貞操権の侵害とは|慰謝料の相場と成立要件

  • 最終更新日: 2024.04.18

既婚者と性的関係を持った場合、不貞行為で慰謝料や離婚の請求をされることがあります。しかし、独身だと思っていた交際相手が実は既婚者だった場合はどうなるのでしょうか。

「既婚者と知っていたら付き合わなかった」と考えている方は、貞操権の侵害で交際相手に慰謝料を請求できる可能性があります。この記事では、貞操権の侵害とは何か、慰謝料を請求するために必要な要件についてご紹介します。

貞操権の侵害とは

貞操権とは、自分が性的関係を持つ相手を自分で決める権利です。
誰と性的関係を持つかは、自分自身が決めることであり、他人が干渉したり強要したりすることはできません。

ところが、既婚者が「自分は独身だ」と嘘をつき、それを信じた末に行為に及んでいた場合、自由な意思決定に基づかない性的関係があったとして慰謝料請求の対象となる可能性があるのです。

貞操権侵害の成立要件

貞操権を侵害されたと認定されるためには、次に説明する3つの要件を満たす必要があります。

独身だと嘘をついていた

相手が既婚者であるにもかかわらず、その事実を隠して独身であると嘘をつき、それを信じていたことが要件となります。

たとえ交際相手が「自分は独身だ」と発言していなくても、既婚者であることを隠して交際を続けていればこの要件に当てはまります。

結婚を前提に付き合っていた

貞操権の侵害は、結婚を前提に付き合っていた場合に当てはまります。結婚を前提としていない関係は貞操権侵害にはあたりません。ただし、婚約している必要はなく、将来的に結婚をほのめかす発言があった場合も成立します。

家族に挨拶を済ませている、婚約指輪を選びに行った、結婚式場の見学に行ったなど、客観的に見て結婚を前提としていると思われる事実がある場合は、これに該当する可能性があります。

肉体関係があった

貞操権は肉体関係がなければ侵害されたとはみなされません。そもそも貞操権は性的関係を誰と持つのかを自分の意思で決める権利ですから、性行為のないプラトニックな関係だった場合は貞操権を侵害されたとは言えないので慰謝料の請求は難しいでしょう。

貞操権の侵害で請求できる慰謝料相場

貞操権侵害で慰謝料を請求する場合の相場は50万円から200万円程度と幅が広く、具体的な案件によって金額は大きく変わります。個別の事情によって金額が異なるので一概には言えませんが、悪質性が高くなるほど慰謝料も高額になる傾向にあります。悪質だと判断される具体例として次のようなものがあります。

慰謝料が高額になるケース

女性側が妊娠・中絶した

女性側にとっては望まない妊娠で、さらに中絶を迫られた場合はかなりの精神的苦痛を受けるため、慰謝料はより高額になります。

交際期間が長期間に及んでいる

数か月や1年程度ではなく、2年3年と交際期間が長くなるほど慰謝料も高くなります。

別れた時の対応に誠実さがない

「実は既婚者ではないか」と相手が詰め寄った途端に音信不通になったり話し合いに応じなかったりすると、誠実な対応がなかったとされ、慰謝料が高額になります。

相手の年齢が若い

判断能力が十分でない10代の若い女性などを相手に独身と偽って交際していた場合にも慰謝料が高くなります。

貞操権侵害で慰謝料請求が難しいケース

貞操権を侵害されたとしても慰謝料の請求が難しくなることがあります。例えば、交際相手が既婚者だと知った後も、別れずに交際を続けた場合は貞操権の侵害にはあたらないとされます。この場合は、むしろ相手の配偶者から不貞行為を理由に慰謝料を請求される可能性があります。

ほかにも、騙された女性が成熟した大人の女性で、相手が既婚者と判断するに十分な判断力があったことや、相手が既婚者だと薄々気づいていた場合も請求が難しくなるでしょう。また、交際はしていたものの肉体関係がない、結婚の話が出ておらず、男女の交際を楽しんだだけといったケースでも慰謝料の請求は難しくなります。

貞操権侵害を証明するために必要な証拠

貞操権の侵害で慰謝料を請求する場合、上記で説明した3つの要件を満たしていることがわかる証拠が必要です。

  • 未婚者の利用を前提としているマッチングアプリに登録していたことがわかるもの
  • LINEや婚約指輪、家族に相手を紹介した時の様子がわかる写真や映像など結婚を視野に入れて交際していたことがわかるもの
  • ホテルの領収書や自宅で交際相手を撮影した写真や映像など、親密かつ肉体関係があったとわかるもの

ほかにも「これは証拠になるんじゃないか」と思うものはすべて用意し、慰謝料の請求の際に備えましょう。

貞操権侵害で訴えられた・慰謝料請求されたら

反対に、既婚者が未婚者と肉体関係を持ったのち、貞操権の侵害で慰謝料を請求された場合はどうすればいいでしょうか。実際に不貞行為をしてしまった以上、不倫相手に対しては誠実に対応する必要があります。万が一貞操権侵害で慰謝料請求された場合の対応についてご紹介します。

貞操権侵害が成立しているか確認する

先述した貞操権侵害の成立要件3つをすべて満たしているかどうかを確認しましょう。独身だと嘘をついていないことはもちろん、結婚をに匂わせる発言をしていなかったこともポイントです。

独身と偽り、結婚前提とした交際と明言した上で性的関係を伴う交際を続けていた場合、相手には貞操権侵害で慰謝料の請求権が発生しています。裁判になる前に慰謝料を支払うことで円満な解決を図れることがあります。

慰謝料の金額が妥当か確認する

相手から請求された慰謝料の金額を見てみましょう。場合によっては慰謝料を減額できる可能性があります。極端な例ですが「判断能力が十分にある大人の女性と交際期間が数か月。妊娠・中絶したわけでもなく、慰謝料500万円を請求してきた」としたら、それは相場を大きく上回る金額ですので、減額を交渉できると言えます。

ほかにも、相場に合った金額でも交渉できる余地があるかもしれません。自分から連絡を取って減額してもらえないか交渉してもらうこともできますが、相手を説得させるのは難しいのが現実です。

弁護士に相談する

貞操権の侵害で慰謝料を請求されたときは離婚問題に精通している弁護士に相談しましょう。弁護士は交渉事には慣れているので、慰謝料の減額についても本人に代わって相手と交渉を進められます。

とくに離婚問題に詳しい弁護士なら、男女間のトラブルや慰謝料の請求についても知見があるので、慰謝料を減額できる可能性は充分あるでしょう。まずは弁護士に事情を話して、慰謝料が妥当か減額できる余地があるか相談してみましょう。

まとめ

貞操権侵害の慰謝料相場と成立要件についてご紹介しました。貞操権という言葉自体はあまり聞きなれないかもしれません。しかし、交際相手がまさか既婚者であると知らずに関係を続け、気づいたときには自分が不倫相手になっていたといったケースは少なくありません。

その場合、貞操権を侵害されている状況にあたる可能性があるので、精神的苦痛を受けているなら慰謝料を請求し気持ちに区切りをつけてみてはいかがでしょうか。慰謝料請求を考えている方は離婚問題に詳しい弁護士にぜひご相談ください。

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