更新日:2026年3月5日 (木)
公開日:2024年11月20日 (水)
内縁関係を一方的に解消されたら慰謝料を請求できる?法的要件を解説
サマリー
事実婚や内縁関係のパートナーから突然別れを告げられ、一方的な関係解消に納得がいかず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。婚姻届を提出していない内縁関係であっても、正当な理由のない一方的な関係解消は「不当破棄」として、不法行為に基づく慰謝料請求が認められるケースがあります。ただし、請求を認めてもらうためには内縁関係の成立や破棄の不当性を客観的に立証しなければなりません。この記事では、内縁関係を一方的に解消された場合に慰謝料を請求するための要件や証拠、裁判例、相場の目安について分かりやすく解説します。
内縁関係を一方的に解消された場合の慰謝料請求の考え方
正当な理由のない内縁解消は「不当破棄」となる
内縁関係(事実婚)は、婚姻届を提出していないものの、実質的には法律婚の夫婦と同等の共同生活を営んでいる男女関係を指します。法的には婚姻に準ずる関係として扱われ、一定の法的保護が与えられます。
そのため、当事者の一方が正当な理由もないのに一方的に関係を解消することは「内縁の不当破棄」と評価されます。
内縁関係を正当な理由なく一方的に破棄された場合、破棄された側は相手方に対して不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を請求できる可能性があります。
内縁解消における「正当事由」の判断基準
内縁解消に「正当な事由」があったといえるかどうかは、法律婚における裁判上の離婚原因(法定離婚事由)に準じて判断されるのが一般的です。
例えば、関係を解消された側に不貞行為(浮気・不倫)があった場合や、正当な理由なく同居や協力を拒む「悪意の遺棄」があった場合には、解消に正当な事由があると認められる傾向にあります。
また、著しい虐待や重大な侮辱、深刻なDV・モラハラなど、共同生活を継続し難い重大な事由が存在する場合も、正当な理由による解消と判断されやすくなります。
これらのような落ち度や重大な事情が相手方にないにもかかわらず、一方の身勝手な都合や感情の変化だけで関係を断ち切った場合には、正当な事由を欠く不当破棄として慰謝料支払いの責任が生じることになります。
- 不貞行為(配偶者以外の異性との肉体関係など)の有無
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、理由のない同居拒否など)の有無
- 虐待、重大な侮辱、暴力など「関係を継続し難い重大な事由」の有無
法的保護を受けるために必要な内縁関係の成立要件と証拠
内縁の不当破棄を理由として慰謝料を請求する場合、まずは前提として二人の間に法的な内縁関係が成立していたことを客観的に立証する必要があります。
法的な内縁関係が認められるためには、主に「お互いに夫婦となる婚姻の意思があったこと」と「夫婦としての共同生活の実態が存在したこと」の2つの要件を満たすことが求められます。
婚姻の意思や夫婦としての関係性を裏付ける証拠
単なる交際や同棲ではなく、双方が夫婦として生活を共にしようとしていた意思を示すためには、対外的な手続きや周囲への周知状況に関する資料が重要な意味を持ちます。
具体的には、健康保険において被扶養者として記載されている保険証が挙げられます。健康保険法上、事実上の婚姻関係にある者も一定の要件下で被扶養者として扱われるため、社会保障上の扱いは有力な証拠となり得ます。
また、勤務先に内縁配偶者として届出を行い、扶養手当が支給されていたことが分かる給与明細書なども有用です。そのほか、結婚式の実施を示す写真や式場の申込書、双方の親族の冠婚葬祭に夫婦として参列していた事実を示す写真なども婚姻意思を裏付ける資料となります。
夫婦としての共同生活の実態を証明する客観的資料
婚姻意思の存在に加えて、実際に夫婦同然の共同生活を継続して営んでいたことを示す客観的な証拠をそろえることも欠かせません。
同一世帯の住民票において、続柄欄に「夫(未届)」や「妻(未届)」と記載されている場合は、共同生活と婚姻意思の双方を示す非常に有力な証拠と評価される傾向があります。
賃貸物件に同居していた場合には、賃貸借契約書の同居人欄に「内縁の夫・妻」などの記載があるかどうかも確認されます。さらに、知人や親族から夫婦連名宛てに送られてきた郵便物なども、他の証拠と組み合わせることで共同生活の実態を補強する資料として機能します。
内縁関係の不当破棄をめぐる裁判例
内縁関係が一方的に解消されたとしても、すべてのケースで慰謝料請求が認められるわけではありません。過去の裁判では、同居期間や生活実態、関係解消に至る経緯などを総合的に考慮して判断されています。
慰謝料請求が認められた裁判例
内縁関係を一方的に破棄されたとして、内縁の妻が夫に対して不法行為に基づく慰謝料を請求した事案があります(東京地方裁判所平成30年11月16日判決)。この事案では、そもそも内縁関係が成立していたかどうかが主な争点となりました。
裁判所は、約6年9か月に及ぶ長期間の同棲生活や不妊治療を行っていた実態を踏まえ、夫婦同然の生活関係があり、妻側には将来結婚できると期待する十分な理由があったと認めました。
そのうえで、夫側が妻に無断で別の女性と婚姻届を提出して一方的に関係を破棄した点や、婚姻後も交際を継続して結婚への期待を持たせ続けた不誠実な対応を指摘しました。
一連の行為は妻の人格権を侵害する不法行為に当たると評価され、夫に対して230万円の慰謝料支払いが命じられました。
慰謝料請求が認められなかった裁判例
一方で、長期間の同居歴があっても慰謝料請求が退けられた事例もあります(東京地方裁判所平成28年7月13日判決)。この事案では、約9年3か月の同居と約2年間の別居を経て、女性側から関係を解消された男性が慰謝料を請求しました。
裁判所は、同居中に男性側の不貞行為など素行不良があったことや、女性側が関係解消を望んで別居に至った経緯を考慮しました。
男性側は別居が一時的なものだったと主張しましたがそれを裏付ける証拠はなく、2年間の別居期間や別居後に女性から結婚の意思がない旨が伝えられていた点などが重視されました。
結果として、夫婦に準じるような法的保護に値する関係とは評価されず、不当破棄には当たらないとして請求は棄却されています。
内縁不当破棄における慰謝料の相場とよくある疑問
内縁関係を一方的に解消された際の慰謝料請求に関して、相場や請求の可否についての疑問を質問形式で解説します。
Q. 内縁関係の不当破棄による慰謝料の相場はどのくらいですか?
内縁関係を正当な理由なく破棄された場合の慰謝料額は、一般的に50万〜300万円程度が一つの目安とされています。
金額の算定にあたっては、内縁関係が継続していた期間の長さ、関係解消に至った具体的な経緯、相手方の不貞行為の有無や程度、子の有無、当事者の社会的地位や資力など、個別の事情が総合的に考慮されます。
Q. 内縁のパートナーの浮気相手にも慰謝料を請求できますか?
内縁関係の実態が証明でき、かつパートナーの不貞行為を裏付ける客観的な証拠があれば、浮気相手に対しても慰謝料を請求できる場合があります。
請求を認めてもらうためには、浮気相手が内縁の配偶者の存在を認識していた、あるいは過失により認識していなかった状況下で肉体関係を持っていたことが必要となります。
Q. パートナーが法律婚をしている重婚的内縁関係でも慰謝料を請求できますか?
相手方が法律婚上の配偶者を有している「重婚的内縁関係」の場合、法秩序の観点から原則として法的保護の対象とはみなされません。
ただし、相手方の法律婚が長期間の別居や交流の断絶などによってすでに実質的に破綻・形骸化していた場合には、例外的に法的保護が認められ、不当破棄に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。
法律婚が形骸化していたか否かは、別居に至った理由や別居期間、経済的協力の有無、事実上の生活基盤が確立していたかなどを踏まえて判断されます。
内縁関係の解消トラブルにおける弁護士への相談
法的評価と客観的証拠の重要性
内縁関係の解消に伴うトラブルにおいて慰謝料を請求する際には、まず当事者間に法律上の内縁関係が成立していたかどうかが大きな争点となります。内縁は法律婚と異なり戸籍による証明ができないため、共同生活の実態や婚姻意思を示す客観的な資料を網羅的に収集し、法的に精査する必要があります。
加えて、一方的な関係解消が「正当な事由のない不当破棄」に該当するかどうかの判断も極めて重要です。相手方が主張する解消理由が法的に正当と認められるか否かは、過去の裁判例や双方の生活実態を照らし合わせながら慎重に検討しなければなりません。
状況に応じた適切な法的手続きの選択
解決に向けた手続きとしては、当事者間の直接交渉をはじめ、内容証明郵便による請求、家庭裁判所における調停手続きや民事訴訟などが挙げられます。しかし、当事者同士の話し合いでは感情的な対立が生じやすく、交渉が平行線をたどるケースも少なくありません。
どのような手続きを選択すべきかは、相手方の対応や手元にある証拠の状況によって異なります。法的な観点から状況を客観的に整理し、手元の証拠の証明力を把握しておくことは、納得のいく解決を目指す上で有用といえます。
一方的な内縁解消による精神的苦痛について慰謝料請求を検討している場合は、法的な権利関係や今後の進め方を整理するためにも、まずは弁護士への相談を活用してみるとよいでしょう。
コラム監修者
SHIZU ISHIDA
所属:東京オフィス
広島県広島市出身。青山学院大学心理学科、東海大学法科大学院卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、刑事、民事、法人案件等幅広い分野の専門知識を習得。弁護士登録10年目にしてネクスパート法律事務所に入所し、現在は主に離婚事件に注力している。