示談金の相場完全ガイド|17の刑事事件の種類別に徹底解説
刑事事件の加害者となった場合に重要なのは、前科を回避し、将来の処罰を最小限に抑えることです。その鍵を握るのが、被害者との示談であり、その際に支払われるのが示談金です。
「示談金はいくらが適正なのか?」
この記事では、17の犯罪種類別の示談金相場を徹底解説しています。
ぜひ参考にしてください。
目次
- 1 刑事事件の示談金の相場|17の犯罪種類別に徹底解説
- 1.1 暴行罪の示談金相場|10万円〜30万円程度
- 1.2 傷害罪の示談金相場|10万円〜100万円程度
- 1.3 窃盗罪の示談金相場|被害額+5万円〜20万円程度
- 1.4 強盗罪の示談金相場|被害額+20万円〜50万円程度
- 1.5 詐欺罪の示談金相場|被害額+20万円程度
- 1.6 横領罪の示談金相場|被害額+20万円程度
- 1.7 恐喝罪の示談金相場|被害額+20万円程度
- 1.8 器物損壊罪の示談金相場|修理費または時価
- 1.9 住居侵入罪の示談金相場|10万円~20万円程度
- 1.10 名誉毀損罪の示談金相場|10万円〜100万円程度
- 1.11 侮辱罪の示談金相場|5万円〜10万円程度
- 1.12 公然わいせつ罪の示談金相場|10万円〜50万円程度
- 1.13 淫行の示談金相場|10万円〜30万円程度
- 1.14 盗撮の示談金相場|10万円〜50万円程度
- 1.15 痴漢の示談金相場|30万円〜100万円程度
- 1.16 不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ)の示談金相場|50万円〜100万円程度
- 1.17 不同意性交等罪 (旧強制性交等) の示談金相場|100万円〜300万円
- 2 刑事事件の示談金はどう決まる?
- 3 刑事事件の示談金を左右する4つの要素
- 4 刑事事件の示談の重要性|示談成立による5つのメリット
- 5 示談金が支払えないとどうなる?
- 6 示談金が支払えない場合の2つの対応策
- 7 刑事事件の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
- 8 まとめ
刑事事件の示談金の相場|17の犯罪種類別に徹底解説
【刑事事件の示談金の相場一覧表】
| 犯罪種別 | 相場目安 |
|---|---|
| 暴行罪 | 10万円〜30万円 |
| 傷害罪 | 10万円〜100万円 |
| 窃盗罪 | 被害額+5万円〜20万円 |
| 強盗罪 | 被害額+20万円〜50万円 |
| 詐欺罪 | 被害額+20万円 |
| 横領罪 | 被害額+20万円 |
| 恐喝罪 | 被害額+20万円 |
| 器物損壊罪 | 修理費または時価 |
| 住居侵入罪 | 10万円~20万円 |
| 名誉毀損罪 | 10万円〜100万円 |
| 侮辱罪 | 5万円〜10万円 |
| 公然わいせつ罪 | 10万円〜50万円 |
| 淫行 | 10万円〜30万円 |
| 盗撮 | 10万円〜50万円 |
| 痴漢 | 30万円〜100万円 |
| 不同意わいせつ罪 (旧強制わいせつ) | 50万円〜100万円 |
| 不同意性交等罪 (旧強制性交等) | 100万円〜300万円 |
示談金は当事者間の合意で決まるものです。つまり、当事者双方が合意するのであれば、示談金をいくらに設定しても構いません。
しかし、実務上は、過去の判例から導き出されたある程度の目安が存在します。
ここでは、17の犯罪種類別の示談金相場をご紹介します。あくまでひとつの目安であり、事件の内容や被害状況によっては変動する可能性があります。
暴行罪の示談金相場|10万円〜30万円程度
暴行罪の示談金相場は、10万円〜30万円程度です。
暴行罪は、加害者からの暴行で被害者がケガをしなかった場合に成立するため、示談金は比較的低い傾向にあります。
被害者が強い身体的・精神的な恐怖を覚えた場合、その感情に対する慰謝料が加算され、示談金が上がる傾向にあります。暴行の回数や武器の使用の有無によっても変動します。
なお、被害者がケガを負った場合には、傷害罪の示談金を支払う必要があります。
傷害罪の示談金相場|10万円〜100万円程度
傷害罪の示談金相場は、10万円〜100万円程度です。
- 全治1週間程度のケガの場合:10万~30万円
- 全治2~3週間程度のケガの場合:30万~100万円
- 全治1か月程度の重傷の場合:50万円~100万円(100万円を超えること)
傷害罪は、加害者の暴行によって被害者がケガをした場合に成立します。
示談金には、治療費や入院雑費などの積極損害に加え、入院期間中の減収分(休業損害)などの消極損害も含まれるため、怪我の程度や通院期間、後遺症の有無などによって金額は変動します。
窃盗罪の示談金相場|被害額+5万円〜20万円程度
窃盗罪の示談金相場は、被害額+5万円〜20万円程度です。
窃盗罪では、盗んだ物の時価や被害額の全額弁償が示談金の大前提です。
盗んだ物そのものが高額な場合はもちろん、盗んだ物に希少価値がある場合や被害者の思い入れが深い場合などでは、示談金も高額になる可能性があります。
被害額に、被害者の精神的苦痛に対する慰謝料を加算した額が示談金になります。
強盗罪の示談金相場|被害額+20万円〜50万円程度
強盗罪の示談金相場は、被害額+20万円〜50万円程度です。
強盗罪は、暴行や脅迫を用いて金品を奪う行為であり、窃盗罪よりも悪質性が著しく高い犯罪です。そのため、示談金は、被害額の全額弁償を前提としつつ、被害者の精神的苦痛に対する慰謝料も高くなる傾向にあります。
被害者が負った身体的・精神的苦痛の深刻さやケガなどが原因で仕事を休んだ分の休業損害によって、慰謝料の金額が大きく上乗せされます。
詐欺罪の示談金相場|被害額+20万円程度
詐欺罪の示談金相場は、被害額+20万円程度です。
ただし、被害額が高額なケースでは、被害額+数百万円程度に及ぶケースもあります。
詐欺罪の示談金は、被害額の全額弁償が基本となり、これに加えて、被害者の精神的苦痛に対する慰謝料が上乗せされます。
被害額が大きい事案(数百万円以上)も多いため、示談金総額も高額になる傾向にあります。
詐欺の手口の悪質性や、加害者の社会的地位の高さ、被害者の経済状況に与えた影響の大きさなどによって、慰謝料が加算されることがあります。
横領罪の示談金相場|被害額+20万円程度
横領罪の示談金相場は、被害額+20万円程度です。
横領罪の示談金も、被害額の全額弁償が基本です。横領した金額に対して、一定の遅延利息を加算して弁償することが求められる場合もあります。
業務上の地位を利用するなど、加害行為の態様が悪質な場合や、被害額が多額に上る場合、被害者の処罰感情も強いため、示談金総額が数百万円程度となる場合があります。
恐喝罪の示談金相場|被害額+20万円程度
恐喝罪の示談金相場は、被害額+20万円程度です。
恐喝罪の示談金は、恐喝によって奪った物の時価または金銭の被害額の全額弁償が示談金の大前提です。さらに、被害者に対する精神的苦痛に対する慰謝料が上乗せされます。
恐喝行為によって被害者が受けた精神的苦痛の程度によって示談金の金額が変動します。特に、強い暴行や脅迫が伴うなど、悪質性が高いケースでは慰謝料が高額化する傾向にあります。
器物損壊罪の示談金相場|修理費または時価
器物損壊罪の示談金相場は、原則として壊した物品の修理費または時価(再調達費用)の範囲内で決定されます。
物を壊したこと自体に対する被害者の精神的苦痛(慰謝料)は、考慮しないケースが多いです。
ただし、被害者が飼っているペットを傷害した場合や、被害者にとって深い思い入れのある物を損壊した場合など、精神的苦痛が強く生じたと認められる特段の事情がある場合には、慰謝料が加算され、示談金が高額になる可能性があります。
住居侵入罪の示談金相場|10万円~20万円程度
住居侵入罪の示談金相場は、10万円~20万円程度です。
住居侵入罪は、正当な理由なく他人の住居や敷地内に立ち入ることで成立します。
他の犯罪を伴わない単独の住居侵入罪の場合、示談金の相場は10万円~20万円程度が目安とされています。住居侵入時に窓ガラスや鍵を壊すなどした場合には、壊したものの修理費用の支払いも求められます。
住居侵入罪は、不同意わいせつ罪や盗撮、窃盗などの別の犯罪の手段として行われることが多いです。この場合の示談金は、付随する犯罪の相場によって決定され、高額になる傾向にあります。
名誉毀損罪の示談金相場|10万円〜100万円程度
名誉毀損罪の示談金相場は、10万円〜100万円程度です。
- 個人の場合:10万円から50万円程度
- 法人の場合:50万円から100万円程度
ネットでの拡散範囲や投稿の悪質性、被害者の社会的地位の高さ、加害者の特定に要した時間などによって金額は変動します。
侮辱罪の示談金相場|5万円〜10万円程度
侮辱罪の示談金相場は、5万円〜10万円程度です。
侮辱罪は、具体的な事実を摘示せず、単に「バカ」「アホ」などの非難の言葉で公然と相手を貶める行為です。
名誉毀損罪に比べて被害が限定的と見なされる傾向があり、示談金は、比較的低くなる傾向にあります。しかし、加害者の行為の態様や、被害者の受けた精神的ショックの度合いによっては、相場を超える賠償が求められる可能性もあります。
公然わいせつ罪の示談金相場|10万円〜50万円程度
公然わいせつ罪の示談金相場は、10万円〜50万円程度です。
公然わいせつ罪は、公然とわいせつな行為を行うことで成立します。
被害者(目撃者)への直接的な身体接触がない分、痴漢や不同意わいせつ罪よりも示談金は低くなる傾向にありますが、被害者(目撃者)が受けた精神的苦痛に対する慰謝料が発生します。
犯行場所(公共性の高い場所か)や、目撃者の人数、常習性の有無などによって、示談金が変動します。例えば、車内での自慰行為を通行人に目撃された場合は、悪質性が低いとして、示談金相場は10万円~30万円程度です。
特定の個人に対して性器を見せつける行為は、悪質性が高いとして、示談金相場は30万円~50万円程度と高額になる傾向があります。
淫行の示談金相場|10万円〜30万円程度
淫行(青少年保護育成条例違反など)、未成年者(18歳未満)との性行為や類似行為に関する示談金相場は、10万円から30万円程度です。
被害者の年齢や同意の有無、行為の強引さなどによって変動します。
同意なく行為に及んだ場合の示談金相場は、100万円から200万円程度と高額になる傾向があります。
示談交渉は未成年者の保護者と行うことになるため、保護者が納得しないと示談金が高額になる可能性も考えられます。
盗撮の示談金相場|10万円〜50万円程度
盗撮の示談金相場は、10万円〜50万円程度です。
以下のような悪質性が高いケースでは、相場を超えて高額になる傾向があります。
- 常習性がある(前科がある、または何度も繰り返している)
- 被害者が複数人いる
- 被害者が未成年である
常習性や悪質性が高い場合には、不起訴処分を得るための示談の必要性も高いため、結果として示談金も高額になる傾向があります。

痴漢の示談金相場|30万円〜100万円程度
痴漢は、その内容によって迷惑防止条例違反または不同意わいせつ罪に該当します。
- 迷惑防止条例違反に該当する場合の示談金相場:30万円から50万円程度
- 不同意わいせつ罪に該当する場合の示談金相場:50万円から100万円程度
触った部位や時間、服の上からか中かなど、行為の態様が悪質なほど高額になります。
加害者と被害者の関係性(勤務先など)が近い場合も、被害者のショックが大きく高額になる傾向があります。
不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ)の示談金相場|50万円〜100万円程度
不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ)の示談金相場は、50万円〜100万円程度です。
被害者に重大な精神的苦痛が生じている場合や、常習性が高い場合、暴行・脅迫の度合いが強い場合などでは、示談金がさらに高額になる傾向があります。
不同意性交等罪 (旧強制性交等) の示談金相場|100万円〜300万円
不同意性交等罪 (旧強制性交等) の示談金相場は、100万円〜300万円です。
不同意性交等罪は、性犯罪の中で最も重い類型であり、被害者の精神的苦痛が甚大であるため、示談金の相場も高額です。
さらに、被害者が入院や通院を余儀なくされた場合や、強度の暴行や脅迫が伴った場合、あるいは加害者の社会的地位が高い場合などのケースでは、500万円を超える高額な賠償が求められるケースも少なくありません。
0120-949-231
刑事事件の示談金はどう決まる?
刑事事件の示談金は、明確な金額が定められているわけではなく、加害者と被害者の話し合いにより決められます。
主に、①客観的な損害と②慰謝料の2つの要素から総合的に決まります。
①客観的な損害
示談金のうち、被害者が実際に受けた損害を補填する部分です。
これは、事実に基づいて比較的明確に計算されます。
- 物的損害:暴行による衣類の破損、窃盗による被害品の時価額、器物損壊の修理費用など
- 治療費・休業損害:治療にかかった費用やケガで仕事を休んだことによる収入の減少分など
- その他の実費:被害者が病院へ行った際の交通費や警察に提出する診断書作成費用など
②慰謝料(精神的苦痛)
示談金の中心となるのが、被害者が事件によって受けた精神的苦痛を償うための慰謝料です。これは事件の悪質性や結果の重大性によって変動します。
刑事事件の示談金は、単なる民事上の賠償に留まらず、被害者の処罰感情の緩和と許し(宥恕)を得ることで、加害者の刑事処分を軽くするとの重要な目的があります。
特に、不起訴処分や執行猶予を望む場合には、加害者はこの宥恕を得るために、客観的な損害額よりも高額な謝罪金を上乗せして支払う傾向があります。
示談金額は被害者の意思が最終決定権を持つ
最終的な示談金額は、客観的損害と慰謝料を合算したうえで、被害者側の納得が得られるかどうかによって決まります。
被害者が示談に応じない場合、どれだけ客観的な基準が示されても、示談は成立しません。
そのため、弁護士は被害者の心情に配慮し、適切な金額と誠意ある態度で交渉を進める必要があります。
刑事事件の示談金を左右する4つの要素
刑事事件の示談金は、犯罪種別のみで決まるわけではありません。
刑事事件の示談金の額を左右する要素は、主に次の4つです。
- 被害の大きさ
- 被害者の処罰感情の強さ
- 加害者の社会的地位と経済状況
- 加害者の犯罪歴
以下、詳しく解説します。
被害の大きさ
被害の大きさです。
同じ罪名でも、被害が大きければ、当然示談金は高くなります。
- 財産的損害
窃盗罪や詐欺罪などの財産犯では、被害額(盗まれた金額、騙し取った金額など)が示談金の基本額となります。被害額が大きければ大きいほど、示談金は高くなります。 - 傷害の程度
傷害罪などの場合は、被害者の治療にかかった費用、入院期間などが示談金額に影響します。ケガが重いほど、治療費やそれに伴う慰謝料が高額になります。 - 精神的損害
性犯罪や名誉毀損罪など、精神的苦痛が主となる犯罪では、被害者が被ったショックやトラウマの程度が慰謝料の算定に影響します。
被害者の処罰感情の強さ
被害者の処罰感情の強さです。
刑事事件の示談金は、被害者に許してもらうための謝罪金の性質があるため、被害者が加害者に対し強い怒りや恐怖を抱いているほど、高額な賠償が求められます。
被害が重大または回復不能な犯罪ほど、処罰感情は強くなる傾向にあります。加害者側が、反省の気持ちが見えない態度をとった場合も、被害者の感情を逆なでし、金額が高くなる原因となります。
加害者の社会的地位と経済状況
加害者の社会的地位と経済状況です。
加害者が医師や公務員、大企業の役員など社会的地位の高い職業に就いている場合、被害者側から高額な示談金を請求される傾向にあります。
加害者側も、勤務先にバレて解雇されるリスクを避けるために、示談を急ぎ、多少高額な請求でも示談に応じる傾向にあります。加害者の収入や資産が多い場合も、支払能力があると判断され、高額な示談金を請求してくることがあります。
加害者の犯罪歴
加害者の犯罪歴です。
加害者に前科がある場合や常習性が高い場合、不起訴処分を獲得するための示談の必要性が高くなります。この切迫した状況は、結果として示談金の高額化につながる傾向があります 。
刑事事件の示談の重要性|示談成立による5つのメリット
刑事事件では、被害者との示談が成立した事実が、刑事手続きの各段階で、加害者にとって有利な情状として扱われます。
示談成立よる加害者のメリットは、次の5つです。
- 刑事事件化の回避
- 逮捕・勾留の回避や早期釈放
- 不起訴処分の可能性向上
- 裁判での量刑の軽減
- 被害者からの民事訴訟の回避
以下、詳しく解説します。
刑事事件化の回避
示談が成立することで、刑事事件化の回避に繋がる可能性があります。
被害届の提出前や告訴前の段階で示談が成立し、被害者が「事件化を望まない。」という意思を捜査機関に伝えた場合、警察が事件として立件しないまま終了する可能性が高くなります。
すでに被害届が提出されている場合でも、示談が成立することで被害届を取り下げる可能性があります。
これにより、刑事事件の手続き自体を回避できる可能性があります。
逮捕・勾留の回避や早期釈放
示談が成立することで、逮捕・勾留の回避や早期釈放に繋がる可能性があります。
既に捜査機関が介入している場合でも、示談の成立は逮捕・勾留の回避に役立ちます。
示談が成立し、被害者の被害感情が解消されていると判断されると、警察や検察は、加害者を身柄拘束する必要性が低いと判断し、逮捕せずに在宅捜査としたり、既に逮捕されている場合は勾留請求を見送ったりと、逮捕・勾留の回避や早期の釈放を実現できる可能性が高まります 。
不起訴処分の可能性向上
示談が成立することで、不起訴処分の可能性向上に繋がります。
示談成立は、検察官が加害者の反省の度合いや被害回復の努力を高く評価し、【起訴猶予】という形で不起訴処分を下す可能性を高めます 。
不起訴処分となれば、前科を回避でき、加害者の社会復帰にメリットをもたらします。
裁判での量刑の軽減
示談が成立することで、裁判での量刑の軽減に繋がる可能性があります。
起訴された場合には、示談の意味がなくなるわけではありません。起訴された場合でも、示談成立は、裁判所が刑罰の軽重を判断する際の有利な情状となります。
示談が成立している事実は、実刑を回避し、執行猶予付きの判決を勝ち取るための重要な要素となり得るのです。
被害者からの民事訴訟の回避
示談が成立することで、被害者からの民事訴訟の回避に繋がります。
刑事事件の示談交渉では、示談書に【清算条項】を盛り込むのが一般的です。
| (清算条項) 甲および乙は、甲乙間には本示談書に定める他何らの債権債務がないことを相互に確認する。 |
|---|
これは、示談金の支払いをもって、その事件に関する民事上の損害賠償請求権を清算し、今後一切の請求を行わないことを約束する条項です。この条項により、将来にわたり被害者から追加で民事訴訟を提起されるリスクを回避できます。
0120-949-231
示談金が支払えないとどうなる?
刑事事件では、示談が成立しているか否かが、検察官の起訴・不起訴の判断、および裁判所の量刑判断に影響を与えます。
示談金が支払えない場合、以下のようなリスクが発生します。
- 起訴される可能性
- 量刑が重くなる可能性
- 身柄拘束が長期化する可能性
以下、詳しく解説します。
起訴される可能性
示談金が支払えない場合、起訴される可能性が高まります。
示談が成立しないことは、被害者の処罰感情が依然として強いことを意味します。この事実は、検察官が起訴・不起訴を判断する際に不利な情状となります。
特に、被害者が重傷を負っている場合や悪質な手口が用いられた場合、加害者に前科がある場合などは、示談不成立によって起訴される可能性が高まり、前科が付くリスクが増大します。
量刑が重くなる可能性
示談金が支払えない場合、量刑が重くなる可能性が高まります。
示談の有無は、裁判官が刑罰の軽重を決定する際の重要要素の一つです。示談が不成立の場合、被害回復がなされていない、反省の態度が不十分であると評価され、量刑が重くなる傾向にあります。
特に、本来であれば執行猶予が付く可能性があった事案でも、示談が成立しないことで実刑判決となる可能性もあります。
身柄拘束が長期化する可能性
示談金が支払えない場合、身柄拘束が長期化する可能性が高まります。
示談の成立は、身柄を拘束する必要性がないと捜査機関に判断させる重要な材料となります。示談が不成立の場合、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとみなされやすく、逮捕・勾留による身柄拘束が長期化する可能性が高まります。
示談金が支払えない場合の2つの対応策
示談金が全額支払えない場合でも、以下の対応策を検討すべきです。
- 分割払いの交渉
- 家族や親戚からの借り入れ
以下、詳しく解説します。
分割払いの交渉
被害者の同意が得られれば、分割払いは可能です。
特に、定職に就いていて支払いの見込みがある場合や、連帯保証人を立てられる場合には、被害者が応じてくれることがあります。
分割払いの場合は、示談書に毎月の支払期日と金額を明確に書き加える必要があります。
家族や親戚からの借り入れ
刑事事件への影響を最小限に抑えるためには、可能な限り一括で支払いを済ませる方が賢明です。家族や親族、知人から資金を借りて対応することも検討すべきです。
刑事事件の示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
刑事事件の示談交渉を弁護士に依頼することで、交渉窓口の確保・適正額での合意・刑事処分回避の可能性という3つの決定的なメリットをもたらします。
示談交渉は、感情的な側面と法的な戦略が複雑に絡み合う専門性の高い領域です。
特に刑事事件においては、迅速性と適法性が求められるため、弁護士の介入が、加害者の未来を左右します。
加害者本人による自力での交渉は難しい
刑事事件の加害者本人が直接被害者と示談交渉を行うことは、リスクを伴います。
犯罪行為の直後、被害者は加害者に対して強い怒り、恐怖、嫌悪感を抱いています。この状態で加害者本人から連絡が来ると、被害感情を再燃させ、交渉自体を拒否されることがほとんどです。
意図的でなくとも、加害者本人による交渉が、脅迫的・威圧的と捉えられ、二次加害として被害届を追加されるリスクもあります。
そもそも、捜査機関は、被害者保護の観点から、加害者本人に被害者の氏名や連絡先を教えることはありません。連絡先が分からなければ、示談交渉を始めることすらできません。
弁護士は、加害者と被害者の間に立つ中立的な第三者として、捜査機関を通じて連絡を取り、被害者の感情に最大限配慮しながら冷静な交渉を開始できる唯一の窓口となります。

適正な示談金額での合意ができる
弁護士は、過去の判例に基づき、その事件に見合った適正な示談金額を算定し提示します。
被害者側が高すぎる金額を請求してきた場合でも、弁護士が法的な根拠を示して交渉することで、その請求を退け、妥当な金額での和解を目指せます。
逆に、加害者本人が不当に安い金額を提示してしまい、被害者の感情をさらに悪化させるという最悪のケースも回避できます。
弁護士が介入することで、被害者の納得感を得やすくなります。
適切な示談書の作成ができる
弁護士の介入は、示談交渉を迅速かつ法的に適切な内容で成立させ、刑事処分への影響力を最大化します。
弁護士は、単に金銭の支払いだけでなく、被害者から「加害者の処罰を望まない。」という【宥恕(ゆうじょ)条項】を盛り込んだ示談書を作成することを目指します。
この宥恕文言付きの示談書は、検察官の不起訴処分の判断を導くための、強力な材料となります。さらに、 弁護士は、示談書に【清算条項】を確実に盛り込むことで、示談金支払い後に被害者から再度、民事訴訟や追加の損害賠償請求を受けるリスクを回避します。

まとめ
示談金問題の解決は、単に金銭的な清算で終わるものではなく、前科の有無や今後の人生を左右する重要な分岐点です。
しかし、示談交渉は複雑かつ感情的であり、加害者本人が直接行うことは困難であり、かえって被害者の処罰感情を強めるリスクを伴います。曖昧な情報や自己流の交渉によって、適正な金額を逃したり、交渉が決裂して起訴リスクを高めたりすることは避けるべきです。
示談交渉に不安のある方は、早めに弁護士にご相談ください。
ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
特に、被害者との示談においては、経験豊富な弁護士が迅速丁寧に示談成立を目指します。
初回相談は、30分無料です。
お気軽にお問い合わせください。


