恐喝未遂罪とは|恐喝未遂の初犯はどうなる?懲役の相場や判例

恐喝未遂は、暴行や脅迫行為で被害者に恐怖を与えて、金品を得るに至らなかった場合に成立する犯罪です。

恐喝未遂は、恐喝罪と同様に懲役刑が定められています。

逮捕から起訴(刑事裁判になること)されると、公開の裁判で裁かれ前科がつくおそれがあります。

14歳以上であれば逮捕される可能性もあります

この記事では、恐喝未遂について下記の点を解説します。

  • 恐喝未遂が成立する条件
  • 恐喝未遂で逮捕された場合と懲役の相場
  • 恐喝罪になる言葉

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恐喝未遂とは

恐喝未遂とは、暴行や脅迫で被害者を恐怖させ、金品を得ることができなかった場合に、成立します。

相手を脅して金品を請求した場合、結果としてその金品を得るに至らずとも、未遂として処分の対象となります。

恐喝未遂罪の法定刑

恐喝未遂罪の法定刑は、恐喝罪同様に10年以下の懲役です(刑法第249条)。

ただし、未遂罪の場合は、減軽(言い渡される刑罰が軽くなること)されると定められています。

(未遂減免)
第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
引用:刑法第43条 – e-Gov

どの程度減軽されるのかは、未遂になった理由が、自ら中止したのか、相手から金品を奪えない偶発的なものなのかなどにより判断されます。

中止未遂 自分の意思で犯行を思いとどまった場合は、刑が必ず減軽や免除される。
障害未遂 被害者が警察に相談するなど、偶発的に未遂となった場合、裁判官の判断により減軽されるケースもある。

恐喝罪や恐喝未遂罪は、罰金が定められていないため、重い犯罪だと言えるでしょう。

恐喝未遂罪の時効

恐喝未遂罪の時効は、恐喝罪と同じく7年です。

この時効とは、公訴時効のことであり、刑事裁判にかけて審理ができなくなる期限のことです。

犯罪によっては時効がないものもありますが、時間の経過とともに証拠が失われると、犯罪の立証が不可能になるため、このように期限が設けられています。

恐喝未遂罪が成立する条件

ここでは、恐喝未遂罪が成立する条件を解説します。

暴行や脅迫を用いたこと

恐喝罪が成立する条件の1つは、暴行や脅迫を行ったことです。

暴行 殴るなど、相手を怖がらせる程度の有形力の行使をすること
脅迫 身体や生命への脅迫や、名誉を傷つけるような内容で、相手を怖がらせる程度の害悪の告知

例:金を出さないと殴る など

恐喝罪かどうかは、加害者と被害者の関係やこれまでの恐喝の有無、事件当時の状況、恐喝の内容、正当な行為の範囲を超えているかどうかなどを踏まえて判断されます。

被害者を恐怖させたこと

また、暴行や脅迫行為で、被害者を恐怖させることも成立条件の1つとなります。

この暴行や脅迫の程度は、相手を怖がらせて従わせる程度のものでなければなりません。

相手の反抗を完全に抑圧する程度に達していると、恐喝ではなく強盗罪に問われる可能性があります。

また、恐怖の感じ方は人それぞれであるため、加害者と被害者の体格差や年齢、犯行の時間帯や場所、周囲の状況などを考慮して判断されます。

例えば、深夜人通りのない路上で、体格のよい男性が子どもを脅せば、恐喝罪に当たる可能性があります。

一方で、周囲に人もいる状況で、小柄な女性が体格のよいプロのスポーツ選手を脅しても、恐喝罪だと判断されないことが考えられるでしょう。

金品の支払いに至らないこと

恐喝罪が成立する条件は、被害者が金品を支払うことですが、未遂罪の場合は、被害者が金品の支払いに至らないことです。

恐喝罪になる言葉

恐喝罪が成立するケースとして、どういう言葉を使用すると恐喝罪になるのか、法律で明確に定められてはいません。

しかし、下記のような発言をすると恐喝罪に問われることが考えられるでしょう。

  • 明日までに100万円持ってこないと、殺すぞ
  • 金を払わないと、払うまで帰れないぞ
  • 会社や家族に知られたくないなら、100万円を払え など

また、こうした直接的な金銭を請求する言葉以外にも、金銭的な利益を得られるような要求であれば、恐喝罪が成立する可能性があります。

恐喝未遂と他の犯罪の違い

恐喝未遂や恐喝罪と、よく似た犯罪との違いについて解説します。

脅迫罪

脅迫罪は、人を脅して恐怖させた場合に成立する犯罪です(刑法第222条)。

①本人やその親族に対して、②生命や身体、自由、名誉、財産に対して危害を加えることを告知する(害悪の告知)と、脅迫罪に該当します。

恐喝罪との違いは、金品の要求の有無です。

脅迫罪の法定刑は、2年以下の懲役、または30万円以下の罰金です。

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強要罪

強要罪は、脅迫や暴行によって、他人に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害したりした場合に成立する犯罪です(刑法第223条)。

例えば、店員の態度が気に食わないからと、土下座を強要するようなケースや、職場で上司が部下に解雇を盾に過剰な要求をするケースなどが挙げられます。

恐喝罪は、相手を脅して金銭的な利益を得る目的であるのに対して、強要罪は、人に義務のない要求を飲ませたり、人の権利の行使を妨害する目的という違いがあります。

強要罪の法定刑は3年以下の懲役です。

強盗罪

強盗罪は、暴行や脅迫を用いて、人の金品を奪った場合に成立する犯罪です。

暴行や脅迫を用いて、人から金品を奪う点は恐喝罪と似ています。

ただし、強盗罪が成立する暴行や脅迫の程度は、相手の反抗を抑圧する程度に強いものであることが必要です。

相手の反抗を抑圧する程度とは、例えば刃物をつきつける行為などが挙げられます。

また、恐喝罪と同様に、暴行や脅迫の程度は、犯行があった時間帯や場所、周囲の状況、被害者と加害者の体格や年齢、性別、凶器の有無などによって判断されます。

暴行や脅迫の程度が、相手の反抗を抑圧する程度に至らない場合は、恐喝罪が成立することになるでしょう。

強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役です。

懲役の上限は原則20年、他の罪が加重されると30年が上限となります(刑法第12条、47条)。

執行猶予がつくのは、言い渡された量刑が3年以下の場合であるため、減軽されない限りは執行猶予がつかないことになります。

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恐喝未遂で逮捕された場合

ここでは、恐喝未遂で逮捕される確率や、逮捕された場合の流れ、懲役の相場などについて解説します。

恐喝未遂罪の身柄率

身柄率とは、逮捕された割合のことです。

恐喝未遂罪の身柄率の統計は公表されていませんが、2022年の恐喝罪の身柄率は73%です。

加害者が特定、検挙されたうち約7割ほどは逮捕されていることになります。

参考:令和5年版 犯罪白書 第3節 被疑者の逮捕と勾留 – 法務省

成人が逮捕された場合の流れ

成人と未成年が逮捕された場合の流れは若干異なります。

成人が逮捕された場合、下記のような流れで手続きが進められることになります。

  1. 逮捕される
  2. 逮捕後48時間以内に警察から検察に身柄が引き継がれる(送致)
  3. 送致後24時間以内に勾留が判断される
  4. 勾留された場合は10~20日間身柄拘束を受ける
  5. 勾留満期までに起訴か不起訴が決定する
  6. 起訴後も勾留された場合は身柄拘束を受ける
  7. 刑事裁判で審理が行われて処分が決定する

勾留というのは、警察署の留置場に入れられることです。

逮捕と同様に、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなどと判断されると、勾留が認められる可能性があります。

2022年の法務省の統計によると、恐喝罪で逮捕から身柄が拘束された割合は99.5%でした。

逮捕されれば高確率でそのまま勾留が行われるおそれがあります。

また、勾留満期までに不起訴を得なければ、刑事裁判が行われることになります。

刑事裁判で有罪となれば、恐喝罪同様10年以下の懲役が科されることも考えられるため、起訴されるまでに弁護士のサポートを受けることが重要です。

参考:令和5年版 犯罪白書 第3節 被疑者の逮捕と勾留 – 法務省

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20歳未満が逮捕された場合の流れ

20歳未満の場合は、少年法が適用されます。逮捕後の流れは、途中まで成人と同様です。

  1. 逮捕される
  2. 逮捕後48時間以内に警察から検察に身柄が引き継がれる(送致)
  3. 送致後24時間以内に勾留か、勾留に代わる観護措置か判断される
  4. 勾留された場合は10~20日間身柄拘束を受ける。観護措置の場合は鑑別所に10日間入れられる
  5. 家庭裁判所に事件が引き継がれる
  6. 必要に応じて2~4週間鑑別所で少年の調査が行われる
  7. 鑑別所の調査をもとに少年審判で処分が決定する

少年の場合、成人のように刑務所に収容される可能性は低いですが、やはり一定期間身柄拘束を受けるケースがあります。

また、少年審判の処分によっては、少年院に送致されることも考えられます。

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恐喝未遂の懲役の相場

2022年の司法統計によると、恐喝未遂罪の懲役の相場は1年から2年以上の懲役で、執行猶予がつくケースが多いです。

5年以下 1人
3年 執行猶予 3人
実刑 1人
2年以上 執行猶予 18人
実刑 4人
1年以上 執行猶予 25人
実刑 21人
1年以下 執行猶予 1人
実刑 1人

参考:司法統計

恐喝未遂罪の場合、罰金刑は設定されていないため、起訴されれば、公開の裁判で裁かれることになります。

また、恐喝行為の内容や執拗さ、被害者への影響や結果、加害者の態度や反省の有無、被害者との示談の有無などによっては、実刑判決が下されるケースもあります。

実際に恐喝未遂罪で有罪判決になった事例

ここでは、実際に恐喝未遂罪で有罪判決が下された事例を解説します。

路上で恐喝行為をした被告人に実刑

路上で被害者の車と接触したと主張する被告人が、被害者とその上司に対して、殺すと脅迫し、1,000万円でも2,000万円でもとってやると恐喝した事案において、被告人に懲役1年5か月の実刑判決が下されました。

判決の理由について裁判官は下記のとおり述べています。

  • 犯行が粗暴で被害者らの受けた恐怖は大きい
  • 犯行前後の言動も悪質である
  • 被害弁償などはなされておらずに、その可能性も低く、被害者も厳罰を望んでいる
  • 他にも、前科が多数あり、責任を被害者に転嫁するなど反省もない、遵法精神に欠けており、再犯の可能性が極めて高い

参考:判例検索 – 裁判所

暴力団を装い金銭を奪い取ろうとした被告人に実刑

金銭的に苦しい被告が、親しくしていた被害者やその同棲相手から金品を巻き上げようと暴力団を装って脅迫した事件では、懲役1年8か月の実刑判決が下されています。

判決の理由について、裁判官は下記の点を考慮して量刑を決定しました。

  • 暴力団のように装い、執拗に脅迫を加えた
  • 共犯者を引き入れるなど刑事責任は重い
  • 被害額が7万円と少なく、一部弁償を行ったこと
  • 反省して今後の更生を誓っていること
  • 義理の父親が更生のために協力してくれること

参考:判例検索 – 裁判所

恐喝未遂罪の初犯は不起訴になる?

恐喝未遂罪の場合、初犯であっても、犯行の内容や執拗さがなく、悪質でないと判断され、被害者に謝罪して示談をするなど反省をしっかり示せば、不起訴になる可能性があります。

一方で、初犯であっても、犯行内容が悪質であり、一切反省せずに、示談も成立していない場合は、起訴されることも考えられるでしょう。

恐喝未遂で不起訴になるために

先述したとおり、恐喝罪は未遂でも処分を受ける可能性がありますし、罰金刑が定められていないため、懲役が科されるおそれもあります。

また、裁判で実刑となった場合は、前科がつくことになります。

恐喝未遂罪で起訴されないためには、被害者と示談をすることが重要です。

刑事事件では、被害者が示談に応じることで、被害者が受けた被害を回復して、双方で問題が解決できたと判断されるため、不起訴を得られる可能性が高まります。

示談金は、被害者が受けた精神的苦痛の程度や双方の交渉で決定するため、明確な金額は定められていません。

目安として、数万円程度になることが考えられますが、これも個々の事案によって異なるでしょう。

また、恐喝未遂をした場合、被害者も加害者と直接の示談交渉には応じたくないと考えるのが普通です。

被害者に謝罪したい場合は、第三者である弁護士に相談してください。

恐喝行為の証拠となるもの

恐喝未遂や恐喝行為は、口頭で行われたような場合、証拠がないため捜査がされないと考える人もいるかもしれません。

しかし、下記のような証拠があると、警察が捜査を行うことも考えられます。

  • 恐喝行為の録音や録画の記録
  • 被害者や目撃者の証言 など

もしこうした証拠があり、警察などから連絡があった場合は捜査が開始されている可能性があります。

恐喝行為に関与してしまい不安な人は弁護士に相談しましょう。

まとめ

恐喝未遂は、脅迫や暴行を行い金品を要求した場合に犯行に着手したと判断されます。

暴行や脅迫によっては強盗罪が成立して、重い処分が科されることも考えられるでしょう。

恐喝未遂は未成年者でも逮捕される可能性があります。また、法定刑は懲役のみで罰金はありません。

もし恐喝未遂に問われて、家族が逮捕されたり、警察から捜査を受けたりした場合は、弁護士に相談しましょう。

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