更新日:2026年3月5日 (木)
公開日:2024年10月15日 (火)
離婚後の共同親権はどう変わる?制度の概要とポイントを解説
サマリー
2024年5月に民法改正法が成立し、日本でも離婚後の共同親権が導入されることになりました。
離婚を検討している方やすでに離婚された方の中には、制度がいつから始まり、親権のあり方や子どもの養育にどのような影響があるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、離婚後の共同親権の基本的な仕組みや導入の背景、想定されるメリット・デメリット、既離婚者への影響などを分かりやすく解説します。
共同親権と単独親権の基本的な違い

親権とは、未成年の子どもを養育・保護し、その財産を管理するために父母に認められている包括的な権利と義務の総称です。
親権には大きく分けて「財産管理権」と「身上監護権」の2つの要素が含まれています。
| 区分 | 主な権利義務の内容 |
|---|---|
| 財産管理権 | ・子どもの財産を管理する権利義務 ・子どもの財産に関する法律行為を代理して行う権利義務 |
| 身上監護権 | ・子どもを実際に監護・教育する権利義務 ・子どもが住む居所を指定する権利義務 ・子どもの職業の許可・取消・制限を行う権利義務 ・身分行為(養子縁組等)の代理や同意を行う権利義務 |
婚姻中の原則となる共同親権の仕組み
子どもを持つ父母が婚姻関係にある間は、原則として父母双方が共同して親権を行使します。
子どもに代わって契約を結ぶなどの法律行為を行ったり、子ども自身の法律行為に同意を与えたりする場面では、父母双方が共同で行う必要があります。
共同親権者の一方が他方に無断で子どもの法律行為に同意した場合、他方の親権者はこれを取り消すことが可能です。
ただし、取引の相手方が無断で行われたことを知らない善意の第三者である場合には、相手方の保護を考慮して有効と扱われる規定が設けられています。
現行法における離婚後の単独親権
婚姻中とは異なり、現行の日本の民法では、離婚時に父母のいずれか一方のみを親権者として指定する「単独親権」の仕組みが採られています。
現行法の下では、離婚時に必ず父または母のどちらか一方を親権者として定めなければならず、離婚届にも親権者の記載が必要です。
単独親権のもとでは、親権者に指定された親が単独で子どもの財産管理や教育・進路に関する決定を行うことができます。
他方の親の同意を都度得る必要がないため、子どもの養育方針に関する意見の対立を回避し、速やかな決定が行えるという側面があります。
なお、婚姻中であっても親権者の一方が成年後見開始の審判を受けた場合や行方不明の場合など、一方に親権を行使できない事情があるときは、例外的に他方が単独で親権を行使することとされています。
離婚後の共同親権が導入される背景と施行時期
海外諸国における法制状況と法改正の背景
法務省が2020年に発表した海外法制調査によると、G20を含む調査対象24か国のうち22か国において、離婚後の共同親権制度が導入されていることが示されました。
調査対象国の中では、日本のように離婚後は単独親権のみに限定している国は少数にとどまっていました。
各国の制度運用は一様ではなく、原則として共同親権を基本とする国や、父母の協議によって単独親権を選択できる国など形態は様々です。
国際結婚や国際離婚が増加する中で、日本と諸外国との法制度の違いが指摘される場面も多く見られました。
国際的な子どもの連れ去り問題とハーグ条約
制度導入の議論が進んだ要因の一つとして、国際離婚に伴う子どもの連れ去りに関する問題が挙げられます。
日本は2014年にハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)を締結し、一方の親による国境を越えた無断連れ去りへの対応を進めてきました。
しかし、欧州議会などで返還手続きや面会交流の実効性について議論が交わされるなど、国外からも日本の親権制度や離婚後の養育環境に対する見直しを求める声が上がっていました。
こうした状況が、国内における法改正の議論を後押しした背景にあります。
改正民法の成立と2026年5月までの施行スケジュール
国内外での議論や法制審議会での検討を経て、共同親権の導入を含む民法などの改正法案は2024年4月に衆議院本会議、同年5月に参議院本会議でそれぞれ可決・成立しました。
改正民法は2024年5月24日に公布されており、公布日から2年以内に施行されることが定められています。
これにより、遅くとも2026年5月までには新制度が施行される見通しです。施行に向けて、家庭裁判所における運用の見直しや実務上のガイドラインの整備が進められています。
共同親権が選択可能になることで期待されるメリット
離婚後の共同親権が選択できるようになることで、これまでの単独親権制度において生じやすかったさまざまな問題の改善が期待されています。
離婚時における親権争いの回避
現行の法制度では、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する際、必ず父母のどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。
そのため、双方が親権を譲らない場合には協議が難航し、調停や裁判へ発展して解決までに長期間を要するケースがありました。
共同親権の選択肢が加わることで、親権の帰属をめぐる対立そのものを回避し、父母間の精神的な負担や子どもへの悪影響を抑えられる可能性があります。
父母双方が子育てに関わり続ける環境の確保
単独親権の場合、子どもと離れて暮らす親は日々の養育や教育に関与しにくくなり、親子関係が希薄になってしまう傾向が指摘されていました。
また、子どもと同居する側の親に過度な責任や負担が偏るという側面もあります。
共同親権を選択できれば、別居している親も子どもの重要な意思決定に関与し、離婚後も両親が協力して養育責任を分担する体制を維持しやすくなると考えられています。
面会交流の円滑化と連れ去りトラブルの抑止
別居親が「離婚によって子どもに二度と会えなくなるのではないか」という強い不安を抱くことが、面会交流をめぐる激しい対立や、強引な子どもの連れ去りトラブルにつながる一因となっていました。
双方が親権を維持できる安心感があれば、こうした不当な連れ去り等のトラブルを抑止し、面会交流の取り決めや実施がより前向きに進むことが期待されています。
養育費の継続的な支払いへの期待
養育費の支払義務は親権の有無とは無関係に生じるものですが、子どもとの交流が途絶えた結果、支払いの意欲を失ってしまうケースが少なくありませんでした。
共同親権によって別居親が継続して子どもの育成に関わり、親としての責任を実感し続けることで、養育費の未払い問題が改善に向かう契機になるのではないかと注目されています。
共同親権の導入に伴う懸念点や注意すべきデメリット

離婚後の共同親権には双方で養育に関われるメリットがある一方で、家庭状況によっては様々なリスクや課題が生じる可能性も指摘されています。
制度の導入にあたっては、どのような懸念点が存在するのかを把握しておくことが大切です。
DVやモラハラがある場合の安全面への影響
配偶者からのDV(身体的暴力)やモラルハラスメントが存在する場合、共同親権を選択することで相手方との関係を完全に断ち切ることが難しくなる点が挙げられます。
共同親権下では、子どもの教育や医療など重要事項の決定にあたって父母間での連絡や情報共有が必要となるため、離婚後も干渉や威圧が継続し、同居親や子どもの安全が脅かされるリスクが懸念されます。
DVや虐待のおそれがあるケースでは家庭裁判所が単独親権を命じる仕組みが設けられますが、家庭内の問題ゆえに被害の立証が困難な場合もあるため、実務上の慎重な対応が求められます。
離婚を成立させるための条件として悪用されるリスク
共同親権への同意が、離婚協議を円滑に進めるための駆け引きや条件として悪用される可能性も指摘されています。
離婚を急ぎたい配偶者に対して、相手方が「共同親権に同意しなければ離婚に応じない」と主張し、負担を避けるためにやむを得ず同意してしまうケースなどが想定されます。
親権の指定は子どもの利益を最優先に判断されるべき事柄であり、父母間の離婚条件の交渉材料として不適切に扱われないよう留意が必要です。
養育方針の対立による決定の遅延と子どもの心理的負担
離婚後も父母間の対立関係が解消されていない場合、進学先や習い事、医療行為などの重要事項において意見が対立し、物事がスムーズに決まらないおそれがあります。
迅速な判断が必要な場面で父母の合意が形成できないと、必要な支援や進路決定が遅れ、子ども自身に不利益が生じる可能性があります。
また、父母の対立が長期化することで子どもが双方の間に立たされて板挟みとなり、精神的なストレスや心理的負担を抱えてしまう点もデメリットとして懸念されています。
離婚後の共同親権に関するよくある疑問(Q&A)
Q. 改正法の施行前に離婚している場合でも、共同親権に変更できますか?
改正民法の施行前に単独親権で離婚が成立している場合であっても、施行後に家庭裁判所へ親権者変更の申立てを行うことで、共同親権へ変更できる可能性があります。
ただし、申立てを行えば一律に認められるわけではなく、家庭裁判所が子どもの利益(子の福祉)を考慮して判断することになります。
どのような要件や事情のもとで共同親権への変更が認められるかについては、今後の裁判所の実務運用の推移を注視する必要があります。
Q. 共同親権を選択した場合、再婚相手と子どもが養子縁組をするにはどうすればよいですか?
離婚後に共同親権となっている場合、子どもが15歳未満であれば、再婚相手との普通養子縁組には法定代理人である親権者双方の同意が原則として必要になります。
もし他方の親権者が養子縁組に同意しない場合であっても、縁組が子どもの利益のため特に必要と認められるときは、家庭裁判所に同意に代わる許可を請求することが可能です。
また、養子縁組の同意といった特定の事項について父母間で合意ができない場合に、家庭裁判所が一方の親による単独行使を許可する仕組みも定められています。
そのため、他方の承諾が得られないケースでは、家庭裁判所での手続きを通じて許可を求める形になると考えられます。
子どもの利益を最優先に考えた選択と弁護士への相談
離婚後の親権のあり方は、夫婦関係の清算だけでなく、子どもの将来の生活や福祉に直結する重要な問題です。
法改正により選択肢が増えるなかで、重視されるべき基準は「子どもの利益」となります。
父母間の協議が調わない場合の家庭裁判所の判断
離婚時に共同親権とするか単独親権とするかについて父母間で意見がまとまらない場合は、家庭裁判所が関与して判断を下すことになります。
家庭裁判所が親権者を指定する際には、子どもの利益が考慮されます。
共同親権を選択することで子どもの心身に悪影響が生じるおそれがある場合、例えば身体的・精神的な虐待が懸念されるようなケースなどでは、単独親権が命じられる仕組みとなっています。
形式的に共同親権か単独親権かを決めるのではなく、子どもが安定した環境で健やかに育つことができるかどうかが判断の基本となります。
個別事情に応じた判断と弁護士への相談
共同親権と単独親権にはそれぞれメリットとデメリットが存在し、どちらが適しているかは各家庭の置かれた状況やこれまでの養育環境によって大きく異なります。
夫婦間のコミュニケーションの状況、DVやモラハラの有無、子どもの年齢や生活実態など、個別の事情を客観的に整理した上で慎重に検討を進めることが求められます。
法改正を踏まえた手続きの流れや、ご自身の状況において子どもの利益をどのように守るべきか判断に迷う場合には、弁護士への法律相談を通じて法的な論点や選択肢を整理することも有益な選択肢となります。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。