強制わいせつ罪で逮捕|初犯の場合、処分はどうなる?【弁護士が回答】
この記事は、2023年7月13日までに発生した性犯罪に適用される強制わいせつ罪について説明した記事です。
2023年6月23日に公布され、2023年7月13日に施行された改正刑法の不同意わいせつ罪については、以下の記事をご参照ください。 |
強制わいせつ罪は、刑法第176条に規定されています。では強制わいせつ罪で逮捕された場合,どのようなことが起こるのでしょうか?
この記事では、主に以下の点について解説します。
- 強制わいせつ罪とはどのような罪なのか
- 初犯で逮捕された場合にどのような処遇になるのか
- 実刑にならないためには何をすべきか など
目次
強制わいせつ罪初犯でも逮捕される?在宅事件になるのか?
ポイント
強制わいせつ罪は初犯でも逮捕されます。強制わいせつ罪は個人の性的自由を侵害する重い犯罪です。 |


強制わいせつ罪は刑法第176条に規定されています。
刑法第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
引用:e-GOV法令検索
強制わいせつ罪に該当する要件は、以下3つです。
- 合意のない13歳以上の者に対し
- 暴行や脅迫を用いて
- わいせつな行為をする
13歳未満の者に対しては、暴行や脅迫がなく、たとえ同意があってもわいせつな行為をすると成立します。
暴行や脅迫は、被害者の反抗を著しく困難にさせる程度の暴行・脅迫とされています。
わいせつな行為とは、性的羞恥心を害する行為です。下着の中に手を入れる、胸を触る、キスをするといった行為が該当します。
強制わいせつ罪で現行犯逮捕されるのは、人目につきやすい場所で犯行が行われた場合です。目撃者に通報される、目撃者に身柄を取り押さえられる等で逮捕されます。
強制わいせつ罪で通常逮捕されるのは、被害者からの被害届や告訴状の提出がきっかけになるケースです。
通常逮捕の場合には、事件からかなり日数が経過した後に警察に呼び出されることがあります。呼び出しを受け出頭し、取り調べを受けた後そのまま逮捕されます。
警察からの呼出しを受けて警察署で取り調べを受けたけれど帰宅を許されることもあります。この場合は在宅事件として警察が捜査を行い、その後事件が検察庁に送致され、検察官が捜査を行い、最終的に処分を決めます。
在宅事件になった場合には身柄拘束されずに済みますが、身柄拘束事件と違い期間制限がないため、検察官が最終的に処分を決めるまで数か月間、長ければ数年間連絡が来ない事もあります。被疑者は検察官からいつ連絡が来るか不安を抱えて過ごすことになります。
強制わいせつ罪初犯でも起訴される?
ポイント
起訴されると刑事裁判を受けることになる。日本では起訴されると99%有罪になるといわれているため、不起訴を得ることが重要 |


強制わいせつ罪は、以前は被害者の告訴を必要とする親告罪でしたが、2019年に法改正がなされ、現在では被害者の告訴を必要としない非親告罪です。
そのため、起訴前に被害者との間で示談が成立し、被害届等が取り下げられたとしても、必ずしも不起訴になるとは限りません。
平成30年版犯罪白書によると、平成29年における強制わいせつ罪の起訴総数は1295件、不起訴総数は2127件です。3422件中1295件、約37.8%が起訴されています。合計1,001,211件中起訴総数329,517件、約32.9%が起訴されているのと比較しても、強制わいせつ罪の起訴率は高いことがわかります。
犯行態様が悪質であると判断され、起訴されてしまうと執行猶予が付かない実刑判決を宣告される可能性もあります。
強制わいせつ罪初犯は略式起訴になる?
ポイント
強制わいせつ罪には罰金刑の規定がなく、懲役刑のみの重い罪です。 |


強制わいせつ罪初犯でも実刑になりますか?


強制わいせつ罪は強度の性的侵害行為となるため、重い法定刑が定められています。執行猶予が付くためには、懲役3年以下の刑が宣告される必要がありますが、行為態様等によっては懲役3年を超える刑を宣告される可能性があります。強制わいせつ罪初犯であっても懲役3年を超える刑を宣告された場合には実刑です。
強制わいせつ罪初犯で執行猶予を得るポイントは?
ポイント
執行猶予がつけば、猶予期間中に罪を犯さない限り懲役刑が執行されません。社会復帰を早めるためには執行猶予の獲得が重要です。 |


加害者が真摯に反省し、被害者に謝罪・損害賠償をしたことにより示談が成立し、被害者の処罰感情が無くなった場合には、執行猶予が付く可能性があります。
強制わいせつ罪初犯でも懲役刑になる?
ポイント
懲役刑になると一定期間刑務所に入れられてしまう。執行猶予など、少しでも負担の少ない処分を目指したい。 |


強制わいせつ罪初犯で逮捕|処分を軽くするためにできることは?
強制わいせつ罪は、初犯で犯行態様も比較的悪質ではないと判断された場合に、被害者との間で示談が成立すれば、刑務所に行かずに済む可能性があります。
ここでは、強制わいせつ罪初犯で逮捕された場合に、処分を軽くするためにできることについて解説します。
弁護士に依頼する
強制わいせつ罪は初犯であっても実刑になりうる罪です。事件後すぐに弁護士に依頼することがその後の手続きの流れに非常に大きな影響を与えます。
被害者が被害届等を提出する前に被害者との間で示談が成立すれば、逮捕されずに終わる可能性があります。
被害者は加害者に強い恐怖心や嫌悪感等を持っています。加害者本人からの連絡を拒む場合が多いため、被害者と示談したい場合には弁護士への依頼が必須です。
弁護士に示談を依頼した後の流れは以下のとおりです。
- 被害者と連絡を取る
- 被害者に謝罪する
- 示談交渉をする
- 示談が成立したら示談書を作成する
- 被害届や告訴状を出さない事、提出済みの場合には被害届等を取り下げる事に同意してもらう
- 示談が成立したことを捜査機関に伝える など
弁護士はこれらの弁護活動をします。
被害者との示談が成立した場合でも、強制わいせつ罪は起訴されることがあります。起訴されてしまったときには、執行猶予付き判決を目指す弁護活動をします。
裁判官の量刑判断の要素としては以下のものがあります。
- 犯行態様に悪質性
- 被害者に与えた結果の重大性
- 犯行動機
- 計画性の有無
- 被告人の反省の有無
- 同種前科の有無 など
弁護士は、被害者との示談成立および示談金の支払いにより被害弁償が完了していると主張します。
被害者と示談する
強制わいせつ罪は被害者との示談成立がその後の手続きに大きな影響を与える罪です。
強制わいせつ罪は非親告罪ですが、被害者への謝罪や損害賠償がきちんとなされたか、それにより被害者の処罰感情が無くなったか等は、捜査機関の刑事処分の判断に影響を与えます。
強制わいせつ罪初犯で、自分の犯した罪に対して真摯に向き合い、被害者に心から謝罪し、許してもらえた場合には、不起訴処分で終了する可能性もあります。不起訴処分で手続きが終了すれば前科も付きません。
再犯防止策を講じる
強制わいせつ罪初犯で重要なことは、同じ罪を二度と犯さないための防止策を講じることです。
犯行に至った原因が精神的な疾患に起因していることが判明した場合には、今後心療内科や精神科等での治療を継続していただきます。同種の事件を起こさないように家族の監護下に置く等の対策を講じます。
まとめ
強制わいせつ罪で逮捕されてしまった場合には、初犯であっても実刑判決が下されることがあります。有罪になると執行猶予が付かない限り、刑務所に収監されます。
初犯だから実刑にはならないだろうと思っていると会社を辞めざるを得ない事になる可能性があります。強制わいせつ罪初犯で逮捕されてしまった場合には早期に弁護士に依頼しましょう。