更新日:2026年3月5日 (木)
公開日:2024年10月8日 (火)
内縁関係を解消する際も財産分与を請求できる?手続きや証拠を解説
サマリー
婚姻届を提出していない内縁(事実婚)関係を解消する際、共同で築いた財産の清算や財産分与ができるのか不安に感じる方も少なくありません。婚姻届を出していなくても、一定の要件を満たす内縁関係であれば、法律婚と同様に財産分与を請求できる場合があります。ただし、請求にあたっては内縁関係の成立を証明する資料の準備や、期限内に手続きを進めることが重要です。この記事では、内縁関係解消に伴う財産分与請求の可否や必要となる証拠、具体的な手続きの流れについて解説します。
内縁関係を解消する際も財産分与は請求できるか
婚姻届を提出していない内縁(事実婚)関係であっても、関係を解消する際には法律婚の離婚時と同様に財産分与を請求することが可能です。
内縁関係は、法的には「婚姻に準ずる関係(準婚関係)」として扱われます。そのため、婚姻届の有無にかかわらず、共同生活の中で協力して築いた財産については、民法の財産分与に関する規定が類推適用されると考えられています。
婚姻に準ずる関係としての保護と財産清算
内縁関係にある男女が共同生活を営むなかで形成された財産は、実質的な共有財産とみなされます。名義が一方のものであっても、同居期間中に双方の協力によって得られたものであれば、清算の対象となります。
関係を解消する際には、一方が他方に対してその共有財産の分与を求める権利が認められており、籍を入れていないことのみを理由に清算が否定されるわけではありません。
財産分与における割合の原則
財産分与における分け方の割合は、法律婚の離婚時と同じく、原則として「2分の1ずつ」とされています。これは、夫婦それぞれの貢献度が基本的に同等であると評価されるためです。
たとえば、一方が主たる収入を得ており、他方が家事や生活のサポートを中心に行っていた場合であっても、内助の功による協力関係があったとみなされ、原則として2分の1の割合が適用される傾向にあります。
ただし、当事者間の合意がある場合や、特殊な技能や努力によって多額の財産が形成されたような個別の事情がある場合には、異なる割合で分与が行われることもあります。
内縁関係の成立を証明するための主な証拠
内縁関係の解消に伴って財産分与を請求する際、相手方が「単なる同棲だった」などと主張して内縁関係の存在自体を否定することがあります。そのような場合には、当事者間に内縁関係が成立していたことを客観的な証拠によって示す必要があります。
内縁関係の成立に求められる2つの要件
法律婚と同様の保護を受ける内縁関係として認められるためには、主に2つの要件を満たしていることが必要とされています。1つ目は「双方に婚姻の意思があったこと」、2つ目は「夫婦同然の共同生活を送っていた実態があること」です。
単に同居しているだけでは内縁関係とはみなされにくいため、お互いが夫婦としての自覚を持ち、共同して生活を営んでいた事実を裏付ける資料を揃えることが大切です。
内縁関係を裏付ける主な客観的資料
内縁関係の存在を示す客観的な資料としては、公的書類や生活実態を示す契約関係、親族・周囲との関わりを示す記録などが挙げられます。具体的には以下のような資料が証拠として活用される傾向にあります。
| 資料の種類 | 具体的な記載内容や確認ポイント |
|---|---|
| 住民票 | 世帯を同一にしており、続柄欄に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されているもの |
| 健康保険証 | 内縁相手の健康保険において、法律上の条件を満たして被扶養者として登録されているもの |
| 賃貸借契約書・給与明細 | 同居先の契約書に「内縁の妻(夫)」等の記載があるものや、会社の扶養手当等の申請記録 |
| 親族との写真・案内状 | お互いの親族へ夫婦として紹介され、冠婚葬祭に揃って参列した事実がわかる写真や連絡履歴 |
| 結婚式・指輪等の記録 | 結婚式や披露宴の挙式写真、招待状、結婚指輪の購入履歴など婚姻意思を示す資料 |
これらの資料が単独で決定打とならない場合でも、複数の証拠を組み合わせることで共同生活や婚姻意思の実態を立証しやすくなります。
相手方から関係性を争われた際に備え、同居期間中の客観的な記録や書類をできる限り多く確保しておくことが重要です。
内縁相手へ財産分与を請求する具体的な流れと手続き
内縁関係を解消する際の財産分与は、法律婚の離婚時と同様に、まずは当事者同士の話し合いから始めることが一般的です。話し合いで合意が得られない場合には、家庭裁判所の手続きを利用して解決を図ることになります。
当事者同士の話し合い
まずは元パートナーと直接話し合いを行い、財産分与の対象となる財産の範囲や分け方を協議します。当事者双方の合意があれば、法律婚の原則である2分の1の割合に縛られることなく、柔軟な条件で財産を分配することが可能です。
例えば、関係解消に至った経緯や各自の貢献度、今後の生活状況などを考慮し、一方がより多くの財産を取得するような取り決めを行うことも認められます。後々のトラブルを防ぐため、合意した内容は書面に残しておくことが望ましいといえます。
家庭裁判所の調停・審判手続き
話し合いがまとまらない場合や相手が協議に応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。内縁関係の解消に伴う問題については、内縁関係調整調停などの手続きを利用して、調停委員を介した話し合いを進めます。
- 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所へ調停の申立てを行う
- 家庭裁判所から指定された期日の呼出状が双方に届く
- 調停期日に出席し、調停委員を交えて財産分与などの条件を協議する(複数回実施される場合あり)
- 双方が合意に至れば調停調書が作成されて調停成立となり、合意できなければ調停不成立で終了する
調停が不成立となった場合、家庭裁判所が内縁関係の解消について調停に代わる審判を行うことがあります。ただし、この審判に対して2週間以内に異議が申し立てられると効力が失われるため、財産分与について争いがある場合は、別途財産分与調停や審判手続きによって解決を目指すことになります。
財産分与請求の期限
内縁関係解消に伴う財産分与を請求できる期間には法律上の制限が設けられています。民法の規定に準じ、内縁関係を解消した時から2年以内に請求を行わなければなりません。
関係解消から2年が経過すると、原則として家庭裁判所への財産分与請求の申立てができなくなるため、期限に留意して早めに手続きを進める必要があります。
内縁相手が死亡して関係が解消された場合の注意点
当事者双方の合意や離別によって内縁関係を解消する場合とは異なり、内縁の相手方が死亡したことによって関係が終了した場合には、財産分与の請求を行うことは認められていません。
財産分与は、民法上の離婚の規定に準じて扱われる制度であり、生存している当事者間において、共同生活の中で協力して形成・蓄積した財産を清算することを前提としているためです。
内縁の配偶者には法定相続権が認められない
法律上の婚姻関係にある夫婦であれば、配偶者が死亡した際に常に法定相続人となり、遺産を承継する権利が保障されます。
しかし、婚姻届を提出していない内縁の配偶者には、法律上の相続権が認められていません。そのため、相手方が亡くなった場合の財産は、原則として子や親、兄弟姉妹などの法定相続人が受け継ぐことになります。
内縁相手の死亡による関係解消では、財産分与の請求権も法定相続権も認められない点に注意が必要です。
生前における遺言書作成などの対策の重要性
内縁のパートナーに対して自己の財産を残したいと考える場合には、生前の段階で遺言書を作成しておくなど、事前の対策を講じておくことが重要となります。
遺言によって財産を遺贈する旨を指定しておけば、法定相続人ではない内縁の配偶者であっても、指定された財産を受け取ることが可能になります。
ただし、亡くなった方に子や父母などの法定相続人がいる場合、一定の範囲で遺留分(民法で保障された最低限の遺産取得割合)が認められています。遺留分を侵害するような内容になっていると、死後に相続人との間で紛争に発展する恐れがあるため、慎重な検討が求められます。
内縁関係解消に伴う財産分与に関する弁護士への相談
内縁関係の解消に伴う財産分与では、法律婚とは異なり、まず「内縁関係が法的に成立していたかどうか」が争点になることが少なくありません。相手方が同居の実態や婚姻の意思を否定している場合、当事者同士の話し合いだけでは議論が平行線をたどる傾向があります。
また、共同生活の中で築いた財産の全容が不明であったり、相手方が財産の開示を拒否したりする場合も、適切な財産分与の合意に至るのは容易ではありません。このような状況において、弁護士へ相談することは法的な観点から権利関係を整理する上で有益です。
証拠の精査と冷静な交渉に向けたサポート
内縁関係の成立を立証するためには、住民票や賃貸借契約書、家計の負担状況を示す資料など、多角的な客観的証拠の収集と精査が求められます。どのような資料が裁判実務上有効であるかを把握し、適切に準備を進めることが重要です。
さらに、当事者間で直接話し合うと感情的な対立が生じやすい場面でも、弁護士が代理人として法的な根拠に基づいた交渉を行うことで、冷静かつ実質的な話し合いを進めやすくなります。
期間制限を見据えた迅速な対応の重要性
内縁関係解消による財産分与請求権には、解消時から2年という時間的な制限が存在します。話し合いが難航して2年の期間が経過すると、家庭裁判所を通じた請求も含めて権利行使が難しくなるおそれがあります。
期間制限による権利の消滅を防ぎ適切な清算を行うためにも、関係解消後は早期に手続きの流れを把握し、必要に応じて調停申立てなどの法的手続きを視野に入れることが重要となります。
内縁関係の解消や財産分与に関して疑問や争いがある場合は、早い段階で法律の専門家に相談し、法的な見通しや今後の進め方を整理することが望まれます。
まとめ
内縁(事実婚)関係であっても、共同生活を送る中で築いた共有財産については、関係解消時に法律婚と同様の財産分与を請求することが可能です。原則として2分の1の割合で清算が行われますが、相手方が関係性を否定する場合には、婚姻意思や共同生活の実態を示す客観的な証拠が必要となります。
また、財産分与の請求には関係解消から2年という期限があり、相手方が死亡した場合には財産分与や法定相続権が認められないといった注意点もあります。手続きや交渉に不安がある場合は、早めに弁護士などの専門家に相談しながら進めるとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。