更新日:2026年9月14日 (月)
公開日:2026年4月21日 (火)
妻の不倫で離婚したら親権はどうなる?判断基準や手続きを解説
サマリー
妻の不倫が発覚して離婚を考える際、「不倫をした配偶者に親権が渡ることはあるのか」「父親である自分が親権を持つことはできるのか」と不安や疑問を抱く方は少なくありません。法律上、夫婦間の有責行為と子どもの親権者としての適性は区別して判断されるのが一般的です。この記事では、妻の不倫が親権の判断に与える影響や、親権者を決める際の手続きと考慮される基準、父親側が親権を希望する場合に押さえておきたいポイントについて詳しく解説します。
妻の不倫が理由の離婚でも親権が妻になる可能性はあるか
妻の不倫が原因で離婚に至る場合であっても、子どもの親権が妻側に認められる可能性は十分にあります。配偶者の不貞行為によって婚姻関係が破綻した場合、不倫をした側は有責配偶者となり、慰謝料請求などの民事上の責任を負うことになります。
しかし、法律上、夫婦関係の破綻に関する責任と、子どもの親権者としての適性は原則として区別して判断されます。
夫婦間の問題と親権判断が区別される理由
親権者を指定する際に重視されるのは、「子どもの利益と健全な育成(子の福祉)」です。配偶者に対して不誠実な行為をしたことと、親として子どもに適切な愛情を注ぎ養育できるかどうかは、法的には別の問題として扱われます。
そのため、日常的な子育ての大部分を妻が担っており、母子の愛着関係が良好に形成されているようなケースでは、不倫の事実があったとしても、環境の継続性などを理由に妻が親権者として指定されることがあります。
不倫が親権判断に影響を与える例外的なケース
ただし、不倫が親権の判断にまったく影響しないわけではありません。不倫行為に伴って子どもの養育状況に直接的な悪影響が生じている場合は、親権者としての適性を欠くと判断される要因になります。
例えば、不倫相手と会うために子どもを自宅に長時間放置するような育児放棄(ネグレクト)があった場合や、子どもの目の前で不適切な行動をとるなどして精神的な負担を与えていた場合などが該当します。
このように、不倫という行為そのものに対する道義的・法的な非難と、それが子どもの監護状況に与えた具体的な影響とを見極めたうえで、親権の適性が総合的に判断されます。
親権者を決めるための3つのステップと手続きの流れ

離婚時に子どもの親権者を定める手続きは、原則として夫婦間の話し合いから始まり、合意が得られない場合に家庭裁判所の手続きへと移行します。具体的には、協議、調停、訴訟の3段階で進められます。
1. 協議(夫婦間の話し合い)
協議離婚では、夫婦双方が話し合いを行い、合意によってどちらか一方を親権者と定めます。法律上、双方が納得していれば自由に親権者を決定でき、離婚届に親権者を記載して提出します。
しかし、双方が親権を希望して譲らない場合や、不倫問題による感情的な対立が深く冷静な話し合いが難しい場合には、当事者間だけで合意をまとめることは困難になります。
2. 調停(家庭裁判所での話し合いと調査官調査)
夫婦間の協議で合意できない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、中立的な立場である調停委員が双方の言い分や希望を聞き取り、合意に向けた調整を行います。
親権争いがある事案では、家庭裁判所調査官(心理学や教育学等の知見を有する職員)による養育状況の調査が行われるケースがあります。調査官は親との面談、自宅訪問による生活環境の確認、学校関係者へのヒアリング、子ども本人との面談などを実施します。
調停で作成された調査官の調査報告書は、その後の手続きにおいても子どもの養育状況を示す重要な資料となります。
3. 訴訟(裁判所による判決)
調停でも親権について双方が合意できず不成立となった場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。裁判では、双方が提出した主張や証拠を踏まえ、裁判官が判決として親権者を指定します。
裁判においては、配偶者の不倫を理由に「親権者として不適切である」との主張がなされる場面もあります。ただし、裁判官は不倫の有無のみをもって判断するのではなく、どちらの親に育てられることが子どもの利益にかなうかという観点から総合的に判断します。
親権者を定める際に考慮される主な判断基準
親権者をどちらにするか判断する際には、夫婦どちらの主張が通るかではなく、「子どもの利益や福祉にとってどちらと暮らすのが望ましいか」という視点から、多角的な要素が総合的に検討されます。
判断にあたっては、監護実績や生活環境、子どもの意思など複数の要素が総合的に考慮されます。
これまでの主たる監護状況
これまでにどちらの親が主に子どもの世話を行ってきたかという監護実績は、重要な判断材料の一つです。日々の食事の用意や入浴、学校や保育園の送り迎え、体調不良時の看病など、実際の関わり度合いが確認されます。
子どもとの日常的な関わりを継続してきた親との関係は重視されやすく、これまでの安定した生活環境を大きく変えないことが子どもの負担を減らすと考えられています。
子どもの意思と年齢
子ども自身の気持ちや希望も考慮されます。特に子どもが一定の年齢に達して自分の考えを明確に表現できる場合、どちらの親と暮らしたいかという意思が尊重される傾向にあります。
年齢が低いうちは意思の確認が難しい場合もありますが、調査官との面談などを通じて、子どもが親に対して抱いている感情や関係性が丁寧に観察されます。
離婚後の養育環境と監護体制
離婚後にどのような生活環境で子どもを育てていくかという具体的な計画も問われます。仕事と子育てを両立できるスケジュールか、子どもが一人で長時間過ごすような状況にならないかなどが検討されます。
親が仕事や急用で対応できない場合に、実家の両親や親族などからサポートを受けられる体制が整っているかどうかも、安定した養育環境を評価するポイントとなります。
親の心身の健康状態と生活基盤
子どもを継続して養育できる心身の健康状態にあるかどうかも確認されます。育児を適切に行うことが困難なほどの重い疾患や精神的な不調を抱えている場合は、慎重に判断されることがあります。
あわせて、住居の確保や日々の生活を維持できるだけの経済的基盤があるかどうかも見られます。ただし、経済力に差があっても養育費の分担によって補える部分があるため、収入の多さだけで親権者が決定されるわけではありません。
父親側が親権を希望する場合に意識したいポイント
妻の不倫を契機に離婚を決意し、父親側が子どもの親権を希望する場合、感情的な主張にとどまらず、子どもにとって適切な養育環境を提供できることを具体的に示す必要があります。
日常的なコミュニケーションと養育実績の積み重ね
親権の判断においては、子どもとの情緒的な結びつきやこれまでの関わりが重視されます。普段から積極的に子どもと会話し、学校生活の様子や友人関係、興味・関心などを把握しておくことが大切です。
休日に一緒に過ごすだけでなく、日常的な食事の準備や身の回りの世話など、日頃から育児に深く関わってきた実績を積み重ねておくことが重要視されます。
周囲のサポートを含めた養育環境の整備
仕事に従事しながら単独で子育てを行う場合、残業や出張時などの緊急対応について裁判所から確認されることがあります。そのため、離婚後も安定した生活が送れるよう支援体制を整えておくことが求められます。
具体的には、実家の両親や兄弟姉妹からの協力が得られるか、あるいは民間のベビーシッターや地域のファミリーサポートなどを活用できるかなど、現実的な監護補助体制を具体化しておくことが役立ちます。
面会交流に対する前向きかつ柔軟な姿勢
不倫をした配偶者に対して強い憤りを抱くことは自然な心情ですが、子どもにとっては別居後も母親であることに変わりはありません。
子どもがもう一方の親とも健全な関係を維持できるよう、面会交流の実施に寛容かつ柔軟な姿勢を示すことは、監護親としての適性を評価する上で重要な要素となります。
親権争いや離婚条件について弁護士へ相談する意義
配偶者の不倫が発覚した後の離婚協議では、感情的な対立が生じやすく、親権をはじめとする諸条件の話し合いが難航することが珍しくありません。当事者間だけで交渉を進めようとすると、双方が感情的になり、建設的な対話が難しくなるケースも見られます。
個別の状況に応じた法的な見通しの整理
親権の判断においては、これまでの監護実績や離婚後の養育体制など、多角的な事情が総合的に考慮されます。弁護士に相談することで、それぞれの家庭状況に応じた法的な見通しや留意点を客観的に把握しやすくなります。
自身の状況においてどのような点が評価され、どのような点に配慮が必要となるのかをあらかじめ把握しておくことは、今後の協議や手続きを落ち着いて進めるための指標となります。
調停や訴訟手続きにおける主張・立証のサポート
話し合いがまとまらず調停や裁判へと進んだ場合、家庭裁判所や調査官に対して自身の監護実績や生活環境を的確に伝える必要があります。弁護士の助言を得ることで、主張を裏付ける客観的な証拠の収集や、説得力のある書面の作成が進めやすくなります。
また、法的な手続きを代理人に任せることで、相手方との直接の接触による心理的負担を軽減し、冷静に対処しやすくなるという側面もあります。
離婚条件全体の総合的な調整
離婚にあたっては、親権の帰属だけでなく、養育費の金額や支払期間、面会交流の実施要領、財産分与、慰謝料など、取り決めるべき事項が多岐にわたります。これらを切り離さず全体としてバランスの取れた合意を目指す上でも、法的な観点からの整理が役立ちます。
子どもの将来の安定と納得のいく解決を目指すためにも、疑問や不安がある場合は早期に弁護士へ相談し、今後の進め方を検討することが選択肢の一つとなります。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。