この記事では、いわゆる「ステマ規制、ステルスマーケティング規制」について弁護士が解説します。
各業種の広告・PR担当者様は、ぜひ参考になさってください。
ステマ規制とは?
2023年10月から新たに、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」も景品表示法の規制対象になります(景表法5条3号)。
この、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」に関する規制が、ステマ規制、ステルスマーケティング規制と呼ばれています。
ステマ表示とは、以下のように定義づけられています。分かりにくいので、2つの要素に分けて簡潔に考えます。
- 事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示(以下「事業者の表示」)であるにもかかわらず、事業者の表示であることを明瞭にしないことなどにより
- 一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難となる表示(以下「判別困難な表示」)、とされています。

なぜステマ表現が規制されるのか??
なぜステマ表現は規制されるのでしょうか。
事業者の表示であると一般消費者が分かる場合
事業者の表示であると一般消費者が分かる場合は、ちょっとオーバーなこと言っているだろうな、などとある程度の誇張や強調を予測したうえで買う・買わない等の判断ができます。
事業者の表示と判別困難な場合
事業者の表示と判別困難な場合は、上記の予想ができず、自主的かつ合理的な選択が阻害される可能性があります。
→そのような消費者に誤った判断をさせることを防止することがステマ規制の目的です。
ステマ規制に違反するとどうなる?
では、ステマ規制に違反した場合はどうなるのでしょうか。
景品表示法7条により、措置命令を受ける可能性があります。
措置命令に従わなかった場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金のいずれかまたは併科となります。
ステマ規制に違反しないためには??
ステマ規制に違反しないためにはどうしたらよいでしょうか。
ステマ規制に違反しないための方法は、次の2パターンあります。
- 事業者の表示に該当しないよう工夫する
- 広告であることを明示する
事業者の表示について
事業者の表示に当たるのはどんな場合でしょうか?
①事業者が自ら行う表示
- 事業者自らが行う、第三者が表示しているかのように誤認させる表示
- 事業者と一体と認められる関係を有する者(従業員等※)による表示
※従業員、子会社従業員が例として挙げられているが、関係性によってはそれ以外も該当する可能性が高いです。
②事業者が第三者に行わせる表示
→事業者が表示内容の決定に関与したと認められる、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合
例えば以下のような場合です。
- 広告主がインフルエンサー等に対して当該インフルエンサー等のSNS上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合
- ECサイトに出店する広告主が、いわゆるブローカーや自らの商品の購入者に依頼して、購入した商品について、当該ECサイトのレビューを通じて表示させる場合
- 広告主が他の事業者に依頼して、プラットフォーム上の口コミ投稿を通じて、自らの競合事業者の商品又は役務について、自らの商品又は役務と比較した、低い評価を表示させる場合
事業者の表示に当たらない場合は??
事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合には、「事業者の表示」に該当しません。
事業者の表示との判断が困難な表示について
ここでは、事業者の表示との判断が困難な表示に該当するのはどのようなケースか解説します。
事業者の表示との判断が困難な表示
事業者の表示との判断が困難な表示に該当するのは、次のようなケースです。
- 事業者の表示であることが一切記載されていない
- 表示されていたとしてもわかりにくい
(例:「広告」という文字が小さくて分かりにくい、#PR等と記載されていても、他のハッシュタグの中に埋もれていて分かりにくい、動画内での「広告」との表示時間が短い)
一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうか、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断する必要があります。
事業者の表示であることが明瞭なケース
事業者の表示であることが明瞭となっているのは、次のようなケースです。
- 「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合※
- 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合
※「PR」等表示する場合も、表示方法については別途注意が必要です。
ステマ規制の対象にならないケース
ステマ規制の対象にならないケースは、具体的には次のようなケースです。
- インフルエンサー等が、自らの自主的な意思に基づき特定の事業者の商品または役務について表示を行う場合
- アフィリエイターの表示であっても、事業者とアフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが直接または間接的に一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態がある場合
- ECサイトにおける出店者の商品の購入者が、自らの自主的な意思に基づきECサイトにおいてレビュー機能により当該事業者の商品等の表示を行う場合
- ECサイトの出店者が購入者に対しレビュー機能によるレビュー投稿に対する謝礼として次回割引クーポン等を配布する場合で、購入者との間で表示内容について一切の情報のやり取りが行われておらず、購入者が自らの自主的な意思に基づき投稿したと客観的に認められる場合
- 広告主が自社のウェブサイトにおいて、インフルエンサー等の投稿を恣意的に抽出せず、また、インフルエンサー等の投稿内容に変更を加えることなくそのまま引用する場合
- 広告主が不特定の者に対して、自らのサンプル商品や役務のお試し券の配布を行った結果、これらを受けた当該不特定の者が行う表示が第三者の自主的な意思による表示と客観的に認められる場合
- 広告主から、表示内容を決定できる程度の関係性にないインフルエンサー等に対し、表示を目的とした無償提供ではなく、単なるプレゼントとして商品等の贈呈を行った結果、当該インフルエンサー等が自主的な意思に基づいて表示を行ったと客観的に認められる場合
ステマ規制に該当しない場合
次のようなケースでは、ステマ規制に該当しません。
- 事業者が行っていることが明らかな表示は、所謂「広告」であることが明らかといえ、ステマ表示、ステルスマーケティング表示には該当しません。
- 表示者が商品等について、自らの意思に基づき評価している場合、それは一個人の感想を述べたものにすぎないため、所謂「広告」には該当せず、ステマ表示、ステルスマーケティング表示には該当しません。

最後に
自社で取り扱う商品は、多くの方に購入してもらいたいと思い広告に力を入れることは当然です。ステマ規制のルールを正しく認識し、違反しないようにしましょう。
当事務所では、広告のチェックも行っています。この広告を出して大丈夫?と不安がある事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。