 1項詐欺(財物交付) | 10年以下の懲役(刑法第246条第1項) | 7年 |
| 2項詐欺(利益侵害) | 10年以下の懲役(刑法第246条第2項) | 7年 |
詐欺罪が成立する7つの構成要件
詐欺罪が成立するためには、法律上定められた複数の構成要件をすべて満たす必要があります。
実務上は「欺罔行為」「錯誤」「財物の処分」「財物の移転」「因果関係」「故意」「不法領得の意思」の7つの要素が総合的に検討されます。
客観的構成要件(欺罔・錯誤・処分行為・移転・因果関係)
「欺罔(ぎもう)」とは、人を欺いてだます行為を指します。重要な事実を偽ったり隠したりして相手を誤認させる行為であり、例えば支払う意思や能力がないにもかかわらず、あるように装って金銭を借り入れる行為などが該当します。
欺罔行為によって相手が事実と異なる認識を持つ状態を「錯誤」といいます。
加害者が嘘をついていても、相手がその嘘を見抜いており、同情や好意などの別の理由でお金を渡した場合には、錯誤に陥っていたとは認められないことがあります。
続いて、錯誤に陥った被害者が自らの意思に基づいて金品を引き渡す「財物の処分」が行われ、実際に財物の占有が加害者側に移る「財物の移転」が必要です。
相手の目を盗んで財物を持ち去る行為は、処分行為がないため窃盗罪などに該当する可能性があります。
さらに、これらの一連の流れに「因果関係」が認められなければなりません。
すなわち、欺罔によって錯誤に陥り、その錯誤に基づいて財物を処分し、財物が移転したという一連の結びつきが存在することが不可欠です。
主観的構成要件(故意・不法領得の意思)
詐欺罪の成立には、客観的な行為だけでなく行為者の主観的要件も必要です。
その一つが「故意」であり、人をだまして錯誤に陥らせ、財物を交付させる認識や意図を持っていたことが求められます。
そのため、当初は返済するつもりでお金を借りたものの、その後に予期せぬ事情で返済できなくなった場合や、財布を持ってきたと誤信して無銭飲食に至った場合などは、人を欺く故意がなかったと判断されることがあります。
加えて、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用・処分する意思である「不法領得の意思」が存在することも要件とされています。
これら7つの要件がすべて満たされてはじめて詐欺罪が成立するため、いずれかの要件を欠く場合には詐欺罪が成立しない可能性があります。
詐欺罪に類似する犯罪と未遂罪
電子計算機使用詐欺罪と準詐欺罪
刑法には、通常の詐欺罪のほかに類似した犯罪規定が設けられています。
その代表例が「電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)」と「準詐欺罪(刑法第248条)」です。
電子計算機使用詐欺罪は、人を欺くのではなく、コンピューターに虚偽のデータや不正な指令を与えて財産上不法の利益を得る行為などを処罰する規定です。
たとえば、拾得した他人名義のクレジットカード情報を無断で入力してオンライン決済を行う行為などがこれに該当します。
一方、準詐欺罪は、未成年者の思慮の浅さや、心神耗弱状態にある者の判断能力の低下に乗じて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりした場合に成立します。
人を積極的にだます欺罔行為がなくても成立する点が通常の詐欺罪と異なります。
いずれの罪も法定刑は10年以下の懲役と定められています。
詐欺未遂罪の成立と「だまされたふり作戦」
詐欺罪は未遂行為も処罰の対象となります。
財物の交付や利益の移転に至らなかった場合であっても、人を欺く行為に着手した時点で詐欺未遂罪が成立し得ます。
特殊詐欺の捜査では、被害者が詐欺だと気付いた上で警察に協力し、だまされたふりをして犯行グループを誘い出す「だまされたふり作戦」が用いられることがあります。
この場合、被害者は錯誤に陥っていませんが、犯人側が欺罔行為を開始しているため、詐欺未遂罪が成立すると解されています。
内容を把握せずに特殊詐欺へ加担した場合の刑事責任
特殊詐欺では指示役、かけ子、受け子、出し子など役割が細かく分業化されていることが多く、SNS上の「高額バイト」等の募集を通じて一般の人が知らず知らずのうちに関与してしまう事案が見られます。
受け子役などが「詳しい犯罪内容を知らなかった」と主張しても、報酬の不自然さや業務の異常性から違法行為の可能性を認識していた(未必の故意があった)と認定され、共犯として処罰されるケースがあります。
詐欺の全容を把握していなかったとしても、不審な指示に従って金品の回収や運搬に加担した場合は、詐欺罪や詐欺未遂罪に問われる可能性があります。
詐欺事件の統計傾向と逮捕後の刑事手続きの流れ
詐欺事件は、他の刑法犯と比較しても身体拘束を受ける割合や起訴される割合が高い傾向にあります。
法務省が公表している犯罪白書の統計データをもとに、その実態を確認しておきましょう。
犯罪白書のデータに見る詐欺事件の傾向
令和2年版犯罪白書によると、令和元年の詐欺の認知件数は3万2,207件で、平成29年の4万2,571件以降は減少傾向にあります。
一方で検挙件数は1万5,902件であり、検挙率は49.4%と平成29年以降上昇傾向を示しています。
また、被疑者が逮捕されて身柄を検察官に送致されるなどの割合を示す身柄率は57.9%となっています。
さらに、身柄送致された事件のうち検察官が勾留を請求した割合(勾留請求率)は98.9%に達しており、逮捕されると長期間の身体拘束につながりやすい実態がうかがえます。
起訴・不起訴の判断においては、令和元年の詐欺事件の起訴総数は7,863人、不起訴総数は5,921人で、起訴率は57.0%でした。
同年の刑法犯全体の起訴率が38.2%であることと比較しても、詐欺は起訴される割合が高い犯罪類型といえます。
| 項目 | 詐欺事件の数値(令和元年) | 備考・全体比較 |
|---|---|---|
| 認知件数 | 32,207件 | 平成29年以降は減少傾向 |
| 検挙率 | 49.4% | 平成29年以降は上昇傾向 |
| 身柄率 | 57.9% | 逮捕・身柄送致される割合 |
| 勾留請求率 | 98.9% | 身柄送致後に勾留請求される割合 |
| 起訴率 | 57.0% | 刑法犯全体の起訴率(38.2%)より高水準 |
逮捕後の刑事手続きと時間制限
詐欺の容疑で警察に逮捕された場合、法律で定められた厳格な時間制限のもとで手続きが進行します。
身柄拘束が長期化するかどうかは、各段階での司法判断によって決まります。
- 警察による身柄送致(逮捕から48時間以内)
- 検察官による勾留請求(送致から以内)
- 裁判官による勾留決定または勾留請求却下(原則10日間、延長により最長20日間)
- 検察官による起訴または不起訴の判断(勾留期間満了まで)
- 起訴後の勾留(起訴された場合、原則2か月間・以後1か月ごとの更新が可能)
警察が被疑者を逮捕した場合、48時間以内に検察官へ身柄を送致する手続きが取られます。
送致を受けた検察官は、引き続いて身柄拘束が必要と判断したときは以内に裁判官へ勾留請求を行います。
裁判官が勾留を決定すると、原則として10日間にわたり警察署の留置場などで身柄が拘束されます。
捜査の進捗に応じて最大10日間の勾留延長が行われる場合があり、起訴・不起訴の判断が下るまで最長で20日間の勾留が続く可能性があります。
検察官が起訴相当と判断して公判請求を行うと、被疑者は被告人という立場に変わり、原則2か月間の起訴後勾留に移行します。
起訴後勾留は必要に応じて1か月ごとに更新されるため、手続きの流れを早期に把握しておくことが重要です。
詐欺事件における弁護士への相談
取り調べ対応と供述調書作成への助言
詐欺事件で捜査対象となった場合、警察官や検察官による取り調べが行われ、その内容をもとに供述調書が作成されます。
供述調書は刑事裁判において証拠として用いられる重要な書類であり、捜査機関側の解釈で記載された内容に一度署名・押印してしまうと、後からその内容を覆すことは極めて困難になります。
特に詐欺罪では「騙すつもり(故意)」があったかどうかが大きな争点となるため、取り調べでの発言内容が起訴や量刑の判断に直結します。
弁護士から取り調べに対する心構えや、意に沿わない調書への署名拒否、黙秘権の適切な行使方法について助言を受けることで、不当に不利な供述調書が作成されるリスクを軽減できます。
作成された供述調書は裁判の行方を左右する証拠となるため、署名・押印の前に内容を十分に確認し、慎重に対応することが不可欠です。
被害弁償と示談交渉における弁護士の関与
詐欺罪のような財産犯においては、被害者に対する被害弁償の実施や示談の成立が、刑事処分の行方に大きな影響を与えます。
被害弁償を行って被害者の処罰感情が緩和されれば、検察官が不起訴処分としたり、起訴された場合でも執行猶予が付くなど量刑面で考慮されたりする可能性が生じます。
もっとも、詐欺事件の被害者は被疑者やその家族に対して強い不信感や処罰感情を抱いていることが多く、連絡先を直接教えてもらえなかったり、直接の交渉を拒否されたりすることが一般的です。
弁護士が第三者かつ代理人として間に入ることで、被害者の感情に配慮しながら冷静な交渉を進められる環境が整いやすくなります。
刑事手続きには逮捕や勾留などの厳格な時間制限が設けられているため、早期の身柄解放や適切な処分を目指す上では、状況に応じて弁護士へ相談し、方針を検討することが有効な手段となります。
コラム監修者
Shunsuke Teragaki
所属:代表(東京オフィス)
広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。