更新日:2026年9月25日 (金)

公開日:2026年9月25日 (金)

共同親権と離婚|妻が知っておくべき新制度の影響と対応策を弁護士が解説

共同親権と離婚|妻が知っておくべき新制度の影響と対応策を弁護士が解説 共同親権と離婚|妻が知っておくべき新制度の影響と対応策を弁護士が解説

サマリー

共同親権制度の導入が離婚を検討する妻に与える影響を弁護士が解説。制度の仕組み、離婚協議での注意点、単独親権が認められるケースまで詳しく紹介します。

2026年5月に施行された改正民法により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できるようになりました。この制度変更は、これから離婚を検討する妻にとって大きな不安材料となっています。

「こんな法律できなければ」今すぐにでも離婚したい妻の前に立ち塞がる新制度「共同親権」【著者に聞く】
出典:Yahoo!ニュース

2026年9月18日に配信されたこの記事では、共同親権制度が「今すぐにでも離婚したい妻」の前に立ちはだかる新たなハードルとして紹介されています。本記事では、共同親権制度の法的な仕組みと、離婚を検討する妻が押さえておくべき対応策を、弁護士の視点から具体的に解説します。

共同親権制度とは何か

従来の日本の民法では、離婚後の親権は父母のいずれか一方のみが持つ「単独親権」が原則とされてきました(旧民法819条)。しかし2024年5月の民法改正により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できる制度が新設され、2026年5月から施行されています。

改正後の民法819条では、離婚の際に父母の協議により「共同親権」とするか「単独親権」とするかを定めることとされ、協議が調わない場合は家庭裁判所が離婚後の親権者を定めることになります。共同親権が選択されると、子の進学先や医療方針など重要な事項について、離婚後も元配偶者との合意形成が必要になる場面が生じます。これがDVやモラハラを理由に離婚を望む妻にとって、大きな心理的負担となっているのです。

単独親権が認められるケースと家庭裁判所の判断基準

共同親権制度が導入されたとはいえ、すべてのケースで共同親権が強制されるわけではありません。改正民法819条7項では、子の利益を害するとき、具体的には父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがあると認められるときは、単独親権としなければならないと定められています。

つまり、DV(配偶者からの暴力)やモラハラの実態があり、それを裏付ける証拠(診断書、警察への相談記録、録音データ、第三者の証言等)を提示できれば、家庭裁判所は単独親権を選択すべきと判断する可能性が高くなります。離婚を検討する妻としては、この立証資料を早期から収集・保管しておくことが極めて重要です。

また、父母間で共同での意思決定が現実的に困難な場合(連絡が取れない、話し合いが恒常的に決裂する等)も、子の利益を害するおそれがあると判断される要素になり得ます。家庭裁判所は、父母の関係性、子の年齢や意向、これまでの監護状況などを総合的に考慮して判断します。

離婚協議・調停における実務上の注意点

共同親権制度の下では、離婚協議書や調停調書の中で「共同親権」か「単独親権」か、共同親権とする場合はどの事項を父母双方の合意事項とし、どの事項を監護者(主に子を養育する親)の単独判断に委ねるかを、明確に取り決めておく必要があります。

特に重要なのは「監護者の指定」です。民法824条の2では、共同親権であっても子の日常的な監護・教育に関する事項は、原則として監護者が単独で決定できるとされています。共同親権になったからといって、日々の生活における細かな決定にまで元配偶者の同意が必要になるわけではない点は、正しく理解しておくべきです。

一方で、進学先の決定、転居、重大な医療行為への同意など「子の人生に重大な影響を与える事項」については、共同親権の場合、父母双方の合意が原則として必要になります。合意ができない場合は、家庭裁判所への申立てにより裁判所が判断することになりますが、その分、手続きに時間と費用がかかる点は留意が必要です。

離婚協議の段階では、養育費や面会交流の取り決めに加えて、こうした「共同で決めるべき事項の範囲」まで具体的に書面化しておくことで、離婚後のトラブルを未然に防ぐことができます。

DV・モラハラ被害を受けている妻が今すぐできること

共同親権制度の施行により、これから離婚を検討する妻の中には「相手と縁が切れないのではないか」という不安を抱く方が増えています。しかし、前述のとおり、暴力や心身への有害な影響を及ぼす言動があった事実を証拠化できれば、単独親権を主張する法的根拠になります。

具体的には、配偶者暴力防止法(DV防止法)に基づく保護命令の申立てや、警察・配偶者暴力相談支援センターへの相談記録は、離婚調停・訴訟において有力な証拠となります。離婚を決意した時点で、暴力・暴言の記録を日付入りで残しておくことが、後の親権争いを有利に進める鍵となります。

また、財産分与(民法768条)、婚姻費用分担請求(民法760条)、養育費(民法766条)についても、共同親権の有無にかかわらず権利として請求できることに変わりはありません。共同親権制度への不安から離婚をためらう必要はなく、まずは自身の状況を専門家に相談し、見通しを立てることが大切です。

まとめ

共同親権制度の導入は、離婚後の子の養育のあり方を大きく変える改正ですが、DVやモラハラなど子の利益を害するおそれがある場合には、従来どおり単独親権が選択される道が法律上明確に用意されています。制度の仕組みを正しく理解し、必要な証拠を早期に確保することが、離婚を有利に進めるための第一歩です。

共同親権制度への不安から離婚に踏み切れない、あるいは離婚協議・調停での親権の取り決め方でお困りの場合は、弁護士法人ネクスパート法律事務所までご相談ください。

コラム監修者

RUI SATO

RUI SATO

所属:代表(東京オフィス)

明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。

弁護士詳細を見る

関連記事を見る

養育費の未払いはどう解決する?回収方法と強制執行の手続きを弁護士が解説

2026.09.17

養育費

養育費の未払いはどう解決する?回収方法と強制執行の手続きを弁護士が解説

女性の離婚でお金と子どもの知識を解説

2024.08.30

離婚準備

女性の離婚でお金と子どもの知識を解説

妻の不倫で離婚したら親権はどうなる?判断基準や手続きを解説

2026.04.21

親権・面会交流

妻の不倫で離婚したら親権はどうなる?判断基準や手続きを解説

配偶者の借金を理由に離婚できる?借金の扱いと手続きを解説

2024.11.27

離婚原因

配偶者の借金を理由に離婚できる?借金の扱いと手続きを解説

熟年離婚とは?特徴やメリット・デメリット、注意点を解説

2022.05.03

熟年離婚

熟年離婚とは?特徴やメリット・デメリット、注意点を解説

PREV
NEXT