軽犯罪法とは|罰則や時効・軽犯罪に該当する行為一覧を解説

軽犯罪法とは、国民の生活と安全、秩序維持のため、秩序や道徳規範に違反する行為を、比較的軽い犯罪として定めた法律のことです。

罰則は拘留や科料として刑罰としても軽いものですが、秩序維持のために必要な法律です。しかし、軽犯罪法違反として軽い罪で済んでも、有罪となれば前科がつくことになります。

場合によっては、さらに別の罪が適用されて、重い処分が下されることもあるため、甘く見るのは危険です。

この記事では軽犯罪法について、以下の点を解説します。

  • 軽犯罪法の概要・罰則と時効
  • 軽犯罪法に該当する行為一覧とその例
  • 軽犯罪法に違反するリスク

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軽犯罪法とは

軽犯罪法とは、国民の生活と安全、秩序維持のため、秩序や道徳規範に違反する行為を、比較的軽い犯罪として規定した法律のことです。

軽犯罪法には、違反すると罰則が科される33の行為が定められています。例えば、凶器の所持や公共の場での排泄などの行為が、軽犯罪法違反に該当します。

以下では、軽犯罪法について、刑法との違いや罰則、時効について解説します。

軽犯罪法違反の罰則

軽犯罪法に違反した場合の罰則は、拘留または科料です。

第一条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。

引用:軽犯罪法第1条 – e-Gov

拘留は1日以上30日未満、刑務所や拘置所に身柄を収容される刑罰です。懲役刑との違いは、収容される期間が短く、刑務作業が必須ではない点ですが、希望すれば作業が可能です。

科料は、1,000年以上1万円未満の金銭の納付を求められる刑罰です。

(拘留)

第十六条 拘留は、一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する。

(科料)

第十七条 科料は、千円以上一万円未満とする。

引用:刑法 – e-Gov

上記のとおり、軽犯罪法の刑罰は、拘留や科料で、比較的軽微な刑罰が科されます。

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軽犯罪法の時効

軽犯罪法にも時効が存在します。軽犯罪法違反の時効は1年です(刑事訴訟法第250条)。

この時効とは、検察が容疑者(被疑者)を刑事裁判で訴える(起訴)ことができる期限である、公訴時効のことを指します。

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軽犯罪法と刑法の違い

刑法では、遺失物横領罪などの比較的軽微な犯罪から、殺人や詐欺など重大な犯罪を定めており、罰金刑や懲役刑などの重い処罰が科されます。

一方で軽犯罪法は、日常生活で起こる些細な違反行為を取り締まるものであり、罰則も拘留か科料のみです。

軽犯罪法は、軽微な犯罪の取り締まりと共に、軽微な犯罪を防止して、社会秩序を維持する目的もあります。

罰則は軽いものの、裁判で有罪となると前科がつく点は刑法と同様であり、注意が必要です。

軽犯罪法に該当する行為の例

軽犯罪法では、以下のとおり、33の行為を取り締まっています。

軽犯罪法で規制されている行為一覧 内容
①人の住んでいない看守していない邸宅、建物、船舶などに正当な理由なく潜む行為 住居侵入罪に至らない範囲の侵入行為を禁止
②正当な理由がなく、凶器を携帯する行為 職業上などの正当な理由以外で、刃物、鉄棒、その他人の生命を害し、人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯する行為を禁止。

刃渡り6cm以上の刃物は、銃刀法違反に該当する

③建物に侵入するための道具を隠して携帯する行為 正当な理由がなく、他人の邸宅や建物に侵入するのに使用されるような合鍵、のみ、ガラス切りなどの器具を隠して携帯する行為。

空き巣などを防止する目的で設けられたもの

④働く能力があるのに浮浪する行為 働く能力があるのに、仕事に就く意思を持たず、住居を持たずにうろつく行為。

秩序違反を防止するために定められた法律だが、無職でも家があり、居住しているのであれば該当しない。

⑤公共の場で乱暴な言動で迷惑をかける行為 劇場や飲食店などの公共の娯楽場や、交通機関で、乱暴な言動などで迷惑をかける行為。

迷惑行為にはさまざまなものがあるが、常識の範囲を超えた行為が該当する。なお、人に暴力的な行為をした場合は、暴行罪が成立する可能性がある。

⑥正当な理由がなく街灯などを消す行為 いたずら行為などで、街灯などを消す行為。通行人の安全を守るために設けられている。
⑦水路の交通を妨げる行為 船などを水路に放置して、船の交通を妨げる障害物を設置する行為。水路の交通の安全を守るために設けられている。
⑧災害や事故・犯罪時に警察官などに従わない行為 地震・火事・交通事故、犯罪行為などの発生時に、現場に出入りする公務員や援助する人の指示に従わずに応じない行為。
⑨注意をせず火気を使用する行為 注意をせず、建物、森林、その他燃えるような物やガソリンなど引火しやすい物の近くで火気を使用する行為。これにより火災が発生した場合は、失火罪が成立する可能性がある。火災発生を防止する目的で定められている。
⑩十分な注意をせず爆発物を使用する行為 十分な注意をせず、発砲または火薬類、ボイラーその他の爆発物を使用する行為。

過失により爆発に至る危険な行為を防止する目的で定められている。

⑪十分な注意をせず、人や物に害を及ぼす可能性がある場所に物を投げる行為 十分な注意をせず、人の身体、または物件に害を及ぼすおそれがある場所に物を投げ、注ぎ、発射する行為。例えば、窓から物を投げる行為などが該当する。
⑫人に害を加えるおそれがある動物を放し飼いにする行為 人に危害を加える可能性がある犬や鳥獣類などの動物を、正当な理由もなく放し飼いをして、その管理を怠って逃がす行為。

逃げた動物が人を襲った場合は、過失傷害罪や傷害罪が成立する可能性がある。

⑬公共場で乱暴な言動などを行い、列に割り込む行為 公共の場で多数の人に対して、粗野で乱暴な言動により迷惑をかけて、公衆の列に割り込んだり、列を乱す行為。
⑭大きな音で近隣に迷惑をかける行為 警察官などの制止をきかずに、声や楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して、静寂を害し近隣に迷惑をかける行為。
⑮警察官などの称号を詐称・本物と誤信させるものを身に着ける行為 警察官などの称号を詐称し、資格がない人が制服や勲章など似せてつくった物を身に着ける行為。例えば警察官でないのに、警察官を名乗る行為などが該当する。
⑯警察官などに嘘の申告をする行為 警察官などに虚構の犯罪などを申告する行為。

人に刑罰などを受けさせる目的で虚偽の告訴を行うと虚偽告訴罪が成立する可能性がある。

⑰質屋などで取引をする際に虚偽の申告をする行為 質入れや古物売買などの際に、氏名・住居・職業など誤った情報を帳簿に記載させる行為

盗品などを流通させないために定められている。

⑱自分の所有地に救助者がいたり、死体があったりしても通報しない行為 自分の所有地に救助者を必要とする人や死体があることを知りながら通報しない行為。
⑲正当な理由もなく変死体のあった現場を変える行為 正当な理由もなく変死体のあった現場を変える行為。
⑳公衆の目に触れる場で、身体の一部を露出する行為 公衆の目に触れる場所で、嫌悪の情を起こさせるような方法で、腿など体の一部をみだりに露出する行為。

性器を露出した場合は公然わいせつ罪が成立する可能性がある。

㉑物乞いをする、物乞いをさせる行為 路上で物乞いをする、物乞いをさせる行為
㉒人が服を脱ぎ場所をのぞき見る行為 正当な理由なく、人の住居、浴場、更衣室、トイレなど人が衣服をつけない

場所をひそかにのぞき見る行為。

㉓いたずらにより儀式を妨害する行為 いたずらなどにより、結婚式などの儀式を妨害する行為。
㉔水路の流れを妨害する行為 川など水路の流通を妨げて、水を溢れさせたり、農業などに支障を生じさせる行為。
㉕たんやつば、排泄する・させる行為 道端や公園など公衆が集まる場所で、淡やつばを吐き、排泄をする、させる行為。

道端や公園などの清潔を維持して、公衆衛生を守る目的で定められている。

㉖ゴミや動物の死骸などを棄てる行為 ゴミや鳥獣の死体、その他汚物を棄てる行為。
㉗人につきまとう行為 他人の進路に立ちふさがり、またはその身辺に群がり、不安や迷惑を覚えるような方法で、人につきまとう行為。
㉘暴行などを共謀し、共謀者がその準備をする行為 人の身体に害を加えることを企て、共謀者が準備をする行為。
㉙人や家畜に対して動物をけしかける行為 人や家畜に対して、犬などの動物をけしかけ、馬や牛を驚かせて走らせ混乱させる行為。人がケガする可能性がある行為を禁止している。
㉚他人の業務をいたずらで妨害する行為 他人の業務に対して、いたずらで業務を妨害する行為

妨害行為の方法によっては、威力業務妨害罪や偽計業務妨害罪が成立する可能性がある。

㉛立ち入り禁止の場所や人の田畑に正当な理由がなく立ち入る行為 立ち入り禁止の場所や、他人の田畑などに正当な理由がなく立ち入る行為。

刑法の住居侵入罪が成立しない行為についても広く処罰の対象としている。

㉜人の家などに張り紙をする・標示物をはがす行為 人の家や工作物に張り紙をする行為、もしくは他人の看板などの標示物を取り除く行為。
㉝虚偽の広告を出す行為 販売や役務を提供するにあたって、人を欺き、誤解させるような事実を挙げて広告を出す行為。

いずれも、秩序を維持するための危険な行為や迷惑行為、不衛生な行為の禁止、犯罪行為の防止を定めています。

これらは犯罪と呼べるほど大きな行為ではないと感じられるかもしれませんが、社会秩序を維持する上では重要な法律です。

軽犯罪法には、刑法などで定められている犯罪と似た犯罪があります。以下では、軽犯罪法と似ている他の犯罪を解説します。

のぞき見・盗撮

軽犯罪法では、正当な理由がなく、人の住居、浴場、更衣室、トイレなど人が衣服をつけない場所をのぞき見る行為を禁止しています。

二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

引用:軽犯罪法 – e-Gov

人が衣服をつけない場所をのぞき見るために、人の家の敷地内に侵入すれば、軽犯罪法違反とは別に住居侵入罪が成立します。

(住居侵入等)

第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法第130条 – e-Gov

他にも、人の性的な姿をひそかに撮影する行為は、撮影罪が成立し、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が科される可能性があります。

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ストーカー・つきまとい

軽犯罪法では、他人の進路に立ちふさがったり、その身辺に群がって立ち退こうとせず、不安や迷惑を覚えさせる方法で他人につきまとう行為を禁止しています。

二十八 他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者

引用:軽犯罪法 – e-Gov

軽犯罪法で定められているつきまとい行為は、人を尾行する行為や、ナンパなど嫌がる相手の後をついていく行為が該当します。

つきまとう行為を禁止する法律は、他にもストーカー規制法や迷惑防止条例が定められていますが、以下のような違いがあります。

軽犯罪法違反 ストーカー規制法 迷惑防止条例
目的 特になし 恋愛感情や好意が満たされないことによる怨恨 恨み・妬み、その他悪意の感情
回数 1回でも違反 反復したつきまといなどの行為 反復したつきまといなどの行為
罰則 拘留または科料 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

禁止命令に反してストーカー行為をした場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金

1年以下の懲役または100万円以下の罰金(東京都の場合)

※各自治体によって異なる

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露出・公然わいせつ

軽犯罪法では、公衆の目に触れる場所で、公衆に嫌悪の情を催させるような方法で、臀部や腿など身体の一部を露出する行為を禁止しています。

二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者

引用:軽犯罪法 – e-Gov

刑法では、不特定多数に見られる状態で性器を露出すると、公然わいせつ罪が成立します。罰則は6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金です。

(公然わいせつ)

第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

引用:刑法第174条 – e-Gov

軽犯罪法と公然わいせつは、露出した部位によって適用される罪が異なります。性器の露出は公然わいせつ罪が適用され、臀部や腿、乳房など、人が衣類で隠している部分を露出した場合は、軽犯罪法違反が適用されると考えられます。

他にも、人に嫌悪や不快感を感じさせる行為は軽犯罪法違反となり、それを超えて性的羞恥心を害する行為は公然わいせつ罪が適用される可能性があります。

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軽犯罪法でも逮捕されるケースはある?

検察統計調査によると、2023年に軽犯罪法で逮捕された人は66人、逮捕されなかった人は7,404人でした。逮捕された割合は、約0.8%です。

一般的な刑法犯の逮捕率は、34.8%であることを考えると、逮捕される割合は低いと言えます。

しかし、中には逮捕されるケースもあるため、注意が必要です。以下では、軽犯罪法で逮捕される要件や、逮捕後の流れについて解説します。

参考:令和6年版 犯罪白書 第2編 犯罪者の処遇 第2章 検察 第3節 被疑者の勾留と逮捕 – 法務省

軽犯罪法で逮捕される要件

逮捕は、国による強制処分であるため、逮捕の要件を満たさなければ、行うことができません。

逮捕の基本となる、裁判所が逮捕令状を発付して行われる通常逮捕では、以下の要件が求められます。

ただし、30万円以下の罰金、拘留や科料に当たる罪については、被疑者の身元がはっきりとせず、逃亡のおそれがある場合に限り、逮捕が行われます。

軽犯罪法の罰則は、拘留や科料であるため、罪を犯しても、氏名がわからない、住所不定や無職、逃亡のおそれがあると判断されなければ、逮捕されません。

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

引用:刑事訴訟法第199条 – e-Gov

一方で、現行犯逮捕の場合は、現に罪を行い終えた人であることが要件です。

そのため、目の前で違反行為を行い、逃走するなどすれば、現行犯逮捕される可能性があります。

軽犯罪法で逮捕された後の流れ

軽犯罪法で逮捕された場合、まず警察署で48時間以内に取調べが行われ、その後、事件が検察庁に送致されます。

これは、被疑者を起訴する権限が検察にあるためです。検察に身柄と事件を引き継ぎます。

検察官はさらに24時間以内に勾留を請求するかを判断します。勾留とは、警察の留置場に拘束されることで、逃亡や証拠隠滅のおそれがある際に行われます。

軽犯罪法の罰則である拘留と違い刑罰ではない点に注意が必要です。

勾留が認められた場合、原則として最大10日間、必要に応じてさらに最大10日間(合計20日間)の勾留が可能です。この間に追加の取調べや証拠の精査が行われます。

勾留期間中に検察官が起訴する判断を下せば、刑事裁判が開始されます。起訴後も引き続き勾留が続く場合があり、裁判までに一定の時間を要することもあります。

反対に、不起訴処分となれば、前科はつかずに釈放されます。

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軽犯罪法で逮捕された事例はある?

前述のとおり、軽犯罪法違反で逮捕されるケースは多くありません。しかし、以下のようなケースで逮捕が行われています。

  • 交番に立ち小便をした男性が、軽犯罪法違反で現行犯逮捕
  • 安倍元首相の献花台で儀式を妨害した男性を軽犯罪法違反で現行犯逮捕
  • 自宅の窓を開けて大音量でハードロックをかけた男性を逮捕

このように、警察官の目の前で犯罪を行った場合や、逃亡のおそれがある場合には、現行犯逮捕される可能性があります。

しかし、逮捕されないからと軽視するのは危険です。逮捕されなくても、身柄拘束が行われないだけで、捜査が継続して、起訴されることもあります。

このようなケースを在宅事件と呼びます。軽犯罪法違反で多いのは、在宅事件となるケースです。以下のようなケースで在宅事件として扱われています。

  • 店の前で10か月連続で唾を吐いた男性を書類送検
  • 駅周辺で物乞い行為をした男性を書類送検
  • 駅前で花火を打ち上げた中学生を書類送検
  • ナンパ目的で女性につきまとった男性を書類送検

書類送検とは、書類のみ検察に送致する報道用語です。書類送検された場合は、逮捕は行われませんが、捜査は継続して、起訴されることもあります。

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軽犯罪法に違反するリスク

軽犯罪法は、その名のとおり比較的軽微な罪ですが、実際には大きなリスクが生じることもあります。

逮捕の可能性や、勾留、起訴などの社会的影響も無視できません。

特に、罰金程度の軽い罪になるだろうと思うのは危険です。起訴されて有罪判決が下されれば、科料であっても前科がつきます。

軽犯罪法違反でも、生活に重大な影響を及ぼすおそれがあるため、甘く見ず、早期に弁護士へ相談することが重要です。

逮捕や10~20日間勾留される可能性がある

軽犯罪法に該当する行為であっても、現行犯であればその場で警察に逮捕される可能性があります。

そして、逮捕された場合は、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、勾留が認められるケースは多いです。

法務省によると、2023年に刑法などで逮捕された人のうち、96.2%で勾留が認められています。

軽犯罪法違反の場合、逮捕された66人のうち35人が勾留されており、勾留率は53%です。

刑法などで逮捕された人に比べれば少ないですが、半分の確率で勾留されるおそれがあります。

10~20日間も勾留が行われれば、その間は外部との連絡も制限され、生活にも大きな支障をきたします。

参考:令和6年版 犯罪白書 第2編 犯罪者の処遇 第2章 検察 第3節 被疑者の勾留と逮捕 – 法務省

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軽犯罪法で有罪となると前科がつく

検察は、勾留期間の満了までに起訴か不起訴かを判断します。

軽犯罪法違反罰則は拘留や科料であるため、軽い罪ではありますが、裁判で有罪判決が下されると、どんなに軽い罪でも前科がつく点には注意が必要です。

なお、2023年の軽犯罪法の起訴率は13.7%と低く、その99%が略式起訴と呼ばれる書面の審理で罰金刑となるものばかりです。

しかし、略式起訴の場合は、被疑者同意のもとで行われ、前科がつきます。

一度前科がついてしまうと消すことはできず、資格取得や海外渡航に影響するほか、再度罪に問われた際に、さらに重い処分が科される可能性があります。

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逮捕されなくても在宅事件になることがある

前述の統計によると、軽犯罪法の場合は、高確率で在宅事件となる可能性が高いです。

在宅事件は、勾留されず身柄拘束を受けませんが、定期的に警察や検察に呼び出されて、取調べが行われます。

日常生活への影響は少ないですが、捜査の結果、在宅起訴されることもあります。起訴されて、有罪となれば、軽い罪でも前科がつくことには変わりありません。

軽犯罪法違反は弁護士に相談した方がよい?

軽犯罪法違反でも、逮捕や前科といったリスクが生じる可能性があります。このような不利益を回避するには、弁護士に相談した方がよいでしょう。

軽犯罪法違反でも、被害者がいる犯罪であれば、被害者と示談交渉を行うことが重要です。示談成立により、不起訴処分を得られる可能性が高まります。

他にも、有利な事情を集めて、警察や検察に意見書を提出するなどして不起訴処分を目指す方法もあります。

特に、軽犯罪法違反では、凶器携帯の罪で検挙されるケースが少なくありません。

しかし、所持していた理由が正当な理由となるかどうかは、状況や裁判官の判断によって異なり、有罪と無罪になるケースで判断が分かれる傾向があります。

軽犯罪法は、戦後まもなく制定された古い法律であり、現代の社会状況と合っていない部分も多く残っています。

そのため、本人に罪を犯す意図がなかったとしても、有罪とされて前科がついてしまう可能性があるのが現実です。

不当な処罰を避けるためにも、早い段階で弁護士に相談し、適切な対応と法的主張を行うことが大切です。

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軽犯罪法に関するよくある質問

軽犯罪法違反は初犯だと罪が軽くなる?

初犯である事情は、刑事処分において有利な事情として扱われます。初犯であれば、不起訴処分や略式命令による処分で済むことも多く、比較的寛大な対応がなされる傾向があります。

ただし、違反行為の内容が悪質だったり、公共の安全に対する影響が大きかったりする場合は、初犯であっても正式起訴されることがあります。

不起訴処分を得るには、十分に反省を示し、被害者との示談や具体的な再犯防止策を提示することが重要です。

軽犯罪法のつきまとい行為とストーカーはどう違う?

軽犯罪法のつきまとい行為と、ストーカー規制法に該当するつきまとい行為にはさまざまな違いがあります。

違い 軽犯罪法 ストーカー規制法
つきまとい行為 ①他人の進路に立ちふさがる行為

②他人の身辺に群がって、立ち退こうとしない行為

③不安や迷惑を覚えさせるような方法でつきまとう行為

相手を尾行するなどしてつきまという

相手の行く先々や通勤経路などで待ち伏せ・立ちふさがる

相手がよく行く場所に押しかける、うろつく

相手が良くいく場所を見張るなど

目的 制限なし 恋愛感情や好意が満たされないことに対する怨恨
罰則 拘留や科料 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

禁止命令に反してストーカー行為をした場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金

ストーカー規制法に該当するつきまとい行為は、恋愛感情や好意が満たされないことに対する怨恨の感情からくる行為を対象としています。

さらに、相手に執着して、反復して行われるつきまとい行為が対象となります。

軽犯罪法に該当するつきまとい行為は、目的が制限されず、1度の行為でも対象となる点に違いがあります。

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懐中電灯を持っていると軽犯罪法違反になる?

懐中電灯自体の所持は違法ではありませんが、正当な理由なく所持している場合には軽犯罪法違反となる可能性があります。

三 正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

引用:軽犯罪法 – e-Gov

実際に、懐中電灯を携帯していたことで、軽犯罪法違反で現行犯逮捕された事例もあります。過去には、ペンライトを携帯していた事例について有罪判決が下されています。

しかし、単に懐中電灯を持ち歩いていたからという理由だけで逮捕されるわけではありません。

例えば、帰宅が遅い時間になる場合に備えて、懐中電灯を所持していた場合は、正当な理由があると判断されます。

一方で、逮捕や有罪となる事案では、懐中電灯を隠し持っていたかどうか、逮捕前に他人の敷地に侵入する素振りがあったかどうかなども考慮したうえで判断されます。

例えば、夜中に人の住居の周囲をうろついているような状況で、懐中電灯を携帯していれば、侵入や窃盗目的を疑われ、軽犯罪法違反に問われる可能性があります。

立ちションをすると軽犯罪法違反になる?

公衆の場所で排泄や痰、つばを吐く行為は、軽犯罪法違反に該当します。

二十六 街路又は公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、又は大小便をし、若しくはこれをさせた者

引用:軽犯罪法 – e-Gov

公共の場での排泄行為は、他人に不快感を与えたり、風紀を乱す行為として処罰の対象になります。

警察に発見された場合は、注意や指導だけでなく、現行犯逮捕や書類送検されることもあります。

さらに、店舗の壁面や入口などで排泄を行えば、建造物損壊罪や威力業務妨害罪が成立し、重い処分を受ける可能性があるため、公共の場で排泄などを行うのはやめた方がよいでしょう。

まとめ

軽犯罪法は、国民の生活と安全、社会秩序を維持するために定められた法律です。

罰則は拘留や科料と刑罰でも軽いものですが、自分に犯罪の意図がなくても、逮捕や有罪となるケースがあります。

さらに罰金で済んだと思っても、有罪となれば前科がつくことになります。

重い罪が適用されることもあるため、軽犯罪法違反などで逮捕された場合は、早急に弁護士に相談して、適切な対応を行うことが重要です。

ネクスパート法律事務所では、早期釈放や前科回避に豊富な実績があります。24時間365日ご相談をお受けしていますので、逮捕でお困りの方は早めにご相談ください。

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