更新日:2026年9月17日 (木)
公開日:2026年9月17日 (木)
養育費の未払いはどう解決する?回収方法と強制執行の手続きを弁護士が解説
サマリー
養育費の未払いに悩むひとり親家庭の実態を報じたニュースを踏まえ、養育費請求調停や強制執行など法的な回収方法を弁護士が解説します。
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物価高や光熱費の高騰が続く中、養育費の不払いによってひとり親家庭の生活が一層苦しくなっている実態が報じられています。
ひとり親世帯「夏休みはしのげたけれど…」節約だけではもう無理 「養育費を受け取れず」「相談先がない」シビアな現実
出典:AERA DIGITAL(Yahoo!ニュース)
2026年9月17日に配信されたこの記事では、東海地方に住む30代女性が、離婚後に元夫からの養育費の支払いが今年に入り止まり、パート収入だけでは生活が成り立たず、8月から生活保護を受給するに至った状況が伝えられています。子ども食堂やNPO法人の食料支援を頼りながら夏休みを乗り切ったものの、「日常の節約だけではどうがんばっても無理」という切実な声が紹介されました。本コラムでは、こうした養育費未払い問題に対して、法律上どのような回収手段があるのかを具体的に解説します。
養育費不払いの実態と、まず押さえるべき法的性質
厚生労働省の調査でも、養育費を「現在も受給している」ひとり親世帯は母子家庭で3割程度にとどまるとされ、今回報じられたケースのように、離婚時に取り決めをしていても支払いが途中で止まってしまう例は珍しくありません。
養育費は民法第877条に定める親族間の扶養義務、および民法第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め)を根拠とする、子の生活・教育を支えるための重要な権利です。
養育費は「もらえたらラッキー」な性質のものではなく、子どもが親から受け取る権利として法律上明確に位置づけられています。
離婚時に口約束だけで済ませてしまうと、後になって「言った・言わない」の水掛け論になりやすく、今回の女性のように支払いが止まった際に回収が難しくなります。まずは取り決めの内容を書面化していたかどうかが、その後の対応の分かれ目になります。
公正証書・調停調書がある場合の回収方法
離婚時に養育費の金額・支払期日を定めた公正証書(強制執行認諾文言付き)や、家庭裁判所の調停調書・審判書を取り交わしている場合は、支払いが滞った時点で、改めて裁判を起こさなくても強制執行の申立てが可能です。
具体的には、相手の給与や預貯金口座を差し押さえる「債権差押命令」の申立てを地方裁判所に対して行います。特に給与債権については、民事執行法第151条の2により、養育費などの扶養義務に基づく請求権は、通常の債権よりも広い範囲(原則として手取りの2分の1まで)を差し押さえることができる点が大きな特徴です。
公正証書や調停調書があれば、未払いが発生した時点で速やかに強制執行の準備に入ることができるため、離婚時にこれらの書面を残しておくことが極めて重要です。
取り決めがない・相手の勤務先や資産がわからない場合
口約束のみで養育費を定めていた場合や、そもそも離婚時に取り決めをしていなかった場合は、まず家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てる必要があります。調停で合意に至らなければ、審判手続に移行し、裁判所が養育費の金額を算定します。この際の算定基準としては、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」が実務上広く用いられています。
また、相手の勤務先や預貯金口座が分からず強制執行に踏み切れないケースも多く見られます。この点、2020年施行の改正民事執行法により、第三者からの情報取得手続(民事執行法第205条・第206条)が整備され、裁判所を通じて金融機関や市町村、日本年金機構等に対し、相手の預貯金口座や勤務先情報の開示を求めることができるようになりました。
「相手の居場所や勤務先が分からないから回収は諦めるしかない」という状況でも、裁判所の手続を通じて情報を取得できる可能性がある点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。
時効・立替払い制度など、知っておきたい注意点
養育費には時効の問題もあります。定期金として発生する養育費は、民法第169条により、確定した各期の支払分について5年間で時効消滅するとされています(調停・審判で確定した債権の場合)。未払いが続いている場合は、時効が完成する前に請求・差押えなどの措置を取ることが必要です。
なお、自治体によっては養育費の立替払い制度や、養育費保証サービスの利用料補助を行っているところもあります。今回の報道にあるような「相談先がない」という悩みに対しては、まず市区町村のひとり親家庭支援窓口や法テラス、弁護士への相談を通じて、利用できる制度や手続きの選択肢を整理することが解決への第一歩になります。
まとめ
養育費の不払いは、子どもの生活に直結する深刻な問題です。今回報じられたケースのように、パート収入だけでは生活が立ち行かず、貯金を切り崩し、最終的に生活保護に至るという状況は、決して他人事ではありません。
公正証書や調停調書を交わしていれば強制執行による回収が可能であり、取り決め自体がない場合でも養育費請求調停から始めることができます。相手の勤務先や資産が不明でも、第三者からの情報取得手続を活用できる可能性があります。
養育費の未払い、取り決めの方法、強制執行の手続きなどでお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。