業種や業態によっては営業許可以外の届け出や許可が必要になる場合があります。
本稿では、手続きも含めて営業許可以外の許可・届出について、飲食店を経営する会社の法務部出身の弁護士が解説します。

飲食店の許可・届出 ①設備関係(消防、防火対象物使用開始届、防火管理責任者)
設備について、新しく内装工事をする場合、消防関係の届出が必要です。これは、工事の前段階から手続きが必要になります。具体的には、内装工事の着工7日前までに防火対象物工事等計画届出書を、管轄の消防署に提出しなければなりません。また、スプリンクラーや火災報知機等の消防用設備に手を加える場合、消防用設備等設置届出書を届ける必要があります。これらについては専門的な知識が必要になるため、設計事務所や内装業者に代行してもらうのが一般的です。
最終的に工事が完成した段階で防火対象物使用開始届出書の提出が必要になります。この届出は、施設の使用の開始のために必要なものなので、内装工事の目途が立ったら早めに提出しましょう。なお、こちらの届出は、居抜きの施設を使用する場合にも同様に提出すべきです。
収容人員30名以上でかつ、300㎡以上の店舗では防火管理責任者を選任する必要があります。広さによって甲種と乙種があり、講習内容が異なります。ある程度大型の店舗を構えるのであれば注意が必要です。
飲食店の許可・届出 ②営業関係
飲食店と一口に言っても、業種によってさまざまな形態があり、別個の営業許可が必要な場合もあります。食品衛生法上、許可が必要な業種は、調理業として「飲食店営業」「調理機能を有する自動販売機営業」等、32種類が規定されています(食品衛生法55条1項、同施行令35条各号)。令和3年6月1日からは、許可だけでなく、「届出」制度が新設されています(同法57条1項)。
これらに加え、各自治体で規制がありますので、事前に管轄の保健所に相談するようにしてください。
また、居酒屋などの食事の提供がメインではない業態で、深夜(午前0時から午前6時まで)に種類を提供する場合には、深夜における種類提供飲食店営業開始届を管轄の公安委員会提出する必要があります。
更に、キャバクラ等接待を伴う飲食店等は風俗営業となり、別途許可が必要です。該当非該当の判断が難しい場合が多いので、管轄の警察署に相談してください。
飲食店の許可・届出 ③税務関係
まずは法務局に必要書類を提出し、法人を設立する必要があります。その後税務署に対し、設立から2か月以内に法人設立届出書を提出します。
自治体に対しては、都道府県だけでなく市町村に対しても法人設立届出書を提出する必要があります。
その他、青色申告承認申請書、給与支払い事務所等の開設届、源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書などの届出も必要です。
飲食店の許可・届出 ④労務関係
労務関係は従業員の就労実態等により必要となる手続きが異なります。最低限必要な手続きを記載します。
労働基準監督署に対して、労働保険の保険関係成立届と概算保険料申告書を、ハローワークに対して、雇用保険の適用事業所設置届と被保険者資格取得届を、年金事務所に対して、健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届をそれぞれ提出する必要があります。
おわりに
本稿では、飲食店の開業にあたって営業許可以外に必要な許可や届出について解説しました。書面作成等の手続きや、許可・届出の要否などわからないことがありましたら是非弊所の無料相談をご利用ください。