強盗致傷罪とは|強盗傷人罪や事後強盗との違いや執行猶予はつく?

強盗致傷罪とは、強盗行為をして、人が負傷した場合に成立する犯罪です(刑法第240条)。

例えば、コンビニなどで刃物を持って店員を脅して金品を奪う際に、負傷させたケースが挙げられます。

また、万引きなどの窃盗行為後に人を負傷させると、窃盗罪ではなく、強盗致傷罪に問われる可能性があります。

この記事では、強盗致傷罪について次の点を解説します。

  • 強盗致傷罪と強盗傷人罪などとの違い
  • 強盗致傷罪の量刑と執行猶予について
  • 強盗致傷罪の示談金の相場

強盗致傷罪は初犯でも実刑判決が下されるおそれがある犯罪です。

もし強盗致傷罪で家族が逮捕されたり、自分が犯罪に関与した場合は、迷わず弁護士に相談してください。

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強盗致傷罪とは

ここでは強盗致傷罪と、よく似た強盗傷人罪などの違いについて解説します。

強盗致傷とは強盗が人を負傷させること

強盗致傷とは、窃盗や強盗を働いた際に、人が負傷した場合に成立します。

一方で、強盗として押し入り、被害者を縛って金品を盗んで逃走したような場合、被害者は負傷していないため、強盗罪のみが成立します。

また、空き巣として家に侵入して金品を盗んだが、住人に見られて暴行を働いた場合、これは事後強盗罪が成立します。

しかし、暴行の結果、住人が負傷したら事後強盗ではなく、強盗致傷が成立することになります。

万引きや空き巣などの窃盗行為はそこまで重い犯罪ではないと思い込んでいても、人を負傷させた場合は、強盗致傷罪に問われることになるのです。

故意に負傷させた場合は強盗傷人罪

積極的に危害を加えて、故意に負傷させた場合は、強盗致傷人罪が成立します。

強盗致傷罪と強盗傷人罪の違いは、故意に負傷をさせたかどうかです。

強盗致傷罪は、逃走の際に被害者を振り切ったら、被害者が転倒して意図せずケガをしたようなケースが挙げられます。

一方で、金品を奪う際に、事前に準備した凶器で暴行を加えて、人を負傷させたような場合は、強盗傷人罪が成立します。

強盗とは暴行又は脅迫により金品を奪うこと

強盗は金品を盗む犯罪ですが、ものを盗む犯罪である窃盗罪とはどう違うのでしょうか?

違いは次のとおりです。

窃盗罪 相手のものを盗む
強盗罪 暴行や脅迫を用いて、相手のものを奪い取る

参考:刑法 – e-Gov

人のものを盗むという点は共通していますが、相手に対して暴行や脅迫をして物を奪い取れば、強盗罪が成立します。

例えば、店員がいない隙にレジからお金を盗めば窃盗罪、店員を脅してお金を奪い取れば強盗罪となります。

コンビニでの強盗を例にまとめると、次のとおりです。

窃盗罪 コンビニでお金や商品を盗む
強盗傷人罪 コンビニ店員を殴ってお金や商品を盗み、店員は負傷した

店員を意図的に負傷させた

事後強盗罪 コンビニで盗みを働いたが、店員に見つかったので店員を殴って逃走した

店員は負傷していない

強盗致傷罪 コンビニで店員を脅してお金や商品を奪ったが、逃走する際に追いかけてきた店員が転倒して負傷した。

あるいは、コンビニで盗みを働いたが、店員に見つかったので店員を殴って逃走し、店員が負傷した

店員は意図せず負傷した

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強盗致傷罪の量刑

強盗致傷罪で有罪になった場合、どのくらいの量刑が科されることになるのでしょうか。

ここでは、強盗致傷罪の法定刑や言い渡される量刑について解説します。

無期または6年以上の懲役

強盗致傷罪の法定刑(法律で決められてる刑罰)は無期懲役または6年以上の懲役です。

懲役の上限は最長で20年なので、無期懲役か6~20年の懲役が科されることになります(刑法第12条)。

また他の罪が加重されれば、懲役は更に長くなるケースも考えられます。

強盗致傷で実刑になる割合

一方で、量刑とは、法定刑の中でさまざまな事情を考慮して、裁判所が言い渡す刑罰のことを言います。

強盗致傷罪の場合、無期懲役になることもあれば、6年の懲役が科されることもあるということです。

司法統計によると、2022年に強盗致傷の裁判員裁判で実刑になった割合は次のとおりです。

15年以下 13名
10年以下 23名
7年以下 42名
5年以下 23名
3年以下 実刑 4名
全部執行猶予 15名

参考:司法統計

強盗致傷は、裁判員裁判対象事件です。

上表を見る限り、強盗致傷罪の量刑の平均はおおよそ10~5年以下になることが多いようです。

そして、執行猶予がついたのはわずか15名、12.5%であるため、高確率で実刑となることがわかります。

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他の罪で起訴されるケースも

ひったくりで被害者のかばんを奪い、その際に被害者が転倒をして擦り傷を負ったケースは、強盗致傷罪が成立します。

しかし、被害者のケガが軽微で、前科前歴がないなどの事情によっては、それよりも軽い強盗罪で起訴されるケースがあります。

また、例えば被害者を殴った後に、金品が欲しくなり鞄を持ち帰ったような場合は、窃盗を目的とした暴行ではないため、窃盗罪と傷害罪が別々に成立するケースがあります。

強盗致傷罪で執行猶予がつくことはある?

強盗致傷罪は、重い処分が下される犯罪ですが、執行猶予がつくことはあるのでしょうか?

強盗致傷で執行猶予の獲得は難しい

強盗致傷罪の場合、執行猶予獲得は簡単ではありません。

法定刑を考えると、執行猶予がつく条件を満たしていないからです。

執行猶予がつく条件の1つは、言い渡された量刑が3年以下の懲役や禁固、または50万円以下の罰金でなければなりません。

強盗致傷罪の場合、法定刑は無期懲役または6年以上の有期懲役です。

情状酌量により減軽(裁判所が言い渡す量刑を軽くすること)されれば、執行猶予がつくケースもあります。

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情状酌量により刑期が軽減される可能性はある

強盗致傷罪の法定刑は無期懲役または6年以上の有期懲役と重いものですが、無期懲役がそのまま量刑として言い渡されるわけではありません。

裁判所は、その事件の背景や、生い立ち、前科前歴などさまざまな事情を考慮して、法定刑の範囲で量刑を言い渡します。

強盗は悪いことですが、例えばやむを得ない事情があったような場合に、それを考慮して罰を少し軽くするのが情状酌量です。

刑法第68条と、第71条には、情状酌量があった場合に、次のとおり減刑ができるとしています。

量刑 減刑された場合
無期懲役 7年以上の有期懲役または禁固
有期懲役 最長と最大の懲役の期間を2分の1にできる

言い渡された量刑が無期懲役だと難しいですが、6年以上の懲役であれば、情状酌量で3年の懲役が言い渡される可能性があり、執行猶予がつくことも考えられます。

先述したとおり、2022年の裁判裁判においては、約12%に執行猶予がつきました。

情状酌量で考慮される事情

情状酌量される場合、次のような事情を考慮して量刑が言い渡されます。

犯行について 犯行の内容:故意か過失か、凶器を使用したのか、共犯か単独犯か

犯行の計画性:事前に準備した犯行か、衝動的な犯行か

犯行の動機:私利私欲による犯行か、やむを得ない事情があるかどうか

犯行の結果:被害者のケガの程度や後遺症の有無、被害額の大小、社会的な影響 など

加害者について 加害者の年齢や生い立ち、家庭環境

反省の有無

被害者との示談の有無、被害回復に努めたかどうか

更生への意欲や身元引受人など監督者の有無

定職など更生環境が整っているか

実刑による加害者の家族への影響(扶養する家族がいるかなど)

常習性や前科前歴

犯行により受けた社会的な制裁の程度(解雇など)

犯行動機となった原因は解消されているか、共犯者と絶縁できているか など

このように様々な要因から、刑を減軽するかどうかが判断されます。

犯行時の行いや、被害者のケガの程度はもう変えられません。

しかし、逮捕後に被害者と示談をして、被害回復に努めたか、反省をして更生の意欲を示しているかなどの点が、量刑に反映される可能性があります。

初犯でも実刑になることがほとんど

情状酌量では、前科前歴の有無なども考慮されるため、初犯かどうかといった事情も影響します。

しかし、先述したとおり、法定刑は無期懲役または6年以上の有期懲役であるため、初犯というだけで減軽されるとは限りません。

また、強盗致傷自体、金品を強奪して財産的な損害だけでなく、被害者を負傷させる悪質な犯罪であるため、極めて重い法定刑が定められています。

様々な事情を考慮しても、減軽されなければ執行猶予がつかないため、初犯でも実刑となる可能性は十分にあります

早い段階で弁護士のサポートを受けることが不可欠です。

強盗致傷罪の示談金相場

情状酌量では被害者との示談の有無が重視されます。

示談が成立すれば、被害者も加害者を許し、被害者の被害も回復したと判断されるため、刑事処分に有利な事情として考慮されるためです。

強盗致傷罪の示談金の相場は、おおよそ10~100万円ほどと言われています。

これはあくまでも精神的な苦痛に対する慰謝料の金額です。

示談金には慰謝料の他にも次のものが含まれます。

  • 実際に被害に遭った金銭的な損害
  • ケガの治療費や通院の交通費
  • 働けなかった場合の休業補償
  • 後遺症に対する補償 など

他にも、被害者の処罰感情などによって左右されます。

特に被害者が後遺症を負ったような場合、示談金も高額になることが考えられるでしょう。

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強盗致傷罪で逮捕された事例

ここでは、実際に強盗致傷罪で逮捕された事例を紹介します。

公衆トイレ内で金品を奪った事件

公衆トイレ内で男性を工具で殴り金品を奪おうとした男性が逮捕されました。

男性は18歳の少年と共謀し、トイレ内で男性を襲い、金属工具で複数回殴り、金品を奪おうとし、被害者に全治約1週間のケガを負わせたとのことです。

男性はその後強盗致傷罪に問われ、懲役5年6か月の実刑判決が下されました。

参考:公衆トイレで男性襲い強盗 男に懲役5年6月判決 – 京都新聞

撤去された自転車を強引に取り戻した事件

放置禁止区域に駐輪して、撤去された自分の自転車を自転車保管所まで取り返しに行った男性が強盗致傷罪で逮捕されました。

男性は、撤去された自分のマウンテンバイクを返却してもらおうと市内の自転車保管所に向かいました。

トラックの荷台からおろされていた自転車の中から、自分の自転車を発見すると、勝手に開錠して去ろうとしました。

静止する男性職員に対して、顔や頭を肘で殴り軽傷を負わせてそのまま逃走したため、警察が防犯登録から男性を割り出し、逮捕に至ったとのことです。

自分の財産でも他人が所有している場合、他人の財産だと判断される可能性があります。

男性は自分の自転車を持ち帰っただけという認識かもしれませんが、窃盗罪が成立し、その後男性職員に軽傷を負わせたため、強盗致傷罪という重い罪で逮捕されることになりました。

参考:撤去された放置自転車を取り返しに行った男 「強盗致傷罪」で逮捕のワケは? – Yahoo!ニュース

万引きで店員に怪我をさせ逮捕された事件

コンビニで万引きをして、店員にケガを負わせた男性が強盗致傷罪の疑いで現行犯逮捕されました。

男性は約160円のおにぎり1個を万引きし、追いかけてきた店員を手で押して転倒させ、頭部打撲を負わせた疑いがあります。

男性は逮捕時に所持金を持っていなかったとのことです。

このように、数百円の万引きでも店員にケガを負わせてしまうと、強盗傷害罪という重い罪に問われることになります。

参考:おにぎり1個を万引き後に従業員突き倒したか 男(35)を現行犯逮捕 広島・中区 – TBS NEWS DIG

強盗致傷罪でよくある質問

ここでは、強盗致傷罪でよくある質問に回答します。

強盗が未遂だった場合はどうなる?

強盗致傷罪は未遂でも罰すると刑法第243条には規程されていますが、強盗致傷罪の未遂はないと考えられています。

例えば、物を盗む目的で強盗を行っても、人が負傷しなければ強盗致傷罪は成立せず、強盗罪が成立するに過ぎません。

その場合は、強盗罪に問われることになります。

もっとも強盗罪は、5年以上の有期懲役と、やはり重い法定刑が定められています。

強盗致傷罪に時効はある?

強盗致傷罪の時効は、被害者がケガをした時から15年です。

第二百五十条
中略
② 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
一部引用:刑事訴訟法第250条 – e-Gov

この時効とは、罪がなくなる時効ではなく、検察が被告人を刑事裁判にかけることができる公訴時効のことを指します。

事後強盗って何?

事後強盗とは、窃盗行為を働いた際に、盗んだものを取り返されたり、逮捕されたり、証拠隠滅をしたりするために、人を暴行や脅迫した際に成立する犯罪です。

例えば、空き巣として他人の家に侵入して、金品を奪った後に住人に見つかり、住人を縛って逃走したようなケースが挙げられます。

事後強盗は強盗致傷と似ているかもしれません。

上記の例でいえば、空き巣で住人に見つかって、殴って逃走した場合に、住人がケガをすれば強盗致傷罪に問われることになります。

事後強盗は刑法第238条に定められていますが、強盗罪と同様に法定刑は5年以上の有期懲役です。

まとめ

窃盗の際に、人を負傷させると、窃盗罪ではなく強盗致傷罪が成立します。

無期懲役か、最低でも6年の懲役が科される可能性があります。

情状酌量で軽減されれば、執行猶予がつく可能性はありますが、2022年の裁判員裁判で強盗致傷に執行猶予がついたのは約15%ほどです。

初犯であっても、実刑を覚悟しなければならないかもしれません。

さらに、被害者が亡くなったとなれば強盗致死罪が成立することも考えられるため、逮捕された場合は迷わず弁護士に相談するようにしてください。

ネクスパート法律事務所では、不起訴や示談成立の豊富な実績があります。

必ずお力となりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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