傷害罪で不起訴になるには示談なしでは無理?起訴率と示談をする方法

相手に対して暴行を働き、ケガをさせた場合に、傷害罪に問われることになり、法定刑も15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科され、重い罪に問われることになります(刑法第204条)。

傷害罪で不起訴を得るには、被害者に謝罪をして、示談をすることが重要です。

もっとも、被害者と連絡が取れないという人や、示談を拒否されているという人もいるでしょう。

この記事では、傷害罪で捜査を受けている人や、傷害罪で家族が逮捕されている人に向けて、次の点を解説します。

  • 傷害罪で不起訴になる確率と基準
  • 傷害罪で不起訴を得るためにすべきこと
  • 被害者と示談をしない場合のリスク
  • 傷害罪で弁護士に依頼するメリット

被害者が示談を拒否していてどうしたらいいかわからないという人も参考にしてみてください。

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傷害罪の起訴率は32%

法務省の犯罪白書によると、2022年の傷害罪の起訴率は32%でした。

傷害罪で検察に引き継がれた事件の処理件数は1万6,964件、そのうち起訴されたのは5,429名です。

起訴の種類 割合
公判請求(正式な裁判) 37%
略式起訴 62%

起訴されたうち約4割は正式な裁判が行われ、約6割は略式起訴で罰金刑を科されたことになります。

また、不起訴処分の割合は67.9%でした。

このように、傷害罪に問われても、起訴される割合は3割程度であるため、弁護士からサポートを受けることで不起訴になる可能性があります。

参考:令和5年版 犯罪白書 第4節 被疑事件の処理 – 法務省

傷害罪で不起訴になった理由

刑事事件で、不起訴になる理由には次のようにいくつか種類があります。

理由 内容 割合
起訴猶予 証拠などがあり犯罪が立証できるが、さまざまな事情を考慮して検察が不起訴にしたもの 69.2%
嫌疑不十分 犯罪を行った事実がない、証拠が不十分で起訴ができないもの 21.8%
告訴の取り消し等 被害者が処分を望んでいない、告訴を取り消した、告訴が無効だった など起訴の条件を欠くもの 4.1%
心神喪失 被疑者が精神疾患で判断能力などが欠如しており罪にならない など 0.3%
その他 公訴時効が成立、被疑者が死亡など 4.7%

これは、2022年の不起訴の理由と割合で、傷害罪以外の不起訴も含まれます。

犯罪の証拠がない場合は、犯罪を立証できません。

また、被害者が処分を望まず、告訴を取り下げたり、告訴状の不備で無効になっていたりするケースも起訴されません。

一方で、犯罪が立証できた上で、検察官が色々な事情を考慮して、不起訴を判断するのが起訴猶予です。

起訴猶予の理由の詳細は公開されていませんが、検察官は次項で解説する様々な事情を考慮して、事件を起訴猶予としています。

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傷害罪で不起訴になる基準

傷害罪で不起訴(起訴猶予)になる基準は、法律などで明確に決められていませんが、検察は次の事情を考慮して起訴や不起訴を判断しています。

判断要素 内容
示談成立の有無 被害者と示談が成立しているか、被害の回復を行っているか、真摯に示談が行えるように努めているか
結果の重大性 被害者のケガの程度、重症か軽傷か
犯行の悪質性 凶器の有無、暴行の回数や程度、計画性の有無、被害者の挑発の程度など
同種犯罪の前科前歴の有無 過去にも傷害罪で逮捕や有罪を受けているか
反省の有無 事件を認めて、被害者に謝意を示して反省をしているか

初犯だと不起訴になる可能性があるといった情報もあるようですが、初犯という理由だけで不起訴になるとは限りません

上記事情を総合的に考慮して、判断されることになります。

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傷害罪で不起訴を獲得するためにすべきこと

先述したとおり、検察はさまざまな事情を考慮して、不起訴を判断しています。

ここでは、傷害罪で不起訴を獲得するためにすべきことを解説します。

被害者と示談をする

傷害罪で不起訴の判断に大きく影響するのが、被害者との示談が成立しているかどうかです。

法律は、権利を守るために定められており、法律が守る権利のことを保護法益と言います。

傷害罪の保護法益は身体の安全です。つまり、傷害罪で罰則を定めることで、人の身体の安全を守っています。

保護法益で守っているものを侵害した場合、それに対して被害回復に努めることで、違法性が減少したと判断されます。

そのため、被害者に謝罪をして、負った被害を回復させ、許しを得ることで、不起訴処分を得られる可能性が高まります

被害者がケガをした事実はなかったことにするということはできないため、示談金を支払い、金銭を通して賠償することになります。

早期に示談が成立すれば、不起訴だけなく、逮捕されずに済んだり、早期に解放されたりする可能性もあるでしょう。

2022年の犯罪白書によると、傷害罪で逮捕される割合は50.2%、そのうち91%は身柄拘束(勾留)を求められることになるため、生活に影響が及ぶ前に対処することが大切です。

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再犯をしない環境を作る

傷害罪で不起訴を得るには、再犯をしない環境を作ることも大切です。

  • 家族に身元引受人になってもらい、同居して生活を監督してもらう
  • 感情をコントロールするためにカウンセリングを受ける
  • ストレスが溜まる環境を改善する
  • 凶器になりそうなものを所持しない
  • 判断能力が低下しないように飲酒を控える など

反省を示すためにも、被害者との示談とあわせて、具体的な再犯防止策を実行していくようにしましょう。

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傷害罪で示談しないとどうなる?

先述したとおり、傷害罪では示談が重要ですが、もし傷害罪で示談をしなかったり、できなかったりした場合はどうなってしまうのでしょうか?

示談なしだと起訴される可能性は高まる

示談をしたからといって不起訴になるとは断定できませんが、示談をしないでいると起訴される可能性は高まります。

先述したとおり、不起訴を得るには、被害者に謝罪をして、ケガなどに対して被害が回復できるよう示談金で賠償を行うことが大切です。

訴えられて裁判になるリスクがある

民法では、他人の権利を侵害すると、不法行為に該当し、加害者は被害者に与えた損害を賠償する責任を負うことになります(民法709条)。

傷害罪のように、刑法に違反すると、警察から捜査を受けて、最終的に刑事処分が科されることになりますが、これは民法とはまったく別の手続きです。

示談が成立していない場合、損害に対して十分な賠償がされておらず、民事上の責任を果たしていないことになるため、被害者から民事裁判で損害賠償請求を受ける可能性があります。

損害賠償請求には、示談金同様に、ケガの治療費や休業補償、精神的苦痛に対する慰謝料が含まれます。

財産的な損害 ケガの治療費や通院の交通費

休業補償(入院などで仕事を休まなければ得られた利益)

精神的な損害 精神的苦痛に対する慰謝料

また、被害者から民事裁判を申し立てられなくても、刑事裁判の判決言い渡し時に、そのまま損害賠償まで命じられるケースもあります(損害賠償命令制度)。

一方で、示談が成立していれば、刑事処分が軽くなる可能性があるだけでなく、民事的な責任を果たし、当事者間で和解をしたと判断されるため、民事裁判で訴えられることはありません。

参考:損害賠償命令制度について – 第一東京弁護士会

被害者が示談を拒否しているなら弁護士に相談を

傷害罪の場合は、加害者と被害者の間で感情的な対立の末に起きた事件ですので、いくら申し入れても、被害者が示談を拒否するケースもあります。

被害者が示談を拒否しているのであれば、第三者の立場で冷静に交渉できる弁護士に依頼して、示談交渉をしてもらってください。

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傷害罪で弁護士に依頼すべき理由

ここでは、傷害罪で弁護士に依頼すべき理由を紹介します。

被害者と示談交渉ができる可能性がある

被害者がいる犯罪では、加害者が被害者と示談交渉をしようと思っても、次のような理由で、困難であるケースがほとんどです。

  • 検察に被害者の連絡先を教えてもらえず、連絡ができない
  • 被害者が加害者に恐怖を覚えており、会うのを拒否される
  • 被害者が怒っていて示談に応じない
  • 被害者が負った傷の治療費以上に高額な示談金を請求されるなどトラブルになる

また、勾留されている場合、起訴されるまでの10~20日という限られた時間の中で、示談交渉をしていくことになります。

第三者である弁護士なら、冷静に話し合いができ、結果被害者が示談に応じてくれることが期待できます。

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被害者と粘り強く示談をしてくれる

傷害罪の場合は、感情的な対立の中で事件が起き、被害者がケガまでしているため、示談交渉も難航することが考えられます。

事件直後だと被害者も感情が高ぶっていて、示談を拒否し、検察に厳罰を求めるケースも多いです。

しかし、謝罪を尽くすことで、時間経過と共に示談に応じてもらえるケースもあるため、粘り強く交渉していくことが大切です。

争いの中で誤解があるのであれば、謝罪を尽くした上で、双方の認識をすりあわせることで、被害者の理解が得られ、示談に繋がるケースもあります。

弁護士に依頼することで、事件の状況や、被害者の心情に配慮しながら、粘り強く示談交渉を行ってもらえます。

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適正な金額で示談ができる

傷害罪では、被害者のケガの治療費以上に高額な示談金を請求されるなどのトラブルに発展するケースもあります。

加害者が個人的に示談を行うと、不当な請求に気づけず支払ってしまう可能性もあります。

弁護士が間に入ることで、傷害事件の被害の程度やこれまでの経験から、適正な金額で示談交渉をすることが可能です。

被害者に示談を拒否されても対策を講じてくれる

仮に被害者に示談を拒否されてしまっても、別の対策を講じてもらうことができます。

傷害罪では、示談成立の有無が重視されますが、それ以外にも加害者が真摯に対応したかどうかも考慮されます。

被害者に示談を拒否されてしまっても、示談の経過を記録で残し、加害者が示談成立に真摯に対応したことを、検察や裁判官に訴えることも可能です。

また、被害者が示談金の受け取りを拒否しているような場合は、法務局に供託金を預けることで、被害回復に向けて努力したと評価してもらえる可能性があります(民法第494条)。

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起訴されても執行猶予などを目指してサポートしてもらえる

仮に傷害罪で起訴されてしまっても、弁護士に依頼することで執行猶予がつくようにサポートが受けられます。

起訴後も、示談が成立することで執行猶予などがつく可能性はあるため、諦めずに弁護士に相談しましょう。

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傷害罪についてよくある質問

ここでは、傷害罪についてよくある質問に回答します。

傷害罪は初犯なら不起訴になる?

傷害罪を含め、刑事事件では初犯でも起訴されることは十分に考えられます

「傷害罪で不起訴になる基準」で解説したとおり、反省が全く見られない、凶器を使用したなど悪質な場合、被害者のケガが重い、示談が成立していないような場合は、起訴される可能性があります。

一方で、ケガが軽く、示談が成立している、さらにしっかりと反省の態度を示しているなどであれば、不起訴になることも考えられるでしょう。

傷害罪の示談金の相場は?

傷害罪の示談金には、決まった金額はありません。

示談金には、ケガの治療にかかった費用や、休業補償、精神的苦痛に対する慰謝料などが含まれ、交渉で決まります。

精神的な苦痛に対する慰謝料は、次のようにおおよその相場があります。

  • 全治1週間など軽いケガの場合は10~30万円程度
  • 全治2~3週間のケガの場合は30~150万円
  • 全治1か月の重症の場合は50~100万円(100万円を超えることも)

また、相手が後遺症を負ったような場合は、民事裁判で数千万円から1億円ほどの賠償が認められるケースもあるため、示談金も高額になる傾向があります。

示談金が払えない場合はどうしたらいい?

示談金が払えない場合は、被害者との示談で分割払いをお願いする方法もあります。

ただし、刑事事件の示談金は一括払いが基本です。

起訴や不起訴の判断には、被害者との示談だけでなく、実際に被害者が負った損害に対して、示談金を支払い、被害の回復に努めたかどうかといった部分も重視されます。

分割払いにすると、処分が決まった後に、支払いをしないのではないかと疑われるため、一括払いで示談をした際に比べると、有利に働かない可能性もあります。

示談金を分割払いする場合は、次のような条件をしっかり取り決め、支払いの見込みを示すことが重要です。

  • 分割回数を少なくする
  • 定職に就いて月々の支払額をしっかりと決める
  • 担保や連帯保証人をつける
  • まとまった金額を支払い、支払い分だけ分割払いにする など
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罪を犯した場合、刑事事件として処罰の対象となります。また、同時に民事事件としては被害者に対する不法行為が成立し、損害賠償義務が発生します。   従って示談金とは、民事上の損害賠償として支払われるものと言えますが...

過失傷害罪の不起訴率は?

検察の公表している資料によると、2021年の過失傷害罪の不起訴率は13.6%でした。

過失傷害罪は傷害罪とよく似ていますが、過失によって相手にケガをさせた場合に問われる罪です。

例えば、歩行者同士の事故や、スポーツ中の事故、動物の散歩の際の事故が挙げられます。

傷害事件の場合は、被害者が刑事告訴をしなくても事件の捜査が行われ、起訴される可能性があります(非親告罪)。

一方過失傷害罪は親告罪であるため、被害者と示談が成立すれば、告訴を取り下げてもらえ、事件とならずに済む可能性があります。

参考:不起訴人員及び起訴率の累年比較 (1993年~) – 政府統計の総合窓口 e-Stat

傷害致死で不起訴を得るには?

傷害致死罪は、暴行の末に被害者が亡くなった場合に、適用される罪名です。

検察によると、2021年の傷害致死罪の起訴率は64.7%でした。6割ほどが起訴されていることになります。

傷害致死の場合、被害者の死の原因が暴行と因果関係があるのか、被害者の持病や、犯罪の故意、正当防衛に該当するかどうかなど、あらゆる角度から事実を確認し、検察に訴えていく必要があります。

ただし、傷害致死罪に問われた場合、被害者が亡くなっており、その結果も重大であるため、少しでも早く弁護士に相談して、被害者遺族に謝罪をすることが大切です。

まとめ

傷害罪では、被害者に謝罪をして、被害者が受けた被害を賠償することで、不起訴処分を得られる可能性があります。

ただし、犯罪の性質上、被害者も感情的になっており、示談を拒否されてしまうケースもあるでしょう。

弁護士に依頼することで、被害者の感情に配慮しながら、粘り強く交渉してもらえる可能性があります。

また、示談が成立しない場合でも、真摯に示談を進めた状況を検察や裁判官に説明したり、供託をするといった方法が考えられますし、できる限りのサポートが受けられます。

ネクスパート法律事務所では、これまで数多くの示談交渉に対応した実績とノウハウがあります。

傷害罪で家族が逮捕されている人や、在宅事件で起訴されそうという人は、諦めずにご相談ください。

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