被害届とは?|出された場合の効果やその対処方法なども解説

被害届とは、警察に対して「こういう被害に遭いました」ということを届け出るための書類です。

この記事では、主に以下を解決します。

  • 被害届がどのような効果をもたらすのか
  • 被害届が出されてしまった場合にどのように対処すれば良いか など

被害届とは

被害届とは、被害に遭った人が捜査機関に対し、犯罪被害の事実を申告すること、またはその申告をした書面のことです。

被害届が出されると、警察はこれを受理しなければなりません。

犯罪捜査規範第61条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があったときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。

2 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

引用:e-Gov法令検索

しかし、いたずらや悪用を防ぐため、内容によっては警察側が受理に慎重になることもあり、必ず受理されるとは限りません。

被害届の概要

被害届は通常その事件を管轄する警察署や交番に提出されます。

被害届には以下の事項が記載されています。

  • 届け出日
  • 届出人の住所・氏名・電話番号
  • 被害者の住居・職業・氏名・年齢
  • 被害の年月日時
  • 被害の場所
  • 被害の模様
  • 被害金品(品名・数量・時価・特徴・所有者)
  • 犯人の住所、氏名、又は通称、人相、着衣、特徴等
  • 遺留品その他参考となるべき事項

被害者が警察署に行くと、上記の事項が聴かれます。聴取内容に沿って警察官が被害届を作成し、被害者が署名押印します。

この被害届が提出されることによって、捜査が始まる可能性があります。

被害届・告訴・告発の共通点・相違点

被害届と似ている文言として、告訴・告発があります。3つの共通点および相違点について簡単に解説します。

 

届出権者

犯人の処罰(訴追)を求める意思

捜査義務

処分結果を通知する義務

期間制限

被害届

被害者本人

(未成年者等例外あり)

含まれない

(犯罪事実の申告のみ)

生じない 無し 特になし

告訴

被害者本人

法定代理人・遺族等の告訴権者

あり 生じる 義務を負う 親告罪について制限あり

告発

誰でも

(告訴権者と犯人以外)

あり 生じる 義務を負う 特になし

被害届・告訴・告発の共通点

被害届・告訴・告発の共通点は、いずれも捜査機関に対して犯罪事実を申告する点です。これらがきっかけとなって捜査機関の捜査が開始されることがあります。

被害届・告訴・告発の相違点

被害届・告訴・告発の大きな違いの1つは届出権者です。

被害届・告訴は基本的に被害者本人しかできませんが,告発は誰でも可能です。

もう1つの大きな違いは、犯罪事実の申告とともに、犯人の訴追を求める意思があるか否かです。この違いにより、捜査機関に捜査義務が生じるか生じないか、およびその後の手続きも変わってきます。

被害届が出されるとどうなる?

被害届が提出されてしまうとどうなるのでしょうか?

上述したとおり、被害届の提出は捜査が始まる端緒になります。

被害届提出後の流れ

被害届が提出された場合の簡単な流れをご覧ください。

被害届が出されて受理されると、警察は捜査を開始します。

被疑者を逮捕して捜査する場合と、逮捕しないで捜査する場合があります。

被疑者を逮捕して捜査する場合

警察が被疑者を逮捕したときには48時間以内に検察官に送致しなければなりません。

検察官は被疑者を勾留する必要があると認めたときには、裁判所に勾留請求をします。勾留期間は10日間ですが、やむを得ない事情がある場合にはさらに10日間延長できます。

検察官は勾留期間内に捜査し、起訴するか不起訴にするか決定します。

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被疑者を逮捕しないで捜査する場合

被疑者を逮捕しないで捜査する場合には、被疑者は警察署から呼び出されて取り調べを受けます。

被害届提出から逮捕までの時間・期間はどのくらい

被害届が出されてから逮捕されるまでの時間・期間がどのくらいかかるかは、事案によって異なるので、一概に何日くらいと言うことは困難です。

上述したとおり、被害届が提出されても捜査機関に捜査義務は生じないため、事案によっては放置されることもあります。

被害に遭ってからかなりの期間経過後に被害届を提出した場合には、受理されなかったり、受理したとしても捜査が始まらなかったりする可能性が高くなります。

被害届が出されたからと言って、必ずしも捜査が始まり、逮捕されるとは限りません。

被害に遭った直後に被害届を提出し、受理された場合にも、例えば同時に緊急を要する事件や重大事件が発生した場合には、後回しにされることもあります。

この場合には、すぐに捜査が開始されなかったからといって捜査機関が捜査をしないと判断したわけではないことに注意が必要です。

緊急事件や重大事件がひと段落した後に警察が捜査を開始し、逮捕されることもあります。

被害届が受理されなかったらどうなる?

被害者が被害届を提出しに警察署に行ったにも関わらず、被害届が受理されないこともあります。

被害者が被害届を提出しても、事件として証明できると判断されなかった場合や、事件として立件する必要性が低いと判断された場合には、警察は被害届を受理しようとしません。

警察が被害届を受理しない場合には捜査も始まりません。

被害届が出されたら必ず逮捕される?

被害届が出されても受理されなければ捜査が始まらないため、被害届が提出された場合に必ず逮捕されるとは限りません。

また、事案によっては在宅のまま捜査がされることもあるので、被害届が受理され捜査が始まっても必ずしも逮捕されるとは限りません。

被害届なしでも捜査がはじまる?

被害届が無い場合でも、捜査が始まることがあります。例えば盗撮の場合、被害者は盗撮に気が付かずにいることが多いため、被害届は出されませんが、盗撮行為を発見した第三者によって現行犯逮捕され、捜査が始まることもあります。

また、被害者が居ない犯罪、例えば公然わいせつや児童買春の場合には、被害届は不要で、その事実があったことが判明すると捜査が始まります。

被害届提出で犯罪が家族や会社にばれる?

被害届が提出されただけでは自分が犯した犯罪が家族や会社にバレることはありません。

被害届が提出されて捜査機関が捜査を開始した場合、家族と同居している家に警察官が来て出頭を求められたり、家宅捜索を始めたりすると家族にバレる可能性が高いです。

被害届に記載されている事項が勤務先や業務に密接に関連している場合には、勤務先の捜索をする可能性もあります。その場合には会社にバレることもあるでしょう。

勤務先とは何の関係も無い場合に、捜査機関が勤務先に捜査情報を漏らすことは通常考えられません。

逮捕されそのまま勾留されてしまうと、家族とも長期間連絡が取れず、会社も長期間休まざるを得ません。

連絡が取れない家族が心配して行方不明者捜索願を提出したら勾留されていることが判明し、家族にバレたということもあります。

会社を長期間欠勤すると、会社側から欠勤理由を確認される可能性もあり、逮捕勾留されていることを言わざるを得なくなることもあります。

被害届が提出されたら、取り下げてもらえるよう被害者と交渉しましょう

被害届が提出されたからといってすぐに捜査機関が捜査を始めるわけではありませんし、必ず逮捕されるわけでもありません。

しかし、被害届が提出されたことにより、捜査が始まる可能性は高くなります。被害届が提出された場合には、早急に被害届を取り下げてもらうよう交渉しましょう、

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被害届を取り下げてもらえないとどうなる?

被害届を取り下げてもらえないとどうなるのでしょう?

被害届を取り下げてもらえない場合には、捜査機関が捜査を開始します。事案によっては逮捕されてしまう可能性があります。

逮捕・勾留され、起訴されてしまうと日本の刑事裁判では約99%が有罪となるため、前科が付く可能性が高くなります。

また、被害届を取り下げてもらえない場合には、被害者がまだ処罰感情を持っていると判断され、刑事処分の内容が重くなる可能性もあります。

被害届を取り下げてもらうためにすべきこと

被害届を取り下げてもらうためにすべきことを解説します。

被害届を取り下げられるのは被害者本人だけ

被害届を取り下げられるのは被害者本人だけです。

警察に被害届を取り下げることを伝えると、取り下げの理由を詳しく聴かれ、「被害届を取り下げます」という内容の供述調書が作成されることもあります。

被害者本人に被害届取り下げの意思がないかぎり被害届が取り下げられることはありません。

被害者と示談する

被害者に被害届を取り下げてもらうためには被害者との間で示談が成立することが重要です。

被害届を取り下げてもよいと思ってもらえるように、被害の弁償をし、心から謝罪をして、示談に応じてもらいましょう。

被害者と示談するために

被害者と示談するためには、被害者の情報を捜査機関から教えてもらう必要がありますが、被疑者本人が被害者の情報を聞いても、捜査機関が教えてくれることはありません。

被疑者から依頼を受けた弁護士であれば、捜査機関が被害者から許可を得て、被害者の情報を教えてくれる可能性が高くなります。

被害届が提出された場合には、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

身に覚えのない場合

全く身に覚えがないにも関わらず被害届を出された場合には、早急に弁護士に依頼をして被害者の方から話を聞き取ってもらい、誤解が無いか等を確認してもらいましょう。

被害者側の言い分を確認し、自分の事情を説明し誤解を解いたうえで被害届を取り下げてもらうようにしましょう。

被害者側の言い分の通りに捜査機関が捜査した場合、事実と異なる内容で捜査が進んでしまう危険があります。

被害届が取下げられたらその後はどうなる?

被害届が取り下げられた場合には、被害者の処罰感情が無くなったと判断されます。逮捕・勾留により身柄を拘束されていた場合には釈放され、不起訴処分で終了することもあります。

起訴後であれば、より軽い刑事処分になり、執行猶予が付く可能性もあります。

しかし、被害届が取り下げられたからといって、必ずしもそこで捜査が終了するわけではありません。犯罪の内容によってはそのまま捜査が続けられ、起訴される可能性もあります。

被害届を取り下げてもらうためには弁護士に相談を

被害届は、捜査開始の端緒となります。被害届が提出された場合にはなるべく早く弁護士に相談をしましょう。

弁護士に間に入ってもらい、被害者に被害の弁償をし、謝罪をすることで、示談成立の可能性が高くなります。

その結果、被害者が被害届を取り下げてくれて、起訴されずに事件が終了する可能性もでてきます。

まとめ

被害届が提出された場合には、なるべく早い段階で弁護士に相談しましょう。早い段階から弁護士の適切なサポートが受けられるかどうかで、その後の展開が大きく異なる可能性があります。

被害届が提出されそうな場合、あるいは既に出された場合には、早急に弁護士に相談することをお勧めします。

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