公然わいせつとは|身体露出の罪との違いや公然性の定義は?
公然わいせつとは、公共の場など不特定多数が認識できる状態で、わいせつな行為をした場合に該当する犯罪です。
公園や路上、電車内など、不特定多数が認識できる状況で、下半身の露出などをすれば、逮捕される可能性があります。
公然わいせつについては、どこからどこまでが公然となるのか、わいせつな行為の定義とは何か疑問に感じる人もいるでしょう。
この記事では、公然わいせつの定義、身体露出の罪(軽犯罪法)との違い、逮捕の可能性などについて解説します。


公然わいせつとは
公然わいせつとは、公共の場など不特定多数が認識できる状態で、わいせつな行為を行う犯罪です。
公然わいせつ罪は、刑法第174条に定められています。典型例として、他人に対して下半身を露出する行為が挙げられます。
以下では、公然わいせつ罪の罰則や時効について解説します。
公然わいせつの罰則
公然わいせつ罪の罰則は、6か月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
拘留は、1日以上30日未満刑務所に収容され、科料は1,000円以上1万円未満の罰金です。
(公然わいせつ)
第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
比較的軽微な罪だと考えられていますが、常習性があると判断されれば、懲役刑となる可能性があります。さらに、公然わいせつ罪で有罪となれば前科もつくことになります。
公然わいせつの時効
公然わいせつ罪の時効は3年です。公訴時効とは、一定の期間が経過すると、その犯罪について検察が起訴(裁判にかけること)ができなくなる期限のことです。
公訴時効は、犯罪行為が終わった時からカウントがスタートします。そのため、下半身露出などの行為から3年が経過すれば起訴されることはなくなります。
ただし、被害届が出されていたり、防犯カメラに映像が残されていたりしたことがきっかけで後日逮捕に至る可能性があります。
何度も露出行為をすれば、逮捕の確率も高まるため、時効で逃げ切るのは難しいと考えられます。
公然わいせつとなる行為の例
公共の場で性器を露出する
公然わいせつとなる行為の典型例は、公共の場で性器を露出した場合です。
例えば、駅や公園、路上、商業施設、例え車の中であっても、不特定多数が認識できる場所でわいせつな行為をすれば、公然わいせつに該当します。
公共の場で性的な行為・自慰行為をする
同様に、電車内や公園など不特定多数が認識できる場所で、性的な行為や自慰行為をした場合も、公然わいせつ罪が成立します。
実際に、車の中で自慰行為をしたことで逮捕されたケースは多数あります。
なお、恋人同士が公共の場でキスやハグをする程度の行為については、通常は公然わいせつには該当しません。
ただし、スキンシップの程度が過剰で、性的な行為を伴う場合は、公然わいせつと判断される可能性があります。
ネットで性的な行為を配信する
ライブ配信などでわいせつな行為をネット上に公開した場合も、公然わいせつ罪に該当します。
ネット上の配信はたとえ有料であっても、多数が閲覧できる状態にあるため、公然わいせつ罪が成立します。
実際に、性行為を配信したとして逮捕・有罪となったケースもあります。
他にも、SNSなど不特定多数が閲覧できる状態で無修正の性器をアップロードすると、わいせつ電磁的記録媒体陳列罪に該当する可能性があります。
公然わいせつの定義・構成要件
公然わいせつの定義や構成要件には、公然であること、わいせつな行為であることが要件となります。
加えて、犯罪が成立する要件には、自分が行っている罪を認識し、かつ容認している故意が必要です。そのため、誤って下半身が出てしまった場合には、公然わいせつ罪は成立しません。
以下では、公然わいせつの定義や構成要件について解説します。
公然性・公然の場とは
公然わいせつ罪の公然とは、不特定または多数の人が認識できる状態を指します(昭和32年1月24日東京高等裁判所)。
判例で示される不特定多数に該当するのは、以下のものとされています。
- 不特定とは、関係性がない相手や合意のない相手のことで人数は問われない
- 合意があっても人数が多い
- 合意がある少人数でも不特定に目撃される可能性がある状況
不特定多数が認識できる可能性がある状態を指し、実際に認識できたかどうかは関係しません。
過去には、密室で数十名にわいせつ行為を見せた事件で、数名を超えていることや、特定の人でも関係性が薄いこと、一般人が認識する可能性があるとして、有罪判決が下されています(最高裁判所 昭和31年3月6日判決)。
なお、他者が認識できない場所や方法で、合意のある相手に対して、1対1で下半身などを露出した場合は、公然性はないと考えられ、公然わいせつは成立しません。
わいせつとは
わいせつとは、いたずらに性欲を興奮させるまたは刺激させ、かつ普通の人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものと過去の判例で定義されています。
参考:最高裁判所昭和26年5月10日第一小法廷判決 – 裁判所
判例では前述のとおり示されていますが、いたずらに性欲を興奮や刺激させるものというのは人の感覚によって差があります。
さらに、わいせつの定義は時代や個別の事情によって大きく変化し、どこからどこまでがわいせつであるかは、個別に考慮する必要があります。
ただし、実際に警察が捜査や逮捕を行う際や、検察が起訴する際は、性器を露出していたかどうかが一つの判断材料となります。
身体露出の罪との違い
公然わいせつ罪と似たような罪として、軽犯罪法違反(身体露出の罪)があります。
身体露出の罪とは、①公衆の目に触れるような場所で、②公衆に嫌悪の情を催させるような方法で、③尻やもも、その他身体の一部をみだりに露出した場合に該当する犯罪です(軽犯罪法)。
罰則は、拘留または科料とされ、公然わいせつよりも軽微な犯罪です。
身体露出の罪の場合は、公衆に嫌悪の情を催させるような方法で、臀部、もも、乳房など、人が衣服で隠している部分を露出した場合に該当すると考えられます。
一方で、性器を露出した場合は公然わいせつ罪が成立することになります。
ただし、下着姿でいた女性が公然わいせつ罪で逮捕された事例もあり、どちらの罪が適用されるかは、その場にいた警察官や、検察、そして裁判官によって個別に判断されると考えられます。
公然わいせつは逮捕される?
公然わいせつは、駆けつけた警察官に現行犯逮捕されるケースや、被害届や防犯カメラの映像から後日逮捕されるケースがあります。
現行犯逮捕される可能性がある
公然わいせつで逮捕されるケースの一つは、通報を受けて駆けつけた警察官に現行犯逮捕される場合です。
仮に通報をされなくても、繰り返していると、たまたま巡回していた警察官に見つかって逮捕されることもあります。
公然わいせつで後日逮捕されることもある
公然わいせつでは、後日逮捕されることもあります。
例えば、現場を目撃した通行人によって通報が行われ、その場で逮捕されなくても、防犯カメラの映像から、被疑者(容疑者)の特定に至ることがあります。
特に、同じような通報や目撃情報が相次げば、警察も捜査や巡回を行い、それにより逮捕に至ることもあるでしょう。
公然わいせつで逮捕されるリスク
公然わいせつで逮捕された場合は、以下のようなリスクがあります。
- 10~20日間勾留され、身柄を拘束される
- 会社や学校に通えなくなり、犯罪の事実が知られるおそれがある
- 場合によっては実名報道をされて、家族や社会の信用を失う
- 懲役刑や罰金刑となり前科がつく
- 懲役刑や罰金刑を受けることで、国家資格などの失格事由となる など
なお、法務省によると2023年に、公然わいせつで被疑者が特定された割合は73.2%でした。
公然わいせつの逮捕率は他の犯罪に比べて高くありませんが、身柄拘束を受けずに捜査が進められる在宅事件になることがあります。
在宅事件であっても、起訴されて有罪判決が下されれば、前科がつくことになります。

逮捕された場合は弁護士に相談する
逮捕された場合は、早急に弁護士へ相談することが重要です。公然わいせつで逮捕された場合、弁護士が以下のようなサポートを行います。
- 不利な供述を行わないように取調べへの助言
- 長期間勾留されないよう検察へ意見書を提出
- 目撃者に対する謝罪と示談交渉
- 不特定多数が目撃者である場合は、反省を示し贖罪寄付
- 再犯防止策として、露出症の治療を受ける など
逮捕は初めてでも常習的に露出を行っている場合、捜査の結果、再逮捕されることもあります。
さらに、常習的に露出行為を行い、辞められない場合、露出症という病気であるケースもあるため、再犯防止策として適切な治療を受けることが必要です。
加えて、公然わいせつでは、冤罪のケースもあります。犯罪の事実がない場合は、不利な供述を行わないよう、取調べへの対策が極めて重要です。
逮捕されている人は、警察に頼んで、一度だけ無料でアドバイスを受けられる当番弁護士を呼んでください。
家族は、弁護士会に連絡して当番弁護士を派遣してもらうか、刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談してください。
当事務所でも、トイレで女性に陰部を露出し逮捕された事案において、勾留から早期釈放を実現した実績があります。
逮捕されていないケースや、警察から連絡があった場合でも、在宅事件についてアドバイスが可能ですので、お気軽にご相談ください。
公然わいせつに関するよくある質問
わいせつな電磁的記録を陳列すると公然わいせつになる?
性器や性行為のわいせつな写真などをSNSなどにアップロードすると、わいせつな電磁的記録にかかる記録媒体を公然と陳列したことになり、わいせつ物頒布罪という罪に該当します(刑法第175条)。
わいせつ物頒布罪の罰則は2年以下の懲役、もしくは250万円以下の罰金、もしくは科料、または懲役と罰金の両方が科されます。
公然わいせつは初犯なら不起訴になる?
初犯であっても必ず不起訴になるとは限りません。公然わいせつの場合、初犯であっても、罰金刑となることがあります。
公然わいせつ罪の場合、略式起訴といって、公開の裁判が行われず、書面の簡易な審理だけで罰金刑となることも多いです。
なお、罰金刑であっても、有罪であることに変わりはありませんので、前科がつくことになります。
一方で、すでに公然わいせつの前科がある場合は、公開の裁判となる可能性があります。
公然わいせつを不起訴にするには?
不起訴を目指すには、弁護士による早期の対応が重要です。
公然わいせつは、社会の性的秩序や健全な性的風俗を守るために定められ、社会に対する犯罪とされています。
そのため、わいせつ行為を見た人は被害者ではなく、目撃者という位置づけとされていますが、実際は、被害者との示談が重要です。
特定の目撃者がいれば、その被害者と示談を行うこと、反省を示すこと、個別の事情に応じて、専門的な治療を受ける、贖罪寄付などの方法を検討します。
いずれにしても、不起訴を得るには弁護士のサポートを受けることが重要です。
まとめ
公然わいせつは、公共の場で、不特定多数が認識できる状態で、下半身の露出などわいせつな行為をした場合に該当します。
わいせつの定義は、時代によっても異なり、個々の事案によって判断されることになりますが、実際には、性器を露出していれば、公然わいせつ罪として逮捕されます。
露出行為がやめられず何度も繰り返す場合や、再逮捕や懲役刑、報道による社会的な信用の失墜などさまざまなリスクが生じます。
このような場合も弁護士に相談して、露出行為をやめるきっかけにすることが大切です。
ネクスパート法律事務所では、公然わいせつを含む性犯罪の事案を多数解決した実績があります。家族が逮捕された場合や警察からの呼び出しがある場合は、ご相談ください。