更新日:2025年5月28日 (水)
公開日:2021年12月27日 (月)
離婚時に財産分与をしない方法とは|財産分与は拒否できる?
サマリー
離婚の話し合いを進めるなかで、「相手に財産を渡したくない」「相手から財産分与を拒否されて困っている」と悩む方もいるのではないでしょうか。
財産分与は夫婦が協力して築いた財産を清算する手続きですが、状況や合意内容によっては分与を行わない、あるいは法的に請求を拒否できるケースも存在します。
この記事では、離婚時に財産分与をしない合意ができる場面や請求を拒否できる法的な要件、共有財産における基本的なルールについて分かりやすく解説します。
離婚時に財産分与をしないことは可能か

離婚の際には養育費や親権、面会交流などさまざまな取り決めが必要となりますが、金銭面で特に問題になりやすいのが財産分与です。
夫婦で築いてきた財産の清算は感情的な対立を生みやすいため、慎重な話し合いが求められます。
結論として、財産分与は法律によって強制的に二分されるものではなく、当事者間の合意があれば行わないことも可能です。
双方が合意していれば財産分与を行わないこともできる
財産分与は民法上の権利として認められていますが、夫婦双方が納得したうえで「財産分与を行わない」と取り決めることは法的に有効とされています。
たとえば、離婚を早期に成立させることを優先したい場合や、双方がそれぞれ自身の名義の財産のみを保持して清算を望まない場合などは、あえて財産分与を行わずに合意に至るケースがあります。
夫婦共有の財産が存在しない場合
財産分与はあくまで婚姻期間中に夫婦の協力によって形成された「共有財産」を分け合う手続きです。
そのため、そもそも夫婦で築いた預貯金や不動産などの共有財産が存在しない場合は、清算すべき対象がないため財産分与は発生しません。
婚姻期間が非常に短いケースや、各自の収入を完全に別管理にしていて共有名義の資産や共同の貯蓄がないような場合には、結果として財産分与を行わずに離婚の手続きを進めることになります。
請求権を放棄して離婚を急ぐケース
相手方との金銭的なやり取りを長引かせたくない、あるいは一刻も早く離婚届を提出して新しい生活を始めたいといった理由から、財産分与請求権を放棄する選択がなされることもあります。
双方が納得して財産分与をしないと合意すること自体は可能ですが、一度成立した合意を後から覆すことは難しいため、権利を放棄する際は慎重に判断することが重要です。
財産分与の請求を法的に拒否できる主なケース
相手から財産分与を求められた場合でも、法律上の要件を満たしていない財産や期間を経過した請求については、分与を拒否できる正当な理由が存在します。
婚姻前からの財産や相続・贈与による「特有財産」
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた共有財産に限られます。
そのため、結婚前から各自が所有していた預貯金や不動産、株式などは「特有財産」とみなされ、原則として分与の対象になりません。
また、婚姻中であっても自身の親族から相続や贈与によって取得した財産も特有財産として扱われます。
相手方からこれらの分与を求められた場合は、通帳の取引履歴や保険の加入日、不動産の取得時期が分かる書類などを揃え、特有財産であることを明確に立証して拒否を主張します。
離婚成立から2年の除斥期間を経過している場合
民法上、財産分与の請求には離婚成立から2年という期限(除斥期間)が設けられています。
この期間を経過すると法的な請求権が消滅するため、以降に請求を受けた場合は原則として拒否することが可能です。
除斥期間がいつから起算されるかは、離婚の成立形態によって以下のように異なります。
| 離婚の成立方法 | 除斥期間の起算日 |
|---|---|
| 協議離婚 | 離婚届が役所に受理された日 |
| 調停離婚 | 離婚調停が成立した日 |
| 審判離婚 | 離婚審判が確定した日 |
| 裁判離婚(和解) | 和解が成立した日 |
| 裁判離婚(判決) | 離婚判決が確定した日 |
離婚時に財産分与の取り決めをしなかった場合でも、起算日から2年以内であれば相手方から請求される可能性がありますが、2年を経過していれば法的な請求に応じる義務はありません。
法人名義(会社の財産)である場合
配偶者が会社経営者である場合、事業用資産や会社名義の不動産・預貯金などが分与の対象になるかが問題となることがあります。
法人名義の財産は法律上会社に帰属するものであり、個人の財産ではないため、原則として財産分与の請求を拒否できます。
ただし、個人経営に近い小規模な会社で、個人資産と法人資産が混同されているような実態がある場合には、実質的な夫婦の共有財産として分与の対象に含まれると主張されるケースもあります。
夫婦共有財産に対する請求は原則として拒否できない
民法上の財産分与請求権と「2分の1ルール」
夫婦が婚姻中に協力して築いた財産が存在する場合、相手方からの財産分与の請求を正当な理由なく一方的に拒否することは原則としてできません。
民法第768条第1項には財産分与請求権が明文で規定されており、離婚に伴う清算として法律上認められた正当な権利とされています。
婚姻生活の中で形成された預貯金や不動産、有価証券などは、どちらか一方の名義であっても実質的な「夫婦共有財産」として扱われます。
実務上は、それぞれの貢献度を同等と評価し、原則として財産を均等に分ける「2分の1ルール」に基づいて清算が行われることが一般的です。
感情的な対立や就労状況を理由にした拒否は認められない
離婚協議において感情的な対立が生じ、「相手に財産を渡したくない」「関係が悪化したから払わない」といった主張がなされるケースも見受けられます。
しかし、個人的な心情や悪感情のみを理由として財産分与の請求を拒むことは、法的な観点からは認められません。
また、専業主婦(主夫)などで直接的な収入を得ていなかったことを理由に、財産分与を拒否しようとする事例もあります。
しかし、家事や育児などの家庭内労働は外で働く配偶者の収入獲得を支える重要な貢献と評価されるため、無収入であったことのみを理由に分与を拒否することは基本的に困難です。
有責配偶者(浮気や浪費など離婚の原因を作った側)からの請求であっても、清算的な財産分与請求権そのものが失われるわけではありません。
特有財産への該当性や除斥期間の経過などの正当な拒否事由がない限り、共有財産の分与には応じる必要がある点に留意しましょう。
財産分与の減額や清算方法を調整する際のポイント
財産分与の話し合いにおいて、分与額の減額や分与を行わない形での解決を検討する際には、負債の清算方法や他の離婚条件との総合的な調整がポイントとなります。
住宅ローンなどの負債(マイナスの財産)がある場合の清算
財産分与は預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、婚姻生活の中で生じた負債(マイナスの財産)も考慮して清算を行うのが一般的です。
特に問題となりやすいのが住宅ローンです。
住宅ローンの残債が不動産の評価額を上回っている「オーバーローン」の状態では、夫婦全体の共有財産を合算したときにマイナスとなる場合があります。
この場合、不動産を売却して清算するか、一方が住み続けてローンを返済する代わりに他の財産分与を行わないなど、柔軟な清算方法が検討されます。
負債総額が資産総額を上回っている場合には、実質的に金銭を分与する余力がなく、財産分与を行わない形で合意に至るケースもあります。
他の離婚条件との兼ね合いによる請求権の放棄
財産分与の支払いを抑えたい、あるいは分与を免除してほしい場合、養育費や親権、慰謝料などの他の条件と組み合わせて交渉することがあります。
例えば、相手方の希望する親権や養育費の条件を受け入れる代わりに、財産分与請求権を放棄してもらうといった調整です。
双方が納得して合意を形成できれば、過度な経済的負担を回避しつつ、早期に離婚を成立させる現実的な着地点を見出せる可能性があります。
合意内容を公正証書にしておく重要性
財産分与を行わないことや請求権を放棄することについて合意が成立した場合は、その内容を「離婚協議書」に明記しておく必要があります。
口頭の約束だけでは、離婚後に「やはり除斥期間内なので請求したい」と蒸し返されるリスクが残るためです。
後日のトラブルを防止するためには、公証役場で「公正証書」を作成し、双方が財産分与請求権を放棄したことや、互いにこれ以上金銭的な請求を行わない旨の清算条項を盛り込んでおくことが大切です。
財産分与の話し合いが難航した場合の対応と弁護士への相談

財産分与をめぐる話し合いは、金額や清算方法に関する利害が直接対立しやすいため、当事者同士の協議だけでは合意に至らないケースも珍しくありません。
一方が感情的になって分与を頑なに拒否したり、お互いの主張が平行線をたどったりしている場合には、家庭裁判所の手続きを利用することが有効な選択肢となります。
家庭裁判所の調停手続きの活用
当事者間での直接交渉が難しい場合は、家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てる方法が一般的です。
既に離婚が成立している場合であれば、財産分与請求調停を申し立てることも可能です。
調停手続きでは、中立な立場である調停委員が双方の主張や事情を個別に聞き取ったうえで、解決に向けた調整を行います。
直接顔を合わせずに話し合いを進められるため、感情的な衝突を抑え、客観的な資料に基づいた冷静な協議が期待できます。
調停でも合意が成立しない場合には調停不成立(不調)となり、審判手続きや裁判手続きへと移行して、裁判官による判断を仰ぐことになります。
財産の調査や法的主張の整理における弁護士への相談
財産分与の手続きを適切に進めるためには、夫婦共有の財産だけでなく、特有財産の範囲や住宅ローンなどの負債状況を正確に把握し、裏付けとなる資料を揃える必要があります。
相手方が財産を開示しない場合や、法的な根拠が不明瞭なまま高額な請求・拒否を行っている場合には、どのような証拠を収集し、どのような主張を組み立てるべきかの判断が難しくなりがちです。
弁護士に相談することで、個別の状況に応じた法的な論点や適正な分与額の見通しを整理し、交渉や調停の手続きをスムーズに進めるための助言を受けることができます。
財産分与に関する話し合いが難航している場合や、今後の手続きに不安がある場合は、早い段階で法律の専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。