微罪処分とは|微罪処分の要件やデメリットは?その後呼び出される?
比較的軽微な犯罪で、被害者と示談が済んでいて、反省している場合は、すぐに身柄が釈放される微罪処分となることがあります。
法務省によると、2022年に微罪処分となったのは、検挙された人の28.1%でした。
しかし、微罪処分となるには一定の要件を満たす必要がありますし、各都道府県によっても要件は異なります。
この記事では、微罪処分について、次の点を解説します。
- 微罪処分とは?微罪処分となる要件
- 微罪処分となるメリットとデメリット
- 微罪処分の対象事件
微罪処分とは
警察の段階で事件の捜査を終了すること
微罪処分とは、警察が検察に事件を引き継がずに、捜査を終了させることです。
微罪処分となると、すぐに身柄を解放してもらえ、事件は終了することがほとんどです。
刑事事件では、警察が捜査を行い逮捕した被疑者を、検察が刑事裁判にかけるかどうか判断するため、被疑者の身柄を検察に引き継ぐ(送致する)のが通常です。
しかし、事件の重大性に関係なく検察に送致していると、検察の処理能力を超えてしまい、刑事手続きをスムーズに運用するのが難しくなります。
そのため、一定の要件を満たした場合、事件を検察に送致せず終了する微罪処分が定められました。
第二百四十六条司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
微罪処分の流れ
微罪処分となる場合の流れは次のとおりです。
- 事件を起こした場合に、通報を受けて警察官に連行される
- 警察官に取り調べをされる
- 身元引受人が呼ばれる
- 身元引受人が身柄引受書を書く
- 釈放される
逮捕されると、48時間以内に身柄が検察に送致されるため、送致された場合、微罪処分とはなりません。
逮捕されなくても、後日警察や検察から呼び出される在宅事件になった場合も、上記の流れで微罪処分になることがあります。
微罪処分と在宅事件の違い
微罪処分の場合、逮捕や任意同行から当日で釈放されることがほとんどです。
しかし、同様に、当日釈放されても、その後警察や検察から時々呼び出されて取り調べを受ける在宅事件になるケースもあります。
在宅事件は、被疑者が逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断して、身柄拘束が行われないだけで、事件の捜査は継続します。
そのため、事件の書類だけ検察に送致されますし、在宅で起訴されることもあります。
微罪処分か在宅事件かは、継続して警察や検察から呼び出しがあるかどうかで判断するしかありません。
微罪処分の場合は、警察からこれで終わりや、送致はないと言われるケースもあります。
また、示談が済んで被害者が処罰を望んでいないなどの後述する要件を満たせば、微罪処分となる可能性があります。

微罪処分の要件
次の要件を満たした際に、微罪処分となることがあります。
- 比較的軽微な犯罪であること
- 犯情が軽微であること
- 被害の弁償や示談が済んでいること
- 被害者が処罰を望んでいないこと
- 前科前歴がないこと
- 身元引受人がいること
(微罪処分ができる場合)
第198条捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。
比較的軽微な犯罪であること
微罪処分となる要件の1つが、比較的軽微な犯罪であることです。
例えば、窃盗、詐欺、横領、占有離脱物横領、賭博、暴行、傷害などが対象となることが多いです。
微罪処分となる対象事件は、法律では定められておらず、全国一律でもありません。
これは、各地方検察庁が、各都道府県の警察ごとに指示をしているからです。
犯罪が誘発されることを防止するために、微罪処分となる対象事件は公開されていません。
なお、痴漢や盗撮などの性犯罪、刑事告訴や告発された事件、自首した事件にも微罪処分は適用されません。
犯情が軽微であること
微罪処分の対象となるのは、軽微な犯罪であり、その犯罪の内容が悪質でなく、軽微なものに限られます。
全国一律次のとおりではありませんが、軽微な被害として次の内容が基準とされているケースが多いです。
- 窃盗などは被害額が2万円以下
- 被害者のケガの程度が、全治1週間以内
計画的、営利目的の犯行は悪質と判断されやすいです。
一方、酔った勢いなど衝動的、計画性のない犯行であれば軽微だと判断される傾向があります。
被害の弁償や示談が済んでいること
微罪処分となる要件の3つ目が、被害の弁済や示談が済んでいることです。
例えば、万引きであれば商品の代金を支払っていること、暴行や傷害であれば、相手のケガの治療費を支払っていることが挙げられます。
微罪処分でなくても、被害者がいる犯罪では、真摯に反省し、被害者と示談を行い、被害弁済に努めることが、処分に大きく影響します。
被害者が処罰を望んでいないこと
微罪処分となる4つ目の要件が、被害者が加害者の処罰を望んでいないことです。
軽微な犯罪だとしても、被害者が処罰を望んでいる場合は、微罪処分として処理されません。
そのため、被害の弁済だけではなく、しっかりと謝罪して反省を示すことが重要です。
前科前歴がないこと
また、前科や前歴がないことも、微罪処分の要件です。前科や前歴がある場合は、微罪処分とはなりません。
身元引受人がいること
微罪処分の必須要件ではありませんが、身柄を解放する際には、身元引受人が必要です。
身元引受人とは、釈放される際に、被疑者や被告人の身柄を引き受けて、再犯などをしないように監督する人のことです。
身元引受人となるのは家族が一般的で、勤務先の上司、婚約者、友人がなることもあります。
微罪処分のメリット
ここでは、微罪処分となるメリットを解説します。
早期釈放で生活に影響しない
微罪処分になると、逮捕や連行から最短で当日中に身柄が解放されます。
一方、微罪処分にならず、不起訴で釈放される場合、13~23日間身柄を拘束されることになります。
勾留されると、職場や学校に知られる可能性があるなど、日常生活に影響が生じることになります。
前科がつかない
前科は、刑事裁判で有罪が確定した場合につくことになります。
微罪処分となれば、刑事裁判にかけられることも、有罪となり前科がつくこともありません。
前科がついてしまうと、資格取得や就職、海外渡航に影響するだけでなく、懲戒解雇される可能性が高いです。
微罪処分のデメリット
微罪処分は、早期釈放という大きなメリットがありますが、デメリットも存在します。
前科はつかないが前歴がつく
微罪処分となると、前科はつきませんが、警察の捜査対象となった履歴として、前歴が残ります。
捜査機関のデータベースに記録されるため、次に罪を犯した場合に、重い処分が下される可能性があります。
前歴は一般公開されていないので、一般人は確認することはできません。
民事的な責任は残る
微罪処分として釈放されても、被害者の被害を弁済しない限りは、民事的な責任は残ることになります。
民法では、故意や過失によって他人の権利や利益を侵害した人は、生じた損害を賠償する責任を負います(民法第709条、710条)。
つまり、被害者に与えた損害は、損害を与えた人が弁済しなければなりません。
万引きであれば、店に商品代を支払わなければなりませんし、ケガをさせたのであれば、治療費を支払う必要があります。
身元引受人には事件を知られる
微罪処分として処理されるには、身元引受人が必要です。
もし身元引受人を呼ぶと、自分の身近な人に事件を知られることになります。
微罪処分の対象事件は?
微罪処分の対象となる事件
微罪処分の対象となる事件は、前述のとおり、窃盗、詐欺、横領、占有離脱物横領、賭博、暴行、傷害などが多いです。
ただし、全国一律でこのとおりではありません。各地域によって異なります。
また、こうした事件の中で、犯罪の内容が比較的軽微なもので、その他の要件を満たす必要があります。
微罪処分の対象とならない事件
重大な犯罪では微罪処分とはなりません。他にも、次の事件は微罪処分の対象外です。
- 刑事告訴・刑事告発された事件
- 自首した事件
- 検察から送致するように指示された事件
被害者や第三者が、加害者の処罰を望む意思表示をして、刑事告訴や刑事告発した事件は、検察への送致や捜査をする義務が生じます。
自ら犯罪事実を自首した場合も、微罪処分の対象外です。
ただし、自首は法律上の減軽の理由の一つであるため、刑事処分において考慮される可能性はあります(刑法第42条)。
微罪処分となるためにすべきこと
反省を示す
微罪処分と判断されるのは、微罪処分の要件を満たすだけでなく、罪を認めて、心から反省していることが前提です。
取り調べに素直に応じなかったり、反省をしていなかったりすると、軽微な犯罪であっても微罪処分となりません。
また、被害者の許しを得るのも難しくなってしまうでしょう。
自分がしたことはしっかりと認めて、反省をすることが重要です。
被害者に謝罪して示談をする
微罪処分となるためにできるのは、反省と被害者に謝罪をして示談をすることです。
前述のとおり、刑事事件では、被害者と示談が成立すれば、被害の回復に努めたと評価され、処分が軽くなる可能性があります。
示談が成立した場合は、被害者に刑事処分を求めないなどの文言が入った示談書にサインしてもらうことで、処罰感情がない証拠となります。
微罪処分についてよくある質問
公務員は微罪処分とならないって本当?
公務員は、職業上公共性が高いため、公務の内外を問わず、犯罪行為に対して懲戒処分の基準が設けられている場合があります。
こうした点を考慮して、公務員の場合は微罪処分とせず、職場への連絡を原則として運用していることがあります。
ただし、早期に被害者と示談をし、許しを得て、警察に対して送致は不要である旨交渉することは考えられます。
仮に送致されてしまったとしても、示談などの対応をすることで、不起訴を得られる可能性があります。早めに弁護士に相談してください。
微罪処分後に呼び出されることはある?
微罪処分で釈放された後に、呼び出されることは基本的にないと考えられます。
もし呼び出されるとすれば、余罪が発覚して取り調べが行われる可能性があります。
なお、警察から微罪処分になったなどの連絡はありません。
数か月が経過しても特に連絡がない場合は、処分内容について警察に問い合わせてみてもよいでしょう。
まとめ
微罪処分となり、連行当日に釈放されれば、長期間身柄拘束を受けずに済み、事件も終了となります。
ただし、微罪処分となるのは、軽微な犯罪で、十分に反省し、被害を弁済しているなどの場合に限られます。
前科や前歴がある場合や、重大な犯罪の場合、被害者が処分を望んでいる場合は、微罪処分の対象となりません。
また、身柄が釈放されても、在宅事件として捜査が継続し、最終的に在宅起訴されるケースもあります。
不安な人は弁護士に相談して、早期に適切なサポートを受けましょう。