仮釈放とは|仮釈放の期間や条件、仮釈放後の生活をわかりやすく解説

仮釈放とは、刑務所などに収容されている受刑者を、条件付きで釈放して、社会復帰の機会を与える制度のことです(刑法第28条)。

長期間刑務所に収容されていた受刑者が、刑の満了でいきなり復帰しても、社会に適応できなければ再び罪を犯すおそれがあります。

そうならないように、スムーズな社会復帰を目的として、刑の満了までに、監視のもと生活をおくるのが仮釈放です。

ただし、仮釈放が認められるためには、さまざまな条件があります。

この記事では、仮釈放について次の点を、わかりやすく解説します。

  • 仮釈放となる条件
  • いつ頃仮釈放になるのか
  • 仮釈放後の生活について など

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仮釈放とは

仮釈放とは、条件付きで受刑者を釈放して、監視のもと社会復帰を目指す制度のことです。

(目的)
第一条 この法律は、犯罪をした者及び非行のある少年に対し、社会内において適切な処遇を行うことにより、再び犯罪をすることを防ぎ、又はその非行をなくし、これらの者が善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるとともに、恩赦の適正な運用を図るほか、犯罪予防の活動の促進等を行い、もって、社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする。
引用:更生保護法第1条 – e-Gov

仮出所とも呼ばれます。

仮釈放された場合、刑期満了まで、保護観察として監視を受け、仮釈放中のルールである遵守事項を守ることが求められます。

もし遵守事項に反したり、再犯したりした場合は、仮釈放が取り消される可能性があります。

ここでは、仮釈放と他の言葉の違いや、仮釈放までの流れを解説します。

保釈と釈放との違い

仮釈放とよく似た言葉に保釈というものがあります。

保釈とは、起訴後に刑事裁判の開廷まで身柄拘束を受けている場合に、条件を満たして、保釈金を預けることで、一時的に身柄拘束から解放される制度です。

仮釈放は、刑事裁判で有罪後、刑務所に収容された後に釈放されることです。

両者は刑事手続き上、利用できるタイミングが異なりますが、どちらも社会復帰が困難にならないために設けられた制度なのです。

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一部執行猶予との違い

裁判で処分が下された場合、執行猶予がつくことがあります。

執行猶予とは、懲役は〇年を言い渡すが、執行猶予の期間中に罪を犯さなければ、刑務所には収容しませんよという制度です(全部執行猶予)。

2016年6月には、法改正により、全部執行猶予以外に、刑の一部の執行猶予制度が新設されました。

一部執行猶予とは、言い渡された懲役や禁固のうち一部の期間、刑の執行を猶予するというものです。

例えば、懲役3年、その刑の一部6か月を2年間猶予する場合、刑務所に収容され2年6か月までは刑が執行、残り2年間は釈放されて保護観察となります。

もし執行猶予期間中に執行猶予が取り消されれば、残りの6か月は再度刑が執行されます。

一部執行猶予と仮釈放はよく似た制度です。

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仮釈放までの流れ

仮釈放までの流れは次のとおりです。

  1. 一定期間刑の執行を受けた者に仮釈放の審査が行われる
  2. 仮釈放の希望や、反省の有無、身元引受人の連絡先などが受刑者に確認される
  3. 身元引受人の調査が行われる
  4. 仮釈放予定の半年前に仮面接:仮釈放に対する希望、事件や被害者、今後の仕事、共犯者との関係などが確認される
  5. 3~4か月後に本面接:仮面接と同じ質問で矛盾がないかチェックされる
  6. 問題なければ2~3か月後に仮釈放

仮釈放は、各刑事施設の刑務長官が地方更生保護委員会に申し出を行い、受刑者の状況を確認し、審議の上で決定されます(更生保護法第34条、39条)。

地方更生保護委員会は、加害者の釈放を決定する権限を持った機関(更生保護法第16条)です。

仮釈放の条件

仮釈放されるにはいくつか条件があります。

(仮釈放許可の基準)
第二十八条 法第三十九条第一項に規定する仮釈放を許す処分は、懲役又は禁錮の刑の執行のため矯正施設に収容されている者について、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない。
引用:犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則第28条 – e-Gov

ここでは、仮釈放の条件について解説します。

一定期間以上刑が執行されていること

仮釈放の条件の1つ目は、一定期間以上刑が執行されていることです。

有期懲役の場合 言い渡された量刑の3分の1
無期懲役の場合 10年以上

ただし、後述しますが、ほとんどのケースでは、刑が80~90%程度執行されなければ、仮釈放されることはありません

反省して更生の意欲があること

仮釈放で重視されるのが、改悛(かいしゅん)の状があること、そして、更生の意欲があることです。

改悛とは、過去の行いに対して、過ちを悔い改めて、心を入れ替えることです。

改悛の状や更生の意欲があるかどうかは、次のような点を客観的にチェックされ、判断されます。

  • 自分の問題点を正しく認識し、事件に対して悔いる気持ちを持っていること
  • 被害者などに対する謝罪の有無
  • 被害者への償いの内容
  • 刑務所での処遇に対する取り組み状況
  • 反則行為の有無や内容
  • 刑務所での生活態度
  • 釈放後の生活に関する計画の有無 など

参考:犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則 – e-Gov
無期刑及び仮釈放制度の概要について – 法務省

再犯のおそれがないこと

3つ目の条件は、再犯のおそれがないことです。

再犯のおそれがないかどうかも、次の点を客観的にチェックされます。

  • 性格や年齢
  • 犯罪の質や動機、犯罪の内容
  • 社会に与えた影響
  • 釈放後の生活環境 など

保護観察が更生のために相当であること

4つ目の条件が、保護観察が更生のために相当であると判断されることです。

保護観察とは、刑務所の外で更生を目指す支援のことです。

保護観察が相当であると判断されれば、釈放されたのちに、定期的に保護司などと面接をしながら、生活して更生を目指します。

保護観察が更生のために相当であると判断されるのは、先述した改悛の状や、更生の意欲、再犯のおそれがないかどうかで、総合的に判断されます。

社会が仮釈放を認めていること

4つ目の条件が、社会が仮釈放を認めていることです。

社会というのは、被害者や地域社会を指します。

社会が仮釈放を認めるかどうかは、次の点から判断されます。

  • 被害者等の感情
  • 刑務所の収容期間
  • 検察官等からの意見 など

仮釈放は、被害者が希望すれば、事前に被害者へも通知が行くことになります。

仮釈放にあたっては、地方更生保護委員会でも、被害者の意見を聞いたうえで、総合的に判断します。

犯罪の被害に遭った被害者が、仮釈放に賛成するケースは少ないですが、被害者が反対したからといって、必ずしも仮釈放が認められないわけではありません。

身元引受人と帰住予定地があること

5つ目の条件は、身元引受人と帰住予定地(本人が帰る場所)があることです。

法律には明記されていませんが、実務上は身元引受人がいない、帰住地がない場合、仮釈放が認められません

身元引受人とは、受刑者の身柄を引き受けて、生活や行動を監視する人のことです。

一般的には、家族などが身元引受人になります。

仮釈放では、再犯防止や更生を目指す上でも身元引受人の存在が重視されます。

身元引受人がいない場合は、保護司や保護観察官が、次のような帰住地となる場所を探します。

更生保護施設 住居や頼れる人がいない出所者に対して、宿泊や食事提供、就職援助や生活指導等を行う民間施設。

原則6か月まで利用可能

自立更生支援センター 職業訓練や就業支援に特化した更生保護施設
自立準備ホーム 住居や頼れる人がいない出所者に対して、宿泊や食事提供、就職援助や生活指導等を行う施設。

NPO法人などの施設などが活用されている。

他にも高齢や障害を抱えているような場合は、老人法務や福祉施設などが帰住地となるケースもあります。

犯罪防止推進白書によると、満期釈放者のうち62.5%が帰住先がなく仮釈放の申し出ができなかったとのデータがあります。

参考:第1節 満期釈放者の現状 – 再犯防止推進白書

仮釈放と期間

ここでは、仮釈放までにかかる期間の平均や仮釈放される割合などを解説します。

仮釈放までにかかる期間の平均

仮釈放の条件の1つは、一定の期間刑が執行されていることです。

犯罪白書によると、実際に仮釈放までにかかる期間は、刑が70~90%以上執行された場合です。

2022年犯罪白書 仮釈放刑の執行率引用:令和5年版 犯罪白書 第2節 仮釈放等と生活環境の調整 – 法務省

法律上では、有期懲役で言い渡された量刑の3分の1、無期懲役の場合は10年服役すれば、仮釈放の対象となると定められています。

しかし、実際は仮に懲役10年が言い渡された場合、最低でも7~9年以上は服役しなければ、仮釈放は認められないのです。

仮釈放の期間

仮釈放された後、社会に居られる期間は、残り刑期の期間です。

その期間までに、仮釈放中の遵守事項を守って生活をおくります。

残りの刑期を満了すれば、その後は保護観察に付されることなく生活を送ることができます。

ただし、無期懲役の場合は、刑期が定められていません。そのため、死ぬまで保護観察が続くことになります。

もちろん、刑期の満了までに遵守事項に違反すれば、刑務所に引き戻され、残りの刑の執行を受けることになるでしょう。

仮釈放される割合は約60%

犯罪白書によると、2022年に仮釈放が認められた割合は約60%でした。

2010年には、仮釈放率は49.1%の割合でしたが、近年は増加傾向にあります。

もっともこの仮釈放率は、言い渡された刑期の70~90%を服役し、仮釈放の条件を満たした上で、帰住先がある受刑者に限られます。

出所受刑者仮釈放率の推移引用:令和5年版 犯罪白書 第2節 仮釈放等と生活環境の調整 – 法務省

無期懲役でも仮釈放される?

30年服役すると仮釈放の可能性がある

無期懲役の場合、仮釈放される条件は、10年以上服役することです(刑法第28条)。

ただし、法務省の運用では、最低でも30年服役しなければ、仮釈放の審理が行われません

参考:無期刑受刑者に係る仮釈放審理に関する事務の運用について(通達)

無期懲役で仮釈放される割合は15.8%

2022年の無期懲役の受刑者数 1,688人
仮釈放の審理が行われた件数 38件
仮釈放が認められた人数 6人
仮釈放が認められた受刑者の平均服役期間 45年3か月

審理が行われた件数のうち、仮釈放が認められた割合は15.8%でした。

ただし、これは服役期間が30年以上の無期懲役の受刑者に限られます。

全体のうち、実際に仮釈放の審理が行われたのは2.25%です。

参考:無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について – 法務省

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仮釈放後の生活

仮釈放をされてもそれで終わりではありません。

仮釈放後は、定められたルールを守って生活しなければなりません。

ここでは、仮釈放後の生活を解説します。

残りの刑期は保護観察

仮釈放が認められて、出所したとしても、残りの刑期は保護観察に付されます。

保護観察では、定期的に保護司や保護観察官と面接をし、次のような指導が行われます。

指導監督 面接で生活状況等を把握する

遵守事項を守るよう指示を行う

犯罪の傾向(性犯罪や薬物、飲酒など)に合わせて改善のためのサポートを行う

補導援助 自立した生活をおくるための援助や助言

ボランティア活動への参加をうながす

必要に応じて医療機関の情報を提供する

就労情報の提供やハローワークへの同行

依存症回復のための支援団体の情報提供

社会生活技能訓練の実施

仮釈放中の遵守事項

仮釈放中(保護観察中)は、保護観察対象者が守らなければならない遵守事項が定められます。
遵守事項には次の2種類があります。

一般遵守事項

※保護観察対象者全員

再犯をすることがないよう健全な生活態度をおくること

保護観察官や保護司と面接をすること

生活状況の申告、必要に応じて資料提出

転居や旅行の際は、保護観察所長の許可を得ること

特別遵守事項

※個人の問題に応じて課されるルール

例:

就職活動を行い定職に就くこと

共犯者との交際を絶ち、接触しないこと

性犯罪者処遇プログラムを受けること など

参考:保護観察所 – 法務省

仮釈放が取り消されるケース

仮釈放が取り消されるケースは次のとおりです。

(仮釈放の取消し等)
第二十九条 次に掲げる場合においては、仮釈放の処分を取り消すことができる。
一 仮釈放中に更に罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。
二 仮釈放前に犯した他の罪について罰金以上の刑に処せられたとき。
三 仮釈放前に他の罪について罰金以上の刑に処せられた者に対し、その刑の執行をすべきとき。
四 仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しなかったとき。
2 刑の一部の執行猶予の言渡しを受け、その刑について仮釈放の処分を受けた場合において、当該仮釈放中に当該執行猶予の言渡しを取り消されたときは、その処分は、効力を失う。
3 仮釈放の処分を取り消したとき、又は前項の規定により仮釈放の処分が効力を失ったときは、釈放中の日数は、刑期に算入しない。

引用:刑法第29条 – e-Gov

保護観察中に、罪を犯して罰金以上の刑に処された場合や、遵守事項に違反すると仮釈放が取り消される可能性があります。

仮釈放中に再犯をするとどうなる?

仮釈放中に再犯し、仮釈放が取り消された場合、残りの刑期は再度刑務所に収容されることになります。

仮釈放中の日数は残りの刑期に算入されません。

例えば、懲役10年が言い渡された後、9年目で仮釈放された場合で考えます。

残りの1年遵守事項を守り、犯罪と縁を切って生活できれば、保護観察は終わります。

一方で、残り1年の間に再犯をすると、保護観察期間中の日数に関係なく、残り1年は再度刑務所に収容されることになります。

仮釈放には身元引受人が重要!

仮釈放をされるには、①刑期の70~90%以上を服役し、②仮釈放の条件を満たし、③身元引受人や帰住地がなければ、認められません。

身元引受人について、法律上は明記されていませんが、実務上は身元引受人の存在がかなり重要です。

先述したとおり、帰住先や身元引受人がおらず、仮釈放の申請すらできなかった受刑者は約60%にものぼります。

ここでは、仮釈放に重要な身元引受人について解説します。

身元引受人になれる人

身元引受人になれる人については、法律上特段定められていません。

犯罪白書によると、出所者の身元引受人になった人は次のとおりでした。

  • 父・母
  • 配偶者
  • 兄弟
  • その他親族
  • 知人
  • 雇い主
  • 更生施設 など

参考:令和5年版 犯罪白書 出所受刑者 – 法務省

身元引受人がすべきこと

身元引受人は、保護観察中の人が再び罪を犯さないよう監督することはもちろんですが、本人に寄り添い、生活の中で困っていることを一緒に解決していく姿勢が求められます。

また、なかなか仕事が見つからないことも考えられるため、金銭的なサポートだけなく、粘り強く応援することが重要です。

まとめ

罪を犯して服役をしていても、仮釈放が認められれば、社会で更生を目指すことができます。

ただし、実務上仮釈放が認められる条件は厳しいものも多いです。

最低でも言い渡された刑期の70~90%、無期懲役なら30年は服役しなければなりません。

仮釈放の条件を満たすだけでなく、身元引受人や帰住地があることも最低条件だと言えるでしょう。

また、満期で釈放された人の再犯率が47.9%に対し、仮釈放された人の再犯率は29.8%と低く、仮釈放制度は再犯防止に効果を発揮しています。

罪を犯した人を受け入れがたい、抵抗があるという人も多いかもしれませんが、社会で見守ることが再犯を防止する上で重要です。

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