【弁護士解説】飲食店における食品表示は必要?食品表示基準の義務表示とは

スーパーマーケットやコンビニエンスストアでお弁当やお惣菜を買うと、食品表示(定義については後述)が表示されていると思います。しかし、飲食店では、個々のメニューに食品表示がされていることは稀でしょう。

本稿では、一般的な飲食店における食品表示の要否について、飲食店を経営する会社の法務部出身の弁護士が概説していきます。

目次

食品表示とは?

食品表示とは食品表示法、食品表示基準等が定める、消費者が食品の安全性を確認し安心して購入する為の表示です。

なぜこのような表示が必要かというと、食品は人が体内に摂取するものなので、健康被害の危険性が極めて高いため、安全性確保の見地からそのような表示が義務付けられています。

食品表示の中には、食品表示基準上、

  • 義務表示
  • 推奨表示
  • 任意表示
  • 禁止表示

があります。本稿では、義務表示について取り上げていきます。

食品表示基準の義務表示とは

義務表示とは、法令上、当該食品の包装に記載しなければならないと定められているものです。

加工食品における

  • 原材料名
  • 栄養成分表示
  • アレルギー物質
  • 賞味期限
  • 保存方法

等がその例です。これらの表示を怠ると、立入検査、回収命令等の行政上の措置に加え、刑事罰が科されることもあります。

一般的な飲食店における食品表示の要否

では、一般的な飲食店において、これらの食品表示は必要か、という点についてですが、これは場合によります。

対面販売の飲食店の場合・テイクアウトする場合

食品表示基準1条但書によれば、「加工食品又は生鮮食品を設備を設けて飲食させる」場合には、食品表示法による規制は受けません。

食品表示義務が定められた背景から、対面販売では、調理者とお客様が同じ場所にいることから、提供される食品について不明点があれば直接調理者(お店の人)に尋ねることができるため、敢えて食品に表示をする必要に乏しいためです。

そのため、店内の施設で食品を調理し、店内でお客様に提供を行うという形態の一般的な飲食店においては、食品の表示義務はありません。それらに加え、注文を受けてから調理し、その場で提供するよう弁当屋や、店内で調理したメニューをテイクアウトで提供するような場合にも、飲食店の場合と同様のことがいえるため、食品表示義務は課されません。

別の場所で製造されたものや、仕入れたものを販売する場合

他方で、別の場所で製造されたものや、仕入れたものをそのまま販売するような場合には、調理者がお客様に直接説明するという手法が取れないため、食品表示が必要になります。

その他、一般的な飲食店が通信販売によって食品を販売するような場合にも、直接的な説明が困難であるため、食品表示が必要になります。

デリバリーサービスの場合

もっとも、この考えを前提にすると、デリバリーサービスについても直接の説明が困難であるため、食品表示が必要になりそうですが、現在(2023年7月時点)では特に法整備はされていません。今後の動向をチェックする必要がありそうです。

例外的に食品表示が必要な場合は?

さて、ここまで一般的な飲食店では食品表示は原則として不要であると記載しました。

ただし例外もあります。それは、生食用食肉を提供する場合です。

生食用食育は、加熱処理をしていないため、加熱処理をした食肉に比べて、食中毒のリスクが非常に高いと言えます。

そのため、

  1. 一般的に食肉の生食には食中毒のリスクがあること
  2. 子ども、高齢者等食中毒に対する抵抗力の弱い者は食肉の生食を控えるべきであること

を表示する必要があります(食品表示基準40条)。

また、生食用食肉は、提供できるものと提供できないもの、提供できる場合にも更に法的基準を満たす必要があるもの、というように提供について複雑に規制されています。生食用食肉の提供には十分な確認が必要でしょう。

飲食店での食品表示【アレルギー表示】について

ではアレルギー表示について、表示義務はあるでしょうか?

現在、飲食店に対する法律上のアレルギー表示義務はありません。

しかしながら、アレルギー体質の方が特定のアレルゲンを摂取した場合、アナフィラキシー等の重篤な症状を生じかねず、命にかかわる事故が起きかねません。

万一、重大事故が生じた場合には、事故に遭った方から損害賠償請求をされる可能性があることはもちろん、SNSなどを通じたレピュテーションリスク等も懸念されます。

そのため、法的義務ではないにせよ、自店の利益とお客様の安全を守るためにも、アレルゲンについての表示は自主的に行うことを強くお勧めします。

終わりに

本稿は食品表示、主に義務表示について解説いたしました。

一般的な飲食店では、例外を除き食品表示は不要です。しかし今後、デリバリーにおいての法整備がなされる可能性もありますし、アレルギー表示についてはアレルギーがある方にとっては生死にかかわる重大な事項となります。十分に注意する必要があるでしょう。

飲食店の法務でお悩みの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。飲食・フランチャイズに強い弁護士が対応します。

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